語学・英語学習ホント

英語を話すのが怖いのは、あなただけじゃない。約2万人のデータが示す「外国語不安」の正体

英語を話すのが怖いのは、あなただけじゃない。約2万人のデータが示す「外国語不安」の正体

読む前に予想してみよう!

外国語を話すときの不安は、性格の問題なので研究の対象にはなっていない

研究カード(どんな研究?)
対象
外国語学習者(23か国)
規模
97報告・約2万人のメタ分析ほか
研究の種類
メタ分析・質問紙研究
確かさ
★★★★★
3秒でわかる

外国語を使うときの不安は1986年に「外国語教室不安」を測る質問紙が作られた。約2万人のメタ分析で、不安が強い人ほど成績が低い傾向がはっきり出ている。

ひとことで言うと英語がこわいのは「よくあること」。不安は小さくできる!

もくじ
  1. 1986年、「英語が怖い」が測れるようになった
  2. 約2万人のデータ:不安と成績の関係
  3. 不安は「頭のメモリ」を奪う
  4. 「楽しい」は、不安より強かった
  5. まとめ

英語で話そうとした瞬間、頭が真っ白になる。言いたいことはあるのに、間違えるのが怖くて口が開かない。

「自分は英語に向いていないのかも……」と落ち込んだことがある人へ。それはあなただけの問題ではありません。

外国語を使うときの不安は、心理学と言語教育の研究で約40年にわたって調べられてきた「よくある現象」なのです。

011986年、「英語が怖い」が測れるようになった

「みんなの前で間違えたら恥ずかしい」「先生に当てられたらどうしよう」。こうした気持ちに名前がつき、数字で測れるようになったことで、研究が一気に進みました。

ホーウィッツらは、外国語の授業では大人なのに自分を十分に表現できない状態に置かれることが、ほかの教科にはない独特の不安を生むと考えました。

02約2万人のデータ:不安と成績の関係

では、不安は成績とどれくらい関係しているのでしょう。

テイモウリらは2019年、23か国・約2万人(97報告)のデータをまとめたメタ分析を発表しました。不安と語学の成績の相関はr = −.36。不安が強い人ほど成績が低い傾向が、はっきり出ています。

同じ年に発表されたジャンのメタ分析(1万人以上)でも、相関は−.34と、ほぼ同じ結果でした。特にリスニングの不安とリスニングの成績の結びつきが強かったといいます。

また、不安と成績の結びつきは、英語力のレベルが違うグループでもほぼ同じでした。初心者だけの問題ではないのです。

不安は「消す」より「ほどく」もの
不安は「消す」より「ほどく」もの

03不安は「頭のメモリ」を奪う

不安はなぜ成績に響くのでしょう。カナダのマッキンタイアとガードナーは1994年、不安が聞く・理解する・話す、のどの段階の処理にも影響しうることを示唆しました。

不安で頭がいっぱいになると、英語を処理するための作業スペース(ワーキングメモリ)が奪われてしまう、と考えられています。

ただし、相関は「不安が原因」とは限りません。英語が苦手だから不安になるという逆向きの関係もあり、実際にはその両方が絡み合っていると考えられます。

04「楽しい」は、不安より強かった

希望の持てる研究もあります。デワールとマッキンタイアは2014年、世界中の1,746人の外国語学習者を調べ、教室での「楽しさ」の得点が、不安の得点より高かったことを報告しました。

楽しい場面として参加者が挙げたのは、先生の人柄や教え方、支え合える仲間。不安と楽しさは、同じ教室で同時に存在するのです。

05まとめ

英語を話すのが怖いのは、多くの学習者に共通する、研究で確かめられた現象です。そして、その不安は成績とも関係しています。

でも、不安は性格で決まった運命ではありません。準備・環境・仲間しだいで小さくでき、楽しさで上書きできる感情なのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany learners freeze when they try to speak English, afraid of making mistakes in front of others. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many learners freeze when they try to speak English, afraid of making mistakes in front of others. In 1986, Horwitz and her colleagues named this feeling foreign language classroom anxiety and created a 33-item questionnaire to measure it. They linked it to fear of speaking with others, test anxiety, and fear of negative evaluation.

In 2019, a meta-analysis of data from about 20,000 learners in 23 countries found that students with higher anxiety tended to get lower scores. Anxiety may take up working memory that is needed to process the language. However, the relationship may also work the other way: being weak at English can make people anxious. Encouragingly, a 2014 study of 1,746 learners found that enjoyment in class was higher than anxiety.

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの学習者は、ほかの人の前で間違えるのを恐れて、英語を話そうとすると固まってしまいます。1986年、ホーウィッツらはこの気持ちを外国語教室不安と名づけ、それを測る33項目の質問紙を作りました。彼女たちはそれを、人と話すことへのおそれ、テスト不安、悪く評価されることへのおそれと結びつけました。

2019年、23か国の約2万人の学習者のデータを分析したメタ分析は、不安の強い学生ほど点数が低い傾向があることを見出しました。不安は、言語を処理するのに必要なワーキングメモリを奪ってしまうのかもしれません。しかし、その関係は逆向きにも働くかもしれません。英語が苦手だと不安になる、ということです。心強いことに、1,746人の学習者を対象にした2014年の研究では、授業での楽しさは不安よりも高かったのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Horwitz and her colleagues create in 1986?

Q2. How might anxiety affect performance, according to the passage?

Q3. What does "the relationship may also work the other way" mean?

重要単語

  • anxietyB2
    名詞不安Speaking anxiety is common among learners. 形容詞 anxious。be anxious about ~「~を心配する」、be anxious to do「~したがる」の意味の違いは入試頻出。
  • apprehensionC1
    名詞懸念・おそれCommunication apprehension can make you silent. apprehend は「理解する・逮捕する・懸念する」と多義。ap-(~へ)+prehend(つかむ)。
  • evaluationB2
    名詞評価Fear of negative evaluation stops many people from speaking. evaluate「評価する」(e-+value)。fear of negative evaluation は外国語不安の3要素の1つ。
  • enjoymentB1
    名詞楽しさEnjoyment helps you keep learning. SLAのポジティブ心理学では foreign language enjoyment(FLE)として不安と別の次元で測る。
  • achievementB1
    名詞達成・成績Anxiety is linked to lower achievement. achieve「成し遂げる」の名詞形。academic achievement「学業成績」は教育系長文の定番。
  • working memoryC1
    名詞(句)ワーキングメモリ(作業記憶)Anxiety can use up your working memory. 情報を一時的に保持しながら処理する「頭の作業台」。容量が小さいので、不安でふさがると英語の処理に回らない。
  • causalityC1
    名詞因果関係Correlation does not prove causality. cause の派生語。causation とほぼ同義。相関(correlation)との区別は研究を読む基本。

動画でもっと知る

23か国・約2万人のデータをまとめた研究で、外国語の不安が強い人ほど成績が低い傾向が確認されたらしい。でも別の約1,700人の調査では「楽しい」気持ちが不安より強かった。英語の怖さは、ちゃんと扱える感情。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Horwitz, Horwitz & Cope (1986) Foreign language classroom anxiety. The Modern Language Journaldoi.org
  2. Teimouri, Goetze & Plonsky (2019) Second language anxiety and achievement: A meta-analysis. Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
  3. Zhang (2019) Foreign language anxiety and foreign language performance: A meta-analysis. The Modern Language Journaldoi.org
  4. Dewaele & MacIntyre (2014) The two faces of Janus? Anxiety and enjoyment in the foreign language classroom. Studies in Second Language Learning and Teachingdoi.org
  5. MacIntyre & Gardner (1994) The subtle effects of language anxiety on cognitive processing in the second language. Language Learningdoi.org