脳と心理

錯視とは? 脳がだまされる有名な錯視8選。同じ色が違って見える理由を研究で解説

錯視とは? 脳がだまされる有名な錯視8選。同じ色が違って見える理由を研究で解説

読む前に予想してみよう!

同じ錯視なら、世界中どこの人でも同じくらいだまされる

研究カード(どんな研究?)
対象
子ども〜大人、15の社会の人々など
規模
各研究で数十〜千数百人
研究の種類
心理物理実験・比較文化研究・脳画像研究
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

錯視は目の故障ではなく、脳が「影」「距離」「文脈」を推理した結果。同じ灰色が違って見える錯視から、文化で強さが変わる錯視まで8つを紹介。

ひとことで言うと錯視は、脳ががんばって「推理」しすぎたときに起きる見まちがい!

もくじ
  1. 1. チェッカーシャドウ錯視:同じ灰色が違って見える
  2. 2. ザ・ドレス:同じ写真が「青黒」と「白金」に
  3. 3. ミュラー・リヤー錯視:育った環境で効き方が変わる
  4. 4. エビングハウス錯視:脳の「広さ」まで関係する
  5. 5. 蛇の回転:止まっている絵が回って見える
  6. 6〜8. まだある、脳がだまされる錯視
  7. まとめ

錯視(さくし)とは、実際とは違う形・色・大きさ・動きに見えてしまう現象のこと。いわゆる「目の錯覚」です。

結論から言うと、錯視は目の故障ではありません。脳が「影があるはず」「遠くにあるはず」と推理して、見たものを補正しすぎた結果です。ふだんは役に立つその推理が、特別な図形の前ではアダになるのです。

今回は、有名な錯視を8つ選び、「なぜそう見えるのか」を研究とあわせて紹介します。

011. チェッカーシャドウ錯視:同じ灰色が違って見える

米マサチューセッツ工科大学(MIT)のエーデルソンが1995年に発表した錯視です。チェス盤の上に円柱が影を落とした絵で、影の外の濃い色のマスAと、影の中の明るい色のマスBが、実はまったく同じ灰色なのです。

脳は「影の中のものは実際より暗く映る」と知っているので、影の中のマスを明るめに補正します。だから、同じ灰色でも違う色に見えるのです。

影の中にあると、脳は色を「明るめ」に補正する(オリジナルの説明図)
影の中にあると、脳は色を「明るめ」に補正する(オリジナルの説明図)

022. ザ・ドレス:同じ写真が「青黒」と「白金」に

2015年にネットで世界を二分した、ドレスの写真です。これも「どんな光で照らされていると思うか」という照明の推理が人によって違うために起きると考えられています(→ドレスの写真の科学)。

033. ミュラー・リヤー錯視:育った環境で効き方が変わる

同じ長さの線分でも、両端の矢羽根が外へ開いている(>―<)と長く、内へ閉じている(<―>)と短く見える錯視です。

ただし、この説明には年齢や実験方法の違いなどの反論もあり、原因はまだ決着していません。

044. エビングハウス錯視:脳の「広さ」まで関係する

同じ大きさの円でも、小さな円に囲まれると大きく、大きな円に囲まれると小さく見える錯視です。

英ロンドン大学ゴールドスミス校のデ・フォッカートらは2007年、ナミビアの牧畜民ヒンバの人々では、この錯視がイギリスの人より弱いことを報告しました。細かい部分に注意を向ける見方のクセが関係していると考えられています。

さらに英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究では、脳の視覚の入り口である一次視覚野(V1)の面積が広い人ほど、この種の錯視が弱いという相関も見つかっています。

055. 蛇の回転:止まっている絵が回って見える

立命館大学の北岡明佳教授が2003年に発表した、止まっているのにぐるぐる回って見える錯視です。

北岡氏も参加した米ハーバード大学医学部のコンウェイらの2005年の研究によると、カギは色ではなく明るさの並び順。黒→暗い灰色→白→明るい灰色という並びが、動きを感じる神経細胞をだますことが、サルの視覚野の記録からも示されました。

066〜8. まだある、脳がだまされる錯視

6. カニッツァの三角形:パックマンのような図形を3つ置くだけで、描かれていない三角形が見えます。ネコまでこの「ないはずの図形」に反応したという研究も(→ネコと箱の実験)。

7. ヘルマン格子:黒い四角を白い線で区切ると、線の交差点に灰色の点がちらつきます。教科書では網膜の「側抑制」で説明されてきましたが、線を少し波打たせるだけで錯視がほぼ消えることから、その説明だけでは足りないという指摘があります。

8. 月の錯視:地平線の月が大きく見えるのも錯視です(→月の錯視)。

07まとめ

錯視は、脳が影・距離・まわりとの比較を使って世界を推理していることの証拠です。そして、その推理のクセは、育った環境や脳の個人差によっても変わります。

「見えたまま」が真実とは限らない。そう思うと、注意の落とし穴を描いたストループ効果や見えないゴリラの話も、もっと面白くなるはずです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerOptical illusions are not mistakes made by the eyes. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Optical illusions are not mistakes made by the eyes. They happen because the brain interprets what we see using context, such as shadows and distance. In Edward Adelson's checker shadow illusion, two squares are exactly the same gray, but the one inside a shadow looks lighter, because the brain corrects for the shadow. Culture may also matter.

In 1963, researchers tested people from 15 societies and found large differences in how easily they were fooled by geometric illusions. In 2007, another study found that the Himba people of Namibia were less affected by the Ebbinghaus illusion than British people. This suggests that our experiences shape the way we see the world.

111 words ・ CEFR B1

和訳を見る

錯視は目が犯す間違いではありません。脳が、影や距離といった文脈を使って見たものを解釈するために起こるのです。エドワード・エーデルソンさんのチェッカーシャドウ錯視では、2つのマスはまったく同じ灰色ですが、影の中にあるほうが明るく見えます。脳が影の分を補正するからです。文化も関係しているかもしれません。

1963年、研究者たちは15の社会の人々を調べ、幾何学的な錯視へのだまされやすさに大きな差があることを発見しました。2007年には別の研究で、ナミビアのヒンバの人々は、イギリスの人々よりもエビングハウス錯視の影響を受けにくいことがわかりました。これは、私たちの経験が世界の見え方を形づくっていることを示唆しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the checker shadow illusion?

Q2. What did the 1963 study find?

Q3. What does the writer suggest at the end?

重要単語

  • optical illusionB2
    名詞(句)錯視、目の錯覚This optical illusion makes the lines look different. illusion は「幻想・思い違い」。be under the illusion that ~「~と思い込んでいる」も頻出。
  • perceptionB2
    名詞知覚Our perception depends on context. 動詞 perceive「知覚する・気づく」。「(物事の)とらえ方・認識」の意味でも入試頻出。
  • shadowA2
    名詞影The brain corrects for the shadow. 形のある影が shadow、日陰は shade。cast a shadow「影を落とす」。
  • contextB2
    名詞文脈、周りの状況Color looks different in a different context. in this context「この文脈では」。語彙問題で「文脈から推測する」の context。
  • susceptibleC1
    形容詞(影響を)受けやすいSome people are more susceptible to the illusion. be susceptible to ~「~の影響を受けやすい、~にかかりやすい」。名詞は susceptibility。
  • interpretB2
    動詞解釈するThe brain interprets what the eyes see. 「通訳する」の意味も。名詞 interpretation、interpreter「通訳者」。

4コマでわかる

錯視とは? 脳がだまされる有名な錯視8選。同じ色が違って見える理由を研究で解説の4コマ漫画
錯視は「目のミス」じゃなく「脳の推理のしすぎ」。影の中の灰色を明るく補正し、止まった絵を動いていると感じる。しかも、同じ錯視でも育った環境で効き方が違うという研究まであるらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Segall, Campbell & Herskovits (1963) Cultural Differences in the Perception of Geometric Illusions, Sciencedoi.org
  2. de Fockert et al. (2007) More accurate size contrast judgments in the Ebbinghaus Illusion by a remote culture, Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performancedoi.org
  3. Schwarzkopf, Song & Rees (2010) The surface area of human V1 predicts the subjective experience of object size, Nature Neurosciencedoi.org
  4. Conway et al. (2005) Neural Basis for a Powerful Static Motion Illusion, Journal of Neurosciencedoi.org
  5. Geier et al. (2008) Straightness as the Main Factor of the Hermann Grid Illusion, Perceptiondoi.org