脳と心理ホント

体重の2%なのにエネルギーの20%を独占。脳はとんでもない大食い臓器だった

体重の2%なのにエネルギーの20%を独占。脳はとんでもない大食い臓器だった

読む前に予想してみよう!

難しい問題を必死に考えると、脳のエネルギー消費は2倍近くに跳ね上がる

研究カード(どんな研究?)
対象
ヒト(成人・子ども)
規模
生理学の測定データ+既存PET・MRIデータの再解析
研究の種類
生理学的推定・レビュー
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

脳の重さは体重の約2%なのに、安静時に体が使うエネルギーの約20%を消費。子どもの脳はさらに大食いになる時期がある。

ひとことで言うと脳は小さいのに、体のエネルギーの5分の1を食べちゃう!

もくじ
  1. 電球1個ぶんの電力で、ずっと動きっぱなし
  2. エネルギーの行き先は「電池の充電」
  3. 子どもの脳は、もっと大食いだった
  4. じゃあ頭が疲れるのはなぜ?
  5. まとめ

大人の脳の重さはだいたい1.2〜1.4kg。体重60〜70kgの人なら、体のわずか2%ほどです。

ところがこの小さな臓器、じっと座っているだけのときでも、体全体が使うエネルギーの約20%を一人で消費しています。体の50分の1のサイズで、5分の1の電気代。家電なら真っ先に買い替え候補です。

なぜ脳はこんなに大食いなのか。そして「頭を使えば痩せる」は本当なのか。のぞいてみましょう。

01電球1個ぶんの電力で、ずっと動きっぱなし

大人の安静時の代謝をワット数に直すと、脳が使うのはだいたい20ワット前後。昔の暗めの電球1個ぶんくらいです。

「なんだ、たいしたことない」と思いました? でも重さあたりで比べると、脳は筋肉(安静時)の何倍ものエネルギーを使います。しかも寝ている間も止まりません。

02エネルギーの行き先は「電池の充電」

脳のエネルギーの使い道で大きいのが、神経細胞の電気の準備です。

神経細胞は、細胞の内と外でナトリウムやカリウムのイオンの濃さに差をつけて、電気信号を送ります。信号を送るたびに崩れたこの差を、ポンプがせっせと元に戻している。このポンプを動かすのに、大量のエネルギー(ATP)が必要なんです。英国の研究者アットウェルとラフリンの試算では、げっ歯類(ラットなど)の大脳の灰白質で使われるエネルギーの多くが、神経の電気信号やシナプスでの情報伝達と、その後片付けに使われているとされました(2001年)。

つまり脳は、いつでも信号を送れるようにバッテリーを満充電し続けている状態。スマホを常に100%に保つために、ずっと充電器に挿しているようなものです。

神経細胞は、イオンのポンプを休みなく動かして「電気の準備」をしている
神経細胞は、イオンのポンプを休みなく動かして「電気の準備」をしている

03子どもの脳は、もっと大食いだった

さらに驚くのが子どもの脳です。

米ノースウェスタン大のクザワらが、過去に集められた脳のPET(ブドウ糖の使用量を測る検査)とMRIのデータを組み合わせて計算したところ、脳のブドウ糖消費は生まれたときではなく幼児期(5歳前後)にピークを迎え、このころは安静時エネルギーの約3分の2(約66%)を脳が使っていると推定されました(PNAS, 2014)。

しかも、脳の消費がピークの時期ほど体重の増え方がゆっくりになる、という逆の関係も見つかっています。「脳を育てるために、体の成長を後回しにしているのでは」という仮説を支える結果です。ただし、これは別々に集められたデータを組み合わせた推定で、同じ子どもたちを追跡して測ったわけではありません。子どもが驚くほどよく食べるのも、納得ですね。

04じゃあ頭が疲れるのはなぜ?

エネルギーがそれほど増えないなら、なぜ集中すると「頭が疲れた」と感じるのでしょう。

ここはまだ研究中のテーマです。フランス・パリ脳研究所のチームは、1日(約6時間)難しい課題を続けた人では、判断や制御に関わる前頭前野の外側部分にグルタミン酸がたまっていたと報告しました(Current Biology, 2022)。こうした物質の蓄積が「もうやめたい」という感覚につながる、という説です。一方で、「この作業を続ける価値があるか」を脳が見積もり直すことで疲労感が生まれるという説などもあり、決着はついていません。

05まとめ

脳は、何もしていない時でさえ全力で準備運動を続ける、超燃費の悪い臓器でした。でもその燃費の悪さこそが、いつでも考え、感じ、反応できる能力の代償なのかもしれません。

今この記事を読んでいる間も、あなたの脳は電球1個ぶんの電力で光り続けています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe adult brain weighs only about 1.2 to 1.4 kilograms, about 2 percent of body weight. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The adult brain weighs only about 1.2 to 1.4 kilograms, about 2 percent of body weight. But it uses around 20 percent of the body's energy at rest. That is roughly 20 watts, similar to a dim light bulb.

Where does all this energy go? Much of it keeps nerve cells ready to send electrical signals. After each signal, tiny pumps in the cell membranes move ions back into place, and this constant work needs a lot of energy.

Because the brain is always this busy, concentrating hard on a problem adds only a little extra. Children's brains are even hungrier. One study estimated that at around age five, the brain uses about two-thirds of the body's resting energy.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

大人の脳の重さは約1.2〜1.4キログラムで、体重の約2パーセントにすぎません。しかし、安静時の体のエネルギーの約20パーセントを使います。これはおよそ20ワットで、薄暗い電球1個ぶんに近いものです。

このエネルギーはすべてどこに行くのでしょうか。その多くは、神経細胞がいつでも電気信号を送れるようにしておくために使われます。信号のたびに、細胞膜にある小さなポンプがイオンを元の位置へ戻しており、この絶え間ない作業に多くのエネルギーが必要なのです。

脳はいつもこれほど忙しいので、問題に必死に集中しても、上乗せはほんの少しです。子どもの脳はさらに大食いです。ある研究は、5歳前後では脳が安静時の体のエネルギーの約3分の2を使うと推定しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What is much of the brain's energy used for?

Q3. Why does concentrating hard add only a little extra energy?

重要単語

  • metabolismC1
    名詞代謝Exercise can change your metabolism. ギリシャ語で「変化」。形容詞 metabolic。日本語の「メタボ」は metabolic syndrome の略。
  • glucoseC1
    名詞ブドウ糖The brain mainly runs on glucose. 発音は /ˈɡluːkoʊs/。blood glucose(血糖)は健康系長文の頻出語。
  • consumeB2
    動詞消費するLarge animals consume a lot of food every day. 名詞 consumption、consumer(消費者)。time-consuming「時間のかかる」も頻出。
  • resting metabolic rateC1
    名詞(句)安静時代謝率Your resting metabolic rate is the energy you use while sitting still. rest(休む)+metabolic(代謝の)+rate(割合)。基礎代謝(basal metabolic rate)と近い概念。
  • trade-offC1
    名詞一方を得ると他方を失う関係There may be a trade-off between brain growth and body growth. 経済・生物・環境の長文で頻出。a trade-off between A and B の形で使う。
  • neuronB2
    名詞神経細胞、ニューロンNeurons send electrical signals to each other. neuro- は「神経の」。neuroscience(神経科学)、neural(神経の)とセットで覚える。

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4コマでわかる

体重の2%なのにエネルギーの20%を独占。脳はとんでもない大食い臓器だったの4コマ漫画
脳って体重の2%くらいしかないのに、じっとしている時のエネルギーの約20%を使ってるらしい。しかも子どもの頃はもっと大食い。頭が良いって燃費が悪いのか。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Raichle & Gusnard (2002) Appraising the brain's energy budget, PNASdoi.org
  2. Attwell & Laughlin (2001) An energy budget for signaling in the grey matter of the brain, Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolismdoi.org
  3. Kuzawa et al. (2014) Metabolic costs and evolutionary implications of human brain development, PNASdoi.org
  4. Wiehler et al. (2022) A neuro-metabolic account of why daylong cognitive work alters the control of economic decisions, Current Biologydoi.org