脳と心理ホント

「青と黒」か「白と金」か。世界を二分したドレスの写真、脳は"照明"を推理していた

「青と黒」か「白と金」か。世界を二分したドレスの写真、脳は"照明"を推理していた

読む前に予想してみよう!

「ドレスの色」論争で白と金に見えた人は、色覚に異常がある

研究カード(どんな研究?)
対象
一般の成人
規模
1,401人〜約1万3,000人
研究の種類
オンライン調査・実験
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

同じ写真なのに「青黒」「白金」と意見が割れたドレス。約1.3万人の調査では、見え方を最も左右したのは「どんな光で照らされていると思ったか」だった。

ひとことで言うと色は目で見るだけじゃなく、脳が「光の当たり方」を推理して決めている!

もくじ
  1. 脳は「光の色」を差し引いて見ている
  2. 1,401人調査:3つの見え方
  3. 1.3万人調査:朝型の人は「白と金」?
  4. まとめ

2015年2月、1枚のドレスの写真がインターネットを駆けめぐりました。

「このドレス、何色に見える?」

ある人には青と黒。別の人には白と金。家族や友だちのあいだでも意見が真っ二つに割れ、「なんでそう見えるの!?」と大騒ぎになりました。ちなみに実物は青と黒のドレスです。

同じ写真を見ているのに、なぜこんなに違って見えるのでしょうか? 実はこの騒動、色の研究者たちにとっては願ってもないチャンスでした。

01脳は「光の色」を差し引いて見ている

私たちは、物の色を「そのまま」見ているわけではありません。

夕方のオレンジ色の光の下でも、バナナは黄色に見えます。これは脳が「いまはオレンジっぽい光が当たっているから、その分を差し引こう」と自動で補正しているから。この働きを色の恒常性と呼びます。

ところが、ドレスの写真は、どんな光で照らされているのか手がかりが少ない写真でした。しかも写真の色は、青空の光と電球の光のあいだ、つまり自然の照明でよくある「青〜黄色」の軸の上に並んでいたのです。

021,401人調査:3つの見え方

研究チームの考えはこうです。

  • 「青っぽい光(日陰や青空の光)に照らされている」と脳が判断 → 青っぽさを差し引く → 白と金に見える
  • 「黄色っぽい光(電球の光)に照らされている」と脳が判断 → 黄色っぽさを差し引く → 青と黒に見える

実際、写真に照明の手がかりを付け加えると、見え方をひっくり返すこともできました。

「どんな光の下にあると思うか」で、脳が差し引く色が変わる
「どんな光の下にあると思うか」で、脳が差し引く色が変わる

031.3万人調査:朝型の人は「白と金」?

2017年には、アメリカの神経科学者ワリッシュ(Wallisch)さんが、約1万3,000人のオンライン調査の結果を発表しました。

ドレスが影の中にあると思った人ほど白と金、人工の照明の下と思った人ほど青と黒に見えやすい——照明の思い込みが、年齢や性別よりずっと強く影響していたのです。

さらに面白いのは、朝型の人ほど「白と金」と答えやすかったこと。朝型の人は昼間の自然光(青っぽい光)を浴びる時間が長く、夜型の人は電球の光の下で過ごす時間が長い。その経験が、脳の"思い込み"を作っているのでは、と考えられています。

04まとめ

ドレス論争の正体は、脳が「この写真はどんな光で照らされているか」を勝手に推理していたことでした。答えが分かれたのは、その推理の前提が人によって違ったからです。

あなたが「当たり前」に見ている世界も、実は脳がつくった"いちばんありそうな答え"。隣の人には、少し違う世界が見えているのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn February 2015, a photo of a dress spread around the internet because people could not agree on its colors. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In February 2015, a photo of a dress spread around the internet because people could not agree on its colors. Some saw blue and black, while others saw white and gold. The answer lies in how the brain handles light. A banana looks yellow even under orange evening light because the brain automatically removes the color of the light. This is called color constancy.

The dress photo gave few clues about the lighting. If your brain decided the dress was lit by bluish light, such as in shade, it removed the blue and you saw white and gold. If it decided the light was yellowish, like a light bulb, you saw blue and black.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

2015年2月、あるドレスの写真がインターネット中に広まりました。人々がその色について意見を一致させられなかったからです。青と黒に見える人もいれば、白と金に見える人もいました。答えは、脳が光をどう扱うかにあります。夕方のオレンジ色の光の下でもバナナが黄色に見えるのは、脳が光の色を自動的に取り除いているからです。これは色の恒常性と呼ばれます。

ドレスの写真には照明についての手がかりがほとんどありませんでした。もしあなたの脳が、日陰のような青っぽい光に照らされていると判断すれば、青みを取り除き、白と金に見えました。電球のような黄色っぽい光だと判断すれば、青と黒に見えたのです。

4択リーディングクイズ

Q1. Why does a banana look yellow under orange evening light?

Q2. Why was the dress photo so confusing?

Q3. If someone thought the dress was under a light bulb, what colors did they probably see?

重要単語

  • perceiveB2
    動詞知覚する、〜と感じ取るPeople perceived the same colors differently. 名詞 perception。perceive A as B「AをBとみなす」は入試頻出の型。
  • illuminationC1
    名詞照明、光の当たり方The illumination changes how colors look. 動詞 illuminate(照らす・明らかにする)。日本語の「イルミネーション」は飾り電灯の意味に限られがち。
  • ambiguousC1
    形容詞あいまいな、2通り以上に取れるThe photo was ambiguous. ambi-(両方)が語源。vague(ぼんやりした)との違いは「複数の解釈が可能」な点。
  • assumptionB2
    名詞前提、思い込みOur brains make assumptions about light. 動詞 assume。on the assumption that ~「~という前提で」。
  • color constancyC1
    名詞(句)色の恒常性Color constancy helps us see a banana as yellow at night. constancy は constant(一定の)の名詞形。照明が変わっても色を一定に感じる脳の働き。
  • go viralB2
    熟語(ネットで)爆発的に広まるThe photo went viral in a few hours. virus(ウイルス)のように拡散するイメージ。時事英語の定番。

4コマでわかる

「青と黒」か「白と金」か。世界を二分したドレスの写真、脳は"照明"を推理していたの4コマ漫画
2015年に世界を二分した「ドレスの色」論争。約1.3万人を調べたら、「影の中にある」と思った人は白と金、「電球の下」と思った人は青と黒に見えやすかったらしい。しかも朝型の人ほど白と金派だった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Lafer-Sousa, Hermann & Conway (2015) Striking individual differences in color perception uncovered by 'the dress' photograph, Current Biologydoi.org
  2. Brainard & Hurlbert (2015) Colour vision: understanding #TheDress, Current Biologydoi.org
  3. Winkler et al. (2015) Asymmetries in blue–yellow color perception and in the color of 'the dress', Current Biologydoi.org
  4. Wallisch (2017) Illumination assumptions account for individual differences in the perceptual interpretation of a profoundly ambiguous stimulus in the color domain: "The dress", Journal of Visiondoi.org