脳と心理ホント

一度見た顔を忘れない「スーパーレコグナイザー」と、顔が覚えられない人。顔の記憶力は人で大違い

一度見た顔を忘れない「スーパーレコグナイザー」と、顔が覚えられない人。顔の記憶力は人で大違い

読む前に予想してみよう!

人の顔を覚えられないのは、たいてい注意力や努力が足りないせいだ

研究カード(どんな研究?)
対象
一般の人・顔認識が極端な人
規模
4人〜689人
研究の種類
症例研究・疫学調査
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

顔の覚えやすさは人によって大きく違う。ずば抜けて得意な「スーパーレコグナイザー」がいる一方、生まれつき顔が覚えにくい人も約2.5%いたというドイツの調査がある。

ひとことで言うと顔を覚えるのが得意な人も苦手な人もいる。それは脳の個性なんだ!

もくじ
  1. 顔は脳にとって"特別"
  2. 「顔の天才」スーパーレコグナイザー
  3. 警察にも「顔のプロ」がいる
  4. 反対に、顔が覚えられない「相貌失認」
  5. まとめ

「あれ、この人どこかで会ったっけ?」

顔を覚えるのが得意な人もいれば、何度会っても覚えられない人もいます。これは単なる努力や性格の違いだと思われがちですが、研究によると顔の記憶力には、とても大きな個人差があるようです。

01顔は脳にとって"特別"

脳には、顔を見たときに特に強く反応する場所があります。1997年、アメリカの神経科学者カンウィッシャー(Kanwisher)さんらは、紡錘状回(ぼうすいじょうかい)の一部が、物や家の写真よりも顔に強く反応することを示し、「紡錘状回顔領域(FFA)」と名づけました。

私たちは毎日たくさんの顔を見分けていますが、それは脳の中の"顔の専門チーム"のおかげなのです。

02「顔の天才」スーパーレコグナイザー

スーパーレコグナイザーは、何年も前に一度会っただけの人や、髪型や年齢が変わった人にも気づくことがあると報告されています。研究チームは、彼らが顔認識で得意な度合いは、顔を見分けにくい人が苦手な度合いと同じくらい極端だ、と表現しています。

03警察にも「顔のプロ」がいる

この能力は実社会でも注目されています。イギリスのロンドン警視庁では、防犯カメラの映像から容疑者を見つけ出すスーパーレコグナイザーの専門チームが作られました。2016年には、こうした警察官たちの能力を調べた研究も発表されています。

たくさんの映像から「あの人」を見つけ出す力
たくさんの映像から「あの人」を見つけ出す力

04反対に、顔が覚えられない「相貌失認」

一方で、家族や友人の顔さえ見分けにくい人もいます。これを相貌失認(そうぼうしつにん)と呼びます。

脳卒中やけがで起きることもありますが、生まれつきの場合もあります。

生まれつきの相貌失認の人は、自分が顔を覚えにくいことに気づかないまま大人になることも多いといいます。髪型や声、歩き方、服装などで人を見分ける工夫をしているからです。

05まとめ

顔を覚える力は、人によって驚くほど違います。一度見た顔を忘れない人もいれば、家族の顔でさえ見分けにくい人もいる。

どちらも「脳の個性」。人の顔を覚えるのが苦手でも、それはあなたのせいではないのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe brain treats faces as special. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The brain treats faces as special. In 1997, researchers showed that part of a brain area called the fusiform gyrus responds more strongly to faces than to objects. But people differ greatly in face memory. In 2009, a team at Harvard tested four people who said they were extremely good at remembering faces.

All of them scored above the normal range, so the researchers named them "super-recognizers." At the other end are people with prosopagnosia, or face blindness, who struggle to recognize even family members. A 2006 German study of 689 students found that 17, or about 2.5 percent, had been born with it. Many do not realize it, because they identify people by voice or hairstyle.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

脳は顔を特別なものとして扱っています。1997年、研究者たちは、紡錘状回と呼ばれる脳の領域の一部が、物よりも顔に強く反応することを示しました。ただ、顔の記憶力は人によって大きく違います。2009年、ハーバード大学のチームは、自分は顔を覚えるのが非常に得意だと言う4人を調べました。

4人とも通常の範囲を超える得点を出したため、研究者たちは彼らを「スーパーレコグナイザー」と名づけました。その反対側にいるのが相貌失認(顔が見分けにくい状態)の人で、家族でさえ見分けるのに苦労します。689人の学生を調べた2006年のドイツの研究では、17人、つまり約2.5%が生まれつきこの状態でした。声や髪型で人を見分けているため、多くの人は自分がそうだと気づいていません。

4択リーディングクイズ

Q1. How many people were tested in the 2009 Harvard study?

Q2. What did the 1997 research show?

Q3. Why do many people with face blindness not realize their condition?

重要単語

  • recognizeB1
    動詞(見て)それとわかる、認識するI didn't recognize her with short hair. 「(事実を)認める」の意味もある。名詞 recognition。face recognition「顔認識」。
  • prosopagnosiaC1
    名詞相貌失認(顔を見分けにくい状態)People with prosopagnosia often recognize friends by their voices. ギリシャ語 prosopon(顔)+agnosia(認識できないこと)。一般向けには face blindness と言い換えられる。
  • face blindnessB2
    名詞(句)相貌失認(くだけた言い方)Face blindness can make parties stressful. color blindness(色覚異常)と同じ作りの言葉。
  • inheritB2
    動詞遺伝で受け継ぐSome traits are inherited from parents. 「財産を相続する」の意味も。名詞 inheritance。形容詞 hereditary(遺伝性の)も併せて。
  • individual differenceB2
    名詞(句)個人差There are large individual differences in memory. 心理学の論文で頻出の複数形 individual differences。vary from person to person も同じ意味。
  • congenitalC1
    形容詞先天性の、生まれつきのSome people have congenital face blindness. con-(共に)+genital(生まれ)。acquired(後天性の)と対で覚える。

4コマでわかる

一度見た顔を忘れない「スーパーレコグナイザー」と、顔が覚えられない人。顔の記憶力は人で大違いの4コマ漫画
何年も前にちらっと見た人の顔を覚えている「スーパーレコグナイザー」がいる。ロンドン警察には専門チームまで作られた。逆に、家族の顔さえ見分けにくい「相貌失認」の人も、ドイツの調査では約2.5%いたらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Russell, Duchaine & Nakayama (2009) Super-recognizers: people with extraordinary face recognition ability, Psychonomic Bulletin & Reviewdoi.org
  2. Duchaine & Nakayama (2006) The Cambridge Face Memory Test, Neuropsychologiadoi.org
  3. Kennerknecht et al. (2006) First report of prevalence of non-syndromic hereditary prosopagnosia (HPA), American Journal of Medical Genetics Part Adoi.org
  4. Davis et al. (2016) Investigating predictors of superior face recognition ability in police super-recognisers, Applied Cognitive Psychologydoi.org
  5. Kanwisher, McDermott & Chun (1997) The fusiform face area: a module in human extrastriate cortex specialized for face perception, Journal of Neurosciencedoi.org