脳と心理ホント

コンセントが"びっくり顔"に見える。モノの顔に、脳は最初「本物の顔」に近い反応をしていた

コンセントが"びっくり顔"に見える。モノの顔に、脳は最初「本物の顔」に近い反応をしていた

読む前に予想してみよう!

モノに顔が見える現象は人間だけのもので、サルには起きない

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な成人・アカゲザル
規模
数十人〜3,815人
研究の種類
fMRI・脳磁図・行動実験
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

モノに顔が見える「パレイドリア」。脳は最初の一瞬、本物の顔に近い反応をし、約0.25秒でふつうの物の扱いに切り替えていた。しかも男性の顔に見えやすい。

ひとことで言うとモノが顔に見えるのは、脳が「顔かも!」と早めに反応するからなんだ。

もくじ
  1. 「顔があるよ」と言われると、ノイズにも顔が見える
  2. 脳は最初「本物の顔」に近い反応をしていた
  3. なぜ「見逃さない」ほうが大事なのか
  4. モノの顔は、なぜか「男性」に見える
  5. まとめ

コンセントの穴が、驚いた顔に見える。車の正面が、怒った顔に見える。木の幹の模様が、おじいさんの顔に見える。

こんな経験、誰にでもありますよね。モノの中に顔などを見てしまう現象はパレイドリアと呼ばれています。

なぜ私たちの脳は、こんなに顔を見つけたがるのでしょう?

01「顔があるよ」と言われると、ノイズにも顔が見える

「顔があるはず」と思うだけで、脳はノイズの中にも顔を作り出してしまうのです。

02脳は最初「本物の顔」に近い反応をしていた

では、脳はモノの顔を、本物の顔と同じように処理しているのでしょうか?

2020年、アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)などのチーム(ワードル Wardle さんら)は、モノの顔・本物の顔・顔に見えないふつうの物の写真を見せ、脳の活動をfMRI(場所)と脳磁図(MEG:時間)の両方で調べました。

すると——

  • モノの顔に反応したのは、顔の処理を担当する視覚の領域だった
  • 写真を見た直後は、モノの顔の脳内での扱いは、ふつうの物より本物の顔に近かった
  • ところが約0.25秒のうちに、モノの顔はふつうの物と同じ扱いに変わっていった

脳はまず「顔かも!」と広めに網を張って反応し、そのあとで「いや、これは物だ」と修正しているようです。

身近なところに"顔"はいっぱい隠れている
身近なところに"顔"はいっぱい隠れている

03なぜ「見逃さない」ほうが大事なのか

顔を見つけるのが少し大げさなのは、生き物として理にかなっているのかもしれません。

もし茂みの中の本物の顔(敵や仲間)を見逃したら、命にかかわることもあります。一方、ただの木の模様を「顔かも」と思っても、損はほとんどありません。だから脳の顔検出は、正確さより「見逃さないこと」を優先しているのでは、と考えられています。

実際、2017年の研究では、アカゲザルも、人が顔に見えると感じる物の写真を長く見つめ、目や口にあたる部分に視線を向けていました。パレイドリアは、人間だけの現象ではなかったのです。

04モノの顔は、なぜか「男性」に見える

さらに面白い研究があります。2022年、同じワードルさんたちは合計3,815人の大規模な調査で、モノの顔には表情や年齢、性別まで感じ取れることを示しました。

そして、とても強い偏りが見つかりました。モノの顔は、女性より男性に見えやすいのです。この偏りは、物そのもののイメージ(「工具は男っぽい」など)では説明できませんでした。

05まとめ

モノに顔が見えるのは、脳の顔センサーが「見逃すより、早とちりのほうがまし」という設定になっているからかもしれません。脳は最初の一瞬、モノの顔を本物の顔に近いものとして扱い、すぐに「ただの物だ」と修正していました。

今日、身の回りでいくつの"顔"に出会えるか、数えてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSeeing faces in things like sockets, cars or tree bark is called pareidolia. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Seeing faces in things like sockets, cars or tree bark is called pareidolia. In a 2014 study, people were shown images of random noise and told that half of them contained hidden faces or letters.

In fact, none did, but people still reported seeing a face in 34 percent of the images. In 2020, another team used brain scans to compare object faces, real faces and ordinary objects. At first, the brain handled object faces more like real faces, but within about 0.25 seconds it treated them like normal objects. Scientists think the brain prefers to react too quickly rather than miss a real face, because missing a face could be dangerous.

112 words ・ CEFR B1

和訳を見る

コンセントや車、木の皮などに顔が見えることは、パレイドリアと呼ばれます。2014年の研究では、人々にランダムなノイズの画像を見せ、その半分には顔か文字が隠れていると伝えました。

実際にはどれにも隠れていませんでしたが、それでも人々は画像の34%で顔が見えたと答えました。2020年、別のチームが脳スキャンを使って、モノの顔、本物の顔、ふつうの物を比べました。最初、脳はモノの顔を本物の顔に近いものとして処理しましたが、約0.25秒のうちに、ふつうの物のように扱いました。顔を見逃すことは危険になりうるので、脳は本物の顔を見逃すよりも早とちりするほうを好むのだと科学者たちは考えています。

4択リーディングクイズ

Q1. What happened in the 2014 study?

Q2. What did the 2020 study compare?

Q3. Why might the brain prefer to react too quickly to faces?

重要単語

  • pareidoliaC1
    名詞パレイドリア(模様などに顔などを見る現象)Pareidolia makes us see faces in clouds. ギリシャ語 para(そばに・誤って)+eidolon(像)。face pareidolia で「顔のパレイドリア」。
  • illusoryC1
    形容詞錯覚の、幻のShe noticed an illusory face on the wall. illusion(錯覚)の形容詞形。illusory faces「錯覚の顔」は論文の定番語。
  • biasB2
    名詞偏りThere was a strong bias toward seeing male faces. bias toward / against ~「~への/~に対する偏り」。cognitive bias「認知バイアス」も頻出。
  • detectB2
    動詞検出する、見つけるOur brains quickly detect faces. 名詞 detection、detector。detective(探偵)と同語源。
  • inanimateC1
    形容詞命のない、無生物のA chair is an inanimate object. in-(否定)+animate(生命のある)。animal、animation と同じ anima(魂)が語源。
  • false alarmB2
    名詞(句)誤警報、空騒ぎSeeing a face in a tree is a harmless false alarm. 信号検出の用語としても使われる。miss(見逃し)と対で覚える。
コンセントや車の正面が顔に見える「パレイドリア」。脳は最初の一瞬、本物の顔に近い反応をして、約0.25秒後に「ただの物」の扱いに切り替えていたらしい。しかもモノの顔は男性に見えやすかった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Wardle et al. (2020) Rapid and dynamic processing of face pareidolia in the human brain, Nature Communicationsdoi.org
  2. Wardle et al. (2022) Illusory faces are more likely to be perceived as male than female, PNASdoi.org
  3. Liu et al. (2014) Seeing Jesus in toast: neural and behavioral correlates of face pareidolia, Cortexdoi.org
  4. Taubert et al. (2017) Face pareidolia in the rhesus monkey, Current Biologydoi.org