イライラは「言葉にする」だけで静まる。UCLAの脳スキャンが見た感情ラベリングの力

読む前に予想してみよう!
感情に名前をつけると、かえってその感情が強くなってしまう
実験では、感情を言葉にすると扁桃体の反応や体のストレス反応が弱まった。
- 対象
- 健康な成人・クモが苦手な人
- 規模
- 各数十人規模
- 研究の種類
- fMRI実験+群間比較実験
- 確かさ
- ★★★☆☆
怒った顔などを見たとき、その感情に「怒り」と名前をつけると、不安や恐怖に関わる扁桃体の反応が弱まった。言葉にすること自体がブレーキになるらしい。
ひとことで言うと「いま、イライラしてる」と言葉にすると、気持ちが少しおちつく!
イライラが止まらないとき、不安で胸がざわつくとき。「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせても、なかなかうまくいきませんよね。
ところが、もっと簡単で、しかも脳科学的な裏付けのある方法があります。今の気持ちに、ただ名前をつける。「私はいま、怒っている」「これは不安だ」。それだけです。
「そんなことで?」と思うかもしれません。でも、脳の中をのぞいた実験が、その効果を示していました。
01怒った顔を見ながら「言葉を選ぶ」実験
扁桃体は、脳の奥にあるアーモンドほどの大きさの部分。危険を察知すると真っ先に反応する、いわば脳の火災報知器です。
一方、活動が高まった右の腹外側前頭前野(おでこの右側の奥あたり)は、感情や行動にブレーキをかける働きに関わるとされています。言葉を探す作業が、このブレーキ役を動かし、報知器の音量を下げたのかもしれません。
02クモ恐怖症の人でも効果があった
効果は、実験室の写真だけではありませんでした。
UCLAの研究チームは、クモが怖い人たちに本物のクモに近づいてもらう実験も行いました(Psychological Science, 2012)。そのとき「この気持ち悪いクモが怖い」のように自分の気持ちを言葉にしたグループは、1週間後に別の場所で別のクモと向き合ったとき、手のひらの汗(皮膚の電気反応)で測った体のストレス反応が小さかったのです。
「怖くない、大丈夫」と考え方を変えようとしたグループ(再評価)や、気をそらしたグループ、ただクモに近づいただけのグループよりも、効果が見られました。
ただし、ここは正確に言っておきたいところ。本人が感じる「怖さ」の自己評価は、グループ間で差がありませんでした。言葉にすることが効いたのは、まず体の反応の側だった、というわけです。

03なぜ「名前をつける」と落ち着くのか
詳しい仕組みはまだ研究中ですが、いくつかの考え方があります。
- 言葉を選ぶとき、感情に巻き込まれる側から、観察する側へ立ち位置が少し変わる
- 正体の分からない不快感が、名前のある「扱えるもの」に変わる
- 言葉を探すこと自体が、ブレーキ役の脳の部分を働かせる
面白いのは、リーバーマンらの別の研究(Emotion, 2011)で、多くの人が「言葉にすると、かえって気持ちが強まりそう」と予想していたことです。実際に嫌な気分が軽くなる体験をしたあとでさえ、その予想は変わりませんでした。効果は、本人が自覚しないうちに起きている可能性があります。研究者たちはこれを、意識して「落ち着こう」とする方法とは違う、「暗黙の感情調整」と呼んでいます。
ちなみに同じ研究では、楽しい写真に感情の名前をつけると、楽しさも少し弱まりました。ラベリングは「嫌な気持ちだけを消す魔法」ではなく、感情全般の温度を少し下げる働きのようです。
ただし、短く名前をつけることと、嫌な出来事を何度も何度も思い返し続ける「反すう」は別物。反すうのほうは、気分を悪化させやすいとされています。
04まとめ
感情に名前をつけることは、脳の火災報知器の音量を下げる、いちばん手軽なリモコンかもしれません。
次にイライラしたら、深呼吸のあとに一言。「よし、いま私は怒ってるな」。それだけで、嵐が少しだけ遠ざかるはずです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTelling yourself to calm down often does not work.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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When you feel angry, try saying, "I am angry now." It sounds too simple, but it may help. Scientists at UCLA showed people photos of angry and scared faces.
When people chose a word for the feeling, like "angry," a part of the brain that reacts to danger became less active. This part works like a fire alarm. Naming your feelings may turn down the alarm.
66 words ・ CEFR A2
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怒りを感じたら、「私はいま怒っている」と言ってみてください。簡単すぎるように聞こえますが、役に立つかもしれません。UCLAの科学者たちは、人々に怒った顔や怖がった顔の写真を見せました。
人々が「怒り」のような感情の言葉を選ぶと、危険に反応する脳の部分の活動が弱まりました。この部分は火災報知器のように働きます。気持ちに名前をつけることで、その警報の音を小さくできるのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
感情に名前をつけると危険に反応する脳の部分が静まる、という話なので D。
Q2. What did the scientists show people?
showed people photos of angry and scared faces とあるので B。
Q3. In this passage, "turn down" the alarm means ...
turn down は「(音量などを)下げる」。脳の警報を弱めるという意味なので C。
Telling yourself to calm down often does not work. A simpler way may be to put your feelings into words. In a 2007 study at UCLA, participants looked at photos of angry or scared faces while their brains were scanned. When they chose an emotion word such as "angry" for each face, the amygdala, which reacts quickly to danger, became less active.
At the same time, a part of the brain that helps control emotions became more active. In another study, people who were afraid of spiders described their fear while approaching a real spider. A week later, their bodies showed smaller stress responses than those of people who did not describe their fear. But they did not report feeling less afraid.
122 words ・ CEFR B1
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自分に「落ち着け」と言い聞かせても、うまくいかないことがよくあります。もっと簡単な方法は、気持ちを言葉にすることかもしれません。UCLAの2007年の研究では、参加者が脳をスキャンされながら、怒った顔や怖がった顔の写真を見ました。それぞれの顔に「怒り」のような感情の言葉を選ぶと、危険にすばやく反応する扁桃体の活動が弱まりました。
同時に、感情の制御を助ける脳の部分の活動が高まりました。別の研究では、クモが怖い人たちが、本物のクモに近づきながら自分の恐怖を言葉にしました。1週間後、彼らの体のストレス反応は、恐怖を言葉にしなかった人たちより小さくなっていました。ただ、本人たちは怖さが減ったとは報告しませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
感情を言葉にすると扁桃体や体のストレス反応が弱まるという内容なので A。
Q2. What happened to the amygdala when people chose emotion words?
the amygdala ... became less active とあるので C。
Q3. What is surprising about the spider study?
体のストレス反応は小さくなったが、they did not report feeling less afraid とあるので B。D は逆。
In a 2007 UCLA study, volunteers in an fMRI scanner looked at photos of angry or fearful faces. For each face, they either picked an emotion word, such as "angry," or a name that matched the person's gender.
Choosing the emotion word lowered activity in the amygdala, the brain's alarm system, and raised activity in the right ventrolateral prefrontal cortex, a region linked to restraining emotion. People with more activity there showed weaker amygdala responses. This is affect labeling, or putting feelings into words.
A 2012 study took the idea out of the scanner. Spider-fearful volunteers approached a live spider, some describing their fear aloud. A week later, their skin conductance responses were smaller than those of people who had reappraised the situation, distracted themselves, or simply faced the spider. Their reported fear, however, was no different.
Many people expect labeling to make emotions stronger, even after experiencing the opposite, which is why researchers call it "implicit" emotion regulation. The evidence has gaps. A quieter amygdala does not automatically mean a person feels better, the experiments used brief laboratory stimuli, and labeling slightly dulls positive feelings too. Briefly naming a feeling also differs from rumination, which tends to worsen mood.
200 words ・ CEFR B2
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2007年のUCLAの研究では、fMRIの装置に入った参加者が、怒った顔や怖がった顔の写真を見ました。それぞれの顔について、「怒り」のような感情の言葉を選ぶか、その人の性別に合う名前を選ぶかのどちらかを行いました。
感情の言葉を選ぶと、脳の警報装置である扁桃体の活動が下がり、感情を抑えることに関わる右の腹外側前頭前野の活動が上がりました。そこの活動が強い人ほど、扁桃体の反応は弱くなっていました。これが感情ラベリング、つまり気持ちを言葉にすることです。2012年の研究は、この考えを装置の外で試しました。
クモが怖い参加者が本物のクモに近づき、その一部は恐怖を声に出して言葉にしました。1週間後、この人たちの皮膚の電気反応は、状況をとらえ直した人、気をそらした人、ただクモに近づいただけの人よりも小さくなっていました。しかし、本人が報告する恐怖には違いがありませんでした。多くの人は、逆の体験をした後でさえ、ラベリングすると感情が強まると予想します。
研究者たちがこれを「暗黙の」感情調整と呼ぶのはそのためです。証拠には抜けている部分もあります。扁桃体が静かになったからといって、本人の気分が良くなったとは限りません。実験は短時間の実験室での刺激を使ったもので、ラベリングは前向きな気持ちもわずかに弱めます。また、気持ちに短く名前をつけることは、気分を悪化させがちな反すうとは違います。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
感情ラベリングで扁桃体や体の反応が弱まるという証拠と、その解釈の注意点(The evidence has gaps.)を述べているので D。
Q2. In the 2012 study, what did NOT differ between groups?
Their reported fear, however, was no different. とあるので A。皮膚の電気反応には差があった。
Q3. Why do researchers call affect labeling "implicit" emotion regulation?
Many people expect labeling to make emotions stronger, even after experiencing the opposite とある。本人が期待しないまま働くので「暗黙の」と呼ぶ。正解は C。
重要単語
- affect labelingC1名詞(句)感情ラベリング(感情に名前をつけること)Affect labeling can be as simple as saying "I am nervous."
心理学で affect は名詞「情動・感情」(アクセントは前 /ˈæfekt/)。動詞「影響する」との区別が入試で問われる。 - amygdalaC1名詞扁桃体The amygdala reacts quickly to signs of danger.
ギリシャ語の「アーモンド」が語源。形が似ていることから。脳科学系の長文で頻出。 - regulateB2動詞調整する、制御するSleep helps us regulate our emotions.
regular(規則的な)と同語源。名詞 regulation は「規制・規則」の意味でも頻出。 - exposure therapyC1名詞(句)曝露療法(怖いものに少しずつ慣れる治療)Exposure therapy helps people face their fears step by step.
expose(さらす)の名詞形 exposure。exposure to sunlight「日光にさらされること」のようにも使う。 - ruminationC1名詞反すう(嫌なことを繰り返し考えること)Rumination often makes a bad mood worse.
もとは牛などが食べ物を「反すうする」こと。動詞は ruminate(思いめぐらす)。 - suppressC1動詞抑える、抑圧するTrying to suppress your anger may not work.
sup(下に)+press(押す)。suppress a yawn「あくびをかみ殺す」。
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イライラしたとき「今わたしは怒ってる」と言葉にするだけで、脳の警報装置(扁桃体)の反応が弱まるらしい。UCLAの脳スキャン実験。感情に名前をつけるのって、地味に効くセルフケアかも。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Lieberman et al. (2007) Putting feelings into words: affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli, Psychological Sciencedoi.org
- Kircanski, Lieberman & Craske (2012) Feelings into words: contributions of language to exposure therapy, Psychological Sciencedoi.org
- Lieberman et al. (2011) Subjective responses to emotional stimuli during labeling, reappraisal, and distraction, Emotiondoi.org
- Torre & Lieberman (2018) Putting feelings into words: affect labeling as implicit emotion regulation, Emotion Reviewdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












