「脂肪の味」は6つ目の基本味になれるのか? 研究者が名付けた“オレオガスタス”の正体

読む前に予想してみよう!
脂肪酸そのものの味は、とてもおいしい
研究では、脂肪酸の味は単体だと不快に感じられることが多かった。脂っこい料理のおいしさは、香りや食感が大きい。
- 対象
- 成人の参加者・マウス
- 規模
- 数十人規模の官能評価+動物研究
- 研究の種類
- 実験研究・総説
- 確かさ
- ★★☆☆☆
脂肪酸には甘味や塩味とは別の独特の味があるとして「オレオガスタス」と名付けられた。ただ単体ではおいしくなく、6つ目の基本味かは議論中。
ひとことで言うと「あぶらの味」は、実は「おいしくない」独特の味だった!
唐揚げ、ポテトフライ、こってりラーメン。脂っこい料理って、どうしてこんなにおいしいのでしょうか。
「脂肪には独自の味があるのでは?」——そう考えた研究者たちは、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味に続く「6つ目の基本味」の候補として、脂肪の味を調べてきました。
2015年、アメリカの研究チームはこの味に「オレオガスタス(oleogustus)」という名前までつけました。ところが、その正体は、意外にも「おいしくない味」だったのです。
01「基本味」になるための条件
ある味が基本味と認められるには、いくつかの条件があると考えられています。
- その味を引き起こす決まった物質がある
- 舌にその物質をキャッチする仕組みがある
- 神経を通って脳に信号が届く
- ほかの基本味とはちがう味として感じられる
うま味が国際的に基本味として広く認められるまでにも、何十年もかかりました。脂肪の味は、今まさにこの「審査」の途中にあります。
02舌には「脂肪酸センサー」の候補があった
脂肪(中性脂肪)は大きな分子で、そのままでは味の細胞に届きにくいと考えられています。注目されているのは、脂肪が分解されてできる脂肪酸です。
03脂肪酸の味は「ほかの味とちがう」
2015年、アメリカ・パデュー大学のランニングさんらは、参加者にいろいろな味の液体を味わってもらい、どれとどれが似ているかをグループ分けしてもらいました。
においなど、味以外の手がかりの影響をできるだけ減らす工夫をしたうえで比べた結果、中くらい〜長い鎖の脂肪酸は、甘味・酸味・塩味・苦味のどのグループとも別のまとまりとして分けられたのです。研究者たちはこれを、ラテン語の「油」と「味」を組み合わせてオレオガスタスと名付けました。

04ただし「おいしい味」ではなかった
ここで意外な事実。脂肪酸の味は、単体では不快な味と感じられることが多いのです。古くなった油の「イヤな味」にも、脂肪酸が関わっています。
では、なぜ脂っこい料理はおいしいのか。研究者たちは、脂肪の魅力は香り、なめらかな食感、満足感など、いくつもの要素が組み合わさったものだと考えています。脂肪酸の味は、少量だと料理の味に深みを与える一方、多すぎると「まずい」の警告になる——苦味と似たはたらきかもしれません。
05まとめ
「脂肪の味」は、ほかの基本味とは区別できる独特の味として研究され、オレオガスタスという名前までつきました。でも、それは単体ではおいしくない味で、6つ目の基本味として認められるかはまだ議論中です。
唐揚げのおいしさは、味・香り・食感のチームプレー。科学は、その中の小さな「脂肪の味」の正体を、今まさに追いかけているところなのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerScientists widely accept five basic tastes.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
We know five basic tastes. They are sweet, salty, sour, bitter and umami. Could fat be the sixth?
In 2015, scientists in the US asked people to taste many liquids and put similar tastes into groups. Fatty acids, which come from fat, made their own group. The scientists named this taste "oleogustus."
But it was not a nice taste. Alone, it was unpleasant. Scientists are still not sure it is a basic taste.
73 words ・ CEFR A2
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私たちは5つの基本味を知っています。甘味、塩味、酸味、苦味、うま味です。脂肪は6つ目になれるのでしょうか。
2015年、アメリカの科学者たちは、人々にたくさんの液体を味わってもらい、似た味をグループに分けてもらいました。脂肪からできる脂肪酸は、それだけでひとつのグループになりました。科学者たちはこの味を「オレオガスタス」と名付けました。
しかし、それはいい味ではありませんでした。単独では不快な味だったのです。科学者たちは、それが基本味なのかどうか、まだ確信をもてていません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
脂肪の味が6つ目の基本味になれるか、という研究の話なので D。
Q2. What did the scientists name the taste of fatty acids?
The scientists named this taste "oleogustus." とあるので A。
Q3. In this passage, "unpleasant" means ...
un-(否定)+pleasant(心地よい)で「不快な・いやな」。直前の it was not a nice taste の言い換えなので C。
Scientists widely accept five basic tastes. These are sweet, salty, sour, bitter and umami. Some researchers believe fat could be the sixth.
Fat itself is a large molecule, but when it is broken down, it produces fatty acids, which may be detected by the tongue. In 2005, a French team found that mice without a protein called CD36 lost their preference for fatty food.
Then, in 2015, researchers at Purdue University asked people to sort different taste solutions into groups. Fatty acids formed a separate group from sweet, sour, salty and bitter, so the team named this taste "oleogustus." Surprisingly, it tasted unpleasant on its own. Fried food is delicious partly because of its smell and texture.
117 words ・ CEFR B1
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科学者たちは5つの基本味を広く認めています。それは甘味・塩味・酸味・苦味・うま味です。脂肪が6つ目になりうると考える研究者もいます。
脂肪そのものは大きな分子ですが、分解されると脂肪酸ができ、それが舌で感知されるのかもしれません。2005年、フランスのチームは、CD36というたんぱく質をもたないマウスは、脂っこいエサを好まなくなることを発見しました。
そして2015年、パデュー大学の研究者たちは、人々にいろいろな味の溶液をグループ分けしてもらいました。脂肪酸は甘味・酸味・塩味・苦味とは別のグループになったので、チームはこの味を「オレオガスタス」と名付けました。意外なことに、それは単独では不快な味でした。揚げ物がおいしいのは、香りや食感のおかげでもあるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the French team find in 2005?
mice without a protein called CD36 lost their preference for fatty food とあるので A。
Q2. How did the Purdue researchers study the taste of fat?
asked people to sort different taste solutions into groups とあるので D。
Q3. What can we infer from the last two sentences?
脂肪酸の味は単独では不快で、揚げ物のおいしさには香りと食感も関わる、とあるので B。
Sweet, salty, sour, bitter and umami are widely recognized as basic tastes, but researchers have long asked whether fat deserves a place on the list. To qualify, a taste generally needs a specific chemical stimulus, receptors that detect it, a nerve pathway to the brain, and a perceptual quality distinct from other tastes. Because whole fat molecules are large, attention has focused on fatty acids released when fat is broken down.
In 2005, a French team reported that mice lacking the protein CD36 lost their preference for fat and showed reduced digestive responses to it. In 2015, a Purdue University group asked participants to sort taste solutions by similarity while minimizing other cues such as smell. Medium- and long-chain fatty acids formed a cluster separate from the other tastes, and the team coined the term "oleogustus."
Paradoxically, this taste is unpleasant on its own; the appeal of fatty food seems to come largely from aroma, creamy texture and satiety. The study also had few participants, smell and touch cues are hard to remove completely, and researchers still debate whether fat taste is truly independent. So scientists disagree about whether fat counts as a sixth basic taste.
196 words ・ CEFR B2
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甘味、塩味、酸味、苦味、うま味は基本味として広く認められていますが、研究者たちは長い間、脂肪がこのリストに加わるに値するかどうかを問い続けてきました。基本味と認められるには、一般に、特定の化学的な刺激、それを感知する受容体、脳への神経経路、そしてほかの味とは異なる知覚上の性質が必要です。脂肪の分子全体は大きいため、注目は脂肪が分解されたときにできる脂肪酸に集まってきました。
2005年、フランスのチームは、CD36というたんぱく質をもたないマウスは、脂肪を好む傾向がなくなり、それに対する消化の反応も小さいと報告しました。2015年、パデュー大学のグループは、においなどほかの手がかりをできるだけ減らしたうえで、参加者に味の溶液を似ているもの同士で分類してもらいました。中鎖・長鎖の脂肪酸はほかの味とは別のまとまりを作り、チームは「オレオガスタス」という言葉を作りました。逆説的なことに、この味は単独では不快です。
脂っこい食べ物の魅力は、主に香り、クリーミーな食感、満腹感から来ているようです。また、この研究は参加者が少なく、においや触覚の手がかりを完全に取り除くのは難しく、脂肪の味が本当にほかの味から独立しているかも、まだ議論が続いています。そのため、脂肪を6つ目の基本味と認めるかどうかについて、科学者の意見は分かれています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main topic of the passage?
脂肪が6つ目の基本味に値するかどうかと、その証拠・限界を論じているので D。
Q2. Which of the following is NOT listed as a requirement for a basic taste?
条件は刺激・受容体・神経経路・ほかと異なる知覚の4つで、「おいしいこと」は含まれない。実際オレオガスタスは不快な味なので C。
Q3. Why does the writer use the word "Paradoxically"?
paradoxically は「逆説的に」。脂っこい料理は魅力的なのに脂肪酸の味そのものは不快、という矛盾を示しているので B。
重要単語
- fatty acidC1名詞(句)脂肪酸Fatty acids are released when fat is broken down.
omega-3 fatty acids(オメガ3脂肪酸)のように栄養の話でよく出る。 - basic tasteB2名詞(句)基本味There are five widely accepted basic tastes.
primary taste とも言う。sweet / salty / sour / bitter / umami の5つ。 - textureB1名詞食感Fat gives food a creamy texture.
creamy / crunchy / chewy など食感の形容詞とセットで覚えると便利。 - unpleasantB1形容詞不快なPure fatty acids have an unpleasant taste.
un-(否定)+pleasant。反意語の接頭辞 un- は語彙問題の定番。 - debateB2名詞議論The sixth taste is still under debate.
under debate「議論中で」。動詞としても使い、debate whether ~「~かどうか議論する」。 - coinC1動詞(新語を)作り出すThe researchers coined the term "oleogustus."
名詞は「硬貨」だが、動詞 coin a term / coin a word で「新語を作る」。難関大で狙われる多義語。
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「脂肪の味」が6つ目の基本味かもしれない、という研究がある。脂肪酸だけを味わうと、甘い・しょっぱいとは別の独特の味があり、研究者は「オレオガスタス」と命名。でもその味単体は、むしろイヤな味らしい。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Running, Craig & Mattes (2015) Oleogustus: The Unique Taste of Fat, Chemical Sensesdoi.org
- Keast & Costanzo (2015) Is fat the sixth taste primary? Evidence and implications, Flavourdoi.org
- Laugerette et al. (2005) CD36 involvement in orosensory detection of dietary lipids, spontaneous fat preference, and digestive secretions, Journal of Clinical Investigationdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













