「デザートは別腹」は言い訳じゃなかった。満腹でも“ちがう味”なら食べられる「感覚特異性満腹」

読む前に予想してみよう!
満腹になると、どんな食べ物もおいしく感じなくなる
食べ続けた食べ物の魅力は大きく下がるが、味や見た目のちがう食べ物の魅力はあまり下がらない。
- 対象
- 成人の参加者
- 規模
- 数十人規模の実験が複数+総説
- 研究の種類
- 実験研究・レビュー
- 確かさ
- ★★★★☆
同じ食べ物を食べ続けると「その味」への魅力だけが下がり、ちがう味の食べ物はまだおいしく感じる。これが「別腹」の正体のひとつ。ただし胃袋が別にあるわけではない。
ひとことで言うとおなかいっぱいでも、ちがう味ならまだ食べたくなるのは脳の仕組み!
焼き肉を食べ放題でお腹いっぱい。「もう無理……」と言ったその5分後、アイスやケーキが運ばれてくると、なぜかペロリ。
日本ではこれを「別腹」と呼びます。言い訳っぽく聞こえますが、実は栄養学や心理学でちゃんと研究されている現象です。その名も感覚特異性満腹(かんかくとくいせいまんぷく)。
01食べ続けると「その味」だけに飽きる
つまり、満腹感は「お腹全体のメーター」がひとつあるだけではなく、味・におい・見た目・食感ごとに"飽き"がたまっていくしくみがある、ということです。
02「別腹」はこうして生まれる
お肉やごはんをたくさん食べると、しょっぱい・脂っこい味への魅力は下がりやすくなります。でも、甘い・冷たい・なめらかなデザートは、まだ「飽きていない」ことが多いのです。だから脳が「それなら食べたい!」と感じやすくなります。
同じ年の別の研究では、ヨーグルトを味・色・食感のちがう3種類で出したり、サンドイッチを具のちがう4種類で出したりすると、1種類だけのときよりたくさん食べられることも確かめられました。

レストランのコース料理が、前菜・スープ・メイン・デザートと、少しずつ味のちがう皿を順番に出すのも、この性質をうまく生かした形だと考えられます。ひとつの味に飽きる前に次の味が来るので、最後まで「おいしい」と感じながら食べ進められるのです。
03胃袋が別にあるわけではない
ここで大事な注意点。「別腹」といっても、胃袋がもうひとつあるわけではありません。食べた分はちゃんと同じ胃に入り、エネルギーとしてカウントされます。
感覚特異性満腹は、もともといろいろな食べ物から、いろいろな栄養をとるために役立つしくみだったと考えられています。ひとつの食べ物ばかり食べ続けないように、「飽き」がブレーキをかけてくれるのです。
ところが、何でもすぐ手に入る現代では、このしくみが食べすぎの原因にもなります。2001年の総説では、食事の種類が多いほど食べる量が増えやすく、体重の増加とも関係しうることが整理されています。食べ放題やビュッフェで、ついつい食べすぎてしまうのは、このためかもしれません。
04まとめ
「デザートは別腹」の正体のひとつは、食べた味にだけ飽きる「感覚特異性満腹」でした。言い訳ではなく、体にそなわった本物のしくみです。
ただし、カロリーは同じ胃にしっかり入ります。別腹の存在を知ったうえで、品数や順番を工夫して上手につきあっていきましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPeople talk about a "separate stomach" for dessert.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
You are full after a big dinner, but you can still eat cake. In Japan, people call this "betsubara," a second stomach for dessert.
Scientists say this feeling is real, but we do not have a second stomach. When you eat one food again and again, you get tired of that taste only. Other tastes still seem good. So after salty meat and rice, a sweet, cold dessert can still look delicious.
72 words ・ CEFR A2
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たくさん夕食を食べてお腹いっぱいなのに、まだケーキは食べられる。日本ではこれを「別腹」、つまりデザート用のもうひとつの胃と呼びます。
科学者たちは、この感覚は本物だと言いますが、私たちにもうひとつの胃があるわけではありません。ひとつの食べ物を何度も食べると、その味にだけ飽きるのです。ほかの味はまだおいしそうに思えます。だから、しょっぱい肉やごはんの後でも、甘くて冷たいデザートはまだおいしそうに見えるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
満腹でもケーキが食べられる「別腹」の理由を説明しているので B。
Q2. According to the passage, what happens when you eat one food again and again?
you get tired of that taste only とあるので D。ほかの味はまだおいしく感じる。
Q3. In this passage, "get tired of" a taste means ...
get tired of ~ は「~に飽きる」。その味をあまり楽しめなくなることなので C。
People talk about a "separate stomach" for dessert. Research suggests there is some truth in this. In 1981, Barbara Rolls and her team at Oxford University asked people to rate how pleasant several foods seemed.
Then the participants ate as much as they wanted of just one food and rated all the foods again. The food they had eaten became much less pleasant, but the other foods did not change much. This effect is called sensory-specific satiety. In another study that year, people ate more when they were given yogurt in three different flavors, colors and textures. However, dessert does not go into a different stomach, so its calories still count.
111 words ・ CEFR B1
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デザートには「別の胃」がある、という話があります。研究によると、これにはある程度の真実があるようです。1981年、オックスフォード大学のバーバラ・ロールズさんたちのチームは、人々にいくつかの食べ物がどれくらいおいしそうに思えるかを評価してもらいました。
次に参加者は、1種類の食べ物だけを好きなだけ食べ、もう一度すべての食べ物を評価しました。食べた食べ物の魅力は大きく下がりましたが、ほかの食べ物はあまり変わりませんでした。この効果は感覚特異性満腹と呼ばれます。同じ年の別の研究では、味・色・食感のちがう3種類のヨーグルトを出されると、人々はより多く食べました。ただし、デザートが別の胃に入るわけではないので、そのカロリーはしっかり数に入ります。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the participants in Rolls's 1981 study do?
食べ物を評価 → 1種類だけ食べる → もう一度評価、という手順が書かれているので C。
Q2. What happened to the foods the participants had NOT eaten?
the other foods did not change much とあるので B。大きく下がったのは食べた食べ物のほう。
Q3. What does the writer mean by "its calories still count"?
別の胃に入るわけではないので、デザートのカロリーも摂取量に加わる、という意味なので D。
The Japanese idea of a "separate stomach" for dessert has a scientific counterpart: sensory-specific satiety. In a classic 1981 experiment at Oxford University, Barbara Rolls and colleagues had participants rate the pleasantness of several foods, eat one of them to fullness, and then rate all the foods again.
The pleasantness of the eaten food declined sharply, while ratings for uneaten foods changed relatively little. When an unexpected second course was offered, participants ate more if it differed from the first. A related study found that offering yogurt in three varieties, or sandwiches with four different fillings, increased intake.
Researchers believe this mechanism originally encouraged humans to consume a range of foods and therefore a range of nutrients. In modern environments, however, it may promote overeating; a 2001 review linked greater dietary variety to higher energy intake and possibly weight gain. Some caution is needed. The classic studies were short laboratory experiments that did not directly measure long-term body weight, and observational data on variety can be confounded by personal preferences and food environments. Also, the stomach itself is not divided, so dessert calories count fully.
185 words ・ CEFR B2
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デザートには「別腹」があるという日本の考え方には、科学的な対応物があります。それが感覚特異性満腹です。1981年にオックスフォード大学で行われた古典的な実験で、バーバラ・ロールズさんらは、参加者にいくつかの食べ物の快さを評価してもらい、そのうちの1つを満腹になるまで食べてもらってから、もう一度すべての食べ物を評価させました。
食べた食べ物の快さは大きく下がりましたが、食べていない食べ物の評価は比較的わずかしか変わりませんでした。予想外の2皿目が出されると、参加者はそれが1皿目とちがう場合により多く食べました。関連する研究では、ヨーグルトを3種類にしたり、具のちがう4種類のサンドイッチを出したりすると、摂取量が増えることがわかりました。研究者たちは、この仕組みはもともと、人間にさまざまな食べ物、ひいてはさまざまな栄養をとらせるためのものだったと考えています。
しかし現代の環境では、それが食べすぎを招くかもしれません。2001年の総説は、食事の種類の多さを、エネルギー摂取量の増加や体重増加の可能性と結びつけました。ただし注意も必要です。古典的な研究は短期間の実験室での実験で、長期的な体重を直接測ってはいません。また、食事の多様性に関する観察データは、個人の好みや食環境によって交絡されうるのです。さらに、胃そのものが分かれているわけではないので、デザートのカロリーはしっかり加算されます。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement best summarizes the passage?
食べた食べ物にだけ飽きる仕組み(感覚特異性満腹)が別腹を説明し、現代では食べすぎにもつながりうる、という全体の流れなので D。
Q2. According to the passage, what was the original benefit of sensory-specific satiety?
this mechanism originally encouraged humans to consume a range of foods and therefore a range of nutrients とあるので C。
Q3. Why does the writer say "some caution is needed"?
short laboratory experiments that did not directly measure long-term body weight と研究の限界が示されているので B。
重要単語
- satietyC1名詞満腹(感)Protein gives a strong feeling of satiety.
発音は /səˈtaɪəti/(サタイエティ)。satisfy(満足させる)と同語源。sensory-specific satiety は「感覚特異性満腹」。 - varietyB1名詞多様さ、種類の多さA buffet offers a wide variety of dishes.
a variety of ~「さまざまな~」は入試最頻出。形容詞は various。 - pleasantnessB2名詞快さ、心地よさThe pleasantness of the food dropped as I ate.
pleasant(心地よい)+-ness。please(喜ばせる)と同じ仲間。 - dessertA2名詞デザートThere is always room for dessert.
desert(砂漠)とつづりに注意。dessert は s が2つ、アクセントは後ろ(ディザート)。 - appetiteB1名詞食欲Smelling bread can boost your appetite.
lose one's appetite「食欲をなくす」。比喩で an appetite for knowledge(知識欲)とも言える。 - intakeB2名詞摂取(量)More variety increased their food intake.
take in(取り込む)が名詞化。calorie intake / salt intake のように栄養の文脈で頻出。
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「デザートは別腹」、実はちゃんとした研究があった。同じ物を食べ続けると「その味」の魅力だけが下がり、ちがう味はまだおいしく感じる「感覚特異性満腹」。食べ放題で食べすぎるのも、このせいかも。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










