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納豆のネバネバの正体は「うま味成分の鎖」。“動く遺伝子”で突然ネバらなくなることも

納豆のネバネバの正体は「うま味成分の鎖」。“動く遺伝子”で突然ネバらなくなることも

読む前に予想してみよう!

納豆のネバネバの主成分は、大豆に最初から含まれている成分だ

研究カード(どんな研究?)
対象
納豆菌(細菌)・ワルファリン服用患者
規模
ゲノム解析・菌の実験+10人の臨床試験
研究の種類
基礎研究+小規模臨床試験
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

納豆の糸の主成分は、うま味成分グルタミン酸が長くつながったポリグルタミン酸。納豆菌の中で「動く遺伝子」が飛び移ると、ネバネバを作れなくなることもわかっている。

ひとことで言うと納豆の糸は、うま味のつぶが長~くつながったひもだった!

もくじ
  1. ネバネバは「うま味のつぶ」がつながったひも
  2. 納豆菌は「枯草菌」の仲間
  3. "動く遺伝子"でネバらなくなる
  4. まとめ

納豆をかき混ぜると、どこまでも伸びる白い糸。好きな人にはたまらない、苦手な人には最大の難関。

このネバネバ、いったい何でできているのでしょうか。実は、その正体はうま味成分の「グルタミン酸」がずらっとつながった鎖です。

さらにおもしろいことに、納豆菌の中では遺伝子の一部が"引っ越し"をして、突然ネバネバを作れなくなることがあるのもわかってきました。

01ネバネバは「うま味のつぶ」がつながったひも

納豆の糸の主成分は、ポリγ-グルタミン酸(γ-PGA)という物質です。

グルタミン酸は、昆布だしのうま味のもとになるアミノ酸。それが何千個もつながった長い鎖になったのがポリグルタミン酸です。ひものように長い分子がからみ合い、水を抱え込むので、あのよく伸びる粘りが生まれます。糸には、果糖がつながったフラクタンという成分も混ざっています。

ポイントは、この鎖は大豆に最初から入っているものではないこと。発酵の間に、納豆菌が大豆の成分を材料にして作り出したものなのです。

うま味成分グルタミン酸が長~くつながった鎖が、からみ合ってネバネバの糸になる
うま味成分グルタミン酸が長~くつながった鎖が、からみ合ってネバネバの糸になる

02納豆菌は「枯草菌」の仲間

納豆菌は、土や枯れ草などにすむ枯草菌(こそうきん)という細菌の仲間です。2010年には、日本の研究チームが納豆菌の全ゲノム(すべての遺伝情報)を読み取ることに成功しました。

その結果、納豆菌は実験室でよく使われる枯草菌とよく似ている一方で、ポリグルタミン酸をたくさん作るのに必要な遺伝子の特徴を、野生の枯草菌と同じように持っていることがわかりました。実験室の枯草菌はこの能力を失っていて、ネバネバの納豆は作れないのです。

03"動く遺伝子"でネバらなくなる

つまり、納豆菌のネバネバ力は、遺伝子のちょっとした"事故"で失われることがあるのです。納豆メーカーがおいしい納豆を作り続けるには、菌の性質を安定に保つ工夫が欠かせません。

ちなみにポリグルタミン酸は、水をよく抱え込む性質などから、化粧品や水の浄化などへの応用も研究されています。

04まとめ

納豆のネバネバは、納豆菌がうま味成分グルタミン酸をつなげて作った長い鎖でした。そして、その力は"動く遺伝子"の引っ越しひとつで失われることもある、意外と繊細なものだったのです。

次に納豆をかき混ぜるときは、何千個ものうま味のつぶがつながった糸を、ちょっと尊敬のまなざしで眺めてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen you stir natto, it produces long, stretchy threads. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When you stir natto, it produces long, stretchy threads. These threads are made mainly of poly-gamma-glutamic acid. It is a chain of thousands of units of glutamic acid, the substance behind the umami taste of kombu.

The long chains tangle together and hold water, which creates the sticky texture. The chains are not in the soybeans at the start. Natto bacteria produce them during fermentation. In 2010, Japanese researchers read the entire genome of natto bacteria.

In 2011, another Japanese team found that a short "jumping" piece of DNA sometimes moves into a gene called swrA. When this happens, the bacteria can no longer make the sticky chains. So natto's stickiness depends on stable bacterial genes.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

納豆をかき混ぜると、長くよく伸びる糸ができます。この糸は主にポリγ-グルタミン酸でできています。これは、昆布のうま味のもとであるグルタミン酸が何千個もつながった鎖です。

長い鎖がからみ合って水を抱え込み、それがネバネバの食感を生みます。この鎖は、はじめから大豆に入っているわけではありません。納豆菌が発酵の間に作るのです。2010年、日本の研究者たちは納豆菌の全ゲノムを読み取りました。

2011年には、別の日本のチームが、短い「飛び移る」DNAの断片が、ときどきswrAという遺伝子の中に移動することを発見しました。これが起きると、菌はもうネバネバの鎖を作れなくなります。つまり、納豆のネバネバは、菌の遺伝子が安定していることにかかっているのです。

4択リーディングクイズ

Q1. Why are natto's threads so sticky?

Q2. What happens when the "jumping" piece of DNA moves into the swrA gene?

Q3. What can we infer about natto makers?

重要単語

  • fermentB2
    動詞発酵する・させるSoybeans are fermented to make natto. 名詞は fermentation。比喩で「(騒ぎを)かもす」の意味もある。
  • stickyB1
    形容詞ねばねばしたNatto has sticky threads. stick(くっつく)+-y。比喩で a sticky situation「やっかいな状況」。
  • polymerC1
    名詞高分子、重合体A polymer is a long chain of small units. poly-(多くの)+-mer(部分)。プラスチックやDNAも polymer の一種。
  • bacteriumB2
    名詞細菌(複数形 bacteria)One bacterium can divide very quickly. 単数 bacterium / 複数 bacteria。datum / data と同じラテン語由来の変化。
  • mutationB2
    名詞突然変異A mutation changed the bacteria's ability. mutate(変異する)の名詞形。ここでは「動く遺伝子」が入り込むことで起きた変化。
  • synthesizeC1
    動詞合成するBacteria synthesize the polymer during fermentation. 名詞は synthesis。photosynthesis(光合成)も同じ仲間。
納豆のネバネバの正体は、うま味成分グルタミン酸が何千個もつながった「ポリグルタミン酸」という鎖らしい。しかも納豆菌の中で“動く遺伝子”がピョンと飛び移ると、突然ネバネバを作れなくなることがあるんだとか。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Ogunleye et al. (2015) Poly-γ-glutamic acid: production, properties and applications, Microbiologydoi.org
  2. Nishito et al. (2010) Whole genome assembly of a natto production strain Bacillus subtilis natto from very short read data, BMC Genomicsdoi.org
  3. Kimura et al. (2011) Loss of poly-γ-glutamic Acid Synthesis of Bacillus subtilis (natto) Due to IS4Bsu1 Translocation to swrA Gene, Food Science and Technology Researchdoi.org
  4. Nakajima et al. (2021) First Clinical Trial of a Newly Developed, Low Menaquinone-7, Fermented Soybean Natto in Warfarin-Dependent Patients, Journal of Medicinal Fooddoi.org