世界最古の木は、1964年に切られてから最古だと分かった
思わず唸るNo.085

世界最古の木は、1964年に切られてから最古だと分かった

年輪は4862本あった。

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もくじ
  1. 地理学者カリーは、森林局の許可を得てプロメテウスを切った
  2. 年輪は4862本なのに、年齢は約4900歳とされている
  3. 今いちばん長生きの木は約5060歳で、もっと古い木がまだあるかもしれない
  4. この松が長生きできるのは、乾いた山に住み、一部が枯れても全体が死なないから
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

1964年の夏、アメリカ・ネバダ州のホイーラー山。1本の古い松の木が、研究のために切りたおされました。

切ったあと、幹の断面の年輪を数えると、4862本ありました。この木は、それまで知られていたどの木よりも古い、当時の世界最古の木だったのです。

地元の登山者は、この木を「プロメテウス」と呼んでいました。今、その場所には切り株だけが残っています。

この記事では、まず、プロメテウスがなぜ切られたのか、何歳だったのかを紹介します。次に、プロメテウスより古い木が今も生きていることを紹介します。最後に、年をとっても弱らない松の研究と、何千年も続く「クローン」の木を紹介します。

01地理学者カリーは、森林局の許可を得てプロメテウスを切った

アメリカ国立公園局によると、木を切ったのは地理学者のドナルド・R・カリー(Donald R. Currey)です。カリーは、ホイーラー山に残る氷河の地形を調べていました。

古い木の年輪の幅からは、昔の気候がよかった年と悪かった年が分かります。カリーは、昔の気候の手がかりとしても、この山の古い松を調べていました。

カリーは、アメリカ森林局から、幹に細い筒をさしこんで、年輪の並んだ細い棒(芯)を抜き取る許可を得ていました。さらに、木を切りたおす許可も得ていました。

なぜ芯を抜くだけでなく、木を切ったのかは、記録ではっきりしません。国立公園局のページは、いくつかの説を並べています。

  • 芯を抜く道具(成長錐)が、木の中で折れてしまった。
  • 大きな木の芯の取り方を知らなかった。または、道具が短すぎた。
  • 年輪をよく調べるには、幹の断面全体が必要だと考えた。

どれが本当かは、分かっていません。

02年輪は4862本なのに、年齢は約4900歳とされている

切った幹の年輪は、4862本でした。ところが、国立公園局は、この木の年齢を約4900歳としています。年輪の数と年齢が、ずれているのです。

ずれの理由は、木が育った場所のきびしい環境です。高い山の乾いた岩場では、条件の悪い年には年輪ができないことがあります。年輪ができなかった年のぶんを足して、約4900歳と見積もられました。

当時、2番目に古いとされたのは、カリフォルニア州ホワイト山地の木です。その木は4847歳でした。プロメテウスは、それより古かったのです。カリーは翌1965年、学術誌に「約4900歳の木」として報告しました。

プロメテウスの断面は、今、グレートベースン国立公園のビジターセンターに展示されています。訪れた人は、その年輪を自分で数えることができます。

年輪は、木が生きてきた年月の記録になる。
年輪は、木が生きてきた年月の記録になる。

03今いちばん長生きの木は約5060歳で、もっと古い木がまだあるかもしれない

プロメテウスは、今も「最古」なのでしょうか。

国立公園局によると、2012年、ホワイト山地の別の木が5065歳と測られました。アメリカ森林局の資料は、ホワイト山地の生きている木で5062歳と書いています。2つの資料で数字は少し違いますが、約5060歳の木が今も生きているのです。

この木とプロメテウスの仲間は、グレートベースン・ブリッスルコーンパインという松です。アメリカ森林局の資料は、この松を、クローン(あとで説明します)で増える植物をのぞけば、最も長生きする種類の植物だとしています。

国立公園局は、まだ年齢を測っていない、もっと古い木があるかもしれないとも書いています。

04この松が長生きできるのは、乾いた山に住み、一部が枯れても全体が死なないから

この松は、なぜこれほど長生きなのでしょう。アメリカ森林局の資料には、いくつかの手がかりがあります。

まず、高くて乾いた山は、虫や、木をくさらせる菌にとって住みにくい場所です。そのため、病気がゆっくりしか進みません。

また、この松は、幹の多くが枯れた部分になっています。生きている部分は、細い帯のように残るだけです。生きた部分が少ないので、呼吸の量や、体から出ていく水の量が少なくてすむと考えられています。

国立公園局は、根のつくりも紹介しています。根の1本1本は、その真上にある幹や枝の一部だけを養っています。そのため、1本の根が枯れても、木全体がいっぺんに死なずにすむのです。

そして2001年、この松が「年をとって弱っていくのか」を確かめた研究があります。結果は、下の深掘り講義で詳しく見ましょう。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

4713歳までの松を調べても、年をとって弱ったしるしは見つからなかった

2001年、ランナーとコナー(R. M. Lanner & K. F. Connor)は、23歳から4713歳までのブリッスルコーンパインを比べました。年をとって体の働きが落ちるなら、古い木ほど、若い木よりどこかの働きがおとっているはずです。2人は、古い木と若い木の違いを探しました。

調べたのは、次のようなものです。

  • 水や養分を運ぶ細胞の太さ
  • 毎年の枝ののび方
  • 花粉や種、苗の育ち方
  • 遺伝子の変化(突然変異)の多さ

突然変異を調べたのは、「年をとるほど遺伝子の変化がたまる」という考えを確かめるためです。

結果は、どの項目でも、木の年齢との関係は見つかりませんでした。古い木ほど働きが落ちている、ということはなかったのです。2人は、この木には老化という考えが当てはまらない、と結論しました。

アメリカ森林局の資料によると、木の種が芽を出す割合を調べた別の調査もあります。その調査では、約4713歳の「メトシェラ」と呼ばれる木の種が、最もよく芽を出しました。メトシェラの種は、平均85%が芽を出したのです。木の年齢と、種が芽を出す割合の間には、関係が見られませんでした。

ただし、これは「死なない」という意味ではありません。森林局の資料によると、高い山のこの松も、多くは最後に死んでいきます。根がくさったり、土が流されて根がむき出しになったりするためです。

根でつながった株を1本と数えると、スウェーデンのトウヒは9550年前から生きているかもしれない

「最古の木」は、何を1本と数えるかで答えが変わります。

スウェーデンの山地には、低くはうように生きるトウヒがあります。枝が地面につくと、そこから根が出て、新しい幹が立ちます。こうして増えた株は、どれも同じ遺伝子をもつクローンです。

2011年、エーベリとクルマン(L. Öberg & L. Kullman)は、こうしたトウヒの株の下の土から、昔の木片を掘り出しました。そして、木片の年代を測りました。「オールド・チッコ」と名づけられた株の下からは、9550年前の木片が見つかりました。今、この株に立っている幹は、1930年代の終わりからの温暖化でのびたものです。

こうしたトウヒは、長い間、雪の下にかくれるほど低い姿で生きてきました。冬には大きな雪の吹きだまりが株をおおい、風や凍えから守ります。論文は、気候がきびしくなるにつれて、トウヒが低くはう姿のまま守られてきたと考えています。

ただし、論文自身が注意を書いています。年代を測った木片は、生きている部分とつながっていませんでした。木片が同じ株の一部だという考えは、いくつもの状況証拠によるものです。論文の要旨も、生きている株が「場合によっては」9500年前ごろから続いているかもしれない、というひかえめな書き方です。

ユタ州の林「パンド」は、根でつながった1つの生き物だった

さらに大きなクローンもあります。アメリカ・ユタ州のアメリカヤマナラシの群れ「パンド」です。パンドはラテン語で「私は広がる」という意味です。

2008年、研究チームは、林の中の209本の幹の遺伝子を調べました。その結果、見た目から考えられていた範囲に、同じ遺伝子をもつ1つの個体が広がっていると確かめられました。広さは約43.6ヘクタールです。森のように見える林が、根でつながった1つの生き物だったのです。その範囲のすぐ外では、遺伝子の違う株も40株見つかりました。

ところが、2017年の研究によると、パンドは急に衰えています。大きな木が枯れても、若い芽が動物に食べられて育たないからです。柵で囲った場所では、若い芽がよく育ちました。これほど大きな生き物でも、周りの環境が変われば、危うくなるのです。

05まとめ

1964年、ネバダ州で研究のために切りたおされた松「プロメテウス」は、年輪4862本、約4900歳でした。当時の世界最古の木です。今、最も長生きの記録をもつのは、カリフォルニア州で生きている約5060歳の仲間の木です。

この松は、4700歳をこえても、若い木と同じように芽を出す種を作ります。グレートベースン国立公園のビジターセンターでは、プロメテウスの断面の年輪を、自分の目で数えることができます。

人に話すなら、こう言おう

1964年にアメリカで研究者が切った木が、年輪を数えたら4862本もあって、当時世界一古い木だったんだって。しかもその木、年をとっても弱らないらしいよ。
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英語で読む

The Oldest Tree Was Cut Down

CEFR A2209 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In the summer of 1964, a scientist cut down an old pine tree on a mountain in Nevada.1964年の夏、ある科学者が、ネバダ州の山で1本の古い松の木を切りたおしました。 Local climbers called the tree Prometheus.地元の登山者たちは、その木をプロメテウスと呼んでいました。 After it was cut, people counted its rings.切られたあと、人々はその年輪を数えました。 There were 4,862 of them.年輪は4862本ありました。

On a dry, cold mountain, a tree does not always make a ring every year.乾いた寒い山では、木が毎年必ず年輪を作るとはかぎりません。 So the tree was probably about 4,900 years old.だから、その木はおそらく約4900歳でした。 At that time, it was the oldest known tree in the world.当時、それは知られている中で世界で最も古い木でした。

Why did the scientist cut it down?その科学者は、なぜ木を切ったのでしょうか。 He had permission, but the records do not give one clear reason.彼は許可を得ていましたが、記録ははっきりした理由を一つにしぼっていません。 Some say his tool broke inside the tree.道具が木の中で折れた、と言う人もいます。 Others say he wanted to see all the rings.年輪を全部見たかったのだ、と言う人もいます。 Today, visitors can count the rings themselves at the national park.今では、訪れた人がその国立公園で、自分で年輪を数えることができます。

An older tree of the same kind is still alive in California.同じ種類の、もっと古い木が、カリフォルニア州で今も生きています。 It was found to be about 5,060 years old.その木は、約5060歳と測られました。 These pines grow very slowly, only about 2.5 centimeters wider in 100 years.この松はとてもゆっくり育ち、100年でたった約2.5センチしか太くなりません。

They also do not seem to get weak with age.また、年をとっても弱くならないようです。 In a study, scientists compared trees from 23 to 4,713 years old.ある研究で、科学者たちは23歳から4713歳までの木を比べました。 The old trees made seeds and grew new shoots just as well as the young ones.古い木も、若い木と同じように種を作り、新しい枝をのばしていました。 So the next time you see an old tree, remember that it may still be young inside.だから今度古い木を見たら、その木は中身はまだ若いのかもしれない、と思い出してください。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How many rings did Prometheus have?

    プロメテウスには何本の年輪がありましたか。

  3. Q3Why is the tree's age more than the number of its rings?

    その木の年齢が年輪の数より多いのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 3, the word "permission" is closest in meaning to ...

    第3段落の "permission" に最も近い意味はどれですか。

  5. Q5Which is true about these old pine trees?

    これらの古い松の木について、正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • pine名詞
    松

    There is a tall pine tree in the park.

    公園に背の高い松の木がある。

    💡 pineapple(パイナップル)は、松ぼっくりに形が似ていることから。

  • ring名詞
    輪、(木の)年輪

    You can see the rings of the tree in the cut log.

    切った丸太で木の年輪が見える。

    💡 tree ring で「年輪」。指輪や電話の「鳴る」も同じつづり。

  • count動詞
    数える

    Let's count the stars in the sky.

    空の星を数えよう。

    💡 count on ~ は「~をあてにする」。

  • probably副詞
    おそらく

    He will probably come late.

    彼はおそらく遅れて来るだろう。

    💡 maybe より確かさが高い。

  • permission名詞
    許可

    You need permission to enter this room.

    この部屋に入るには許可がいる。

    💡 動詞は permit(許可する)。ask for permission で「許可を求める」。

  • visitor名詞
    訪問者、来場者

    The museum had many visitors last Sunday.

    先週の日曜、その博物館にはたくさんの来場者がいた。

    💡 visit(訪れる)+ -or(人)。

  • compare動詞
    比べる

    Compare these two pictures carefully.

    この2枚の絵を注意深く比べなさい。

    💡 compare A with B で「AとBを比べる」。

  • seed名詞
    種

    We planted some flower seeds in spring.

    私たちは春に花の種をまいた。

    💡 動詞で「種をまく」の意味もある。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 25件)。

  1. The Prometheus Story(米国国立公園局 グレートベースン国立公園)nps.gov
  2. Hike to the Wheeler Peak Bristlecone Grove(米国国立公園局)nps.gov
  3. Currey, D. R. (1965) An Ancient Bristlecone Pine Stand in Eastern Nevada, Ecology 46: 564-566doi.org
  4. Fryer, J. L. (2004) Pinus longaeva, Great Basin bristlecone pine, Fire Effects Information System(米国森林局)research.fs.usda.gov
  5. Lanner, R. M. & Connor, K. F. (2001) Does bristlecone pine senesce?, Experimental Gerontologydoi.org
  6. Öberg, L. & Kullman, L. (2011) Ancient Subalpine Clonal Spruces (Picea abies): Sources of Postglacial Vegetation History in the Swedish Scandes, ARCTIC 64(2)doi.org
  7. DeWoody, J. et al. (2008) "Pando" Lives: Molecular Genetic Evidence of a Giant Aspen Clone in Central Utah, Western North American Naturalist 68: 493-497doi.org
  8. Rogers, P. C. & Gale, J. A. (2017) Restoration of the iconic Pando aspen clone: emerging evidence of recovery, Ecosphere 8doi.org

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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