約20億年前のアフリカ・ガボンの地下では、天然の原子炉が動いていた
思わず唸るNo.278

約20億年前のアフリカ・ガボンの地下では、天然の原子炉が動いていた

20億年前の天然の原子炉は、30分動いて2時間半休んでいた。

うなり度 読む時間9分 出典6件 確認した事実31件
もくじ
  1. 1972年、フランスの工場が、ウラン235がわずかに少ないことに気づいた
  2. ウラン235が減っていたのは、地下で核分裂が起きて使われたからだった
  3. 20億年前のウランは、ウラン235の割合が今の原子力発電の燃料と同じくらいだった
  4. 原子炉は、地下水が湯気になると止まり、水がもどるとまた動いた
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

1972年6月、フランスのピエールラットにある工場で、いつもの検査が行われていました。この工場は、ウランの中のウラン235という成分を濃くする工場でした。届いたウランの成分を、毎回きちんと測っていたのです。

そのウランは、ほんの少しおかしな値を示しました。核分裂を起こしやすい「ウラン235」の割合が、0.7202%のはずなのに、0.7171%しかなかったのです。0.7202%と0.7171%の差は、わずか0.0031%です。ウランの原子10万個で比べてみます。ウラン235は約720個あるはずなのに、約717個しかなかったのです。

調べていくと、ウランはアフリカのガボンにあるオクロ鉱山から来ていました。そして、その地下で約20億年前に、ウランの核分裂が自然に続いていたことが分かりました。人がまだいない時代に、地球の地下で「天然の原子炉」が動いていたのです。

この記事では、まず小さな数字のずれがどう発見につながったかを紹介します。次に、20億年前に原子炉が自然にできた理由を説明します。最後に、その原子炉が「30分動いて2時間半休む」をくり返していたことが、どうやって分かったかを紹介します。

011972年、フランスの工場が、ウラン235がわずかに少ないことに気づいた

ウランには、重さの違う何種類かの原子があります。そのうち、ウラン235は核分裂を起こしやすい種類です。核分裂とは、原子が2つに割れて、大きなエネルギーを出すことです。今の原子力発電は、ウラン235の核分裂を使っています。

天然のウランの中のウラン235の割合は、0.7202%です。国際原子力機関(IAEA)が1975年に出した記事によると、1972年6月まで、この割合はどこで見つかったウランでも同じでした。月で見つかったわずかなウランでも、同じ割合でした。

ピエールラットの工場がこの割合を測っていたのには、理由がありました。届いたウランが本当に天然のもので、どこかの施設ですでにウラン235を使ったものではないことを、確かめるためです。そこで0.7171%という値が出ました。

IAEAの記事は、工場の人たちが注意深くなければ見落としたかもしれない、と書いています。工場の人たちは何度も確かめて、測りまちがいではないことを確認しました。試料によって割合が違うことも分かりました。ウランの産地をたどると、ガボン南東部の町フランスビルの近くにある、オクロ鉱山にたどり着きました。

02ウラン235が減っていたのは、地下で核分裂が起きて使われたからだった

1972年8月の初めには、「昔ここで連鎖反応が起きて、ウラン235が使われたのではないか」という考えが出ました。連鎖反応とは、核分裂で飛び出した中性子という粒が、次のウラン235を割り、それがまた次を割る、という反応です。原子炉の中で起きている反応です。

1972年9月25日、フランス原子力庁の長官アンドレ・ジロー(André Giraud)が、20億年前の原子炉が見つかったと発表しました。

調べるほど、証拠は増えました。IAEAの記事によると、ウラン235が少ないウランは合わせて約500トンあり、平均の割合は0.62%でした。いちばん少ない試料では、0.296%しかありませんでした。天然の値の半分以下です。

ウランのまわりには、核分裂でできる物質も残っていました。たとえば、ネオジムという金属です。天然のネオジムでは、全体の約27%を「ネオジム142」という種類が占めます。核分裂では、ネオジム142はできません。オクロのある試料では、ネオジム142は1.38%しかありませんでした。そこにあったネオジムの大部分は、核分裂でできたものだったのです。

オクロの天然原子炉は、地下のウランが濃く集まった平たい層の中で動いていた。岩のすき間の地下水が、反応を続けるのに欠かせなかった。
オクロの天然原子炉は、地下のウランが濃く集まった平たい層の中で動いていた。岩のすき間の地下水が、反応を続けるのに欠かせなかった。

0320億年前のウランは、ウラン235の割合が今の原子力発電の燃料と同じくらいだった

では、なぜ20億年前には原子炉が自然にできたのでしょう。理由は、ウラン235が時間とともに減っていくことにあります。

ウラン235も、ウラン238も、放射線を出しながら少しずつ別の物質に変わります。量が半分になるまでの時間(半減期)は、ウラン235が約7億1000万年、ウラン238が約45億1000万年です。ウラン235のほうが、ずっと速く減っていきます。

ということは、昔にさかのぼるほど、ウランの中のウラン235の割合は高くなります。2014年の論文によると、7億年前は1.3%、14億年前は2.3%、21億年前は4.0%でした。今の軽水炉(ふつうの水を使う型の原子力発電所)は、ウラン235を約3.5%に濃くした燃料を使います。20億年前の天然のウランは、それに近い濃さだったのです。

オクロでは、そこにいくつかの条件がそろいました。

  • ウランがとても濃く集まった場所があった
  • 岩のすき間や割れ目に、たくさんの水があった
  • 中性子を吸いこんで反応を止めてしまう物質が、ほとんどなかった

2014年の論文によると、原子炉が動いたのは約19億5000万年前です。1975年のIAEAの記事は約18億年前としていました。後の研究で、数字が少し変わりました。原子炉の場所(炉の区画)は、オクロ・オケロボンド地区で14か所、そこから30km離れたバンゴンベで1か所見つかっています。17か所とする研究者もいます。1つの区画は、だいたい縦横10m、厚さは最大80cmほどの平たい形でした。調べられた区画では、10万〜30万年ほど動いたと見積もられています。

04原子炉は、地下水が湯気になると止まり、水がもどるとまた動いた

20億年前の原子炉には、止める人も、温度を見張る人もいません。それなのに、反応はどうやって自然に調整されていたのでしょう。

1977年、ペトロフ(Yu. Petrov)は、地下水がブレーキの役目をしたという考えを出しました。核分裂が進んで温度が上がると、水が湯気になって出ていきます。水がないと連鎖反応は続かないので、原子炉は止まります。冷えるとまた水がしみこみ、原子炉は動き始めます。

このくり返しの時間を、2004年に測った研究者がいます。アメリカのワシントン大学(セントルイス)のA・P・メシク(A. P. Meshik)らです。メシクらは、オクロの13番目の区画から取った鉱物を調べました。熱い水の働きでできた、ウランをふくまない鉱物(アルミニウムのリン酸塩)です。

その鉱物の中には、核分裂でできたキセノンなどのガスが閉じこめられていました。その濃さは、天然の物質で見つかった中でいちばん高いものでした。キセノンには重さの違う種類がいくつかあり、その混ざり方から、原子炉の動き方が分かりました。原子炉は、約30分動いては、約2時間半止まる、というくり返しをしていたのです。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

天然の原子炉は、発見の16年前に計算で予言されていた

オクロが見つかる前から、天然の原子炉を考えた人がいました。1953年、ウェザリルとイングラムは、コンゴのウラン鉱石のキセノンを調べました。そして、この鉱石は原子炉になるまでの道のりの「25%」まで来ている、と書きました。

1956年には、アメリカのアーカンソー大学の化学者P・K・クロダ(P. K. Kuroda)が、短い論文を出しました。原子炉の理論を使って計算すると、ウラン鉱石と水がちょうどよい量あれば、連鎖反応は起こりうる。鉱石の層が数フィート(1mほど)より厚ければ、という条件つきでした。クロダは、いくつかの鉱山のウランを調べましたが、反応の跡は見つかりませんでした。その鉱山にオクロは入っていません。論文から16年後、予言どおりの場所がガボンで見つかりました。

水は、中性子をゆっくりにして、連鎖反応を続けやすくする

オクロで水が欠かせなかったのは、水が中性子の速さを落とすからです。この役目をするものを減速材と言います。軽水炉と呼ばれる今の原子力発電所も、ふつうの水を減速材に使っています。オクロは、水を減速材にした原子炉と同じしくみで動いていました。

水が減ると、中性子はゆっくりにならず、連鎖反応は続きません。熱で水が湯気になると、反応が自然に弱まる。これが、ペトロフの考えた自動のブレーキです。

キセノンの種類の混ざり方が、「動く時間」と「止まる時間」を記録していた

ここで使うキセノンの種類は、核分裂で直接できるわけではありません。まず別の物質として生まれ、それが数十分から数日かけて変わって、キセノンになります。たとえば、キセノン132のもとになるテルル132は、半分が変わるのに78.2時間かかります。キセノン134のもとになるテルル134は、0.7時間です。

もとの物質が変わる速さは、種類ごとに違います。そのため、原子炉が動く時間と止まる時間の長さによって、鉱物にたまるキセノンの種類の割合が変わります。逆に、残ったキセノンの割合から、動いていた時間と止まっていた時間を計算できるのです。

1990年、クロダは、この考えで止まっていた時間を2.5〜3時間と見積もりました。2004年のメシクらは、ウランの中よりけた違いに多くキセノンをためこんだ鉱物を使いました。そのおかげで、多くの種類のもとの物質の影響まで計算に入れられました。そして、動く時間0.5時間、止まる時間2.5時間という答えを出しました。ただし、この値は13番目の区画で測ったものです。

電気の力の強さが20億年前から変わっていないかも、オクロの跡で確かめられた

物理学には、電気の力の強さを決める「微細構造定数」という数があります。この数が長い年月の間に変わっていないかを、物理学者たちは調べ続けています。

オクロでは、サマリウム149という物質がほとんど消えていました。サマリウム149は、ある決まった速さの中性子をとてもよく吸いこみます。吸いこみやすい速さは、微細構造定数の値で変わります。もし20億年前の微細構造定数が今と違えば、サマリウム149の減り方も違ったはずです。

この方法は、シリャフテル(A. I. Shlyakhter)が指摘していました。1996年、ダムールとダイソン(Freeman Dyson)は、オクロのデータを計算し直しました。そして、オクロの時代と今の微細構造定数の違いは、1000万分の1ほどより小さいと結論しました。20億年前の地下の原子炉が、電気の力の強さがほとんど変わっていないことを示す手がかりにもなったのです。

天然の原子炉は、放射性廃棄物を地下に保管する研究にも使われている

オクロの原子炉は、今の原子炉で出る核分裂の生成物(廃棄物)とよく似た物質を作りました。それが長い間、地下に残っていました。アメリカ原子力学会は、オクロで核分裂でできた物質がどうなったかの研究が、放射性廃棄物を長く保管する場所を考えるのに役立っていると説明しています。ヨーロッパでも、オクロを「放射性廃棄物の保管場所の自然の見本」として調べる研究が行われました。

05まとめ

1972年、フランスの工場が、ウラン235の割合が0.7202%ではなく0.7171%だと気づきました。そのわずかな差をたどった先に、約20億年前のガボンの地下で動いていた天然の原子炉がありました。

20億年前のウランは、今の原子力発電の燃料に近い濃さでした。そこに地下水がしみこみ、連鎖反応が自然に始まりました。水が湯気になると止まり、冷えるとまた動く。13番目の区画には、30分動いて2時間半休むくり返しが記録されていました。原子炉はこうして、10万〜30万年ほど働いたと見積もられています。

1972年まで、どこのウランも、月で見つかったウランまで0.7202%でした。その決まった値と比べたから、ガボンのウランのわずか0.0031%の差に気づけたのです。

人に話すなら、こう言おう

アフリカのガボンの地下で、20億年前に「天然の原子炉」が動いてたんだって。しかも地下水が湯気になると止まって、冷えるとまた動く。30分動いて2時間半休む、をくり返してたらしいよ。
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英語で読む

A Nuclear Reactor Made by Nature

CEFR A2223 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In June 1972, workers at a factory in France checked some uranium.1972年6月、フランスのある工場で、働く人たちがウランを検査しました。 Uranium is a metal that people use as fuel in nuclear power plants.ウランは、原子力発電所で燃料として使われる金属です。 One kind of uranium, called uranium-235, is the part that gives the power.ウラン235と呼ばれる種類のウランが、エネルギーを生み出す部分です。

In natural uranium, uranium-235 is normally 0.7202 percent.天然のウランでは、ウラン235はふつう0.7202%です。 It was the same everywhere, even in tiny bits found on the Moon.それはどこでも同じで、月で見つかったごく少しのウランでも同じでした。 But this uranium had only 0.7171 percent.ところが、このウランには0.7171%しかありませんでした。 The difference was very small, but the workers did not ignore it.差はとても小さかったのですが、働く人たちは見過ごしませんでした。

The uranium came from the Oklo mine in Gabon, a country in Africa.そのウランは、アフリカの国ガボンにあるオクロ鉱山から来ていました。 Scientists studied the rocks there.科学者たちは、そこの岩石を調べました。 They found that about two billion years ago, a natural nuclear reactor was working under the ground.その結果、約20億年前に、天然の原子炉が地下で動いていたことが分かりました。 It had used up some of the uranium-235.その原子炉が、ウラン235の一部を使ってしまっていたのです。

How was this possible?どうしてそんなことが起きたのでしょう。 Long ago, uranium had much more uranium-235, almost as much as fuel in power plants today.昔のウランには、ウラン235がずっと多くふくまれていて、今の発電所の燃料とほとんど同じくらいでした。 Water in the rocks helped the reaction keep going.岩の中の水が、反応が続くのを助けました。

The reactor even had its own off switch.この原子炉には、自分で止まるしくみまでありました。 Scientists think that when it got hot, the water turned into steam and left, so the reactor stopped.科学者たちの考えでは、熱くなると水が湯気になって出ていき、原子炉は止まりました。 When the rocks cooled, water came back, and the reactor started again.岩が冷えると水がもどり、原子炉はまた動き始めました。 In 2004, scientists studied gas trapped in the rocks.2004年、科学者たちは岩の中に閉じこめられたガスを調べました。 It showed that the reactor worked for about 30 minutes at a time.それによって、原子炉が1回に約30分ずつ動いていたことが分かりました。 Then it rested for about two and a half hours, again and again.そして約2時間半休む、ということをくり返していたのです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How much uranium-235 did the uranium from Oklo have?

    オクロのウランには、ウラン235がどれだけありましたか。

  3. Q3Why did the reactor stop when it got hot?

    原子炉は、熱くなるとなぜ止まったのですか。

  4. Q4In paragraph 2, the word "ignore" is closest in meaning to ...

    第2段落の ignore という語に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話の内容と合うのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • nuclear形容詞
    原子核の、原子力の

    Japan has several nuclear power plants.

    日本にはいくつかの原子力発電所があります。

    💡 nuclear power で「原子力」。nucleus(核)の形容詞。

  • reactor名詞
    原子炉

    The reactor makes a lot of heat.

    原子炉はたくさんの熱を出します。

    💡 react(反応する)+ -or(〜するもの)。

  • fuel名詞
    燃料

    Cars need fuel to run.

    車が走るには燃料が必要です。

    💡 動詞で「燃料を入れる」の意味もある。

  • mine名詞
    鉱山

    He worked in a coal mine.

    彼は炭鉱で働いていました。

    💡 代名詞の mine(私のもの)と同じつづり。文の形で見分ける。

  • ignore動詞
    無視する、気にとめない

    Please do not ignore my message.

    私のメッセージを無視しないでください。

    💡 名詞 ignorance は「知らないこと、無知」。

  • natural形容詞
    自然の、天然の

    This juice has only natural sugar.

    このジュースには天然の糖分しか入っていません。

    💡 nature(自然)の形容詞。naturally は「自然に、当然」。

  • steam名詞
    湯気、水蒸気

    Steam came out of the hot pot.

    熱いなべから湯気が出ました。

    💡 steam train は「蒸気機関車」。

  • trap動詞
    閉じこめる、わなで捕らえる

    The cat was trapped in the box.

    ネコは箱の中に閉じこめられていました。

    💡 名詞では「わな」。be trapped で「閉じこめられる」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 31件)。

  1. Eklund, S. (1975) Oklo - A Nuclear Reactor 1800 Million Years Ago, IAEA Bulletin(国際原子力機関)iaea.org
  2. Davis, E. D., Gould, C. R. & Sharapov, E. I. (2014) Oklo reactors and implications for nuclear science, International Journal of Modern Physics E 23:1430007doi.org
  3. Meshik, A. P., Hohenberg, C. M. & Pravdivtseva, O. V. (2004) Record of Cycling Operation of the Natural Nuclear Reactor in the Oklo/Okelobondo Area in Gabon, Physical Review Letters 93:182302doi.org
  4. Kuroda, P. K. (1956) On the Nuclear Physical Stability of the Uranium Minerals, The Journal of Chemical Physics 25:781–782doi.org
  5. Damour, T. & Dyson, F. (1996) The Oklo bound on the time variation of the fine-structure constant revisited, Nuclear Physics B 480:37–54doi.org
  6. Oklo's Natural Fission Reactors(American Nuclear Society)wx1.ans.org

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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