キノコの仲間の1つの菌が、アメリカの森の地下に約10平方kmも広がっている
思わず唸るNo.280

キノコの仲間の1つの菌が、アメリカの森の地下に約10平方kmも広がっている

オレゴンの巨大な菌は、推定1900〜8650歳。

うなり度 読む時間8分 出典5件 確認した事実26件
もくじ
  1. 枯れた木の菌を調べると、1つの菌が965ヘクタールに広がっていた
  2. 1つの個体かどうかは、実験室で2つの菌を並べて育てると分かる
  3. 年齢の見積もりに4倍以上の幅があるのは、菌が広がる速さの見積もりが何通りもあるから
  4. 「世界最大の生き物」は、広さと重さのどちらで比べるかで変わる
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

アメリカ・オレゴン州の東部に、マルール国有林という森があります。秋になると、木の根元に茶色いキノコがかたまって生えてきます。ナラタケの仲間の、アルミラリア・オストヤエ(Armillaria ostoyae)というキノコです。

このキノコは森のあちこちに生えるので、別々の菌から出ているように見えます。ところが、木の根にいる菌の遺伝子などを調べると、ある広い範囲の菌は、どれも同じ1つの個体でした。個体とは、1匹の動物や1本の木のような、ひとまとまりの生き物のことです。その菌が地下に広がる面積は、約965ヘクタール(1ヘクタールは100m四方の広さ)。約9.65平方kmで、1辺が約3.1kmの正方形と同じ広さです。端から端までは、約3.8kmありました。

その菌は、木の根を枯らしながら、ゆっくり広がってきました。年齢は、約1900年から8650年の間と見積もられています。

この記事では、まず、森の地下に広がる菌がどうやって見つかったかを紹介します。次に、それが1つの個体だとどうやって確かめたかを説明します。最後に、「世界最大の生き物」が、何で比べるかによって変わることを紹介します。

01枯れた木の菌を調べると、1つの菌が965ヘクタールに広がっていた

アルミラリアは、木の根に入りこんで木を弱らせ、枯らす菌です。オレゴン歴史協会の『オレゴン百科事典』によると、1988年、アメリカ森林局のグレッグ・ホイップル(Greg Whipple)さんが、この森の菌の被害を調べました。森林局の職員として初めてのことでした。この森で、菌にいちばんよくやられる木は、グランドファーというモミの仲間です。

2003年、ファーガソン(B. A. Ferguson)さんたちが、調べた結果を論文にまとめました。調べた森の広さは、約1万6100ヘクタールです。チームは、最近枯れた木や、弱っている針葉樹から、112の菌のサンプルを集めました。そのうち108がアルミラリア・オストヤエでした。

次に、どのサンプルが同じ個体から来たのかを調べました。結果、アルミラリア・オストヤエの個体は5つ見つかりました。広さは、約20、95、195、260、965ヘクタールです。いちばん大きな個体の中で、いちばん離れた2つのサンプルの間は、約3810mありました。

オレゴン百科事典によると、この大きな菌は、初めは約400エーカー(約160ヘクタール)だと思われていました。遺伝子をくわしく調べるうちに、その6倍ほどの2385エーカー(約965ヘクタール)が1つの個体だと分かったのです。

地下に広がる菌は見えないが、菌にやられて枯れた木が、森の中にまだらの模様を作る。
地下に広がる菌は見えないが、菌にやられて枯れた木が、森の中にまだらの模様を作る。

021つの個体かどうかは、実験室で2つの菌を並べて育てると分かる

森のあちこちで取った菌が同じ個体かどうかは、どう決めるのでしょう。

ファーガソンさんたちは、まず、DNAの一部を調べる検査で、菌の種類を見分けました。そのうえで、同じ種類の菌どうしを、実験室で並べて育てました。この方法は「体細胞和合性(たいさいぼうわごうせい)」の試験と呼ばれます。2018年の論文の説明によると、同じ個体から来た菌どうしは、出会うとつなぎ目なく1つにつながります。違う個体どうしだと、出会った所で細胞が死んだ帯ができ、色がついた線が現れます。菌が「自分」と「他人」を見分けているのです。

この試験で同じ個体と分かったサンプルを、取った場所の地図に書きこみます。すると、1つの個体が森の中にどれだけ広がっているかが分かります。

03年齢の見積もりに4倍以上の幅があるのは、菌が広がる速さの見積もりが何通りもあるから

この菌の年齢は、直接測ることができません。そこでファーガソンさんたちは、菌が広がる速さから逆算しました。

いちばん離れたサンプルの間は約3810mです。たとえば、菌が1か所から生まれて、毎年同じくらいずつ外へ広がったと考えます。広がる速さが分かれば、今の大きさになるまでの年数を計算できます。

ところが、針葉樹の森でこの菌が広がる速さには、いくつかの見積もりがありました。チームは3つの速さを使って計算し、年齢は1900年から8650年の間だと結論しました。オレゴン百科事典によると、この菌が広がる速さは1年に約0.2〜1mです。広がる速さの見積もりが変わるだけで、年齢も大きく変わるのです。

04「世界最大の生き物」は、広さと重さのどちらで比べるかで変わる

地球科学の解説「EarthDate」は、テキサス大学の経済地質局が作っています。その解説は、何を「大きい」とするかで、最大の生き物が変わると書いています。

広さなら、オレゴンの菌が最大の候補です。重さで最大とされるのは、アメリカのユタ州にある「パンド」です。パンドは、根でつながったポプラの仲間の木(アメリカヤマナラシ)の集まりで、全体が1つの個体です。広さは約43ヘクタール、重さは約6000トンと見積もられています。オレゴンの菌は、その約20倍の広さに広がっています。

オレゴンの菌の重さについて、EarthDateはこう書いています。菌は水を多くふくむので、水まで入れればパンドと重さを競うかもしれない。ただし、生き物の重さを比べるときは、ふつう水をぬいた重さを使う、とも書いています。だから、この記事では「世界最大」ではなく「最大級」と書いています。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

キノコは菌の体のほんの一部で、本体は地下の糸

私たちが「キノコ」と呼ぶかさの部分は、菌の体のごく一部です。子孫を残すための胞子を作る部分で、子実体と呼ばれます。EarthDateは、リンゴの木が丸ごと地面にうまっていて、実だけが地面から顔を出している様子にたとえています。

菌の本体は、目に見えないほど細い糸(菌糸)です。2018年の論文は、アルミラリアは「ほとんどが、木や土の中にうまった顕微鏡でしか見えない菌糸として生きている」と書いています。アルミラリアは、それに加えて、黒いひものような太い束(根状菌糸束)を作ります。オレゴン百科事典によると、この束が土の中をのびて木の根に入りこみ、根をくさらせ、やがて木を枯らします。木を枯らすまでには20〜50年かかることもあり、木が死んだあとも菌はその木を栄養にし続けます。

ミシガンの巨大な菌は、20年以上たって調べ直すと、もっと大きく古かった

1992年に報告されたミシガンの菌を、同じチームが調べ直しました。チームは2015〜2017年に、248のサンプルを集めました。結果は2018年に発表されました。その結果、この個体は約75ヘクタールに広がっていると分かりました。年齢は少なくとも2500年、重さは約40万kg(400トン)と見積もり直されました。1992年の報告より、広く、古く、重くなったのです。最初に見つけられたときの菌も、まだ同じ場所で生きていました。

チームは、この個体の中のいろいろな場所から取った菌の遺伝子を、全部読みました。細胞が分かれてふえるとき、遺伝子にはまれに書きまちがい(突然変異)が起きます。調べた菌の間で見つかった違いは、全部で163か所でした。約9000万文字の遺伝子のうちの163か所です。

チームは、ほかの生き物で調べられた書きまちがいの起きやすさのうち、低いほうの値を使って計算しました。これだけ変化が少ないなら、細胞が分かれる回数はとても少ないはずです。1km広がる間に、細胞が分かれるのは約1000回。1m進むごとに1回ほどになります。論文は、がんの細胞が遺伝子をどんどん変えていくのと反対に、この菌は遺伝子がとても変わりにくい、と書いています。

森にとって、巨大な菌は病気でもある

アルミラリア・オストヤエは、針葉樹の根の病気を起こす菌です。ファーガソンさんたちの調べた約1万6100ヘクタールの森では、少なくとも9.5%がアルミラリアの個体におおわれていました。論文は、この結果を、森の病気をどう管理するかという話にもつなげています。巨大な菌は、記録に残る大きな生き物であると同時に、森の木を枯らす相手でもあるのです。

「1つの個体」を決めるのは、見た目ではなく遺伝子

菌の場合、「1つの体」をどう決めるかが難しい問題です。1992年の論文は、菌の体は木や土の中に糸のように広がっているので、1つの個体を見分けるのは特に難しい、と書いています。地上のキノコを見ても、どれが同じ菌から出たのかは分かりません。

そこで研究者たちは、「同じ遺伝子を持ち、実験室でつながる菌は1つの個体」と決めて調べています。2018年の論文は、いくつかの遺伝子の型と体細胞和合性の試験を組み合わせると、別の個体を同じ個体とまちがえる確率をずっと小さくできる、と書いています。オレゴンやミシガンの巨大な菌は、こうした方法の上に成り立つ記録です。

05まとめ

アメリカ・オレゴン州のマルール国有林の地下には、ナラタケの仲間アルミラリア・オストヤエの1つの個体が、約965ヘクタールに広がっています。端から端までは約3.8kmです。研究者たちは、枯れた木から集めた菌を、遺伝子と、実験室で菌どうしがつながるかどうかで調べて、1つの個体だと確かめました。

年齢は1900年から8650年と、見積もりに大きな幅があります。広さでは最大級ですが、重さではユタ州のポプラの仲間「パンド」が最大とされています。秋に森で見かける小さなキノコの下に、何kmも続く1つの菌が広がっていることもあるのです。

人に話すなら、こう言おう

アメリカのオレゴン州の森の地下に、キノコの仲間の1つの菌が約10平方kmも広がってるんだって。端から端まで3.8kmくらい。年齢は1900歳から8650歳まで、見積もりにすごく幅があるらしい。
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英語で読む

The Giant Under the Forest

CEFR A2222 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In a forest in Oregon, in the United States, brown mushrooms grow at the bottom of trees every fall.アメリカのオレゴン州のある森では、毎年秋になると、木の根元に茶色いキノコが生えます。 They look like many small, different mushrooms.たくさんの小さな、別々のキノコのように見えます。 But under the ground, many of them belong to one single living thing.けれど地面の下では、その多くが、たった1つの生き物の一部なのです。

A mushroom is only a small part of a fungus.キノコは、菌のほんの一部にすぎません。 The main body is a huge net of very thin threads in the soil and in tree roots.本体は、土や木の根の中に広がる、とても細い糸の巨大な網です。 This fungus also makes long black strings that travel from tree to tree.この菌は、木から木へとのびていく、長い黒いひもも作ります。 It slowly kills the trees and eats their wood.菌はゆっくりと木を枯らし、その木を栄養にします。

Scientists collected 112 samples of fungus from dead and sick trees.科学者たちは、枯れた木や弱った木から、112の菌のサンプルを集めました。 In the lab, they put two samples next to each other.実験室で、2つのサンプルを並べて置きました。 If the two came from the same fungus, they joined together.2つが同じ菌から来ていれば、くっついて1つになりました。 If not, a dark line appeared between them.そうでなければ、2つの間に暗い線が現れました。

One fungus covered about 965 hectares.1つの菌は、約965ヘクタールに広がっていました。 From one side to the other, it was about 3.8 kilometers long.端から端までは、約3.8kmありました。 No one knows its exact age.その正確な年齢は、だれにも分かりません。 It grows very slowly, so scientists think it is between 1,900 and 8,650 years old.とてもゆっくり広がるので、科学者たちは、年齢を1900歳から8650歳の間だと考えています。

Is it the biggest living thing in the world?これは世界でいちばん大きな生き物なのでしょうか。 It depends on how you measure.それは、どう測るかによります。 By area, it may be the largest.広さでなら、最大かもしれません。 By weight, a group of trees in Utah called Pando may be heavier.重さでなら、ユタ州の「パンド」と呼ばれる木の集まりのほうが重いかもしれません。 Next time you see a mushroom, remember that the rest of it may be hiding under your feet.次にキノコを見かけたら、その残りの部分が足の下にかくれているかもしれないことを思い出してください。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2What happened when two samples from the same fungus were put together?

    同じ菌から来た2つのサンプルを並べると、どうなりましたか。

  3. Q3Why don't scientists know the exact age of the fungus?

    科学者たちが、この菌の正確な年齢を知らないのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 5, the word "measure" is closest in meaning to ...

    第5段落の measure という語に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話の内容と合うのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • fungus名詞
    菌類(キノコやカビの仲間)

    A fungus grew on the old bread.

    古いパンにカビが生えました。

    💡 複数形は fungi(ファンガイ)。

  • mushroom名詞
    キノコ

    We found some mushrooms in the woods.

    私たちは林でキノコをいくつか見つけました。

    💡 動詞で「急に増える」の意味もある。

  • thread名詞
    糸

    She needs a needle and thread.

    彼女は針と糸が必要です。

    💡 SNSの「スレッド(一続きの投稿)」も同じ語。

  • root名詞
    根

    The roots of this tree are very long.

    この木の根はとても長いです。

    💡 「原因、ルーツ」の意味でも使う。

  • sample名詞
    サンプル、試料

    The doctor took a blood sample.

    医者は血液のサンプルをとりました。

    💡 動詞で「試食する、試す」の意味もある。

  • belong to熟語
    〜のものである、〜に属する

    This bag belongs to my sister.

    このかばんは姉のものです。

    💡 進行形にしない動詞。

  • area名詞
    面積、地域

    This park has a large area.

    この公園は面積が広いです。

    💡 by area で「面積で(比べると)」。

  • weight名詞
    重さ

    What is the weight of this box?

    この箱の重さはどれくらいですか。

    💡 動詞は weigh(重さがある、重さを量る)。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 26件)。

  1. Ferguson, B. A. et al. (2003) Coarse-scale population structure of pathogenic Armillaria species in a mixed-conifer forest in the Blue Mountains of northeast Oregon, Canadian Journal of Forest Research 33:612–623doi.org
  2. Smith, M. L., Bruhn, J. N. & Anderson, J. B. (1992) The fungus Armillaria bulbosa is among the largest and oldest living organisms, Nature 356:428–431doi.org
  3. Anderson, J. B. et al. (2018) Clonal evolution and genome stability in a 2500-year-old fungal individual, Proceedings of the Royal Society B 285:20182233doi.org
  4. Humongous Fungus (Armillaria ostoyae)(The Oregon Encyclopedia, オレゴン歴史協会)oregonencyclopedia.org
  5. The Humongous Fungus, EarthDate Fact Sheet ED 396(テキサス大学 経済地質局)earthdate.org

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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