辛いものを食べたあとは、水より牛乳のほうが辛さがやわらぐ
ウラ取りライフハックNo.074

辛いものを食べたあとは、水より牛乳のほうが辛さがやわらぐ

無脂肪の牛乳でも、効き目は同じだった。

ホントTRUE

この判定の対象「辛いものを食べたあとは、水より牛乳のほうが辛さがやわらぐ」

うなり度 読む時間7分 出典7件 確認した事実27件
もくじ
  1. 辛いトマトジュースのあとに牛乳を飲むと、10秒で辛さがおよそ半分になった
  2. 研究者は牛乳の脂肪が効くと予想したが、無脂肪乳でも効き目は同じだった
  3. 2023年の実験では、牛乳のたんぱく質を増やすほど辛さが弱まった
  4. 炭酸の入った飲み物は効きが弱く、本物のビールの効き目はまだ分からない
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

アメリカのペンシルベニア州立大学の研究室に、72人の大人が集まりました。目の前には、トウガラシ入りの辛いトマトジュースが30mLあります。飲みこんだら、すぐに辛さを点数にします。そのあと、別の飲み物を40mL飲みます。そして10秒ごとに、2分間、辛さの点数をつけ続けました。

あとで飲む飲み物は、7種類です。普通の牛乳、無脂肪乳、炭酸水、コーラ、ノンアルコールビール、甘いフルーツ飲料、そして水。何も飲まない回もありました。2019年に発表されたこの実験は、「辛いものには何を飲むのがいいか」を、数字で比べたものです。

その結果、辛さを一番減らしたのは、確かに牛乳でした。ただし、牛乳が効いた理由は、研究者の予想とは違っていました。この記事では、まず、7種類の飲み物の効き目を比べます。次に、牛乳が効く理由は「脂肪」ではなさそうだと分かった実験と、その後の研究を紹介します。最後に、炭酸の飲み物が効きにくい理由を説明します。

01辛いトマトジュースのあとに牛乳を飲むと、10秒で辛さがおよそ半分になった

まず、どの飲み物も、「何も飲まない」よりは辛さを減らしました。何も飲まないと、10秒後の辛さは、むしろ少し強くなっていました。論文は、何も飲まなければ辛さが少しずつ強まるのかもしれない、と書いています。

一番よく効いたのは、牛乳です。飲んで10秒後、辛さの点数は、飲む前のおよそ半分になりました。2分間を通して見ても、普通の牛乳と無脂肪乳の2つが、一番よく効いていました。

水と比べて、はっきり効き目が上だったのは3つだけです。普通の牛乳、無脂肪乳、そして甘いフルーツ飲料でした。フルーツ飲料には、約10%の砂糖が入っています。砂糖が辛さをやわらげることは、昔からいくつもの実験で報告されてきました。

一方で、水もちゃんと役に立ちました。水は、何も飲まない回より、辛さをはっきり減らしています。水しかないときも、飲む意味はあるのです。

02研究者は牛乳の脂肪が効くと予想したが、無脂肪乳でも効き目は同じだった

研究チームは、実験の前にこう予想していました。「脂肪が一番多い、普通の牛乳が一番効くだろう」。

そう予想した理由は、こうです。トウガラシの辛さの成分は、カプサイシンといいます。カプサイシンは、水にはほとんど溶けません。でも、アルコールや油にはよく溶けます。だから、牛乳の脂肪がカプサイシンを溶かしこんで、舌から引きはがしてくれるはずだ、と考えたのです。

ところが、結果は違いました。脂肪が3.25%以上の普通の牛乳と、0.5%未満の無脂肪乳を比べました。すると、2分間のどの時点でも、効き目に差は出ませんでした。

では、牛乳の何が効いているのでしょう。研究者が注目したのは、どちらの牛乳にもたっぷり入っているたんぱく質です。牛乳のたんぱく質の約8割は、カゼインという種類です。ただし、この実験だけでは、カゼインが効いているとは決められません。論文では、「カゼインを調べる研究がこれから必要だ」と書かれています。

032023年の実験では、牛乳のたんぱく質を増やすほど辛さが弱まった

その後、同じ大学のグループは、たんぱく質にしぼって調べました。

2023年の研究では、カプサイシンを溶かした水に、牛乳のたんぱく質を混ぜました。混ぜたのは、カゼインと、ホエイの2種類です。ホエイは、チーズを作るときに出る液に多いたんぱく質です。たんぱく質を増やすほど、何ともくっついていないカプサイシン(自由なカプサイシン)が減りました。グラフにすると、まっすぐな線になる減り方でした。減り方は、カゼインのほうが大きかったのです。

この液を89人に味わってもらいました。すると、たんぱく質が多い液ほど、一番辛く感じたときの辛さが低くなりました。

同じ2023年には、別の実験も発表されました。牛乳のほかに、豆乳やアーモンドミルクなども比べたのです。すると豆乳も、水よりはっきり辛さを減らしました。たんぱく質を多くした牛乳は、一番よく効く傾向がありました。

牛乳のたんぱく質は辛さの成分とくっつき、舌の「辛さセンサー」に届く量を減らすと考えられている
牛乳のたんぱく質は辛さの成分とくっつき、舌の「辛さセンサー」に届く量を減らすと考えられている

04炭酸の入った飲み物は効きが弱く、本物のビールの効き目はまだ分からない

2019年の実験では、炭酸の入った3つの飲み物の効きが、弱めでした。炭酸水、コーラ、ノンアルコールビールです。どれも冷たかったのに、効きが弱かったのです。

研究者は、こう説明しています。炭酸のピリピリ感も、口の中の別のセンサーを刺激します。しかも、冷たい炭酸ほど、ピリピリは強くなります。辛さを消したいのに、炭酸がピリピリという別の刺激を足してしまうのかもしれません。

では、アルコールの入った本物のビールはどうでしょう。アルコールは、カプサイシンをよく溶かします。一方で、アルコール自体が、辛さを感じるセンサーを刺激することも知られています。実験ではノンアルコールビールを使ったので、論文は本物のビールについて「まだ分からない」としています。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

トウガラシの辛さは、味ではなく、痛みと熱さの感覚

舌には、甘い・しょっぱい・酸っぱい・苦い・うま味を感じる、味のセンサーがあります。でも、カプサイシンの「辛い」は、そのどれでもありません。口の中の神経には、TRPV1(トリップ・ブイ・ワン)というセンサーがあります。辛さは、このセンサーが反応して起きる、痛みと熱さの感覚です。

TRPV1を見つけたのは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のデビッド・ジュリアス(David Julius)らです。1997年の論文で、カプサイシンに反応する遺伝子を、何百万もの候補の中から探し出しました。さらに、このセンサーは、痛いほど熱い温度にも反応しました。トウガラシを食べると「熱い」と感じるのは、熱さを知らせるのと同じセンサーが反応しているからです。ジュリアスは、2021年にノーベル生理学・医学賞を受けました。ノーベル賞の発表文では、メントールを使って見つかった「冷たさ」のセンサーも紹介されています。

辛さを減らす方法は、少なくとも4つに分けられる

ここまでの研究から、辛さを減らす方法は、少なくとも4つに分けられます。

  1. 洗い流す:何かを口に入れるだけでも、舌の上のカプサイシンが少し流れる。水が「何もしない」より効くのはこのため。
  2. くっついて離さない:たんぱく質(特にカゼイン)や脂肪が、カプサイシンとくっつく。すると、センサーに届く自由なカプサイシンが減る。
  3. 冷やす:口の温度(約35℃)より冷たいものほど、辛さは弱く感じる。辛さを感じるのは熱さのセンサーなので、温度の影響を受ける。
  4. 別の感覚で覆う:砂糖の甘さは、辛さをやわらげる。苦みを甘みで抑えるのと似たしくみが、脳で起きている可能性がある。

牛乳は、2の「くっついて離さない」と、3の「冷やす」を、同時に満たします。冷えていて、たんぱく質も脂肪もあるからです。

2024年の実験では、アイスクリームが一番辛さを減らした

2024年、同じグループは、デザートで辛さを減らす力を比べました。比べたのは、アイスクリーム、ラッシー(インドのヨーグルト飲料)、ヨーグルト、かき氷のような氷菓、4℃の冷水、37℃のぬるま湯です。

その結果、どれもぬるま湯よりは効きました。氷菓は冷水と同じくらいで、ヨーグルトより上でした。一番よく効いたのはアイスクリームとラッシーで、アイスクリームがわずかに上でした。アイスクリームには、冷たさ・脂肪・たんぱく質・甘さがそろっています。論文の結論は、「一つの成分ではなく、いくつもの要素の組み合わせが効く」でした。

「牛乳は脂肪で辛さを消す」という説明は、脂肪の量だけを変えた実験で見直された

「牛乳は脂肪で辛さを消す」という説明は、カプサイシンが油に溶けるという化学の事実から、自然に考えられたものでした。理屈としては、正しそうです。でも実際に比べてみると、脂肪を抜いた牛乳でも、同じくらい効きました。

ここから分かるのは、「しくみの説明がつく」ことと、「それが主な理由である」ことは別だ、ということです。主な理由を確かめるには、一つの条件だけを変えて比べる実験が必要です。2019年の研究は、脂肪の量だけが違う2つの牛乳を比べることで、脂肪が主な理由ではないことを示しました。

05まとめ

辛いものを食べたら、水より牛乳。これは、実験で確かめられたホントの裏ワザでした。牛乳は、飲んで10秒で、辛さをおよそ半分にしました。

ただし、脂肪の多い牛乳と無脂肪乳で、効き目は同じでした。その後の研究で、たんぱく質のカゼインが辛さの成分とくっつくことや、冷たさも効くことが分かってきました。2024年の実験で、一番効いたのはアイスクリームです。激辛料理に挑むときは、冷たい牛乳を先に用意しておきましょう。炭酸の飲み物は、あとにとっておくのがよさそうです。

人に話すなら、こう言おう

辛いものには牛乳って言うけど、実験すると無脂肪乳でも同じくらい効いたんだって。脂肪じゃなくて、牛乳のたんぱく質が辛さの成分をつかまえているらしいよ。
READ IN ENGLISH

英語で読む

Milk, Not Fat, Puts Out the Fire

CEFR A2212 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In 2019, 72 adults at a university in the United States drank a very spicy tomato juice.2019年、アメリカのある大学で、72人の大人がとても辛いトマトジュースを飲みました。 Then each person drank a different drink and rated the burn every 10 seconds for 2 minutes.そのあと一人ひとりが別の飲み物を飲み、2分間、10秒ごとに辛さを点数にしました。 They tried milk, skim milk, soda water, cola, beer with no alcohol, a sweet fruit drink, and water.試したのは、牛乳、無脂肪乳、炭酸水、コーラ、ノンアルコールビール、甘いフルーツ飲料、そして水です。

Every drink helped more than drinking nothing.どの飲み物も、何も飲まないよりは効きました。 But milk worked best.でも、いちばんよく効いたのは牛乳でした。 Ten seconds after drinking milk, the burn was about half as strong.牛乳を飲んで10秒後、辛さはおよそ半分の強さになっていました。 The drinks with bubbles did not work as well.泡の入った飲み物は、あまり効きませんでした。

The scientists expected whole milk to win because it has the most fat.研究者たちは、脂肪がいちばん多いふつうの牛乳が勝つと予想していました。 Capsaicin, the hot chemical in chili peppers, mixes well with oil but not with water.トウガラシの辛い成分カプサイシンは、油にはよくなじみますが、水にはなじみません。 But whole milk and skim milk worked the same.ところが、ふつうの牛乳と無脂肪乳の効き目は同じでした。 So fat was not the main reason.つまり、脂肪が主な理由ではなかったのです。

Later studies looked at protein.その後の研究は、たんぱく質に目を向けました。 Most of the protein in milk is casein.牛乳のたんぱく質の大部分はカゼインです。 Casein holds on to capsaicin, so less of it reaches the nerves in your mouth.カゼインはカプサイシンをつかまえるので、口の中の神経にとどく量が減ります。 Soy milk, which also has protein, worked better than water too.同じくたんぱく質をふくむ豆乳も、水よりよく効きました。

In 2024, the same group tested desserts.2024年、同じグループはデザートを試しました。 Ice cream did the best job of all.いちばんよく効いたのはアイスクリームでした。 It is cold, and it has fat, protein, and sugar.アイスクリームは冷たくて、脂肪もたんぱく質も砂糖もあります。 So next time you eat very hot food, keep a glass of cold milk close.だから次にとても辛いものを食べるときは、冷たい牛乳を1杯そばに置いておきましょう。 Save the soda for later.炭酸飲料は、あとにとっておきましょう。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How long after drinking milk was the burn about half as strong?

    牛乳を飲んでからどれくらいで、辛さはおよそ半分になりましたか。

  3. Q3Why did the scientists expect whole milk to work best?

    研究者たちは、なぜふつうの牛乳がいちばん効くと予想したのですか。

  4. Q4In paragraph 4, the words "holds on to" are closest in meaning to ...

    第4段落の "holds on to" に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話の内容と合っているのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • spicy形容詞
    (香辛料で)辛い

    This curry is too spicy for me.

    このカレーは私には辛すぎる。

    💡 hot も「辛い」の意味で使う。sweet(甘い)、sour(すっぱい)とセットで覚える。

  • burn名詞・動詞
    ひりひりする痛み/焼ける

    I felt a burn on my tongue.

    舌がひりひりした。

    💡 動詞では「燃える、やけどする」。辛さを英語では burn(焼けるような感じ)で表す。

  • rate動詞
    評価する、点数をつける

    Please rate the movie from 1 to 5.

    その映画を1から5で評価してください。

    💡 名詞の rate は「割合、速さ」。rating は「評価、点数」。

  • expect動詞
    予想する、期待する

    We expect rain tomorrow.

    明日は雨になると予想している。

    💡 expect A to do で「Aが〜すると予想する」。

  • chemical名詞
    化学物質

    This soap has no strong chemicals.

    この石けんには強い化学物質は入っていない。

    💡 形容詞では「化学の」。chemistry(化学)、chemist(化学者)と同じ仲間の語。

  • protein名詞
    たんぱく質

    Eggs and beans have a lot of protein.

    卵や豆にはたんぱく質がたくさん入っている。

    💡 発音は「プロウティーン」。fat(脂肪)、sugar(糖)と並ぶ栄養素の言葉。

  • nerve名詞
    神経

    Nerves send messages to the brain.

    神経は脳に信号を送る。

    💡 nervous(緊張して)はこの語から。「神経がたかぶる」と覚える。

  • dessert名詞
    デザート

    We had fruit for dessert.

    デザートに果物を食べた。

    💡 s が2つ。s が1つの desert は「砂漠」なので注意。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 27件)。

  1. Nolden, A. A., Lenart, G., Hayes, J. E. (2019) Putting out the fire – Efficacy of common beverages in reducing oral burn from capsaicin, Physiology & Behaviordoi.org
  2. Farah, B. A., Hayes, J. E., Coupland, J. N. (2023) The effect of dairy proteins on the oral burn of capsaicin, Journal of Food Sciencedoi.org
  3. Gaiser, J., Hayes, J. E. (2023) More than fat – Proteins in dairy and plant milks contribute to the reduction of oral burn from capsaicin, Food Quality and Preferencedoi.org
  4. Gaiser, J., Hayes, J. E. (2024) Fat, protein, and temperature each contribute to reductions in capsaicin oral burn, Journal of Food Sciencedoi.org
  5. Caterina, M. J. ほか (1997) The capsaicin receptor: a heat-activated ion channel in the pain pathway, Nature 389doi.org
  6. Press release: The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2021(Nobel Prize Outreach)nobelprize.org
  7. Capsaicin(PubChem, 米国国立医学図書館)pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

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