飛行機で耳が痛くなりやすいのが着陸前なのは、耳の管が下りで自然に開かないから
ウラ取りライフハックNo.196

飛行機で耳が痛くなりやすいのが着陸前なのは、耳の管が下りで自然に開かないから

飛行機が下りるとき、耳の管は自分で開ける必要がある。

うなり度 読む時間7分 出典7件 確認した事実28件
もくじ
  1. 機内の気圧は、標高2,400mくらいの山の上と同じくらいまで下がることがある
  2. 耳の管は、上りでは自然に開き、下りでは飲みこむなどしないと開かない
  3. 気圧の差が大きくなりすぎると、筋肉の力では耳管を開けられなくなる
  4. デンマークの調査では、着陸後も大人の5人に1人、子どもの5人に2人は中耳の気圧が下がったままだった
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

飛行機が着陸に向けて下りはじめると、耳がつまったように感じたり、痛くなったりすることがあります。離陸のときは平気だったのに、着陸の前になって急に痛くなった、という人もいるでしょう。

この「離陸より着陸」には、はっきりした理由があります。耳の奥と鼻の奥をつなぐ細い管が、上りでは自然に開くのに、下りでは自然には開かないのです。耳の医学の論文には、飛行機による耳のけがは「上昇のあと、より多くは降下のあと」に起きると書かれています。

この記事では、まず、機内の気圧がどれくらい下がるのかを紹介します。次に、耳の管が上りと下りで違うふるまいをするしくみを説明します。最後に、着陸のあとに乗客の耳を調べた研究と、痛みを防ぐ方法を紹介します。

01機内の気圧は、標高2,400mくらいの山の上と同じくらいまで下がることがある

旅客機は、高い空を飛ぶあいだも、機内の気圧が下がりすぎないように保っています。それでも、地上と同じ気圧にはなりません。アメリカのCDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、旅行と健康についての資料を出しています。それによると、アメリカ連邦航空局(FAA)は、機内の気圧についての決まりを作っています。機内の気圧を、標高2,440mに相当する気圧より下げてはいけない、という決まりです。ふつうは、標高1,830〜2,440mの山の上と同じくらいの気圧に保たれています。

2023年の耳の医学の論文の表によると、標高2,438mに相当する気圧は564mmHgです。mmHg(ミリメートル水銀柱)は、気圧の単位です。海面の高さでは760mmHgなので、このときの機内の気圧は地上の約4分の3です。

つまり、飛行機が上っていくと、機内の気圧は地上の約4分の3くらいまで下がることがあります。そして、着陸に向けて下りていくと、また地上の気圧までもどっていきます。この気圧の変化に、耳がついていけないと、痛くなるのです。

02耳の管は、上りでは自然に開き、下りでは飲みこむなどしないと開かない

耳の奥には、鼓膜のさらに内側に、中耳という小さな部屋があります。中耳は、耳管という細い管で、鼻の奥とつながっています。耳・鼻・のどの病気の専門医の学会の一つに、アメリカ耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会があります。その財団の解説によると、耳管は、鼓膜の内と外の気圧をつり合わせる役目をしています。

2023年の論文によると、上りと下りでは、耳管のふるまいが違います。

上りでは、まわりの気圧が下がるので、中耳の中の空気のほうが気圧が高くなります。健康な耳管は、気圧の差が15mmHgになると、自然に開いて空気を外へ逃がします。これは、上昇でおよそ120mごとに起きます。そのため、上りではふつう問題になりにくいのです。

下りでは逆に、まわりの気圧が上がり、中耳の気圧のほうが低くなります。このときは、耳管は自然には開きません。開けるには、飲みこむ、あくびをする、鼻をつまんで息をやさしく送るなど、筋肉を動かす必要があります。

03気圧の差が大きくなりすぎると、筋肉の力では耳管を開けられなくなる

同じ論文には、もう一つ大事なことが書かれています。下りで耳管を開けないまま、中耳と外の気圧の差が80mmHgをこえるとします。すると、耳管の鼻側の口が、開けるための筋肉の力より強い力で閉じてしまいます。その結果、中耳の気圧はどんどん下がり、耳のけが(気圧外傷)になります。

機内が標高2,438mに相当する気圧だったとします。すると、着陸までに気圧は564mmHgから760mmHgへ、200mmHg近く上がります。論文の表では、約230m下りるごとに、17〜20mmHgずつ上がっていきます。しかも、地上に近づくほど、上がり方は大きくなります。ですから、下りはじめたら、差が小さいうちにこまめに耳管を開けることが大切だと考えられます。

アメリカのCDCによると、中耳の気圧外傷は、ふつうは重くも危険でもありません。ただし、まれに、めまい、聞こえにくさ、鼓膜の穴、治らない耳鳴りが起きることがあります。

04デンマークの調査では、着陸後も大人の5人に1人、子どもの5人に2人は中耳の気圧が下がったままだった

飛行機の耳のトラブルは、どれくらいの人に起きているのでしょうか。1998年、デンマークのコペンハーゲンにあるゲントフテ大学病院の耳鼻科のチームが調べました。到着した8便の乗客に、着陸のあとで耳の検査を受けてもらったのです。

鼓膜に気圧外傷のしるしがあったのは、大人の10%、子どもの22%でした。中耳の気圧がまわりより10hPaをこえて低いままだった人は、大人の20%、子どもの40%でした。つまり、大人の5人に1人、子どもの5人に2人です。hPa(ヘクトパスカル)は、天気予報でも使う気圧の単位です。

その場で、鼻をつまんで息を送ってもらいました。それで中耳の気圧がもとにもどったのは、大人の46%、子どもの33%でした。子どもでもとにもどせたのは、3人に1人ほどです。耳鼻科の学会の財団の解説も、子どもは耳管が細く、赤ちゃんは自分で耳を抜けないと書いています。

耳の奥の中耳と鼻の奥は、耳管でつながっている。下りでは、この管を飲みこむなどして開けないと、中耳の気圧が合わない
耳の奥の中耳と鼻の奥は、耳管でつながっている。下りでは、この管を飲みこむなどして開けないと、中耳の気圧が合わない
LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

耳管は、外へは逃がしやすく、中へは入れにくい

2023年の論文によると、中耳の気圧が外より高いときは、耳管は差が15mmHgになると自然に開きます。一方、中耳の気圧が外より低いときは、筋肉を動かして開けないと、空気は中耳に入りません。

つまり、耳管は、中耳から外へは空気を逃がしやすく、外から中耳へは入れにくい管です。上りで中耳の気圧が外より高くなったときは、空気は勝手に外へ出ていきます。下りで中耳の空気が足りなくなったときは、自分で入れなければなりません。1998年のデンマークのチームも、気圧外傷のいちばん多い原因は、降下のときの気圧の変化だと書いています。

鼻づまりの薬は、大人に効いた試験と、子どもに効かなかった試験がある

2005年の総説(それまでの研究をまとめた論文)は、飛行機の耳の痛みを防ぐ薬について、3つのランダム化比較試験を紹介しています。ランダム化比較試験とは、くじで薬のグループと偽の薬のグループに分けて比べる試験です。

1994年のアメリカの試験では、飛行機で耳が痛くなりやすい大人に、出発の30分前に鼻づまりの飲み薬か偽の薬を飲んでもらいました。最後まで答えた190人のうち、耳の不快感があったのは、薬のグループで32%、偽の薬のグループで62%でした。

一方、1999年の試験では、生後6か月〜6歳の子ども50人に、同じ種類の薬か偽の薬を飲ませました。降下中の耳の痛みは、薬で12%、偽の薬で13%で、差はありませんでした。そして、薬を飲んだ子どもは、離陸のときに眠くなることが多くなりました(60%と27%)。大人を対象に、降下の30分前に点鼻薬を使った試験も、統計的に意味のある差は出ませんでした。

耳鼻科の学会の財団の解説は、鼻づまりの薬について注意も書いています。妊娠中の人や、心臓病・高血圧・不整脈・甲状腺の病気などがある人は、使う前に医師に相談すること。そして、点鼻薬を長く使うと、かえって鼻がつまりやすくなり、やめにくくなることがある、という注意です。

かぜで鼻がつまっていると、耳管もふさがりやすい

耳管の鼻側の口は、鼻の奥にあります。かぜや副鼻腔炎、アレルギーで鼻の粘膜がはれると、耳管がふさがりやすくなります。アメリカのCDCの資料は、耳や鼻、副鼻腔の感染症やひどい鼻づまりがある人は、飛行機に乗るのを延ばすことも考えられる、と書いています。アレルギーの薬を飲んでいる人は、いつもの薬を続けるよう勧めています。

痛みが続くときは、耳鼻咽喉科で治療できる

耳が開かないままだったり、痛みが続いたりするときは、耳鼻咽喉科を受診するよう、学会の財団の解説は勧めています。耳鼻咽喉科は、耳・鼻・のどの病気を専門にみる診療科です。治療には、鼓膜に小さな管を入れて気圧を逃がす方法や、風船で耳管を広げる方法、鼓膜を少し切って気圧や液を逃がす方法などがあります。どれも、医師が行う治療です。

05まとめ

飛行機で耳が痛くなりやすいのは、離陸より着陸の前です。耳の奥と鼻の奥をつなぐ耳管は、上りでは自然に開きますが、下りでは飲みこむなどして開ける必要があるからです。しかも、気圧の差が80mmHgをこえると、筋肉の力では開けられなくなるとされています。

耳の気圧を合わせるには、離陸の直前と降下中に、つばを飲みこむ、あくびをする、ガムをかむ、あめをなめることが助けになる、と耳鼻科の学会の財団は書いています。鼻をつまんで息を送るときは、強くではなく、やさしく送ります。赤ちゃんには、ほ乳びんやおしゃぶりを吸わせると助けになります。次に飛行機に乗ったら、飛行機が下りはじめたところで、眠らずにつばを飲みこみはじめてみてください。

人に話すなら、こう言おう

飛行機で耳が痛くなるのって、着陸前が多いんだって。耳と鼻をつなぐ管は、上りでは勝手に開くけど、下りでは飲みこんだりしないと開かないらしい。気圧の差が大きくなると、筋肉の力でも開けにくくなるんだって。
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英語で読む

Why Ears Hurt Before Landing

CEFR A2221 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

Many people feel pain in their ears on a plane.飛行機の中で耳に痛みを感じる人はたくさんいます。 It often happens when the plane goes down before landing.それはよく、着陸の前に飛行機が下りていくときに起こります。 Why is going down harder than going up?なぜ、上るときより下りるときのほうがつらいのでしょうか。

Inside a plane, the air pressure is lower than on the ground.飛行機の中の気圧は、地上より低くなっています。 Rules in the United States say that it must not fall below the pressure at about 2,440 meters.アメリカの決まりでは、機内の気圧を標高約2,440メートルの気圧より下げてはいけないことになっています。 So flying is a little like climbing a high mountain.つまり、飛行機に乗るのは、高い山に登るのと少し似ています。

Your middle ear is a small room behind the eardrum.中耳は、鼓膜の奥にある小さな部屋です。 A thin tube connects it to the back of your nose.細い管が、中耳と鼻の奥をつないでいます。 When the plane goes up, this tube opens by itself and lets air out.飛行機が上るときは、この管はひとりでに開いて空気を外に出します。 When the plane goes down, it does not open by itself.飛行機が下りるときは、ひとりでには開きません。 You need to swallow, yawn, or move your mouth to open it.開けるには、飲みこんだり、あくびをしたり、口を動かしたりする必要があります。 If the pressure difference gets too big, the muscles cannot open the tube.気圧の差が大きくなりすぎると、筋肉では管を開けられなくなります。

In 1998, doctors in Denmark checked the ears of passengers after landing.1998年、デンマークの医師たちが、着陸のあとに乗客の耳を調べました。 The pressure in the middle ear was still low in 20 percent of adults and 40 percent of children.大人の20%と子どもの40%で、中耳の気圧がまだ低いままでした。

Ear doctors say that you can swallow, yawn, chew gum, or suck on candy before takeoff and while the plane goes down.耳の医師たちは、離陸の前と飛行機が下りているあいだに、飲みこむ、あくびをする、ガムをかむ、あめをなめるとよいと言っています。 Babies can suck on a bottle.赤ちゃんは、ほ乳びんを吸うとよいでしょう。 Try not to sleep while the plane is coming down.飛行機が下りているあいだは、眠らないようにしましょう。 Next time, start swallowing as soon as the plane begins to go down.次に乗るときは、飛行機が下りはじめたらすぐに飲みこみはじめてみましょう。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2In the 1998 study, in what percent of children was the middle ear pressure still low?

    1998年の調査で、中耳の気圧がまだ低いままだったのは、子どもの何%でしたか。

  3. Q3Why is going down harder for the ears than going up?

    なぜ、耳にとって下りるほうが上るよりつらいのですか。

  4. Q4In paragraph 3, the word "connects" is closest in meaning to ...

    第3段落の connects という語に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true according to the story?

    この話の内容に合うのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • pressure名詞
    圧力、気圧

    The air pressure is low on high mountains.

    高い山では気圧が低い。

    💡 air pressure で「気圧」。press(押す)の名詞形。

  • eardrum名詞
    鼓膜

    A loud sound can hurt your eardrum.

    大きな音は鼓膜を傷めることがある。

    💡 ear(耳)+drum(太鼓)。

  • swallow動詞
    飲みこむ

    Chew your food well before you swallow it.

    飲みこむ前によくかみなさい。

    💡 名詞では鳥の「ツバメ」の意味もある。

  • yawn動詞
    あくびをする

    He yawned because he was sleepy.

    彼は眠かったのであくびをした。

    💡 発音は「ヨーン」。名詞も yawn。

  • tube名詞
    管、チューブ

    Water runs through this tube.

    水はこの管を通って流れる。

    💡 イギリスでは地下鉄のことも the Tube と呼ぶ。

  • connect動詞
    つなぐ

    This bridge connects the two towns.

    この橋は二つの町をつないでいる。

    💡 名詞は connection(つながり)。

  • passenger名詞
    乗客

    The bus had ten passengers.

    バスには10人の乗客がいた。

    💡 pass(通る)から。driver(運転手)と区別する。

  • landing名詞
    着陸

    The landing was smooth.

    着陸はなめらかだった。

    💡 反対は takeoff(離陸)。動詞は land。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 28件)。

  1. Ears and Altitude (Barotrauma)(ENT Health / American Academy of Otolaryngology–Head and Neck Surgery Foundation)enthealth.org
  2. Air Travel(CDC Yellow Book)cdc.gov
  3. Akhal, T. & Bassim, M. (2023) Flight After Stapes Surgery: An Evidence-Based Recommendation, OTO Open 7(3)doi.org
  4. Mirza, S. & Richardson, H. (2005) Otic barotrauma from air travel, The Journal of Laryngology & Otology 119:366-370doi.org
  5. Stangerup, S. E. ほか (1998) Point prevalence of barotitis in children and adults after flight, and effect of autoinflation, Aviation, Space, and Environmental Medicine 69:45-49(Europe PMC)europepmc.org
  6. Csortan, E. ほか (1994) Efficacy of pseudoephedrine for the prevention of barotrauma during air travel, Annals of Emergency Medicine 23:1324-1327doi.org
  7. Buchanan, B. J. ほか (1999) Pseudoephedrine and air travel-associated ear pain in children, Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine 153:466-468doi.org

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