デンキウナギが水から飛び上がって敵を感電させる行動は、実験中に偶然見つかった
生き物No.228

デンキウナギが水から飛び上がって敵を感電させる行動は、実験中に偶然見つかった

金属の網を近づけたら、デンキウナギが飛びかかってきた。

ホントTRUE

この判定の対象「デンキウナギは、水から飛び上がって相手に電気を流すことがある」

うなり度 読む時間9分 出典8件 確認した事実52件
もくじ
  1. フンボルトは、1800年に「馬を使ってデンキウナギをとる漁」を見たと書き残した
  2. フンボルトの話は、200年のあいだ「作り話では」と疑われてきた
  3. 金属の網を近づけると、デンキウナギは飛び上がって電気を流した
  4. 研究者は自分の腕を使って、流れる電流の強さを測った
  5. 野外でも、人に飛びかかるデンキウナギが動画に撮られていた
  6. 深掘り講義
  7. まとめ
  8. 英語で読む(A2・4択5問)
  9. 出典・ウラ取り

アメリカのヴァンダービルト大学で、生物学者のケネス・カタニア(Kenneth Catania)は、デンキウナギを水槽で飼って研究していました。デンキウナギを別の水槽に移すときに使っていたのは、ふちと柄が金属でできた網です。

大きなデンキウナギにこの網を近づけると、ときどき思いがけないことが起きました。逃げていたデンキウナギが急に向きを変え、金属のふちを伝って水から飛び上がったのです。あごを柄に押しつけたまま、高い電圧の電気を何度も放っていました。カタニアはゴム手袋をしていたので、感電はしませんでした。

この行動は、2016年に論文で発表されました。そして、200年以上前に書かれた、ある有名な話を見直すきっかけになりました。探検家で博物学者のアレクサンダー・フォン・フンボルトが、1800年に見たと書き残した「デンキウナギが馬を襲った」話です。

この記事では、まずフンボルトが書いた話と、それが疑われてきた理由を紹介します。次に、カタニアが実験で何を測ったかを説明します。最後に、なぜデンキウナギは逃げずに飛びかかるのかを考えます。

01フンボルトは、1800年に「馬を使ってデンキウナギをとる漁」を見たと書き残した

フンボルトは、1800年ごろ南アメリカを旅していました。旅の途中で、フンボルトはデンキウナギで実験をしようとして、地元の人たちにデンキウナギをとってくるよう頼みました。

フンボルトの旅行記によると、場所は今のベネズエラにある平原、カラボソの町の近くです。人々はデンキウナギをとても怖がり、3日のあいだ1匹も手に入らなかったと書かれています。生きたまま届けられた1匹は弱っていて、実験ではっきりした結果が出ませんでした。

3月19日の朝早く、フンボルトたちはラストロという村へ向かいました。そこから、乾季に泥水がたまった池へ案内されました。地元の人たちは、「馬で漁をする」と言いました。そして、草原から野生の馬とラバを約30頭連れてきて、池に追いこみました。

旅行記によると、ひづめの大きな音で、デンキウナギが泥から出てきて、馬やラバの腹の下に集まりました。そして、腹に体を押しつけて電気を放ちました。人々は池のまわりを囲み、何人かは池の上に枝を広げた木に登りました。そして、叫び声と長いアシで、馬が岸へ逃げないようにしたのです。

5分もたたないうちに、2頭の馬がおぼれました。フンボルトは、馬は電気で死んだのではなく、気を失って起き上がれずにおぼれたのだろうと考えました。やがてデンキウナギは疲れて散っていきました。フンボルトたちは、大きなデンキウナギを5匹とることができました。

02フンボルトの話は、200年のあいだ「作り話では」と疑われてきた

この話は有名になり、200年のあいだ、多くの本で絵入りで紹介されてきました。けれども、信じない人もいました。2016年のカタニアの論文によると、ある研究者は、詩のように作り変えられた話だと書きました。別の人は、はっきりでたらめだと書きました。

いちばん疑わしいとされたのは、デンキウナギが自分から馬に攻めかかった、という部分です。なぜ逃げずに、自分より大きな動物を攻撃するのでしょうか。しかも、フンボルトの報告から200年以上、似た行動を見たという報告はありませんでした。

03金属の網を近づけると、デンキウナギは飛び上がって電気を流した

カタニアがこの行動を見つけたのは、偶然でした。もともとは、デンキウナギがどうやって獲物をとるかを研究していたのです。

カタニアの論文によると、デンキウナギが水から飛び上がるのを見たのは、金属の網のように電気を通す物を近づけたときだけでした。カタニアの経験では、電気を通さない物を近づけても、この行動は起きませんでした。また、水槽の水を減らしたときに、特によく攻撃しました。カタニアは、追いつめられたと感じたためだろうと考えています。

カタニアは次に、電気の強さを測りました。金属の板を、電気を通さない材料をはさんで上下2つに分けます。下の板は水の中、上の板は水の上です。デンキウナギが板を上ってくるあいだ、上下の板のあいだの電圧を測りました。すると、デンキウナギが高く上るほど、電圧が大きく上がりました。電流を測っても、同じように高く上るほど大きくなりました。

デンキウナギは、あごが相手から離れると電気を止めました。そして、また触れると、電気を出し直しました。でたらめに電気を出しているのではなく、触れている相手をねらって電気を流しているのです。

カタニアは、プラスチックの腕やワニの頭の模型に、発光ダイオード(LED)を並べて貼りました。デンキウナギが飛びかかると、LEDが明るく光りました。飛び上がるほど、高い所のLEDまで光りました。

デンキウナギが模型の腕に飛びかかると、腕に貼った小さなライトが光る。高く上るほど、高い所まで光った
デンキウナギが模型の腕に飛びかかると、腕に貼った小さなライトが光る。高く上るほど、高い所まで光った

04研究者は自分の腕を使って、流れる電流の強さを測った

2017年、カタニアはさらに進んだ実験をしました。デンキウナギに飛びかかられた相手に、どれだけの電流が流れるかを測ったのです。そのためには、本物の生き物の体が必要でした。カタニアが使ったのは、自分の腕です。

使ったデンキウナギは、体長約40cmの若い個体でした。カタニアは「フィンレス」と名前をつけていました。カタニアは、腕に流れる電流を測る装置を作り、この水槽に腕を10回入れました。

腕に流れた電流は、最大で40〜50ミリアンペアでした。小さなデンキウナギなのに、この強さは、人や馬の痛みを感じる神経が反応する強さを大きく超えていました。カタニアは、若いデンキウナギの電気は、馬用の電気柵にうっかり触ったような感じだと表現しています。

ただし、筋肉が勝手に固まってしまうような感覚はありませんでした。いやな感覚は、電気を受けた腕だけに起きました。カタニアは、飛び上がる攻撃の一番の目的は、一瞬の強い痛みで敵を追いはらうことだろう、と結論づけています。

05野外でも、人に飛びかかるデンキウナギが動画に撮られていた

水槽の実験だけでは、野生のデンキウナギが同じことをするかは分かりません。2019年、カタニアは研究をまとめた論文で、野外の動画を紹介しました。

動画では、ロープを体につけた漁師が、浅い池に入ってデンキウナギを探していました。すると、デンキウナギのほうが先に漁師を見つけ、胸に飛びかかりました。漁師は動けなくなり、仲間がロープで岸へ引きもどしました。漁師はすぐに回復しました。

フンボルト自身の文章には、「水から飛び上がった」とは書かれていません。一方、1843年に出たフンボルトの友人ロバート・ショムバーグの本には、この漁の絵が載っています。その絵には、水から体を出し、馬にあごを押しつけるデンキウナギが描かれています。この絵にフンボルトが意見を言ったかどうかは、分かっていません。カタニアは2016年の論文で、「フンボルトが1800年3月19日に似た行動を見たと考えるのは無理がない」と書いています。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

水の中で放った電気は、水全体に広がって弱くなる

デンキウナギの電気は、水の中ではまわりの水全体に広がります。電気は、近くの魚にはよく効きます。けれども、体の一部だけを水に入れている陸の動物には、あまり効かないかもしれません。

1800年代のイギリスの科学者ファラデーも、デンキウナギで実験をしました。カタニアの論文によると、ファラデーは、片手だけを水に入れたときは、その手にしか電気を感じず、強くもなかったと書いています。カタニアも、デンキウナギが電気を出したとき、指を水に入れたくらいでは、ほとんど感じないと話しています。

デンキウナギが水から飛び上がると、電気の通り道が変わります。電気は、あごから相手の体に入り、相手の体を通って水へもどります。そして水を通って、デンキウナギの尾のほうへもどります。カタニアの考えでは、デンキウナギが高く上るほど、あごから水へ直接もどる道は通りにくくなります。そのぶん、相手の体を通る電気が増えるのです。

カタニアは、この行動を音量のつまみにたとえています。高く上るほど、相手に流れる電気の量が大きくなるからです。

デンキウナギが逃げずに攻撃するのは、乾季に逃げ場がなくなるからと考えられている

デンキウナギがすむアマゾン川やオリノコ川の流域では、雨季と乾季で水の量が大きく変わります。雨季には、森や草原が広く水につかります。乾季に水が引くと、あちこちに池が取り残され、そこに魚が閉じこめられます。

デンキウナギは、ときどき水面に出て空気を吸わないと生きられない魚です。口の中で空気から酸素を取りこめるので、酸素の少ない池でも生きのびられます。スミソニアン国立動物園によると、乾季のデンキウナギは、水の外から狩りをする大きなほ乳類などにねらわれやすくなります。逃げる場所が少ないので、戦うしかないことが多いのです。オスは乾季につばで巣を作り、雨季が始まるまで子どもを守ります。

フンボルトが見た池も、乾季に泥水がたまった池でした。カタニアは2016年の論文で、この出来事が乾季の終わりごろで、デンキウナギが干上がりかけた池に閉じこめられていた点に注目しています。

飛び上がる行動は、段階を追って進化したと考えられている

カタニアは、この行動がどう進化したかも考えました。まず、相手に近づくだけでも、相手に届く電気は強くなります。次に、相手に触れると、さらに強くなります。そして、水から出て高く上るほど、もっと強くなります。

どの段階にも、それぞれ得があります。だから、ある日とつぜん完成したのではなく、少しずつ今の形になった、と考えられるのです。

デンキウナギは、ウナギよりナマズやコイに近い魚で、少なくとも3種いる

スミソニアン国立動物園によると、デンキウナギは、名前に反してウナギの仲間ではありません。ナマズやコイのほうが近い仲間です。体の約80%は、電気を作る3つの器官でできています。

2019年には、スミソニアン博物館などの研究チームが、デンキウナギは1種ではなく3種いると発表しました。約250年のあいだ、デンキウナギは1種だと考えられてきました。新しく見つかった種の1匹(体長約1.2m)は、860ボルトの電気を出しました。それまで知られていた最大の約650ボルトを、大きく上回る記録です。

06まとめ

デンキウナギは、追いつめられると水から飛び上がり、相手にあごを押しつけて電気を流します。この行動は、カタニアが金属の網を使っていたことから、2016年に偶然見つかりました。飛び上がるほど、相手に流れる電気は強くなります。

2017年には、体長約40cmの若いデンキウナギでも、人の腕に最大40〜50ミリアンペアの電流を流しました。フンボルトが1800年に見たと書いた「馬を襲うデンキウナギ」の話は、200年以上たって、見直されることになったのです。

人に話すなら、こう言おう

デンキウナギって、追いつめられると水から飛び上がって、相手にあごを押しつけて電気を流すんだって。研究者が金属の網で水槽から移そうとしたとき、偶然見つかったらしいよ。自分の腕で電流も測ったんだって。
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英語で読む

The Eel That Jumps to Shock

CEFR A2228 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

Ken Catania, a biologist at Vanderbilt University, studied electric eels in tanks.ヴァンダービルト大学の生物学者ケン・カタニアは、水槽でデンキウナギを研究していました。 To move them, he used a net with a metal edge and handle.デンキウナギを移すとき、彼はふちと柄が金属の網を使っていました。 Sometimes, a large eel stopped swimming away from the net.ときどき、大きなデンキウナギが、網から逃げるのをやめました。 It jumped out of the water, pressed its chin against the metal, and sent out strong shocks.水から飛び上がり、金属にあごを押しつけて、強い電気を放ったのです。

In 1800, the explorer Alexander von Humboldt was traveling in South America.1800年、探検家アレクサンダー・フォン・フンボルトは南アメリカを旅していました。 He wrote that local people pushed about 30 horses and mules into a pool with electric eels.彼は、地元の人たちが約30頭の馬とラバを、デンキウナギのいる池に追いこんだと書きました。 The eels pressed against the horses and gave them shocks.デンキウナギは馬に体を押しつけて、電気を流しました。 Two horses drowned in less than five minutes.5分もたたないうちに、2頭の馬がおぼれました。 For about 200 years, some scientists did not believe this story.約200年のあいだ、この話を信じない科学者もいました。

Catania measured the shocks.カタニアは、その電気を測りました。 The higher an eel climbed, the stronger the shock became.デンキウナギが高く上るほど、電気は強くなりました。 In water, the electricity spreads out.水の中では、電気は広がってしまいます。 But out of the water, it goes through the animal.でも水の外では、電気は相手の体を通るのです。

In 2017, he put his own arm into a tank with a young eel about 40 centimeters long.2017年、彼は体長約40センチの若いデンキウナギがいる水槽に、自分の腕を入れました。 The electric current reached 40 to 50 milliamps.電流は40〜50ミリアンペアに達しました。 It was enough to cause strong pain, but only in his arm.それは強い痛みを起こすのに十分でしたが、痛んだのは腕だけでした。 He thinks the jump is a way to scare away enemies.彼は、飛び上がるのは敵を追いはらうための方法だと考えています。

Why do eels attack instead of swimming away?デンキウナギはなぜ、泳いで逃げずに攻撃するのでしょうか。 In the dry season, the water goes down, and eels can get trapped in small pools.乾季には水が減り、デンキウナギは小さな池に閉じこめられることがあります。 Then they often cannot escape, so they fight.そうなると逃げられないことが多いので、戦うのです。 Humboldt's pool was also a dry-season pool.フンボルトが見た池も、乾季の池でした。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How long was the young eel in the 2017 test?

    2017年の実験で使った若いデンキウナギの体長はどれくらいでしたか。

  3. Q3Why do eels sometimes fight instead of swimming away?

    デンキウナギはなぜ、泳いで逃げずに戦うことがあるのですか。

  4. Q4In paragraph 2, the word "drowned" is closest in meaning to

    第2段落の drowned という語に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話の内容と合っているのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • biologist名詞
    生物学者

    The biologist studies frogs in the forest.

    その生物学者は森でカエルを研究している。

    💡 biology(生物学)+ -ist(〜する人)。scientist, artist と同じ作り。

  • net名詞
    網

    He caught a fish with a net.

    彼は網で魚をつかまえた。

    💡 インターネットの net も「網の目のようにつながったもの」から。

  • chin名詞
    あご(の先)

    She rested her chin on her hand.

    彼女はほおづえをついた(手にあごをのせた)。

    💡 jaw は「あごの骨全体」、chin は「あごの先」。

  • shock名詞・動詞
    電気ショック、衝撃/ショックを与える

    I got a small shock from the door handle.

    ドアノブで小さな静電気のショックを受けた。

    💡 electric shock で「感電」。日本語の「ショック」と同じく心の衝撃にも使う。

  • explorer名詞
    探検家

    The explorer walked across the desert.

    その探検家は砂漠を歩いて横断した。

    💡 動詞 explore(探検する)+ -er(〜する人)。

  • drown動詞
    おぼれる、おぼれ死ぬ

    Never swim alone, or you may drown.

    一人で泳いではいけない。おぼれるかもしれないから。

    💡 過去形は drowned。発音は「ドゥラウン」。

  • current名詞
    (電気の)電流、(水の)流れ

    The river has a strong current.

    その川は流れが強い。

    💡 electric current で「電流」。形容詞では「今の」(current news)。

  • trap動詞・名詞
    閉じこめる、わなにかける/わな

    The cat was trapped in the box.

    ネコは箱に閉じこめられた。

    💡 be trapped in 〜 で「〜に閉じこめられる」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 52件)。

  1. Catania, K. C. (2016) Leaping eels electrify threats, supporting Humboldt's account of a battle with horses, PNAS 113:6979-6984doi.org
  2. Catania, K. C. (2017) Power Transfer to a Human during an Electric Eel's Shocking Leap, Current Biology 27:2887-2891doi.org
  3. Catania, K. C. (2017) Electrical Potential of Leaping Eels, Brain, Behavior and Evolution 89:262-273doi.org
  4. Catania, K. C. (2019) The Astonishing Behavior of Electric Eels, Frontiers in Integrative Neuroscience 13:23doi.org
  5. de Santana, C. D. ほか (2019) Unexpected species diversity in electric eels with a description of the strongest living bioelectricity generator, Nature Communications 10:4000doi.org
  6. Electric eels make leaping attacks(ヴァンダービルト大学, 2016年)news.vanderbilt.edu
  7. Biologist reaches into electric eel tank, comes out with equation to measure shocks(ヴァンダービルト大学, 2017年)news.vanderbilt.edu
  8. Electric eel(スミソニアン国立動物園)nationalzoo.si.edu

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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