
「飲みこんだガムは7年胃に残る」はウソだが、いつも飲みこむと腸で固まることがある
飲みこんだガムは、消化されずにそのまま出ていく。
この判定の対象「飲みこんだガムは、7年間胃の中に残る」
もくじ
アメリカの小児科の医学誌に、1998年、ある報告がのりました。報告したのは、子どもの胃や腸を専門にする医師デビッド・ミロフたちです。そこには、ガムを飲みこんだために、腸や食道(口から胃へ食べ物を運ぶ管)が詰まってしまった子ども3人の例が書かれていました。
3人のうち2人は、よいことをしたごほうびに、ガムをもらっていました。そして、もらったガムを、いつも飲みこんでいました。2人とも便秘になりました。おなかの中では、ガムが雪だるまのように大きな固まりになっていました。医師は、その固まりを取り出さなければなりませんでした。
「ガムを飲みこむと、7年おなかに残る」。子どものころ、こう言われた人は多いでしょう。では、この3人の例は、うわさが本当だという証拠なのでしょうか。答えは「いいえ」です。
この記事では、まず、飲みこんだガムが普通はどうなるのかを、医師の説明で確かめます。次に、ガムの材料と、胃がガムを押し出すしくみを紹介します。最後に、ガムで本当に困ったことになった人たちの報告を見ていきます。
01胃腸の医師は「7年残る」に根拠がないと言い切った
2007年、アメリカの科学雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』が、このうわさを取り上げました。記事によると、うわさの出どころは分かっていません。それでも、ほとんどの人が知っている話です。
記事の取材に答えたのが、冒頭の報告を書いたミロフです。ミロフは、うわさに根拠がないことは完全に確かだ、と答えました。
ミロフの説明は、こうです。もし本当なら、この7年のうちにガムを飲みこんだ人は全員、消化管(口から肛門までの食べ物の通り道)にガムが残っているはずです。けれども、大腸の内視鏡検査や、カメラを飲みこむ検査で、そんなガムは見つかりません。たまに飲みこんだガムを見かけても、普通は1週間より古いものではない、といいます。
デューク大学病院の消化器の医師ナンシー・マクグリールも、同じ意見です。マクグリールは、子どもや大人の胃をカメラで見る検査をしてきました。けれども、胃の中にガムの固まりが残っているのを見たことは、一度もないそうです。
02ガムの土台は消化されないが、胃や腸にはくっつかない
ガムは、全部が消化されないわけではありません。『サイエンティフィック・アメリカン』によると、甘味料などの成分は分解されます。消化されずに残るのは、かむための土台の部分です。この土台を「ガムベース」と呼びます。
アメリカでは、ガムベースに使ってよい材料が、国の規則で決められています。天然のものでは、木の樹液を固めた「チクル」や、天然ゴムがあります。チクルは、中央アメリカの先住民がかんでいたガムです。人工的に作ったものでは、ブチルゴム、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニルなどがあります。ブチルゴムは、タイヤの中のチューブを作るのにも使われる材料です。
デューク大学病院のマクグリールは、ガムベースは水に溶けないと説明しています。生野菜やトウモロコシ、ポップコーンの粒、種の繊維と同じだ、というのです。人の体には、ガムベースを分解する消化の酵素(食べ物を細かくする物質)がありません。
それでも、ガムは胃や腸の壁にはくっつきません。マクグリールによると、多くの人の胃は、食べてから30〜120分で空になります。ガムも同じです。ガムは食べ物と同じ道を通って、便と一緒に出ていきます。
03空っぽの胃は、90〜120分ごとに強く縮んで、残った物を押し出す
消化されないガムを、胃はどうやって外へ送り出すのでしょうか。ミロフは、消化管の「ふだんの掃除の波」が、ガムを押し出すと説明しています。
胃と小腸には、おなかが空っぽのときにだけくり返される、決まった動きがあります。英語の頭文字をとって「MMC」と呼ばれる動きです。食べ物を食べると、この動きは止まります。この動きは、昔から「腸の掃除係」と呼ばれてきました。
2013年に、アメリカの研究者が総説(それまでの研究をまとめた論文)を書きました。それによると、MMCのうち、いちばん強く縮む時期は、人でも犬でも90〜120分ごとにやってきます。胃のMMCの役目は、空になった胃を、次の食事に向けて掃除することです。胃のこの動きが弱いと、胃の中身が長くとどまってしまうことがあります。
ミロフは、ガムはほかの食べ物よりゆっくり進むかもしれない、と言います。それでも最後には、消化管の掃除の波に押されて、ほとんど元の形のまま出てくるそうです。

04ガムをいつも飲みこんだり、ほかの物と一緒に飲みこんだりすると、固まって詰まる
ただし、ガムを飲みこんでも絶対に安全、というわけではありません。冒頭で紹介した1998年の報告が、その例です。ミロフたちは、ガムをかむ歴史は長いのに、ガムの害についての医学の情報はとても少ない、と書いています。
ごほうびのガムをいつも飲みこんでいた2人の子どもは、ガムが腸の中で少しずつ大きな固まりになりました。固まりは、タフィーというやわらかいあめのようだったといいます。
3人目は、1歳半の女の子でした。この子の食道には、4枚の硬貨が詰まっていました。4枚の硬貨は、かんだガムでくっついて、1つの固まりになっていました。
ミロフは、別の患者の例も語っています。ヒマワリの種を、殻ごと飲みこんだ人です。ミロフがこの人の腸の下のほうを調べると、とげとげした種がガムのまわりに固まっていました。ミロフは、その形を「ヤマアラシのようだった」と表現しています。
深掘り講義
ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。
胃の「掃除の動き」は、食べると止まり、空腹になると始まる
2012年の総説によると、MMCは、おなかが空のときに胃と小腸で起きる、決まった動きのくり返しです。人を含む多くの動物で見られ、食べると止まります。
MMCは、いくつかの時期に分かれます。静かな時期、弱く不規則に縮む時期、そして短いあいだ強く規則正しく縮む時期です。強く縮む時期は、胃の出口に近い所か小腸の入り口から始まり、下のほうへ移っていきます。2013年の総説によると、この強い時期は90〜120分ごとにやってきます。
2013年の総説は、胃のMMCの役目を、空になった胃を次の食事に向けて掃除することだと書いています。ミロフも、消化管の「ふだんの掃除の波」がガムを押し出すと説明しています。
ガムが詰まるのは、たくさん飲みこんだときと、ほかの物と一緒に飲みこんだとき
ミロフによると、たまに飲みこんだガムは、最後には掃除の波に押されて出てきます。問題になるのは、量が多いときや、ほかの物と組み合わさったときです。ごほうびのガムをいつも飲みこんでいた子どもでは、ガムが少しずつ重なって、大きな固まりになりました。硬貨や種の例では、ガムがのりのように働いて、硬貨や種が1つの固まりになってしまいました。
デューク大学医学部の消化器の医師ロジャー・リドルは、こう説明しています。胃から出られないほど大きいか、腸に引っかかったのでなければ、7年もとどまる物はない、というのです。リドルによると、アメリカの25セント硬貨は飲みこんでも普通は出てきますが、もっと大きな硬貨や物は出てこないことがあります。
シュガーレスガムで、11kgやせた女性の報告
ガムで気をつけたいのは、ガムベースだけではありません。2008年、ドイツのベルリンにある大学病院の医師たちが、『BMJ』という医学誌に2人の患者を報告しました。
1人目は21歳の女性です。8か月のあいだ、下痢と腹痛が続き、11kgやせて40.8kgになっていました。いろいろな検査をしても、原因が分かりませんでした。詳しく聞くと、女性はシュガーレスガムを大量にかんでいました。ガムの甘味料であるソルビトールを、1日に18〜20gも取っていたのです。ソルビトールは、ガム1枚に約1.25g入っていました。
ソルビトールは食品に広く使われる甘味料で、おなかをゆるくする性質があります。女性がソルビトールをとるのをやめると、下痢はおさまりました。1年後には、体重が7kg戻っていました。2人目の46歳の男性は、シュガーレスガムを1日20枚かみ、甘いお菓子も1日に最大200g食べていました。ガムとお菓子を合わせたソルビトールは約30gで、男性は1年で22kgやせていました。この男性も、ソルビトールをやめると下痢が止まりました。
7年のうわさは、なぜ消えないのか
うわさがどこから来たのかは、分かっていません。デューク大学病院のマクグリールは、食べ物でない物を飲みこまないよう子どもに教えたかった親たちが広めたのではないか、と推測しています。『サイエンティフィック・アメリカン』の記事も、このうわさには実害がないと書いています。むしろ、ミロフが見たような例を防いでいるかもしれないので、これからも残りそうだ、というのです。ウソの話が、結果として子どもを守る注意になっているのかもしれません。
05まとめ
「飲みこんだガムは7年胃に残る」はウソです。ガムの土台は消化されませんが、胃や腸の壁にはくっつきません。空っぽの胃は90〜120分ごとに強く縮み、消化されない物も腸へ押し出します。飲みこんだガムは、普通は食べ物と同じように便と一緒に出ていきます。
ただし、ごほうびのガムをいつも飲みこんでいた子どもでは、腸の中で大きな固まりになりました。シュガーレスガムを大量にかんで、甘味料のせいで11kgやせた人もいます。次にガムをかむときは、包み紙の原材料に「ソルビトール」と書いてあるか見てみてください。
人に話すなら、こう言おう
飲みこんだガムが7年おなかに残るって、ウソなんだって。消化はされないけど、そのまま出ていくらしい。でも、ごほうびのガムをいつも飲みこんでいた子は、腸で固まって取り出すことになったんだって。
英語で読む
Does Swallowed Gum Stay in Your Stomach for Seven Years?
英文をタップすると、その文の訳が出ます。
Many children hear a warning from their parents.多くの子どもが、親からある注意を聞かされます。 "Don't swallow your gum, or it will stay inside you for seven years!"「ガムを飲みこんじゃだめ。7年もおなかに残るよ!」 Nobody knows where this idea came from.この考えがどこから来たのかは、誰も知りません。 But doctors say it is not true.しかし、医師たちはそれは本当ではないと言います。
Gum is made from a gum base and other things, like sweeteners.ガムは、ガムベースと、甘味料などのほかの材料からできています。 The body can break down the sweeteners.体は甘味料を分解することができます。 But it cannot digest the gum base.しかし、ガムベースは消化できません。 Still, the gum base does not stick to the stomach.それでも、ガムベースは胃にくっつきません。 It moves through the body like food and comes out in about the same shape.食べ物と同じように体の中を進み、ほぼ同じ形で出てきます。
How does the stomach push it out?胃はどうやってガムを押し出すのでしょうか。 When the stomach is empty, it squeezes strongly every 90 to 120 minutes.胃は空っぽのとき、90〜120分ごとに強く縮みます。 These waves clean the stomach before the next meal.この波が、次の食事の前に胃を掃除します。 One doctor said that swallowed gum he sees is usually less than a week old.ある医師は、自分が見かける飲みこまれたガムは、たいてい1週間もたっていないと言いました。
But swallowing a lot of gum can be a problem.しかし、たくさんのガムを飲みこむと問題になることがあります。 In 1998, doctors wrote about three children whose insides were blocked by gum.1998年、医師たちが、ガムでおなかの中などが詰まった3人の子どもについて報告しました。 Two of them got gum as a reward and always swallowed it.そのうち2人は、ごほうびにガムをもらい、いつも飲みこんでいました。 The gum became a big mass like soft candy, and doctors had to take it out.ガムはやわらかいあめのような大きな固まりになり、医師が取り出さなければなりませんでした。 In a girl of one and a half, gum held four coins together in her food pipe.1歳半の女の子では、ガムが4枚の硬貨をくっつけて、食道に詰まらせていました。
Sugar-free gum has its own risk.シュガーレスガムには、また別の危険があります。 A young woman in Germany chewed so much of it that she lost 11 kilograms.ドイツの若い女性は、シュガーレスガムをあまりにたくさんかんだため、11キロやせてしまいました。 A sweetener in the gum gave her diarrhea for months.ガムの甘味料のせいで、何か月も下痢が続いたのです。
4択問題 Reading Quiz
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Q1What is this story mainly about?
この話は主に何についてのものですか。
正解:B What really happens to swallowed gum
第1段落で7年のうわさを紹介し、第2〜5段落で飲みこんだガムが体の中でどうなるかを説明しているので正解はB。Aのガムの材料は第2段落に少し出るが、工場での作り方は書かれていない。
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Q2How often does an empty stomach squeeze strongly?
空っぽの胃は、どのくらいの間隔で強く縮みますか。
正解:C Every 90 to 120 minutes
第3段落の2文目に「空っぽの胃は90〜120分ごとに強く縮む」とあるので正解はC。Aの7年はうわさの数字、Bの1週間は医師が見かけるガムの古さの話。
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Q3Why did two children in the 1998 report need doctors to take out the gum?
1998年の報告で、2人の子どもが医師にガムを取り出してもらう必要があったのはなぜですか。
正解:A They always swallowed the gum they got as a reward.
第4段落の3〜4文目に、ごほうびのガムをいつも飲みこみ、大きな固まりになったとあるので正解はA。Cの硬貨は3人目の1歳半の女の子の話で、ガムに硬貨が入っていたわけではない。
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Q4In paragraph 4, the word "reward" is closest in meaning to ...
第4段落の reward という語にいちばん近い意味はどれですか。
正解:D something you get for doing well
第4段落で「reward としてガムをもらった」とあり、よいことをしてもらうもの(ごほうび)の意味なので正解はD。Bの罰は反対の意味。
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Q5Which is true according to the story?
本文の内容に合うものはどれですか。
正解:C Sugar-free gum can cause problems if you chew too much.
第5段落に、シュガーレスガムをかみすぎた女性が下痢で11キロやせたとあるので正解はC。Aは第2段落3文目、Bは第2段落4文目と合わない。Dは第1段落3文目「誰も知らない」と合わない。
重要語 Key Words(タップで裏返る)
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swallow動詞飲みこむ
Chew your food well before you swallow it.
飲みこむ前に、食べ物をよくかみなさい。
💡 名詞の swallow は鳥の「ツバメ」。
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digest動詞消化する
Babies cannot digest some foods yet.
赤ちゃんはまだ消化できない食べ物がある。
💡 名詞は digestion(消化)。「(話を)よく理解する」の意味もある。
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sweetener名詞甘味料
This drink has no sugar, but it has a sweetener.
この飲み物に砂糖は入っていないが、甘味料は入っている。
💡 sweet(甘い)+ -en(〜にする)+ -er(もの)。
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stick動詞くっつく
The tape will not stick to wet paper.
テープはぬれた紙にはくっつかない。
💡 活用は stick – stuck – stuck。名詞では「棒」。
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squeeze動詞ぎゅっと縮める、しぼる
She squeezed a lemon into her tea.
彼女は紅茶にレモンをしぼった。
💡 squeeze into ~で「~に無理に入りこむ」。
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reward名詞ごほうび、報酬
He got a reward for finding the lost dog.
彼は迷子の犬を見つけてごほうびをもらった。
💡 動詞で「ほうびを与える」。反対は punishment(罰)。
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mass名詞固まり
There was a mass of snow on the roof.
屋根の上に雪の固まりがあった。
💡 「大量」の意味も。mass media は「大衆向けのメディア」。
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diarrhea名詞下痢
Bad water can give people diarrhea.
汚れた水は下痢の原因になることがある。
💡 発音は「ダイアリーア」。アメリカつづり。イギリスでは diarrhoea。
SOURCES出典・ウラ取り
この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 27件)。
- Matson, J. (2007) Fact or Fiction?: Chewing Gum Takes Seven Years to Digest, Scientific Americanscientificamerican.com
- Milov, D. E. et al. (1998) Chewing gum bezoars of the gastrointestinal tract, Pediatricsdoi.org
- Myth or Fact: It Takes Seven Years to Digest Chewing Gum(デューク大学病院 Duke Health)dukehealth.org
- 21 CFR 172.615 Chewing gum base(米国連邦規則集 eCFR)ecfr.gov
- Takahashi, T. (2013) Interdigestive migrating motor complex: its mechanism and clinical importance, Journal of Smooth Muscle Researchdoi.org
- Deloose, E. et al. (2012) The migrating motor complex: control mechanisms and its role in health and disease, Nature Reviews Gastroenterology & Hepatologydoi.org
- Deloose, E. & Tack, J. (2016) Redefining the functional roles of the gastrointestinal migrating motor complex and motilin, American Journal of Physiology: Gastrointestinal and Liver Physiologydoi.org
- Bauditz, J. et al. (2008) Severe weight loss caused by chewing gum, BMJdoi.org
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