【朗報?】「地上の太陽」はついに“点火”した。それでも核融合発電がまだ先のワケ

読む前に予想してみよう!
核融合の実験で、燃料に当てたレーザーより多いエネルギーが出たことがある
2022年12月、米国のNIFで、約2.05MJのレーザー照射に対し約3.15MJの核融合エネルギーが得られた。
- 対象
- 米国立点火施設(NIF)の慣性核融合実験
- 規模
- 1回の実験(その後も複数回再現)
- 研究の種類
- 実験研究・公的機関の発表
- 確かさ
- ★★★★☆
2022年、米国の実験で核融合の出力が投入したレーザーのエネルギーを初めて上回った。ただ装置全体では大赤字で、発電所の実現にはまだ長い道のりがある。
ひとことで言うと太陽と同じ仕組みで電気を作る研究。大きな一歩、でもゴールはまだ先!
太陽が何十億年も燃え続けられるのはなぜか知っていますか?
答えは核融合。太陽の中心では、軽い原子どうしがぶつかって合体し、そのとき莫大なエネルギーが生まれています。この仕組みを地球の上で再現して電気を作ろう――それが「地上の太陽」こと核融合発電です。
2022年、この夢に向けて歴史的なニュースが飛び込んできました。でも同時に、「発電所はまだずっと先」とも言われています。いったいどういうことなのでしょう?
01太陽は「合体」でエネルギーを生む
原子力発電所は、重いウランの原子を割る(核分裂)ことでエネルギーを取り出します。核融合はその逆で、軽い水素の仲間をくっつけるのです。
地上でよく狙われているのは、重水素と三重水素(どちらも水素の仲間)の組み合わせ。うまく合体させるには、燃料を1億度以上の超高温にして、原子どうしを猛スピードでぶつける必要があります。
問題は、そんな超高温の燃料を入れておける容器がこの世に存在しないこと。そこで研究者は、主に2つの作戦を考えました。
- 磁場で浮かせて閉じ込める:ドーナツ型の装置(トカマク型など)で、燃料を磁石の力で宙に浮かせる
- 一瞬で押しつぶす:燃料の小さな粒に、四方から強力なレーザーを当てて一瞬で圧縮・加熱する
022022年12月、ついに「点火」
これは「核融合の火がちゃんと燃えることを証明した」という意味で、本当に大きな一歩です。NIFはその後も点火をくり返し、2025年4月には、約2.08メガジュールのレーザーで約8.6メガジュール(燃料に当てたエネルギーの約4倍)という記録を出しています。

03でも装置全体では「大赤字」
ただし、ここに落とし穴があります。
発電所として成り立つには、さらにこんな課題を越える必要があります。
- 実験は1回ごと。発電には1秒に何回も連続で点火し続ける必要がある
- 核融合で飛び出す強い中性子に耐える丈夫な壁の材料
- 燃料の三重水素を、装置の中で自分で作り出す仕組み
- 熱を電気に変えて、全体として本当に黒字にすること
磁場で閉じ込める方式でも、フランスで日本・EU・米国など7つの国と地域が協力する巨大実験炉 ITER(イーター) の建設が進んでいます。ただ計画はたびたび見直され、2024年に発表された新しい計画では、研究運転の開始が2034年、本番の燃料(重水素と三重水素)を使う運転が2039年とされています(執筆時点)。日本の茨城県那珂市では、2023年に実験装置 JT-60SA が初めてプラズマを作ることに成功しました。最近は、ベンチャー企業による挑戦も世界中で増えています。
04まとめ
核融合は2022年、「燃料に入れたより多いエネルギーを出す」という点火の壁を越えました。でも、発電所として電気を送り出すには、まだいくつもの山があります。
「いつ実現?」の答えは、専門家の間でも意見が分かれます。ニュースを見るときは、「何と比べて黒字なのか」に注目すると、成果の大きさが正しく見えてきます。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Sun shines because light atoms join together in a process called nuclear fusion.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
The Sun makes energy by joining small atoms together. This is called nuclear fusion. Scientists want to make electricity in the same way. In December 2022, an experiment in the United States produced more energy than the laser energy that hit the fuel. This was a big step.
But the lasers used much more electricity from the power supply. A fusion power plant is still many years away.
68 words ・ CEFR A2
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太陽は小さな原子をくっつけることでエネルギーを作っています。これは核融合と呼ばれます。科学者たちは同じ方法で電気を作りたいと考えています。2022年12月、アメリカの実験で、燃料に当たったレーザーのエネルギーより多くのエネルギーが生まれました。これは大きな一歩でした。
しかし、レーザーは電源からずっと多くの電気を使っていました。核融合発電所はまだ何年も先です。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
核融合実験の大きな成果と、発電所がまだ先である理由が主題なので C。
Q2. How does the Sun make energy?
The Sun makes energy by joining small atoms together. とあるので A。原子を割るのは核分裂。
Q3. In this passage, "produced" means ...
produce は「生み出す・作る」。実験がエネルギーを生み出した、という意味なので B。
The Sun shines because light atoms join together in a process called nuclear fusion. Scientists hope to copy this process on Earth to make clean electricity. To do this, fuel must be heated to over 100 million degrees, and no ordinary container can hold it. One method uses magnets to keep the fuel floating, while another squeezes a tiny fuel pellet with powerful lasers.
On December 5, 2022, the National Ignition Facility in the US fired about 2.05 megajoules of laser energy at fuel and produced about 3.15 megajoules of fusion energy. This achievement is called "ignition." However, running the lasers required about 300 megajoules of electricity, so the whole system was still far from producing more energy than it used.
121 words ・ CEFR B1
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太陽が輝くのは、核融合と呼ばれる過程で軽い原子がくっつくからです。科学者たちは、この過程を地球上で再現してクリーンな電気を作りたいと考えています。そのためには燃料を1億度以上に加熱しなければならず、普通の容器ではそれを入れておけません。ある方法は磁石を使って燃料を浮かせておき、別の方法は強力なレーザーで小さな燃料の粒を押しつぶします。
2022年12月5日、米国の国立点火施設は燃料に約2.05メガジュールのレーザーエネルギーを当て、約3.15メガジュールの核融合エネルギーを生み出しました。この成果は「点火」と呼ばれます。しかし、レーザーを動かすには約300メガジュールの電気が必要だったので、システム全体としては、使ったより多くのエネルギーを生み出すにはほど遠い状態でした。
4択リーディングクイズ
Q1. Why can't fusion fuel be kept in an ordinary container?
fuel must be heated to over 100 million degrees, and no ordinary container can hold it とあるので A。
Q2. How much fusion energy was produced on December 5, 2022?
produced about 3.15 megajoules of fusion energy とあるので D。2.05はレーザー、300は電源側の電気。
Q3. What does the last sentence suggest?
電源側で約300MJ使っており、全体ではまだ大赤字なので、点火は重要でも実用化は遠いと読める。正解は C。
Nuclear fusion, the process that powers the Sun, releases enormous energy when light nuclei such as deuterium and tritium combine. Reproducing it on Earth requires heating fuel above 100 million degrees, so researchers either confine the plasma with magnetic fields or compress tiny fuel capsules with lasers. On December 5, 2022, the US National Ignition Facility directed about 2.05 megajoules of laser energy onto a target and obtained about 3.15 megajoules of fusion energy, achieving ignition after decades of effort; by April 2025 it had reached about 8.6 megajoules.
However, the word "gain" requires careful interpretation. The gain refers only to the energy delivered to the target, whereas the lasers drew roughly 300 megajoules from the grid, so the facility as a whole remained deeply in deficit. A power plant would also need to ignite fuel many times per second rather than about once a day, develop wall materials that withstand intense neutron bombardment, breed its own tritium and convert heat into electricity efficiently. Magnetic confinement faces similar engineering hurdles: the international ITER project in France now plans research operations in 2034 and deuterium-tritium operation in 2039.
187 words ・ CEFR B2
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太陽を動かしている過程である核融合は、重水素や三重水素のような軽い原子核が結合するときに莫大なエネルギーを放出します。これを地球上で再現するには燃料を1億度以上に加熱する必要があるため、研究者たちは磁場でプラズマを閉じ込めるか、レーザーで小さな燃料カプセルを圧縮します。2022年12月5日、米国の国立点火施設は標的に約2.05メガジュールのレーザーエネルギーを当てて約3.15メガジュールの核融合エネルギーを得て、数十年の努力の末に点火を達成しました。2025年4月までには約8.6メガジュールに達しました。
しかし、「利得」という言葉は慎重に解釈する必要があります。利得は標的に届けられたエネルギーだけを基準にしたもので、レーザーは送電網からおよそ300メガジュールを引き出していたので、施設全体としては大幅な赤字のままでした。発電所にはさらに、1日に1回程度ではなく1秒に何回も燃料を点火すること、強烈な中性子の衝突に耐える壁の材料を開発すること、自ら三重水素を増殖させること、そして熱を効率よく電気に変えることも必要です。磁場閉じ込め方式も同様の工学的な障害に直面しています。フランスの国際プロジェクトITERは現在、2034年に研究運転、2039年に重水素・三重水素運転を計画しています。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, why does the word "gain" require careful interpretation?
The gain refers only to the energy delivered to the target, whereas the lasers drew roughly 300 megajoules from the grid とあるので B。
Q2. Which is NOT mentioned as a requirement for a fusion power plant?
毎秒何回もの点火・中性子に耐える壁・三重水素の自己増殖・熱から電気への変換は書かれているが、ウランを燃料にすることは書かれていない(ウランは核分裂)ので D。
Q3. What does the information about ITER suggest?
磁場閉じ込めも同様の障害に直面し、ITERの重水素・三重水素運転は2039年予定とあるので、こちらも発電までの道は長いと読める。正解は A。
重要単語
- nuclear fusionB2名詞(句)核融合Nuclear fusion powers the Sun.
fuse(溶けて一つになる)の名詞 fusion。反対の nuclear fission(核分裂)とセットで覚える。 - ignitionC1名詞点火NIF achieved ignition in December 2022.
動詞 ignite(火をつける)。ign- は「火」(ラテン語 ignis)。車の ignition key「イグニッションキー」も同じ。 - plasmaC1名詞プラズマ(超高温の電離ガス)The plasma is hotter than the center of the Sun.
固体・液体・気体に次ぐ「物質の第4の状態」。医学では「血漿」の意味もある。 - neutronC1名詞中性子Fast neutrons damage the reactor walls.
neutral(中立の)+-on。proton(陽子)・electron(電子)と三点セット。 - net energy gainC1名詞(句)正味のエネルギー利得A power plant needs a real net energy gain.
net は「正味の」(net income「純利益」)。何と比べた gain なのかを確認するのが記事のポイント。 - deficitC1名詞赤字、不足The facility as a whole was still in deficit.
反対は surplus(黒字・余剰)。trade deficit「貿易赤字」は時事英語の頻出語。 - confineC1動詞閉じ込める、限定するMagnets confine the hot plasma.
be confined to ~「~に限られる」も頻出。名詞 confinement。
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核融合の実験で、燃料に当てたレーザーより多いエネルギーが出る「点火」に2022年ついに成功。…ただしレーザーを動かすのに使った電気は桁違いに多く、装置全体ではまだ大赤字らしい。
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- Abu-Shawareb et al. (Indirect Drive ICF Collaboration) (2024) Achievement of Target Gain Larger than Unity in an Inertial Fusion Experiment, Physical Review Lettersdoi.org
- Lawrence Livermore National Laboratory: Achieving Fusion Ignitionlmf.llnl.gov
- Knaster, Moeslang & Muroga (2016) Materials research for fusion, Nature Physicsdoi.org
- ITER Organization(公式)iter.org
- 量子科学技術研究開発機構(QST): 先進プラズマ研究開発(JT-60SA)qst.go.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









