【共通テストに出たテーマ】「音を聞くシャツ」の試作に成功。MITの布マイクは心音まで拾う

読む前に予想してみよう!
MITの音響ファブリックは、音を聞くだけでなく、逆に音を出すこともできる
電気信号を振動に変えれば、布がスピーカーのように音を出すこともできると報告されている。
- 対象
- 試作した布・衣服
- 規模
- 実験室での性能試験
- 研究の種類
- 工学的実証研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
MITが、布そのものがマイクになる繊維を開発。シャツに縫い込むと心臓の音を拾い、拍手の方向もわかった。洗濯機で洗えるのもポイント。
ひとことで言うと布が耳みたいに音を聞ける!シャツで心臓の音もキャッチできるんだって。
服は、体を包んで温めたり守ったりするもの。……そんな常識が、いま書き換えられつつあります。
アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)が、布そのものがマイクになる技術を開発しました。シャツの裏地に縫い込めば、心臓の鼓動の音まで聞き取れるというのです。
こうした「スマートファブリック(賢い布)」は、2024年度の大学入学共通テスト(追試験)英語リーディングでも長文のテーマになりました。
01ヒントは「耳の仕組み」だった
この設計のお手本は、私たちの耳です。耳では、鼓膜が空気の振動(音)を受け止めて揺れ、その揺れを奥の蝸牛(かぎゅう)が電気信号に変えて脳に送ります。MITの布は、布が鼓膜、繊維が蝸牛の役割を果たしているわけです。
ふつう布は音を「吸収する」素材。カーテンが部屋を静かにするのはそのためです。その布に「聞く力」を持たせたのは、まさに発想の逆転でした。
02シャツで心音、拍手の方向もわかる
研究チームは、この布を使ってさまざまなテストをしました。
- シャツの裏地に繊維を縫い込むと、着ている人の心臓の音の細かな特徴まで捉えられた
- 繊維を2本使うと、パンと手をたたいた音がどの方向から来たかを割り出せた
- 静かな図書館くらいの小さな音から、交通量の多い道路くらいの大きな音まで拾えた
- 逆に電気信号を送ると、布が震えてスピーカーのように音を出すこともできた
しかも、ふつうの布のように洗濯機で洗えて、しなやか。ここが「機械を服に貼り付ける」従来のウェアラブル機器との大きな違いです。

03「冷やす服」も登場している
賢い布は、音だけではありません。中国・華中科技大学などのチームは、日光をはね返し、体の熱を宇宙へ逃がす特殊な布(メタファブリック)を開発しました(Science, 2021)。太陽光を約92%反射し、熱を出す力(放射率)も約95%と高く、屋外の実験では、この布で覆った体は綿の布より約4.8℃低く保たれたと報告されています。
電気を使わずに涼しくなる服は、暑さが厳しくなる地球で大きな武器になるかもしれません。
04まとめ
服が「聞く」、服が「冷やす」。布は今、ただの素材から情報を集めて働く道具へと変わり始めています。
10年後のあなたのシャツは、心臓の音を見守り、熱中症から体を守ってくれているかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFabric usually absorbs sound, which is why curtains make a room quieter.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Clothes usually keep us warm. Now they can also listen! Engineers at MIT made a special fiber that turns sound into electric signals. They put it inside cloth. When sound hits the cloth, it shakes a tiny bit, and the fiber changes this shaking into a signal.
A shirt with this fiber could hear a person's heartbeat. It could also tell where a hand clap came from. You can even wash it in a washing machine.
76 words ・ CEFR A2
和訳を見る
服はふつう私たちを温かく保つものです。でも今、服は音を聞くこともできるのです!MITの技術者たちは、音を電気信号に変える特別な繊維を作りました。彼らはそれを布の中に入れました。音が布に当たると布はほんの少し震え、繊維がその震えを信号に変えます。
この繊維の入ったシャツは、人の心臓の鼓動を聞くことができました。拍手がどこから聞こえたのかもわかりました。洗濯機で洗うことさえできます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
音を電気信号に変える繊維で、布が音を「聞く」ようになった話なので C。
Q2. What could the shirt hear?
A shirt with this fiber could hear a person's heartbeat. とあるので A。
Q3. In this passage, a "signal" is ...
turns sound into electric signals とあり、音を電気の形の情報に変えたものなので D。signal は「合図、信号」。
Fabric usually absorbs sound, which is why curtains make a room quieter. But Professor Fink's team at MIT turned fabric into a microphone. They wove a single special fiber into cotton cloth. This fiber is piezoelectric: it produces electricity when it is pressed or bent. When sound hits the fabric, the whole cloth vibrates very slightly, and the fiber converts these vibrations into electrical signals.
The design was inspired by the human ear, where the eardrum vibrates and the cochlea changes the vibrations into signals for the brain. A shirt with the fiber could detect heart sounds, and with two fibers, the team could find the direction of a hand clap.
111 words ・ CEFR B1
和訳を見る
布はふつう音を吸収します。だからカーテンは部屋を静かにするのです。しかしMITのフィンク教授のチームは、布をマイクに変えました。彼らは1本の特殊な繊維を綿の布に織り込みました。この繊維は圧電性で、押されたり曲げられたりすると電気を生み出します。音が布に当たると布全体がごくわずかに振動し、繊維がその振動を電気信号に変換します。
この設計は人間の耳から着想を得たものです。耳では鼓膜が振動し、蝸牛がその振動を脳への信号に変えます。この繊維の入ったシャツは心臓の音を検出でき、繊維を2本使うと、チームは拍手の方向を突き止めることができました。
4択リーディングクイズ
Q1. What does a piezoelectric fiber do?
コロンの後で it produces electricity when it is pressed or bent と定義されているので B。
Q2. In the comparison with the ear, which part of the MIT design plays the role of the eardrum?
耳では鼓膜が振動し、蝸牛が信号に変える。MITの布では布全体が振動し、繊維が信号に変えるので、鼓膜にあたるのは布。D が正解。
Q3. Why is the MIT fabric surprising?
第1文で布はふつう音を吸収すると述べ、But で「布をマイクに変えた」と対比しているので A。
Fabrics have traditionally protected and warmed the body, and they are usually good at absorbing sound. In a 2022 paper in Nature, Fink and colleagues at MIT reversed that role by turning cloth into a sensitive microphone. They wove a single piezoelectric fiber, which generates an electrical charge when strained, into a fabric along with stiff threads. Sound waves cause the entire fabric to vibrate on a nanometer scale, and the fiber converts these vibrations into electrical signals.
The design was inspired by the human ear, with the fabric acting like the eardrum and the fiber like the cochlea. Sewn into the lining of a shirt, the fiber captured detailed features of the wearer's heartbeat; two fibers made it possible to locate the direction of a clap, and when driven by an electrical signal, the fabric could even emit sound like a speaker.
Unlike earlier wearable devices attached to clothing, the fabric remained flexible and machine-washable. Other smart textiles are emerging too: a 2021 'metafabric' reflected about 92 percent of sunlight and kept a covered body about 4.8°C cooler than cotton outdoors. These are all laboratory demonstrations, though, and medical accuracy and long-term durability have yet to be tested.
199 words ・ CEFR B2
和訳を見る
布は昔から体を守り温めるものであり、ふつうは音を吸収するのが得意です。Nature誌の2022年の論文で、MITのフィンクらは、布を高感度のマイクに変えることで、その役割を逆転させました。彼らは、ひずみを受けると電荷を生み出す圧電性の繊維1本を、硬い糸とともに布に織り込みました。音波によって布全体がナノメートル単位で振動し、繊維がその振動を電気信号に変換します。この設計は人間の耳に着想を得たもので、布が鼓膜、繊維が蝸牛のように働きます。
シャツの裏地に縫い込むと、繊維は着ている人の心臓の鼓動の細かな特徴を捉えました。2本の繊維を使えば拍手の方向を突き止めることができ、電気信号を送ると、布はスピーカーのように音を出すことさえできました。
服に取り付ける従来のウェアラブル機器と違い、この布はしなやかなままで、洗濯機で洗うこともできました。他のスマート繊維も登場しています。2021年の「メタファブリック」は太陽光の約92%を反射し、屋外で覆った体を綿より約4.8℃涼しく保ちました。ただし、これらはすべて実験室での実証であり、医療用としての精度や長期的な耐久性はまだ検証されていません。
4択リーディングクイズ
Q1. In what sense did the MIT team "reverse" the usual role of fabric?
布はふつう音を吸収するが、reversed that role by turning cloth into a sensitive microphone とあるので D。
Q2. What advantage over earlier wearable devices is mentioned?
Unlike earlier wearable devices attached to clothing, the fabric remained flexible and machine-washable とあるので B。
Q3. What can be inferred about the current stage of this technology?
最終文 These are all laboratory demonstrations, though, and medical accuracy and long-term durability have yet to be tested から C。have yet to be tested は「まだ検証されていない」。
重要単語
- fabricB2名詞布地、織物This fabric is light and washable.
the fabric of society「社会の構造」という比喩的な意味でも長文に出る。textile も同義。 - piezoelectricC1形容詞圧電性の(力を電気に変える)A piezoelectric material turns pressure into electricity.
piezo はギリシャ語で「押す」。ライターの着火やセンサーに使われる性質。 - vibrationB2名詞振動Sound travels as a vibration in the air.
動詞は vibrate。スマホの「バイブ」もこの語から。 - wearableB2形容詞身に着けられるWearable devices can track our health.
wear+-able。wearable technology は科学技術系長文の頻出テーマ。 - convertB2動詞変換するThe fiber converts vibrations into electrical signals.
convert A into B「AをBに変える」の語法が頻出。名詞 conversion。 - emissivityC1名詞放射率High emissivity helps a fabric release heat.
emit(放出する)の関連語。emission(排出)は CO2 emissions で環境系長文の必須語。 - detectB2動詞検出する、見つけるThe shirt could detect heart sounds.
名詞 detection、detective(探偵)も同語源。discover / notice との言い換えに注意。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
公式・一次情報をチェック
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
MITが「布そのものがマイクになる」繊維を開発したらしい。シャツの裏に縫い込むと心臓の鼓動を拾えて、拍手した方向まで特定。しかも洗濯機OK。服が「聞く」時代、もう来てる。共通テスト英語にも出たテーマ。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(3件)タップで表示
- Yan et al. (2022) Single fibre enables acoustic fabrics via nanometre-scale vibrations, Naturedoi.org
- Song (2022) A smart sensor that can be woven into everyday life, Nature(News & Views)doi.org
- Zeng et al. (2021) Hierarchical-morphology metafabric for scalable passive daytime radiative cooling, Sciencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









