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人間に似せるほど「なんか怖い」。ロボットの“不気味の谷”は1970年の日本生まれ

人間に似せるほど「なんか怖い」。ロボットの“不気味の谷”は1970年の日本生まれ

読む前に予想してみよう!

「不気味の谷」は日本のロボット工学者が提唱した考え方だ

研究カード(どんな研究?)
対象
ロボットの顔写真を評価した成人参加者
規模
実在ロボット80体の顔・数百人規模
研究の種類
実験研究・レビュー
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ロボットが人間に似てくると親しみが増すのに、「ほぼ人間」の手前で急に不気味に感じる。これが不気味の谷。1970年に日本のロボット工学者・森政弘が提唱した。

ひとことで言うと人間に「ちょっとだけ似てない」ロボットが一番こわい!

もくじ
  1. グラフに現れる“谷”
  2. 本当に“谷”はあるのか? 実験してみた
  3. なぜ“ほぼ人間”は怖いのか
  4. まとめ

かわいいロボット掃除機には愛着がわくのに、人間そっくりのロボットを見ると、なぜか背筋がゾワッとする――。

この奇妙な感覚には名前があります。「不気味の谷」です。

実はこの言葉、海外の研究者が言い出したものではありません。1970年に日本のロボット工学者が提唱した考えが、半世紀かけて世界中に広まったものなのです。

01グラフに現れる“谷”

1970年、東京工業大学の教授だった森政弘は、雑誌『Energy』に短いエッセイを書きました。その中で示したのが、こんなグラフです。

  • 横軸:ロボットが人間にどれだけ似ているか
  • 縦軸:人がどれだけ親しみを感じるか

工場の産業用ロボットより、手足のあるおもちゃのロボットの方が親しみやすい。人に似るほど親しみは増していきます。ところが「ほとんど人間だけど、どこか違う」ところまで来ると、親しみが急降下して不気味さに変わる。そして本物の人間と見分けがつかなくなると、また親しみが戻る――。

このグラフの落ち込みが“谷”に見えることから、「不気味の谷」と名付けられました。

人に似るほど親しみは増すが、「ほぼ人間」の手前に深い谷がある。
人に似るほど親しみは増すが、「ほぼ人間」の手前に深い谷がある。

森は、動きが加わると谷がさらに深くなるとも考えました。止まっていればそれなりに見えても、動いた瞬間に違和感が増すことがあるからです。

02本当に“谷”はあるのか? 実験してみた

森のエッセイはデータに基づく研究ではなく、鋭い“洞察”でした。2000年代半ばになると英訳が研究者の間で出回り、世界中の研究者が「本当に谷はあるのか」を確かめ始めます。森自身が認めた正式な英訳は、2012年に IEEE の学術誌に掲載されました。

ただし、どんな条件でも必ず谷が出るわけではなく、研究によって結果はまちまちです。「谷は一本の曲線ではなく、もっと複雑なもの」という見方もあります。

03なぜ“ほぼ人間”は怖いのか

理由にはいくつかの説があり、まだ決着はついていません。

  • 「どっち?」問題:人間かロボットか脳が分類に迷い、そのモヤモヤが不快感になる
  • ちぐはぐ問題:見た目はリアルなのに、まばたきや表情の動きが不自然、というズレが気になる
  • 病気を避ける本能説:「どこか様子がおかしい人」を避けようとする心のしくみが反応している

04まとめ

不気味の谷は、日本で生まれ、世界のロボット・CG・ゲーム開発者がいまも意識している考え方です。あえて人間に似せすぎず、かわいい・ロボットらしいデザインを選ぶのも、谷を避ける知恵なのです。

次にロボットやCGキャラを見て「なんか怖い」と思ったら、それはあなたの脳が谷底をのぞき込んでいるサインかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy do we love a cute robot vacuum but feel a chill when we see a robot that looks almost exactly like a… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Why do we love a cute robot vacuum but feel a chill when we see a robot that looks almost exactly like a person? In 1970, Japanese robotics engineer Masahiro Mori described this feeling in a short essay. He drew a graph showing that people feel more affinity toward robots as they become more humanlike.

However, when a robot is almost human but slightly different, the feeling suddenly drops and turns into eeriness. Because the drop looks like a valley on the graph, it is called the "uncanny valley." Mori also thought that movement could make the valley deeper. His essay was based on insight, not data, but a 2016 experiment using photos of 80 real robot faces found a valley-like pattern.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

なぜ私たちは、かわいいロボット掃除機は大好きなのに、ほとんど人間そっくりのロボットを見るとぞっとするのでしょうか?1970年、日本のロボット工学者である森政弘は、短いエッセイでこの感覚を説明しました。彼は、ロボットが人間らしくなるほど人は親しみを感じるようになることを示すグラフを描きました。

しかし、ロボットがほとんど人間なのに少しだけ違うと、その感情は急に落ち込み、不気味さに変わります。その落ち込みがグラフ上の谷のように見えるので、「不気味の谷」と呼ばれています。森はまた、動きが加わると谷がより深くなりうると考えました。彼のエッセイはデータではなく洞察に基づくものでしたが、実在する80体のロボットの顔写真を使った2016年の実験で、谷のようなパターンが見つかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Mori's graph show?

Q2. What did Mori think about movement?

Q3. What does the last sentence suggest about Mori's idea?

重要単語

  • uncannyC1
    形容詞不気味な、尋常でないThe robot's smile looked uncanny. un-(否定)+canny(わかっている)=「説明のつかない」。an uncanny ability「不思議なほどの才能」というプラスの用法もある。
  • humanlikeB2
    形容詞人間らしいHumanlike robots can make people uneasy. 名詞+-like で「~のような」。childlike, lifelike(真に迫った)も同じ作り。
  • eerieC1
    形容詞気味の悪いSomething about the face felt eerie. 名詞 eeriness。creepy(ぞっとする)は口語的、eerie はやや文語的。
  • likabilityC1
    名詞好感度Likability dropped for almost-human faces. likable(好感の持てる)+-ity。英国つづりは likeability。
  • mismatchB2
    名詞ずれ、不一致A mismatch between face and movement feels strange. mis-(誤って)+match。a mismatch between A and B の形で使う。
  • affinityC1
    名詞親しみ、親近感People feel more affinity toward cute robots. affinity for / with / toward ~「~への親しみ」。化学では「親和性」。
  • empiricalC1
    形容詞実証的な、経験に基づくMori's essay offered no empirical evidence. empirical evidence / study は研究系長文の超頻出語。theoretical(理論的な)と対比される。

動画でもっと知る

ロボットは人間に似るほど親しみがわくのに、「ほぼ人間」の一歩手前でいきなり怖くなる“不気味の谷”。これ、1970年に日本のロボット工学者が提唱した考えで、いまや世界の常識になってるらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Mori, MacDorman & Kageki (2012) The Uncanny Valley [From the Field], IEEE Robotics & Automation Magazinedoi.org
  2. Mathur & Reichling (2016) Navigating a social world with robot partners: A quantitative cartography of the Uncanny Valley, Cognitiondoi.org
  3. Kätsyri et al. (2015) A review of empirical evidence on different uncanny valley hypotheses: support for perceptual mismatch as one road to the valley of eeriness, Frontiers in Psychologydoi.org
  4. Wang, Lilienfeld & Rochat (2015) The Uncanny Valley: Existence and Explanations, Review of General Psychologydoi.org
  5. Nightingale & Farid (2022) AI-synthesized faces are indistinguishable from real faces and more trustworthy, PNASdoi.org