学習ハックホント

「あとで人に教える」と思って勉強するだけで成績アップ。ただしカンペを見たら効果が消えた

「あとで人に教える」と思って勉強するだけで成績アップ。ただしカンペを見たら効果が消えた

読む前に予想してみよう!

人に教えて勉強するときは、メモを見ながら説明した方が学習効果が高い

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生
規模
数十〜100人規模の実験+39研究のメタ分析
研究の種類
実験研究+メタ分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

「人に教えるつもり」で学ぶと整理されて記憶に残る。さらに実際に教えるなら、メモを見ずに説明するのがカギだった。

ひとことで言うと「先生役」になったつもりで勉強すると、よく覚えられる!

もくじ
  1. 「教えるつもり」だけで、覚え方が変わる
  2. カンペを見ながら教えると、効果が消えた
  3. 家で一人でもできる「先生ごっこ」
  4. 教えると「わかったつもり」も見破れる
  5. まとめ

「教えることは二度学ぶこと」。昔からそう言われますが、これ、ちゃんと実験で確かめられているんです。

人に教えるつもりで勉強すると、自分の理解も深まる。この現象はプロテジェ効果と呼ばれることがあります。この名前は、2009年に米スタンフォード大学のチェイスらが、子どもがコンピューター上の「生徒役キャラクター」に教えるとき、自分のため以上に一生懸命学ぼうとした現象を報告したことで広まりました。プロテジェとはフランス語由来の言葉で「弟子・教え子」のこと。教え子がいると、先生側が伸びるというわけです。

ただし、最近の研究で「教え方」によって効果がまるで変わることも分かってきました。

01「教えるつもり」だけで、覚え方が変わる

教えるつもりになると、人は自然と「どこが大事か」「どういう順で話そうか」と考えながら読みます。この頭の中で整理する作業が、記憶を強くしたと考えられています。

02カンペを見ながら教えると、効果が消えた

では実際に教えると、なぜ効くのか。2018年、シンガポール国立大学のコーらが面白い実験をしました。

同じ「教える」でも、手元を見るかどうかで中身が違う
同じ「教える」でも、手元を見るかどうかで中身が違う

学んだあとに、①メモなしで教える、②メモを見ながら教える、③教えずに思い出す練習だけする、④関係ない計算問題をする、のグループに分けたんです。

1週間後のテストで成績が良かったのは、①メモなしで教えた人と、③思い出す練習をした人。メモを見ながら教えた人は、計算問題をしていた人と大差ありませんでした。

つまり、教えることの効果の大部分は、何も見ずに思い出すこと(想起練習)から来ていた可能性があるんです。

2024年に日本の研究者が39の研究をまとめたメタ分析では、「教えるつもりで勉強してから教える」と中程度に近い学習効果が出た一方、教えるつもりなしに勉強して、あとからいきなり教えるだけでは効果はほぼゼロという結果でした。「教えるつもり」で準備することが、教える効果を引き出すカギのようです。

03家で一人でもできる「先生ごっこ」

大人の勉強にもぴったりです。同僚や家族に「今こういうことを勉強していて」と話すだけでも、立派な練習になります。

04教えると「わかったつもり」も見破れる

メモなしで教えることには、もう一つの効果がありそうです。2024年に韓国で報告された大学生の研究では、メモを見ずに教えた人は、学んだ直後に感じていた「よく理解できた」という自信が下がり、自分の理解度の見積もりがより正確になりました(この研究では、最終テストの点数そのものには差が出ませんでした)。

これは悪いことではありません。勉強では「わかったつもり」が一番の敵。教えようとして言葉に詰まると、どこが理解できていないかがはっきりします。

自信がしぼむ瞬間は、実は弱点が見つかった瞬間。そこを重点的に復習すれば、テスト本番での「知ってるはずなのに書けない」を減らせるかもしれません。

友達同士で教え合う場合も、説明する側はノートを閉じて話すのがルール。聞く側は「それってなんで?」と質問役になると、説明する側の理解の穴がさらに見つかりやすくなるかもしれません。

05まとめ

人に教えると成績が上がるのは、教えるという行為そのものより、「整理して、何も見ずに取り出す」作業が入るからだと考えられます。

次のテスト前は、ノートを見返す代わりに、空っぽの部屋で「本日の授業」を開いてみてください。言葉に詰まった瞬間が、いちばん伸びる瞬間です。

この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"To teach is to learn twice" is an old saying, and experiments support it. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

"To teach is to learn twice" is an old saying, and experiments support it. In 2014, Nestojko and colleagues asked people to read a passage. Half were told they would take a test, and half were told they would teach the content to someone else.

In fact, nobody taught. Everyone just took a test. Even so, the people who expected to teach remembered the information in a more organized way. In 2018, Koh and colleagues found that students who taught without notes did better on a test a week later.

Students who taught with notes did no better than students who did math problems. Teaching seems to work mainly because it makes you retrieve information from memory.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「教えることは二度学ぶこと」は昔からのことわざで、実験もそれを支持しています。2014年、ネストイコらは人々に文章を読ませました。半分には「テストを受ける」と伝え、残りの半分には「その内容を別の人に教える」と伝えました。

実際には誰も教えませんでした。全員がテストを受けただけです。それでも、教えるつもりでいた人の方が、情報をより整理された形で思い出しました。2018年、コーらは、メモなしで教えた学生は1週間後のテストで良い成績をとったことを発見しました。

メモを見ながら教えた学生は、計算問題をしていた学生と変わりませんでした。教えることが効くのは、主に記憶から情報を取り出させるからのようです。

4択リーディングクイズ

Q1. What actually happened to the people in the 2014 study?

Q2. What did the 2018 study find about students who taught with notes?

Q3. According to the passage, why does teaching help learning?

重要単語

  • protégéC1
    名詞弟子、教え子The protégé effect means teachers learn from teaching. フランス語 protéger(守る)から。英語の protect と同語源。mentor(指導者)と対で使われる。
  • expectB1
    動詞予期する、〜するつもりでいるStudents who expected to teach recalled the text in a more organized way. expect to do「~するつもりだ・~すると思う」。日本語の「期待する」より中立的で、悪いことの予想にも使う。
  • organizeB1
    動詞整理するTeaching forces you to organize your ideas. organ(器官)と同語源で「組み立てる」イメージ。名詞 organization(組織・整理)。
  • retrieveC1
    動詞(記憶から)取り出すTry to retrieve the answer without looking. 名詞 retrieval。retrieval practice(想起練習)は学習科学の最重要語の一つ。
  • overconfidenceC1
    名詞過信Teaching can reduce overconfidence. over-(過度に)+confidence。「わかったつもり」を表す語として学習法の文章に頻出。
  • sayingB1
    名詞ことわざ・格言As the saying goes, to teach is to learn twice. As the saying goes, ~「ことわざにもあるように」は英作文で使える定番フレーズ。proverb も同義。
  • structureB2
    動詞・名詞構造化する/構造Preparing to teach helps you structure the material. 名詞「構造」が基本だが、動詞で「組み立てる」の意味も。形容詞 structural。

動画でもっと知る

「あとで人に教えてね」と言われて勉強した人は、テストのためだけに勉強した人より内容をよく整理して覚えていたらしい。でもメモを見ながら教えると効果が消えるという続きがある。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Nestojko, Bui, Kornell & Bjork (2014) Expecting to teach enhances learning and organization of knowledge in free recall of text passages, Memory & Cognitiondoi.org
  2. Koh, Lee & Lim (2018) The learning benefits of teaching: A retrieval practice hypothesis, Applied Cognitive Psychologydoi.org
  3. Kobayashi (2024) Interactive learning effects of preparing to teach and teaching: A meta-analytic approach, Educational Psychology Reviewdoi.org
  4. Chase, Chin, Oppezzo & Schwartz (2009) Teachable agents and the protégé effect: Increasing the effort towards learning, Journal of Science Education and Technologydoi.org
  5. Kim, Kim, Sung & Lee (2024) Effect of learning-by-teaching on learners' metacognitive judgments(韓国の教育学術誌)doi.org