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宇宙ではお腹の中が「渋滞」している? 宇宙飛行士52人の血液に出ていたサイン

宇宙ではお腹の中が「渋滞」している? 宇宙飛行士52人の血液に出ていたサイン

読む前に予想してみよう!

この研究では、宇宙飛行による血液中の物質の変化は、地球に帰ってからも何か月も続いた

研究カード(どんな研究?)
対象
ISSに長期滞在した宇宙飛行士
規模
52人(血液試料488点)
研究の種類
縦断的なメタボロミクス解析(観察研究と食事介入試験の試料)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ISSに滞在した宇宙飛行士52人の血液を分析。腸内細菌がタンパク質を発酵させてできる物質が、打ち上げ直後から増えていた。腸の動きが遅くなっている可能性。

ひとことで言うと宇宙では、おなかの中の食べ物がゆっくり進むのかも。

もくじ
  1. 52人・488本の血液を分析
  2. 打ち上げ直後から約40種類が変化
  3. 「腸の通過時間」が長くなっている?
  4. 宇宙食にも「ゆっくり発酵する炭水化物」を
  5. まとめ

宇宙飛行士の悩みといえば、骨や筋肉が弱ること、目の変化……。でも実は、お腹の調子も見逃せない問題です。論文によると、宇宙飛行士には便秘がよく見られることが知られています。

2026年6月、科学誌『Nature Communications』に、コペンハーゲン大学とNASAジョンソン宇宙センターなどのチームが、宇宙飛行士52人の血液を分析した論文を発表しました(9月に海外メディアで紹介され、話題に)。血液には、お腹の中で何かが「渋滞」していることをうかがわせるサインが表れていたのです。

0152人・488本の血液を分析

02打ち上げ直後から約40種類が変化

結果、宇宙飛行によって約40種類の物質の量が変わっていました。変化は打ち上げ後すぐに現れ、着陸後は数日以内に落ち着いていきました。

注目すべきは、増えた物質の正体です。

  • p-クレゾール硫酸
  • フェニルアセチルグルタミン
  • 4-エチルフェノール硫酸

これらは、腸内細菌がタンパク質を発酵(分解)するときにできる物質に由来します。

03「腸の通過時間」が長くなっている?

腸の中で食べ物がゆっくり進むと、大腸の奥で細菌がタンパク質を発酵させる時間が長くなり、こうした物質が増えやすいことが知られています(Roager et al., 2016)。

研究チームは、微小重力によって腸の中身が進むスピード(腸管通過時間)が遅くなっていることが、今回の変化の背景にあるのではないかと考えています。

一方、食事の変化(カフェイン、魚、一部の脂肪など)で説明できる変化は、宇宙飛行に反応した物質の3分の1未満。男女で大きな違いも見られませんでした。

微小重力でお腹の中の流れが遅くなり、細菌の「発酵タイム」が長くなっているのかもしれない
微小重力でお腹の中の流れが遅くなり、細菌の「発酵タイム」が長くなっているのかもしれない

04宇宙食にも「ゆっくり発酵する炭水化物」を

研究チームは、将来の長期宇宙飛行(月や火星への旅)に向けて、ISSでの食事にゆっくり発酵する炭水化物(食物繊維の一種など)を増やすことで、タンパク質の発酵を減らし、お腹の健康を守れるかもしれないと提案しています。

ちなみに、NASAの「双子研究」でも、宇宙に約1年滞在した弟と地上の兄の間で、血液中の物質に違いが報告されていました(Garrett-Bakelman et al., 2019)。今回増えた物質のうち3つは、その研究でも違いが見られたものだったそうです。

05まとめ

無重力では、体の中の「流れ」まで変わってしまうのかもしれません。月や火星を目指す時代、宇宙飛行士の健康を守るカギは、お腹の中の小さな住人たちが握っている可能性があります。宇宙での体の変化は骨や筋肉の記事もどうぞ。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerConstipation is a common problem for astronauts, and microgravity may affect how the gut works. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Constipation is a common problem for astronauts, and microgravity may affect how the gut works. A team from the University of Copenhagen and NASA's Johnson Space Center analyzed 488 blood samples from 52 astronauts who had spent two to nine months on the International Space Station. About 40 compounds changed during spaceflight.

Many of those that increased are produced when gut bacteria ferment protein, a process that becomes more common when food moves slowly through the intestines. The changes appeared soon after launch and faded within days after landing. Changes in diet explained less than one third of them. The researchers suggest that adding slowly fermented carbohydrates to space food might help protect astronauts' gut health.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

便秘は宇宙飛行士によくある問題で、微小重力は腸のはたらきに影響するかもしれません。コペンハーゲン大学とNASAジョンソン宇宙センターのチームは、国際宇宙ステーションで2〜9か月を過ごした宇宙飛行士52人の血液試料488点を分析しました。宇宙飛行中に約40種類の物質が変化しました。

増えた物質の多くは、腸内細菌がタンパク質を発酵させるときにつくられるもので、この過程は食べ物が腸の中をゆっくり進むときに起こりやすくなります。変化は打ち上げ後すぐに現れ、着陸後数日以内に薄れました。食事の変化で説明できたのは、そのうちの3分の1未満でした。研究者たちは、ゆっくり発酵する炭水化物を宇宙食に加えることが、宇宙飛行士の腸の健康を守る助けになるかもしれないと提案しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the research team analyze?

Q2. When did the changes in the blood appear?

Q3. Why do the researchers think diet was not the main cause?

重要単語

  • microgravityC1
    名詞微小重力Astronauts live in microgravity on the space station. micro-(ごく小さい)+gravity(重力)。宇宙では重力がゼロではなく「ごく小さい」という意味でこの語を使う。
  • fermentationC1
    名詞発酵Gut bacteria break down food through fermentation. 動詞 ferment(発酵する・させる)。fermented foods(発酵食品)は納豆やヨーグルト。
  • metaboliteC1
    名詞代謝物Blood tests can measure many metabolites. metabolism(代謝)の過程でできる物質。metabolomics は代謝物をまとめて調べる研究法。
  • constipationC1
    名詞便秘Eating more fiber can help prevent constipation. con-(一緒に)+stip(詰める)。「詰まっている」イメージ。形容詞 constipated。
  • intestinalC1
    形容詞腸のIntestinal health is important for long missions. 名詞 intestine(腸)。small intestine(小腸)、large intestine(大腸)。gut はよりくだけた語。
  • inferC1
    動詞推論する、推測するTransit time was inferred from blood chemistry. 名詞 inference。infer A from B「BからAを推測する」。入試の設問 What can be inferred ...? で必ず見る語。
ISSに2〜9か月滞在した宇宙飛行士52人の血液を調べたら、腸内細菌がタンパク質を発酵させてできる物質が、打ち上げ直後から増えていたらしい。無重力でお腹の中の流れが遅くなっているのかも。帰還後数日で元に戻ったとか。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. La Barbera et al. (2026) Longitudinal metabolomics profiles reveal increased gut microbial protein fermentation during Spaceflight, Nature Communicationsdoi.org
  2. Garrett-Bakelman et al. (2019) The NASA Twins Study: A multidimensional analysis of a year-long human spaceflight, Sciencedoi.org
  3. Roager et al. (2016) Colonic transit time is related to bacterial metabolism and mucosal turnover in the gut, Nature Microbiologydoi.org