宇宙・NASAホント

中性子星に「落ちていくガス」を初めて直接とらえた。日本のX線衛星XRISMが見た光のズレ

中性子星に「落ちていくガス」を初めて直接とらえた。日本のX線衛星XRISMが見た光のズレ

読む前に予想してみよう!

中性子星は、角砂糖1個分でも山のように重いほど、ぎゅっと詰まった星だ

研究カード(どんな研究?)
対象
X線パルサーGX 301-2の連星系
規模
天体1つ(約100キロ秒の観測)
研究の種類
X線高分解能分光観測
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

X線衛星XRISMが、巨大な星から吹き出すガスが中性子星へ落ちていく様子を、鉄の出す光のズレから初めて直接とらえた。米NASAなどのチームが発表。

ひとことで言うと日本の衛星が、ガスが中性子星に吸いこまれる瞬間を光のズレで見つけた!

もくじ
  1. 舞台は「巨大な星」と「小さな中性子星」のペア
  2. 決め手は「鉄の光のズレ」
  3. 吸収から放出へ、くるくる変わる光
  4. まとめ

宇宙には、角砂糖1個分で山のように重い星があります。それが中性子星です。

強い重力でまわりのガスを引き寄せる。でも「ガスが中性子星に落ちていく瞬間」を直接見た人は、これまでいませんでした。

2026年9月18日、米NASAゴダード宇宙飛行センターなどのチームが、科学誌『Science Advances』で、それを初めてとらえたと発表しました。使ったのは、日本のJAXAとNASAなどが共同で開発したX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」です。対象はGX 301-2という天体です。

01舞台は「巨大な星」と「小さな中性子星」のペア

GX 301-2は、2つの星がペアで回る連星です。

  • Wray 977(レイ977):太陽の約40倍の重さをもつ青い極超巨星。表面からガスがどんどん吹き出している(恒星風)
  • GX 301-2の中性子星:太陽より重いのに、直径約20kmほどしかない中性子星

この中性子星は、約11分で1回転しながら、灯台のようにX線のビームを地球へ向けています。こうした星をX線パルサーと呼びます。

中性子星は約41.5日で1周する、つぶれた楕円の軌道を回っています。そして決まった時期に、巨大な星から伸びる濃いガスの流れを横切り、そのたびにX線が明るく燃え上がる(フレア)ことが知られていました。

02決め手は「鉄の光のズレ」

救急車のサイレンは、近づくと高く、遠ざかると低く聞こえますね。これがドップラー効果です。

光でも同じことが起こります。遠ざかるものから来る光は、波が引きのばされてエネルギーが低い側(赤い側)にずれる。これを赤方偏移といいます。

ガスの中の鉄は、決まったエネルギーのX線だけを吸いこんだり出したりします。そのエネルギーが本来の値からどれだけずれたかを測れば、ガスがどちら向きに、どのくらいの速さで動いているかがわかるのです。

観測の最初のころ、とてもイオン化の進んだ鉄(電子が1〜2個しか残っていない鉄)が、X線を吸収した跡が見つかりました。その線は、秒速約430kmで遠ざかる動きに相当するぶん赤い側にずれていて、ガスが地球から見て奥にある中性子星の方へ向かっていたことを示していました。秒速430kmは、東京から大阪まで約1秒で着いてしまう速さです(実際の落下速度の見積もりは、星の公転運動なども考えると幅があり、NASAの発表では時速約54万km(秒速約150km)とされています)。

鉄の吸収線が「赤い側」にずれていたことが、落下の証拠になった
鉄の吸収線が「赤い側」にずれていたことが、落下の証拠になった

03吸収から放出へ、くるくる変わる光

観測のあいだ、光の様子はどんどん変わりました。最初ははっきりした吸収線。その後いったん吸収線が消え、明るさが下がって、今度は鉄が光を出す(放出線)ようすが見えました。さらに吸収と放出が混ざった時間帯が何度か現れ、最後は放出線が残りました。

研究チームの分析では、吸収していたガスは中性子星の重力が及ぶ範囲の内側にありました。ガスの量から計算した明るさも、実際に観測された明るさとつじつまが合っていました。

さらに、前半はガスがほぼまっすぐ中性子星に落ちていたのに対し、後半は落下の速さがほぼゼロになり、明るさがゆっくり下がっていきました。チームは、後半はガスが円盤のように渦を巻きながら落ちていた可能性があると考えています。

04まとめ

ガスが重い星に吸いこまれるのは宇宙ではよくあることですが、その瞬間を光のズレとして直接読み取れたのは今回が初めてです。

XRISMの細かくX線を見分ける目で、宇宙のエネルギー源のしくみをこれまでになく近くからのぞけるようになりました。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA neutron star is heavier than the Sun but only about 20 kilometers wide, so its gravity is extremely strong. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

A neutron star is heavier than the Sun but only about 20 kilometers wide, so its gravity is extremely strong. Scientists have long believed that neutron stars pull in gas from nearby stars, but no one had directly seen the gas falling. A team including NASA's Goddard Space Flight Center used XRISM, an X-ray satellite developed by JAXA and NASA with other partners, to observe a system called GX 301-2.

There, a neutron star orbits a giant star that blows out gas. The team measured X-rays from iron in the gas. Because the signal was shifted toward lower energy, they could tell that the gas was moving toward the neutron star. The results appeared in Science Advances.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

中性子星は太陽より重いのに直径は約20キロメートルしかないため、その重力は非常に強力です。科学者たちは長い間、中性子星は近くの星からガスを引き寄せていると考えてきましたが、ガスが落ちていくところを直接見た人はいませんでした。NASAゴダード宇宙飛行センターなどのチームは、JAXAとNASAがほかのパートナーと開発したX線衛星XRISMを使い、GX 301-2という天体を観測しました。

そこでは、中性子星がガスを吹き出す巨大な星の周りを回っています。チームは、ガスの中の鉄から来るX線を測りました。信号がエネルギーの低い側にずれていたので、ガスが中性子星に向かって動いていることが分かりました。この結果は『Science Advances』に掲載されました。

4択リーディングクイズ

Q1. Who developed the XRISM satellite?

Q2. What does the neutron star in GX 301-2 orbit?

Q3. How did the team know that the gas was moving toward the neutron star?

重要単語

  • neutron starC1
    名詞(句)中性子星A neutron star is smaller than a city but heavier than the Sun. neutron は「中性子」。重い星が超新星爆発した後に残る、超高密度の天体。
  • gravityB1
    名詞重力、引力Gravity keeps the Moon in orbit around Earth. 形容詞 gravitational(gravitational waves「重力波」)。「重大さ」の意味もある。
  • satelliteB1
    名詞人工衛星、衛星The satellite sends data back to Earth. 自然の衛星(月など)にも人工衛星にも使う。satellite TV「衛星放送」。
  • orbitB2
    動詞・名詞(周りを)回る/軌道The Earth orbits the Sun once a year. 他動詞なので orbit around としなくてもよい。in orbit「軌道上で」。
  • binaryC1
    形容詞・名詞2つから成る、連星(の)A binary star system has two stars. bi-(2)が語源。コンピューターの binary code「2進法」でもおなじみ。
  • redshiftC1
    名詞赤方偏移Redshift shows that an object is moving away from us. 遠ざかる物体の光の波長が引きのばされ、赤い側(低エネルギー側)にずれる現象。反対は blueshift。
  • emissionB2
    名詞放出、排出Car emissions are a major cause of air pollution. 動詞 emit。CO2 emissions「二酸化炭素排出量」の意味で入試・ニュース頻出。absorption「吸収」と対比。
日本のX線衛星XRISMが、巨大な星から流れ出たガスが中性子星に落ちていく様子を初めて直接とらえたらしい。決め手は鉄が出すX線の「色のズレ」。吸収の跡が、時間とともに光る線へ変わっていった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Rahin et al. (2026) Direct spectroscopic observation of matter falling onto a compact stellar object, Science Advancesdoi.org
  2. NASA: NASA-JAXA XRISM Mission Sees Pulsar Gathering Companion’s ‘Wind’science.nasa.gov
  3. Leahy & Kostka (2008) Stellar wind accretion in GX 301−2: evidence for a high-density stream, Monthly Notices of the Royal Astronomical Societydoi.org
  4. Tashiro (2022) XRISM: X-ray imaging and spectroscopy mission, International Journal of Modern Physics Ddoi.org