宇宙飛行士の約7割が「宇宙酔い」になる。有力な原因は耳の奥の“重力センサー”の混乱

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宇宙酔いは、訓練を積んだベテラン宇宙飛行士ならまったくならない
経験者でもなることがある。乗り物酔いに強いかどうかとも、あまり関係しないとされる。
- 対象
- 宇宙飛行士
- 規模
- 過去の宇宙飛行の記録のまとめ
- 研究の種類
- 観察研究・レビュー
- 確かさ
- ★★★★☆
宇宙に着いた最初の2〜3日、宇宙飛行士の6〜8割ほどが吐き気などの宇宙酔いになる。耳の奥の重力センサーと目の情報が食い違うことが主な原因と考えられている。
ひとことで言うと宇宙では、耳の中の「上と下」センサーがこんがらがる!
厳しい選抜と訓練をくぐりぬけた宇宙飛行士。きっと乗り物酔いなんて無縁……と思いきや、そうでもありません。
宇宙に着いてから最初の数日、多くの宇宙飛行士が「宇宙酔い」に悩まされます。気分が悪くなったり、吐いてしまったりすることもあるのです。
016〜8割がかかる「宇宙酔い」
多くの場合、数日で体が慣れて症状は消えます。ただ、その間は仕事の効率も落ちるため、ミッションの最初の数日は大事な作業を入れないなどの工夫がされています。
02犯人は耳の奥の「重力センサー」
私たちの耳の奥(内耳)には、体のかたむきや動きを感じるセンサーがあります。その一つ、耳石器は、小さな石のような粒が重力で引っぱられることで「どっちが下か」を感じとっています。
ところが宇宙では、重力の感覚がなくなります。耳石は「下」を教えてくれず、頭を動かしたときの信号も、地上とはまったく違うものになってしまいます。
一方で、目はちゃんと周りの景色を見ています。
- 目:「天井が見えるから、こっちが上だね」
- 耳:「上も下も分からない!」
こうした感覚どうしの食い違いに脳が混乱して、酔ってしまう。これが感覚混乱説と呼ばれる考え方です。

03頭を動かすと悪化する
アメリカの研究者ラックナー(Lackner)さんらは、宇宙酔いは頭を大きく動かすと悪化しやすいことを指摘しています。そのため宇宙飛行士は、慣れるまで頭をゆっくり動かすようにしています。
もう一つの説が、体液のかたよりです。無重力では体の水分が頭の方へ移動し、顔がむくみます。これが内耳の圧力に影響しているのでは、という考え方です。
04地球に帰ってきてからも酔う
おもしろいことに、宇宙に慣れた体は、地球に戻るとまた酔うことがあります。今度は「重力がある状態」に慣れ直さなければならないからです。帰還直後の宇宙飛行士がふらついたり、気分が悪くなったりするのはこのためです。
05宇宙飛行士はどう対策している?
宇宙酔いをできるだけ軽くするため、いくつかの工夫がされています。
- 飛行前に、飛行機を使った放物線飛行で、短い無重力を体験しておく
- 宇宙に着いてすぐは、激しい動きや、頭を大きく動かす作業を避ける
- 症状が強いときは、医師の判断で酔い止めの薬を使う
ただし、地上で乗り物酔いに強い人が、宇宙でも平気とは限りません。事前に誰が宇宙酔いになるかを予測するのは難しいとされています。だからこそ、どの宇宙飛行士も「なるかもしれない」前提で準備をしているのです。
ちなみに、宇宙酔いになった宇宙飛行士も、ほとんどは数日後にはすっかり元気になり、宇宙での仕事や生活をこなせるようになります。
06まとめ
宇宙酔いの有力な原因は、耳の奥の重力センサーと目の情報のケンカだと考えられています。
ベテランでもかかる宇宙酔い。でも、人間の脳と体は、数日で新しい環境に慣れてしまいます。その適応力こそが、人類を宇宙へ連れて行く力なのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAstronauts go through hard training, but many still suffer from space motion sickness.
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原田英語の English Corner
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Even well-trained astronauts can get sick in space. In their first two or three days, about 60 to 80 percent of them feel ill. They may lose their appetite or throw up.
Why? Deep inside the ear, there is a sensor that tells us which way is down. In space, this sensor gets confused, but the eyes still see the room. The brain gets mixed signals. Most astronauts feel better after a few days.
74 words ・ CEFR A2
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よく訓練された宇宙飛行士でさえ、宇宙で気分が悪くなることがあります。最初の2〜3日で、その約60〜80%が具合が悪くなります。食欲がなくなったり、吐いたりすることもあります。
なぜでしょうか。耳の奥には、どちらが下かを教えてくれるセンサーがあります。宇宙ではこのセンサーが混乱しますが、目は部屋をちゃんと見ています。脳は食い違った信号を受けとるのです。ほとんどの宇宙飛行士は数日後には元気になります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
宇宙飛行士が宇宙で気分が悪くなる(宇宙酔い)理由が主題なので B。
Q2. What does the sensor in the ear tell us?
a sensor that tells us which way is down とあるので C。
Q3. In the passage, "confused" means the sensor ...
confused は「混乱した」。重力がないので正しい情報を判断できない状態なので A。
Astronauts go through hard training, but many still suffer from space motion sickness. According to a 2006 review, about 60 to 80 percent of astronauts experience it during their first two or three days in space. Symptoms include cold sweat, loss of appetite, nausea, and vomiting. The main cause is thought to be a conflict between the senses.
Inside the inner ear are organs that sense gravity to tell us which way is down. In weightlessness, they stop giving clear signals, while the eyes still see a "ceiling" and a "floor." This mismatch confuses the brain. Most astronauts adapt within a few days, but some feel sick again after returning to Earth.
112 words ・ CEFR B1
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宇宙飛行士は厳しい訓練を受けていますが、それでも多くが宇宙酔いに苦しみます。2006年のレビューによると、宇宙飛行士の約60〜80%が、宇宙に着いて最初の2〜3日にそれを経験します。症状には、冷や汗、食欲不振、吐き気、嘔吐などがあります。主な原因は、感覚どうしの食い違いだと考えられています。
内耳の中には、重力を感じとってどちらが下かを教えてくれる器官があります。無重力ではそれがはっきりした信号を出さなくなりますが、目は「天井」と「床」をまだ見ています。この食い違いが脳を混乱させるのです。ほとんどの宇宙飛行士は数日のうちに慣れますが、地球に戻った後で再び気分が悪くなる人もいます。
4択リーディングクイズ
Q1. When do astronauts usually get space motion sickness?
during their first two or three days in space とあるので B。
Q2. What is the main cause of space motion sickness, according to the passage?
a conflict between the senses、つまり内耳と目の信号の食い違いが原因とされているので D。
Q3. Why might some astronauts feel sick again after returning to Earth?
宇宙に慣れた体は、地球で再び重力に慣れ直す必要があるため、と推論できる。A。
Despite rigorous selection and training, astronauts are far from immune to motion sickness. A 2006 review reported that roughly 60 to 80 percent experience space motion sickness during their first two or three days in orbit, and a NASA medical brief cites figures of up to 73 percent. Symptoms range from pallor and cold sweats to loss of appetite, nausea, vomiting, and fatigue.
Because performance suffers, mission planners often avoid scheduling critical tasks for the first few days. The leading explanation is sensory conflict. The otolith organs in the inner ear normally detect gravity by sensing the pull on tiny crystals, telling the brain which way is down. In weightlessness, they no longer provide this reference, and head movements produce unfamiliar signals, while the eyes still interpret parts of the cabin as "up" and "down."
Researchers have noted that large head movements tend to worsen symptoms, so astronauts are advised to move their heads slowly. A second hypothesis points to fluid shifting toward the head, which may affect pressure in the inner ear. Susceptibility to motion sickness on Earth does not reliably predict who will be affected in space, and some astronauts experience similar symptoms again after returning to gravity.
200 words ・ CEFR B2
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厳しい選抜と訓練を経ていても、宇宙飛行士は乗り物酔いと無縁ではありません。2006年のレビューは、約60〜80%が軌道上での最初の2〜3日に宇宙酔いを経験すると報告し、NASAの医学資料は最大73%という数字を挙げています。症状は、顔色が悪くなることや冷や汗から、食欲不振、吐き気、嘔吐、疲労まで多岐にわたります。
作業能力が落ちるため、ミッションの計画担当者は最初の数日に重要な作業を入れないようにすることがよくあります。最も有力な説明は感覚の食い違いです。内耳の耳石器は、ふだんは小さな結晶にかかる引っぱりを感じとって重力を検出し、どちらが下かを脳に伝えています。無重力ではこの基準が得られなくなり、頭を動かすと慣れない信号が生じますが、目は依然として船内の一部を「上」や「下」と解釈します。
研究者たちは、頭を大きく動かすと症状が悪化しやすいことを指摘しており、そのため宇宙飛行士は頭をゆっくり動かすよう勧められています。2つ目の仮説は、体液が頭のほうへ移動し、それが内耳の圧力に影響するかもしれないというものです。地上での乗り物酔いのしやすさから、宇宙で誰が酔うかを確実に予測することはできず、重力のある環境に戻った後に再び似た症状を経験する宇宙飛行士もいます。
4択リーディングクイズ
Q1. Why do mission planners often avoid critical tasks in the first few days?
Because performance suffers, mission planners often avoid scheduling critical tasks とあるので C。
Q2. What do the otolith organs normally do?
detect gravity by sensing the pull on tiny crystals, telling the brain which way is down とあるので A。
Q3. What does the passage say about predicting space motion sickness?
susceptibility to motion sickness on Earth does not reliably predict who will be affected in space とあるので D。
重要単語
- motion sicknessB2名詞(句)乗り物酔いMany people get motion sickness on boats.
carsick(車酔い)、seasick(船酔い)、airsick(飛行機酔い)とセットで。 - inner earB2名詞(句)内耳The inner ear helps us keep our balance.
outer ear(外耳)、middle ear(中耳)、inner ear(内耳)。平衡感覚にも関わる。 - nauseaC1名詞吐き気Space sickness can cause nausea and vomiting.
ギリシャ語 naus(船)から=船酔いが語源。navy(海軍)と同語源。 - adaptB2動詞適応する、慣れるMost astronauts adapt within a few days.
adapt to ~「~に適応する」。adopt(採用する)とつづりが似ているので注意。 - conflictB2名詞食い違い、衝突A sensory conflict confuses the brain.
名詞はアクセントが前(CON-flict)、動詞は後ろ(con-FLICT)。 - immuneC1形容詞免れている、免疫のあるAstronauts are not immune to motion sickness.
be immune to ~「~を受けつけない、~に影響されない」。immune system は「免疫系」。 - susceptibilityC1名詞かかりやすさ、感受性Susceptibility to motion sickness varies between people.
形容詞 susceptible(be susceptible to ~「~にかかりやすい」)は入試頻出。
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厳しい訓練を受けた宇宙飛行士でも、宇宙に着いて最初の2〜3日は約7割が「宇宙酔い」になるらしい。有力な原因は耳の奥にある重力センサーの混乱。上下が分からなくなって、目の情報とケンカする。地球に帰ってきてからもまた酔う人がいる。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












