宇宙・NASA

無重力で筋トレはどうやるの?宇宙飛行士が毎日2時間使う「3台のマシン」

無重力で筋トレはどうやるの?宇宙飛行士が毎日2時間使う「3台のマシン」

読む前に予想してみよう!

国際宇宙ステーションでは、ふつうのダンベルで筋トレしている

研究カード(どんな研究?)
対象
長期滞在の宇宙飛行士
規模
十数人規模
研究の種類
観察研究(運動装置の比較)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

重さのない宇宙では、バーベルもランニングも「ただ浮く」だけ。ISSでは真空の力で負荷をかける筋トレ機など3台のマシンで、1日約2時間運動している。

ひとことで言うと宇宙では重りが軽くなるから、空気の力で重くして筋トレする!

もくじ
  1. 重さがないと、体はどんどん「省エネ」になる
  2. マシン①:真空で重さを作る「ARED」
  3. マシン②:ゴムで体を床に引っぱる「ランニングマシン」
  4. マシン③:サドルのない「自転車こぎ」
  5. 汗は「流れない」
  6. それでも帰還後はリハビリが必要
  7. 月や火星へは「小さなジム」を
  8. まとめ

宇宙で100kgのバーベルを持ち上げたら、どうなると思いますか?

答えは、「指一本でも動かせる」。無重力に近い宇宙ステーションでは、物の重さを感じないからです。これでは筋トレになりません。

でも宇宙飛行士は、毎日およそ2時間も運動しています。NASAによると、平均で1日約2時間、予定表では毎日2時間半の運動時間が組まれています。いったい、どうやって鍛えているのでしょう?

01重さがないと、体はどんどん「省エネ」になる

地上では、立つだけで脚や背中の筋肉、骨に体重がかかっています。宇宙ではその刺激がなくなるため、体は「もういらない」と判断して、筋肉や骨を減らしていきます。

そこで必要なのが、重力の代わりに負荷を作る道具です。ISSには、主に3台のマシンがあります。

02マシン①:真空で重さを作る「ARED」

ARED(エーレッド)は、筋トレ用の装置です。中に真空のシリンダーがあり、バーを引くと真空が引き戻そうとする力が働きます。これが「重り」の代わりになるのです。

スクワット、デッドリフト、かかと上げなど、地上のジムに近い種目ができます。肩にバーをかつぐスクワットも、宇宙ならではの装置で再現しています。

真空の「引き戻す力」が、重力の代わりになる
真空の「引き戻す力」が、重力の代わりになる

03マシン②:ゴムで体を床に引っぱる「ランニングマシン」

宇宙でランニングマシンに乗っても、蹴った瞬間に体が浮いてしまいます。そこで、腰と肩にハーネス(ベルト)をつけ、ゴムバンドで体を床に引っぱりながら走ります。

引っぱる強さは調整できますが、体重と同じ強さで長く走るのは肩や腰がきつい、という声もあります。

04マシン③:サドルのない「自転車こぎ」

3台目は自転車こぎの装置(CEVIS)です。宇宙では座る必要がないので、サドルはなく、足をペダルに固定して体を支えながらこぎます。心臓や肺の持久力を保つのが目的です。

05汗は「流れない」

宇宙の運動で困るのが汗です。汗は下に流れず、肌の上に水の膜のようにたまります。タオルでふき取る必要があります。

06それでも帰還後はリハビリが必要

これだけ運動しても、長期滞在から帰ってきた宇宙飛行士は、すぐにふつうに歩けるわけではありません。重力のある生活に体を慣らすため、帰還後は専門のトレーナーとリハビリを行います。JAXAの宇宙飛行士も、帰還後におよそ45日間のリハビリプログラムに取り組んでいます。

07月や火星へは「小さなジム」を

ISSの運動装置は大きくて重いため、月や火星へ向かう小さな宇宙船には、そのまま積めません。そこでNASAは、場所をとらない小型の運動装置の開発も進めています。長い宇宙の旅では、運動は「健康のため」というより「生きて帰るため」の仕事なのです。

08まとめ

宇宙の筋トレは、「重さを作るところから始まる」のがポイントでした。真空、ゴム、ペダル。工夫のかたまりです。

逆に言えば、私たちは地球にいるだけで毎日タダで重力トレーニングをしているのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you lifted a 100 kg barbell on the International Space Station, you could move it with one finger,… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

If you lifted a 100 kg barbell on the International Space Station, you could move it with one finger, because objects feel weightless there. Without the load of gravity, astronauts' bodies start to lose muscle and bone. To prevent this, they exercise about two hours a day using three main machines.

The ARED uses vacuum cylinders to pull the bar back, so astronauts can do squats and deadlifts. On the treadmill, they wear a harness, and rubber bands pull them down so they do not float away. A bike without a seat helps keep the heart and lungs strong. Even so, astronauts still need rehabilitation after they return to Earth.

110 words ・ CEFR B1

和訳を見る

国際宇宙ステーションで100kgのバーベルを持ち上げたら、指1本で動かせるでしょう。そこでは物に重さが感じられないからです。重力の負荷がないと、宇宙飛行士の体は筋肉と骨を失い始めます。

これを防ぐため、彼らは主に3台のマシンを使って1日約2時間運動します。AREDは真空シリンダーでバーを引き戻すので、宇宙飛行士はスクワットやデッドリフトができます。ランニングマシンではハーネスをつけ、浮いてしまわないようにゴムバンドで体を下に引っぱります。サドルのない自転車は、心臓と肺を強く保つのに役立ちます。それでも、宇宙飛行士は地球に戻った後、リハビリが必要です。

4択リーディングクイズ

Q1. Why do astronauts' bodies lose muscle and bone in space?

Q2. How does the ARED create resistance?

Q3. What can we infer from the last sentence?

重要単語

  • resistance exerciseB2
    名詞(句)筋力トレーニング(負荷をかける運動)Resistance exercise keeps muscles strong. resistance は「抵抗」。筋肉に抵抗(負荷)をかける運動のこと。aerobic exercise(有酸素運動)と対で覚える。
  • treadmillB2
    名詞ランニングマシンAstronauts run on a treadmill with a harness. tread(踏む)+mill(粉ひき機)。比喩で「単調な繰り返しの仕事」の意味にもなる。
  • harnessC1
    名詞・動詞体を固定するベルト/(力を)利用するThe harness pulls the runner down to the treadmill. 動詞 harness solar energy「太陽エネルギーを利用する」は入試長文で頻出。
  • countermeasureC1
    名詞対策Exercise is the main countermeasure against bone loss. counter(対抗する)+measure(手段)。take measures「対策をとる」とセットで。
  • vacuumB2
    名詞真空The machine uses vacuum cylinders to make resistance. u が2つ続くつづりに注意。vacuum cleaner は「掃除機」。
  • rehabilitationB2
    名詞リハビリ、回復訓練Astronauts need rehabilitation after long missions. re-(再び)+habilis(できる)。略して rehab。社会復帰の意味でも使う。
  • bone densityB2
    名詞(句)骨密度Exercise helps maintain bone density. density は「密度」。population density(人口密度)も頻出。

動画でもっと知る

無重力でバーベルを持ち上げても、重さゼロでトレーニングにならない。そこでISSでは「真空の力」で重さを作る筋トレマシンを使って、毎日約2時間も運動しているらしい。ランニングはゴムで体を床に引っぱって走る。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Smith et al. (2012) Benefits for bone from resistance exercise and nutrition in long-duration spaceflight: Evidence from biochemistry and densitometry, Journal of Bone and Mineral Researchdoi.org
  2. Petersen et al. (2016) Exercise in space: the European Space Agency approach to in-flight exercise countermeasures for long-duration missions on ISS, Extreme Physiology & Medicinedoi.org
  3. NASA: Astronaut Exercisenasa.gov
  4. NASA: The Real Story About Astronaut Health Care in Spacenasa.gov