カラカラの月に「水」があった。ありかは、何億年も日が当たらない“永久影”

読む前に予想してみよう!
月の水は、湖や川のように液体で存在している
月には液体の水は安定して存在できない。氷や、鉱物・土の中の分子として存在する。
- 対象
- 月の表面と極域
- 規模
- 探査機・航空機による複数の観測
- 研究の種類
- 観測研究(衝突実験・分光観測)
- 確かさ
- ★★★★☆
月の両極には太陽の光が一度も届かないクレーターがあり、氷がたまっている。日の当たる場所の土にも、ごく少量の水分子が見つかっている。
ひとことで言うと月の極の、ずっと日かげの穴に、氷がかくれていた!
アポロの宇宙飛行士が持ち帰った月の石を調べた科学者たちは、長いあいだ「月はカラカラに乾いている」と考えていました。
ところが2000年代以降、探査機の観測が進むと、その常識がひっくり返ります。月には水があったのです。しかも、その「ありか」がとてもユニークでした。
01月には「一度も朝が来ない場所」がある
地球の自転の軸は約23度かたむいていますが、月の軸は約1.5度しかかたむいていません。そのため、月の北極や南極の近くでは、太陽がいつも地平線ぎりぎりを回ります。
すると、深いクレーターの底には太陽の光が一度も届かない場所ができます。これが永久影です。
NASAの探査機ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)の測定では、永久影の中はマイナス200℃以下、場所によってはマイナス240℃近くまで冷えています。太陽系の中でもトップクラスの寒さです。

02宇宙船をぶつけて、水を見つけた
2018年には、インドの探査機に載ったNASAの観測装置のデータから、永久影の表面に氷が直接見えている場所がある、という研究も発表されました。氷は一面に広がるのではなく、まだらに分布しているようです。
03日の当たる場所にも、ほんの少し
2020年には、ジャンボジェットを改造した空飛ぶ天文台SOFIAが、太陽が当たる場所の土にも水の分子があることを見つけました。
ただし量は、土1立方メートルに対して350mLのペットボトル1本分ほど。NASAによると、地球のサハラ砂漠の方が約100倍多くの水を含んでいます。月の水は「あるけれど、とても薄い」のです。
04なぜ月の水がそんなに大事なのか
地球から水を運ぶのは、とてもお金がかかります。もし月で水がとれれば、
- 飲み水になる
- 分解して酸素(呼吸用)にできる
- 酸素と水素に分けてロケットの燃料にできる
つまり月の水は、月の上のガソリンスタンドになりえるのです。アルテミス計画が月の南極を目指すのは、このためです。
05氷をどうやって取り出す?
月の氷は、土や岩とまざった状態のものが多いと考えられています。取り出す方法としては、土を掘って加熱し、出てきた水蒸気を冷やして集める方法などが研究されています。
ただ、永久影の中は真っ暗で、マイナス200℃以下の世界。機械やロボットを動かすだけでも大変です。氷がどれくらいの量、どのくらいの深さにあるのか。実際に行って掘って調べることが、次の大きなステップです。各国が月の南極をめざして探査機を送り込もうとしているのは、このためです。
06まとめ
月の水は、何億年も日の当たらない冷凍庫にこっそり保存されていました。
次に月を見上げたら、その下のふちにある見えない氷のことを思い出してください。そこが、人類の次の目的地です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerScientists who studied Apollo Moon rocks long believed that the Moon was completely dry.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
For a long time, scientists thought the Moon was completely dry. But now we know there is water on the Moon. Near the north and south poles, some deep craters never get sunlight. They are colder than minus 200°C, so ice can stay there.
There is no liquid water like lakes or rivers. Water on the Moon is useful. People can drink it, breathe its oxygen, and make rocket fuel.
70 words ・ CEFR A2
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長い間、科学者たちは月が完全に乾いていると考えていました。しかし今では、月に水があることがわかっています。北極と南極の近くには、太陽の光が一度も当たらない深いクレーターがあります。そこはマイナス200℃より寒いので、氷が残ることができます。
湖や川のような液体の水はありません。月の水は役に立ちます。人はそれを飲んだり、その酸素で呼吸したり、ロケットの燃料を作ったりできるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
月のどこに水があり、なぜ大事なのかが主題なので C。
Q2. Why can ice stay in some craters?
never get sunlight ... colder than minus 200°C, so ice can stay there とあるので A。
Q3. In the passage, "useful" means ...
useful は use(使う)+-ful で「役に立つ」。直後に飲む・呼吸・燃料と使い道が続くので B。
Scientists who studied Apollo Moon rocks long believed that the Moon was completely dry. Since the 2000s, however, spacecraft have shown that it does have water. Because the Moon's axis is tilted only about 1.5 degrees, the Sun always stays low near the poles, and the bottoms of some deep craters never receive sunlight.
These permanently shadowed regions are colder than minus 200°C. In 2009, NASA deliberately crashed part of its LCROSS spacecraft into one of these craters and found water in the dust it threw up. In 2020, water molecules were also detected in sunlit soil, but in tiny amounts. Water could be used for drinking, oxygen, and rocket fuel.
111 words ・ CEFR B1
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アポロの月の石を調べた科学者たちは、長い間、月は完全に乾いていると信じていました。しかし2000年代以降、探査機によって月に水があることが示されました。月の自転軸は約1.5度しかかたむいていないため、極の近くでは太陽がいつも低い位置にあり、深いクレーターの底には太陽の光がまったく届かない場所があります。この永久影はマイナス200℃より寒いのです。
2009年、NASAは探査機LCROSSの一部をこうしたクレーターの一つにわざと衝突させ、舞い上がったちりの中に水を見つけました。2020年には、日の当たる土の中にも水分子が検出されましたが、その量はごくわずかでした。水は飲み水、酸素、そしてロケットの燃料に使える可能性があります。
4択リーディングクイズ
Q1. Why do some craters near the poles never receive sunlight?
axis is tilted only about 1.5 degrees, the Sun always stays low near the poles とあるので C。
Q2. What did NASA do in 2009?
NASA deliberately crashed part of its LCROSS spacecraft into one of these craters とあるので B。deliberately=わざと。
Q3. What can we infer about water in sunlit soil?
日の当たる土の水は in tiny amounts(ごくわずか)なので、資源としては極の氷ほど役に立たないと推論できる。A。
For decades after Apollo, scientists who analyzed returned rock samples regarded the Moon as bone-dry. Observations since the 2000s have overturned that view. Because the Moon's spin axis is tilted by only about 1.5 degrees, the Sun skims the horizon near the poles, leaving the floors of some deep craters in permanent shadow. Measurements by NASA's Lunar Reconnaissance Orbiter show that these regions fall below minus 200°C, and in places approach minus 240°C. In 2009, NASA deliberately crashed part of its LCROSS mission into Cabeus crater near the south pole; analysis of the resulting plume revealed water amounting to a few percent of the soil by weight.
A 2018 study then found evidence of ice exposed directly on the surface of shadowed areas, distributed in patches rather than sheets. In 2020, the airborne observatory SOFIA detected water molecules even in sunlit soil, though at concentrations roughly comparable to a 350-milliliter bottle per cubic meter, about one hundredth of the water in Saharan sand. Because water can provide drinking water, oxygen, and rocket propellant, the lunar south pole has become a key target. However, how much ice exists, and at what depth, can only be confirmed by drilling.
197 words ・ CEFR B2
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アポロの後、何十年もの間、持ち帰られた岩石試料を分析した科学者たちは、月をカラカラに乾いた天体とみなしていました。2000年代以降の観測がその見方をくつがえしました。月の自転軸は約1.5度しかかたむいていないため、極の近くでは太陽が地平線すれすれを動き、深いクレーターの底の一部は永久に影の中に残ります。NASAのルナー・リコネサンス・オービターの測定によると、これらの領域はマイナス200℃を下回り、場所によってはマイナス240℃近くに達します。2009年、NASAはLCROSSミッションの一部を南極近くのカベウス・クレーターにわざと衝突させました。
その結果生じた噴出物を分析すると、土の重さの数%にあたる水が見つかりました。続いて2018年の研究は、影になった場所の表面に氷が直接露出している証拠を見つけ、氷は一面に広がるのではなく、まだらに分布していることを示しました。2020年には、空飛ぶ天文台SOFIAが日の当たる土の中にさえ水分子を検出しましたが、その濃度は1立方メートルあたり350mLのボトル1本ほどで、サハラ砂漠の砂に含まれる水の約100分の1でした。水は飲み水、酸素、ロケットの推進剤を供給しうるため、月の南極は重要な目標になっています。しかし、氷がどれだけ、どの深さにあるのかは、掘削によってしか確かめられません。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the analysis of the LCROSS plume reveal?
revealed water amounting to a few percent of the soil by weight とあるので B。
Q2. How does the water in sunlit lunar soil compare with Saharan sand?
about one hundredth of the water in Saharan sand とあるので C。サハラの方が約100倍多い。
Q3. What does the author say is still needed?
最終文 can only be confirmed by drilling とあり、掘削による確認が今後の課題なので D。
重要単語
- permanently shadowed regionC1名詞(句)永久影(ずっと日が当たらない場所)Ice survives in permanently shadowed regions.
permanently(永久に)+shadowed(影になった)。略して PSR とも。 - iceA2名詞氷Scientists found ice near the Moon's south pole.
不可算名詞。break the ice は「場の緊張をほぐす」というイディオム。 - impactB2名詞衝突The impact threw a plume of dust into space.
「衝撃・影響」の意味でも超頻出。have an impact on ~「~に影響を与える」。 - resourceB1名詞資源Water is a valuable resource for future explorers.
natural resources(天然資源)、human resources(人材)。複数形で使うことが多い。 - detectB2動詞検出するThe telescope detected water molecules on the Moon.
名詞 detection、人は detective(探偵)。notice より「科学的に見つけ出す」ニュアンス。 - tiltB2動詞・名詞かたむける/かたむきThe Moon's axis is tilted only slightly.
Earth's tilt(地軸のかたむき)が季節の原因、という説明文で頻出。 - overturnC1動詞くつがえすNew observations overturned the old view.
over+turn。overturn a decision(判決・決定をくつがえす)。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
公式・一次情報をチェック
- Moon Water and Ices(NASA Science)science.nasa.gov
- NASA's SOFIA Discovers Water on Sunlit Surface of Moon(NASA)nasa.gov
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カラカラだと思われていた月に、ちゃんと水があった。ありかは月の北極・南極にある「何億年も日が当たらないクレーター」。マイナス200℃以下の冷凍庫で氷が保存されているらしい。だからアルテミスは南極を目指す。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Colaprete et al. (2010) Detection of Water in the LCROSS Ejecta Plume, Sciencedoi.org
- Li et al. (2018) Direct evidence of surface exposed water ice in the lunar polar regions, PNASdoi.org
- Honniball et al. (2021) Molecular water detected on the sunlit Moon by SOFIA, Nature Astronomydoi.org
- NASA Science: Moon Water and Icesscience.nasa.gov
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










