宇宙・NASAホント

国際宇宙ステーションは2030年に「海に落とす」予定。なぜ博物館に残せないのか

国際宇宙ステーションは2030年に「海に落とす」予定。なぜ博物館に残せないのか

読む前に予想してみよう!

国際宇宙ステーションは役目を終えたら、分解して地球に持ち帰り博物館に展示される予定だ

研究カード(どんな研究?)
対象
国際宇宙ステーション
規模
退役方法8案の比較
研究の種類
公的機関の技術評価(NASA白書)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

NASAの計画では、ISSは2030年まで使ったあと専用の宇宙機で大気圏に落とし、人のいない海域で処分する。高い軌道で保存する案などは退けられた。

ひとことで言うと宇宙ステーションは、2030年ごろに大気に落として海で終わらせる計画だよ。

もくじ
  1. ISSは「サッカー場サイズ」の超大型建築
  2. 8つの「引退プラン」を比べた
  3. 「高い軌道で保存」が却下された理由
  4. 最後の一押しは「専用の宇宙機」
  5. まとめ

晴れた夜、空をスーッと横切る明るい光。それが国際宇宙ステーション(ISS)です。2000年11月から、ずっと誰かが住み続けている「宇宙の家」です。

でも、この家にも引退の日が近づいています。執筆時点のNASAの計画では、ISSは2030年まで運用したあと、大気圏に落として、人のいない海で最期を迎える予定です。

「歴史的な建物なんだから、残せばいいのに」と思いませんか? NASAもそれを本気で検討しました。そのうえで「落とすしかない」と結論したのです。

01ISSは「サッカー場サイズ」の超大型建築

NASAの白書(2024年)によると、ISSは15か国が約30年かけて作り、運用してきた施設です。

  • 広さはサッカー場ほど
  • 重さは約43万kg(430トン)
  • 組み立てにはスペースシャトルが27回飛び、宇宙遊泳による作業は161回

最初の部品が打ち上げられたのは1998年。中心部の構造は、もともと宇宙で30年使う想定で設計されています。2030年には、いちばん古い部分が32年目を迎えます。

028つの「引退プラン」を比べた

NASAは、ISSの終わらせ方として、次のような案を比べました。

  1. 自然に落ちるのを待つ
  2. 分解して地球に持ち帰る
  3. 分解して宇宙で再利用する
  4. 小分けにして少しずつ落とす
  5. もっと高い軌道に上げて保存する
  6. 宇宙で解体・破砕する
  7. 民間企業に引き継ぐ
  8. 2030年以降も使い続ける

03「高い軌道で保存」が却下された理由

いちばん夢があるのは、高い軌道に上げて、何百年も宇宙に残しておく案です。

ISSは高度約415kmを飛んでいて、ここにはまだ薄い空気があります。そのため、エンジンで押し上げないと、1〜2年ほどで自然に落ちてきてしまいます。もっと高く上げれば、空気の抵抗が小さくなり、理論上は長く残せるはずです。

ところが、高い軌道は宇宙ゴミがずっと多い場所でした。NASAの見積もりでは、致命的なゴミの衝突が起きるまでの平均期間は、いまの高度なら約51年。ところが、約700年残れる高度800kmでは、4年もたないのです。

もし巨大なISSが粉々になったら、宇宙ゴミがいっきに増え、低い軌道そのものが何十年も使いにくくなるおそれがあります。「保存」のつもりが、宇宙を汚す最悪の選択になりかねないのです。

高い軌道ほど宇宙ゴミが多く、巨大な構造物が長く無事でいるのは難しい
高い軌道ほど宇宙ゴミが多く、巨大な構造物が長く無事でいるのは難しい

04最後の一押しは「専用の宇宙機」

2024年6月、NASAは最後の一押しをする専用の宇宙機(米国デオービット・ビークル)の開発をスペースXに発注しました。契約額は最大で約8億4300万ドルです。

計画では、まず宇宙飛行士が全員地球に帰ったあと、空気の抵抗も使って少しずつ高度を下げます。そして最後に、この宇宙機が大きく噴射して、ISSを狙った海域の上空へと押し込みます。ISSの大部分は大気との摩擦で燃えつき、燃え残った部品は海に落ちて沈む見込みです。押し込む宇宙機も、ISSと一緒にばらばらになって役目を終えます。

05まとめ

  • ISSは、NASAの計画では2030年まで運用される
  • その後、専用の宇宙機で大気圏に押し込み、人のいない海域に落とす予定
  • 高い軌道で保存する案は、宇宙ゴミとの衝突の危険が大きすぎて却下された

20年以上、人類が一日も欠かさず宇宙に住み続けた記録をつくった家。その最後の流れ星を、私たちは地上から見送ることになりそうです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe International Space Station has had people living on board without a break since November 2000. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The International Space Station has had people living on board without a break since November 2000. As of writing, NASA plans to operate it through 2030 and then bring it down in a controlled way over a remote part of the ocean. NASA compared several options, including taking it apart and bringing it home, or moving it to a higher orbit to preserve it.

Taking it apart is difficult because no spacecraft with a large cargo bay like the Space Shuttle is available today. A higher orbit sounds attractive, but there is much more space junk there, so the station would likely be hit and broken into pieces. In 2024, NASA chose SpaceX to build a special spacecraft for the final push.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

国際宇宙ステーションには、2000年11月から途切れることなく人が住み続けています。執筆時点で、NASAは2030年まで運用し、その後、陸から遠い海域の上空で制御しながら落下させる計画です。NASAは、分解して地球に持ち帰る案や、保存するためにもっと高い軌道へ移す案など、いくつかの選択肢を比べました。

分解が難しいのは、スペースシャトルのような大きな荷物室をもつ宇宙船が現在はないからです。高い軌道は魅力的に聞こえますが、そこには宇宙ゴミがずっと多く、ステーションはぶつかって粉々になってしまう可能性が高いのです。2024年、NASAは最後の一押しをする特別な宇宙機の開発をスペースXに任せました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Why is taking the station apart and bringing it home difficult?

Q3. What can we infer about moving the ISS to a higher orbit?

重要単語

  • deorbitC1
    動詞軌道から離脱させるNASA will deorbit the station around 2030. de-(離れる)+orbit(軌道)。deorbit vehicle「軌道離脱用の機体」。
  • re-entryB2
    名詞大気圏再突入Most of the station will burn up during re-entry. re-(再び)+entry(入ること)。reentry とハイフンなしでも書く。
  • debrisB2
    名詞破片、ゴミSpace debris can damage satellites. 発音は /dəˈbriː/(デブリー)。s は読まない。不可算名詞。space debris=space junk。
  • decommissionC1
    動詞退役させるThe old station will be decommissioned. commission(任務につかせる)に de- がついて「任務を解く」。原発や軍艦の「廃止措置」にも使う。
  • atmospheric dragC1
    名詞(句)大気の抵抗Atmospheric drag slowly lowers the orbit. drag は「引きずる」→「抵抗力」。air drag も同じ意味。
  • commercialB1
    形容詞商業の、民間のCommercial space stations are being developed. commerce(商業)の形容詞。名詞の commercial は「テレビCM」。
  • preservationB2
    名詞保存、保護Preservation in a higher orbit was rejected. 動詞 preserve(保存する)。preservation of nature「自然保護」は環境系長文で頻出。
国際宇宙ステーションは2030年まで使ったあと、大気圏に落として人のいない海で最期を迎える計画。「高い軌道に上げて保存すれば?」という案も検討されたが、宇宙ゴミに当たって粉々になる危険が高すぎて却下されたらしい。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. NASA (2024) International Space Station Deorbit Analysis Summary (white paper)nasa.gov
  2. NASA (2024) NASA Selects International Space Station US Deorbit Vehiclenasa.gov
  3. NASA, FAQs: The International Space Station Transition Plannasa.gov