宇宙で泣くと涙はこぼれない。目の上にたまって“水の玉”になってしまう

読む前に予想してみよう!
宇宙で泣くと、涙は小さな粒になってふわふわ飛んでいく
涙は表面張力で目や肌にくっつき、目のまわりにたまって大きな水の玉になる。勢いよく振り払わない限り飛んでいかない。
- 対象
- 無重力での液体のふるまい
- 規模
- ISSでの流体実験+宇宙飛行士の実演・証言
- 研究の種類
- 実験・観察
- 確かさ
- ★★★☆☆
無重力では涙が下に流れず、表面張力で目のまわりにたまって水の玉になる。視界のじゃまになるので、宇宙飛行士は拭き取るしかない。
ひとことで言うと宇宙では涙が落ちないで、目の上にまるい水たまりになるよ!
感動したとき、悲しいとき、思わずあくびをしたとき。私たちの目からは涙がこぼれます。
では、宇宙で泣いたらどうなるのでしょう?答えは、ちょっと意外で、ちょっと切ないものでした。涙はこぼれないのです。
01宇宙の涙は「落ちない」
地球では、涙は重力に引っぱられてほおを伝って下へ流れていきます。
ところが無重力の宇宙では、涙を下へ引っぱる力がありません。すると涙は、目のまわりにどんどんたまっていきます。量が増えると、目の表面をおおう水の玉(水のレンズ)のようにふくらんでしまうのです。
実際、ISSに滞在したカナダの宇宙飛行士クリス・ハドフィールドさんは、2013年に船内で水を使って「宇宙で泣くとどうなるか」を実演する動画を公開し、涙が目の上にたまり続ける様子を見せて話題になりました。
02主役は「表面張力」
なぜ涙は丸い玉になるのでしょう? カギは表面張力です。
表面張力とは、水の分子どうしが手をつなぎ合って、表面をできるだけ小さくしようとする力のこと。コップのふちより少し盛り上がった水や、葉っぱの上の丸い水滴も、表面張力のしわざです。
地球では重力の影響が強いので、大きな水のかたまりは重力に負けて流れ落ちます。でも宇宙ステーションの中では重さをほとんど感じないので、表面張力が“主役”になります。だから水は丸い玉になったり、肌や目にぴたっとくっついたりするのです。

03しかも「前が見えなくなる」
宇宙の涙は、見た目だけの問題ではありません。ハドフィールドさんは2001年の船外活動中、ヘルメットの曇り止め液が目に入り、痛みで出た涙が流れずにたまって、片目、さらに両目が見えにくくなるというトラブルを経験したと語っています(その後、涙で曇り止め液が薄まって視界は戻りました)。
涙がその場から動かず、目の表面をおおい続けてしまうのです。地球なら自然に流れていく涙が、宇宙では自分でタオルで拭き取るしかないのです。
ちなみに、宇宙でまばたきをしても涙はうまく流れません。目薬をさすのもひと苦労。宇宙では「泣く」も「目を洗う」も、ちょっとしたミッションになります。
04宇宙で泣いた宇宙飛行士たち
それでも、宇宙で涙を流す宇宙飛行士は少なくないと言われます。窓から初めて地球を見たとき、ふるさとの上空を通ったとき──。
宇宙から地球を見て、価値観が大きく変わる体験は「オーバービュー効果」と呼ばれています。国境のない青い星を見て、思わず目がうるむ。その涙が目の上で丸くなってしまうのは、宇宙ならではの光景ですね。
05まとめ
- 宇宙では涙がこぼれず、目のまわりにたまって水の玉になる
- 原因は、重力のかわりに表面張力が主役になるから
- 視界をじゃまするので、タオルで拭き取るしかない
宇宙で泣くのは大変。でも、それほど心を動かされる景色が宇宙にはある──そう考えると、少しうらやましくもなりますね。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerOn Earth, gravity pulls tears down our cheeks.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
On Earth, tears run down your face because gravity pulls them down. But in space, you feel almost no gravity, so tears do not fall. They stay around your eyes and slowly grow into a ball of water. This happens because of surface tension.
Water likes to hold together and make a round shape. A ball of tears can make it hard to see, so astronauts must wipe their tears away with a towel.
74 words ・ CEFR A2
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地球では、重力が下に引っぱるので、涙は顔を流れ落ちます。しかし宇宙では重力をほとんど感じないので、涙は落ちません。涙は目のまわりにとどまり、少しずつ水の玉のようにふくらんでいきます。これは表面張力のためです。
水はまとまって丸い形を作ろうとします。涙の玉があると前が見えにくくなるので、宇宙飛行士はタオルで涙を拭き取らなければなりません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
宇宙では涙が落ちずに目のまわりで水の玉になる、という話なので C。
Q2. Why do tears not fall in space?
in space, you feel almost no gravity, so tears do not fall とあるので A。
Q3. In this passage, "wipe ... away" means to ...
wipe は「拭く」。wipe away で「拭き取る」。タオルで涙を取り除くという意味なので B。
On Earth, gravity pulls tears down our cheeks. In the weightless environment of the ISS, however, nothing pulls them down, so tears collect around the eye. As more tears gather, they form a ball of water that covers the eye like a lens. In 2013, the Canadian astronaut Chris Hadfield showed this in a video by putting water on his eye.
The reason is surface tension, the force that makes water molecules hold onto each other and keep the surface as small as possible. Hadfield has also said that during a spacewalk in 2001, anti-fog liquid got into his eye. His tears did not flow away, and for a while he had trouble seeing with one eye, and then both.
120 words ・ CEFR B1
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地球では、重力が涙をほおに沿って下へ引っぱります。しかしISSの無重力環境では涙を下に引っぱるものがないため、涙は目のまわりにたまります。涙が増えると、レンズのように目をおおう水の玉になります。2013年、カナダの宇宙飛行士クリス・ハドフィールドさんは、目に水をのせてこの様子を動画で見せました。その理由は表面張力です。
表面張力とは、水の分子がお互いにくっつき合い、表面をできるだけ小さく保とうとする力のことです。ハドフィールドさんはまた、2001年の船外活動中に曇り止めの液体が目に入ったと語っています。涙は流れていかず、しばらくの間、片目、さらには両目が見えにくくなったそうです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Chris Hadfield show in his 2013 video?
showed this in a video by putting water on his eye の this は、涙が目のまわりにたまって水の玉になる様子なので B。
Q2. What is surface tension, according to the passage?
the force that makes water molecules hold onto each other ... と同格で説明されているので C。
Q3. What can we infer from Hadfield's experience in 2001?
涙が流れずに目が見えにくくなった体験から、宇宙の涙は実際に困った問題になりうると推論できるので D。
On Earth, tears trickle down the cheeks because gravity overwhelms the forces holding a small amount of liquid together. On the ISS, where effective gravity is roughly a millionth of that on the ground, surface tension takes over. Tears therefore cling to the eye and accumulate into a growing ball of water that can blur vision. The Canadian astronaut Chris Hadfield demonstrated this with water in a 2013 video, and he has described how, during a 2001 spacewalk, anti-fog solution irritated his eye; the resulting tears stayed in place, and his sight in one eye and then both was impaired until the solution became diluted. This behavior matters beyond curiosity.
Understanding how liquids move without gravity is essential for designing fuel tanks and water-recycling systems, which is why Mark Weislogel and colleagues have run capillary flow experiments aboard the ISS and compared the results with computer simulations. That said, what we know about tears in space comes mainly from astronauts' demonstrations and personal accounts. Hardly any systematic research has examined tears themselves, and the behavior of liquids also depends strongly on surface wettability and the shape of the container.
189 words ・ CEFR B2
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地球では、少量の液体をまとめている力よりも重力が勝つため、涙はほおを伝って流れ落ちます。実効重力が地上のおよそ100万分の1しかないISSでは、表面張力が主役になります。そのため涙は目にくっつき、ふくらみ続ける水の玉となってたまり、視界をぼやけさせることがあります。カナダの宇宙飛行士クリス・ハドフィールドさんは2013年の動画で水を使ってこれを実演しました。また、2001年の船外活動中に曇り止め液が目を刺激したときのことも語っています。そのとき出た涙はその場にとどまり、曇り止め液が薄まるまで、片目、さらに両目の視界が損なわれたそうです。この現象は単なる好奇心の対象ではありません。
重力のない環境で液体がどう動くかを理解することは、燃料タンクや水のリサイクル装置を設計するのに欠かせません。だからこそマーク・ワイスローゲルらはISSで毛管流実験を行い、その結果をコンピューターシミュレーションと比較してきました。ただし注意すべきなのは、宇宙の涙について分かっていることの多くが、宇宙飛行士の実演や個人的な証言に基づいているという点です。涙そのものを対象にした系統的な研究はほとんどなく、液体のふるまいは表面のぬれやすさや容器の形にも大きく左右されます。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does surface tension "take over" on the ISS?
where effective gravity is roughly a millionth of that on the ground とあり、重力がきわめて弱いため表面張力が支配的になるので A。
Q2. Why have capillary flow experiments been carried out on the ISS?
essential for designing fuel tanks and water-recycling systems, which is why ... have run capillary flow experiments とあるので C。
Q3. What limitation does the author point out?
what we know about tears in space comes mainly from astronauts' demonstrations and personal accounts とあり、系統的な研究がほとんどないと述べているので D。
重要単語
- surface tensionC1名詞(句)表面張力Surface tension makes water form round drops.
tension は「張りつめた状態・緊張」。tense(ぴんと張った)と同語源。 - microgravityC1名詞微小重力Liquids behave strangely in microgravity.
micro-(ごく小さい)+gravity。ISS の環境は「無重力」ではなく、正確には microgravity と表現されることが多い。 - tearA2名詞涙A tear stayed on his eye like a small ball.
「涙」は /tɪər/(ティア)。動詞 tear「引き裂く」は /teər/(テア)で発音が違う。in tears「泣いて」も頻出。 - capillary flowC1名詞(句)毛管流(すき間を伝う流れ)Capillary flow can move fuel without pumps.
capillary は「毛細血管」。ラテン語 capillus(髪の毛)から。髪の毛のように細いすき間のイメージ。 - wipeB1動詞拭き取るShe wiped her eyes with a towel.
wipe away / wipe off で「拭き取る」。wipe out は「全滅させる」という別の意味になるので注意。 - accumulateB2動詞たまる・蓄積するTears accumulate around the eye in space.
ac-(~に)+cumul(積み重ねる)。cumulative「累積的な」も同語源。長文頻出。 - impairC1動詞損なう・弱めるToo much water on the eye can impair vision.
im-(~にする)+pair(悪い)。impaired vision / hearing「視覚・聴覚の障害」の形でよく出る。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
公式・一次情報をチェック
- The Human Body in Space(NASA)nasa.gov
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宇宙で泣くと、涙はほおを伝って落ちない。重さをほとんど感じないので表面張力で目のまわりにまとわりつき、水の玉みたいにふくらんでいくらしい。しかも前が見えにくくなる。宇宙では泣くのもひと苦労。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Weislogel et al. (2009) The capillary flow experiments aboard the International Space Station: Status, Acta Astronauticadoi.org
- Weislogel et al. (2004) The Capillary Flow Experiments: Handheld Fluids Experiments for International Space Station, 42nd AIAA Aerospace Sciences Meetingdoi.org
- McCraney et al. (2022) Capillary Flow Experiments Conducted Aboard the International Space Station: Experiments and Simulations, Microgravity Science and Technologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










