寝酒で「ぐっすり」は錯覚だった。4000人の心拍データが示したお酒と睡眠の関係

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寝る前にお酒を飲むと、眠りの質が上がる
寝つきは早くなるが、夜の後半に眠りが浅く途切れやすくなり、睡眠中の体の回復度も下がる。
- 対象
- 働く成人(実生活)+健康な成人の実験室研究
- 規模
- 4,098人+多数の実験の総説
- 研究の種類
- 観察研究+レビュー
- 確かさ
- ★★★★☆
お酒を飲むと寝つきは早くなるが、夜の後半の眠りが浅くなる。少量でも睡眠中の体の「回復度」が下がっていたという約4000人の実生活データもある。
ひとことで言うとお酒は「ねむらせる」けど、体をちゃんと「休ませて」はくれない!
「一杯飲むと、すぐ眠れるんだよね」。大人からよく聞くセリフです。
たしかにお酒を飲むと、まぶたが重くなってスッと眠りに落ちます。だから「寝酒=よく眠れる」と思っている人は少なくありません。
でも、睡眠の研究者たちの答えは「寝つきは良くなる。でも眠りの中身は悪くなる」。しかも、ほんの少しの量でも体には変化が出ていました。
01前半は「深く」、後半は「ボロボロ」
なぜ前半と後半で逆になるのでしょう。
アルコールは脳の働きをしずめる鎮静作用を持っています。飲んで数時間は、この作用で深い眠りが増えやすくなります。
ところが、体がアルコールを分解して血中の濃度が下がってくると、今度は反動のように脳が目覚めやすい状態になります。夢を見ることが多いレム睡眠も前半では遅れて現れ、多くの研究で一晩全体のレム睡眠が減っていました。
さらに、お酒には尿を増やす作用もあります。夜中にトイレで目が覚めるのも、後半の眠りが乱れる理由の一つです。
024000人の「寝ている間の心拍」を見たら
実験室だけでなく、ふだんの生活ではどうなのでしょうか。
フィンランドの研究チームは2018年、働く大人4,098人に心拍を測る機器をつけてもらい、「お酒を飲んだ日」と「飲まなかった日」の睡眠を同じ人どうしで比べました。
注目したのは、心拍のゆらぎ(心拍変動)から計算した「体の回復度」です。リラックスして体を休ませるモードがどれくらい働いているかの目安になります。
結果、寝てから最初の3時間の回復度は、
- 少量(体重1kgあたり0.25g以下)で平均9.3ポイント低下
- 中くらいの量で24.0ポイント低下
- 多い量で39.2ポイント低下
と、量が増えるほど下がっていました。体重60kgの人なら、0.25g/kgはビール中瓶1本弱ほどの量です。

03毎晩続けると「効かなくなる」
もう一つの落とし穴が耐性です。
寝つきを良くするお酒の効果は、毎晩続けているうちに体が慣れて弱くなっていくことが報告されています。すると同じ効果を求めて量が増え、眠りはさらに乱れる——という悪循環になりかねません。
また、アルコールはのどまわりの筋肉もゆるめます。そのため、空気の通り道がせまくなり、いびきや睡眠中の呼吸の乱れが強まりやすいことも知られています。本人は「ぐっすり寝た」つもりでも、体の中では小さな目覚めがくり返されているかもしれないのです。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、眠るためにお酒を飲むこと(寝酒)は睡眠の質を悪化させる可能性があると注意をうながしています。
「でも、お酒を飲んだ夜はよく眠れた気がする」という人もいるでしょう。夜の前半に深く眠るぶん、寝入りばなの印象は良くなりがちです。一方、後半の浅い眠りや短い目覚めは、本人が覚えていないことも多いのです。
04まとめ
寝酒は、眠りへの「入り口」を早くしてくれる代わりに、夜の後半の休息を前借りしているようなものでした。
「ぐっすり眠れた気がする」と「体がしっかり休めた」は、別物かもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany adults believe that a drink before bed helps them sleep well.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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この研究を英語で読もう
Some adults drink alcohol before bed to fall asleep. Alcohol does help people fall asleep faster. But in the second half of the night, sleep becomes light and broken. In Finland, 4,098 working adults wore a heart-rate device while sleeping.
On days when they drank, their bodies recovered less during sleep, even after a small amount. The more they drank, the worse it was. A nightcap does not give good rest.
71 words ・ CEFR A2
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眠りにつくために、寝る前にお酒を飲む大人もいます。お酒は確かに早く眠りにつく助けになります。しかし、夜の後半になると、眠りは浅く途切れたものになります。フィンランドで、働く大人4,098人が眠っている間に心拍を測る機器をつけました。
お酒を飲んだ日は、少しの量でも、睡眠中の体の回復が少なくなっていました。飲めば飲むほど、悪くなりました。寝酒はよい休息を与えてくれないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
寝る前のお酒が睡眠にどう影響するかについての文章なので D。
Q2. What happens in the second half of the night after drinking?
in the second half of the night, sleep becomes light and broken とあるので A。
Q3. In this passage, a "nightcap" is ...
本文の流れから、nightcap は寝る前に飲むお酒(寝酒)のことなので B。
Many adults believe that a drink before bed helps them sleep well. It is true that alcohol helps people fall asleep faster, and the first half of the night is often deeper. However, as the body breaks down the alcohol, the brain becomes easier to wake, and sleep in the second half of the night becomes light and broken.
In 2018, researchers in Finland measured the heart rates of 4,098 working adults during sleep and compared nights with and without alcohol in the same people. Even a small amount lowered the body's recovery level in the first three hours of sleep, and larger amounts lowered it much more. In addition, people can get used to alcohol, so its sleepy effect may weaken over time.
124 words ・ CEFR B1
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多くの大人は、寝る前の一杯がよく眠る助けになると信じています。確かにアルコールは早く眠りにつく助けになり、夜の前半はしばしばより深くなります。しかし、体がアルコールを分解するにつれて脳は目覚めやすくなり、夜の後半の眠りは浅く途切れたものになります。
2018年、フィンランドの研究者たちは、働く大人4,098人の睡眠中の心拍を測定し、同じ人で飲酒した夜と飲酒しなかった夜を比べました。少しの量でも、眠ってから最初の3時間の体の回復度が下がり、量が多いほどさらに大きく下がりました。さらに、人はアルコールに慣れてしまうことがあるので、眠気を誘う効果は時間とともに弱まるかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does sleep become light in the second half of the night?
as the body breaks down the alcohol, the brain becomes easier to wake とあるので A。
Q2. How did the Finnish researchers compare sleep?
compared nights with and without alcohol in the same people とあるので D。
Q3. What can we infer from the last sentence?
慣れて効果が弱まるなら、同じ効果を求めて量が増える可能性があると推論できる。正解は B。
A nightcap is widely believed to promote good sleep, but research suggests the benefit is largely an illusion. A 2013 review of laboratory studies with healthy adults found that alcohol consistently shortened the time taken to fall asleep and consolidated sleep in the first half of the night, but the second half tended to become disrupted, and many studies reported less REM sleep overall. The proposed explanation is a rebound effect: alcohol initially acts as a sedative, yet as blood alcohol levels fall, the brain becomes more easily aroused.
Real-world data point in the same direction. In 2018, Finnish researchers monitored heart rate variability in 4,098 employees and compared drinking and non-drinking nights within the same individuals. During the first three hours of sleep, an index of physiological recovery fell by an average of 9.3 points after low intake, 24.0 after moderate intake and 39.2 after high intake. But alcohol consumption was self-reported, drinking nights often coincided with weekends and social events, and the recovery index was derived from heart rhythms rather than direct measurements of sleep stages.
178 words ・ CEFR B2
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寝酒はよい睡眠を促すと広く信じられていますが、研究はその恩恵がほぼ錯覚であることを示しています。健康な成人を対象とした実験室研究をまとめた2013年のレビューでは、アルコールは一貫して眠りにつくまでの時間を短くし、夜の前半の睡眠をまとめましたが、後半は乱れやすくなり、多くの研究で一晩全体のレム睡眠が減っていました。考えられている説明は反動効果です。
アルコールは最初は鎮静剤として働きますが、血中アルコール濃度が下がるにつれて、脳はより目覚めやすくなります。実生活のデータも同じ方向を示しています。2018年、フィンランドの研究者たちは4,098人の従業員の心拍変動を記録し、同じ人の中で飲酒した夜と飲酒しなかった夜を比べました。眠ってから最初の3時間、生理的な回復の指標は、少量の飲酒後で平均9.3ポイント、中程度で24.0ポイント、多量で39.2ポイント低下しました。それでも、飲酒量は自己申告であり、飲酒した夜は週末や社交の場と重なることが多く、回復の指標は睡眠段階を直接測ったものではなく心拍のリズムから計算されたものでした。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, what is the "rebound effect"?
alcohol initially acts as a sedative, yet as blood alcohol levels fall, the brain becomes more easily aroused とあるので B。
Q2. By how much did the recovery index fall after high intake?
39.2 after high intake とあるので C。
Q3. Which is NOT mentioned as a limitation of the Finnish study?
参加者は4,098人と多く、少人数という限界は述べられていない。正解は D。
重要単語
- nightcapC1名詞寝酒He stopped having a nightcap and started sleeping better.
もとは「寝るときにかぶる帽子」。そこから「寝る前の一杯」の意味に。 - sedativeC1形容詞・名詞鎮静(作用のある)、鎮静剤Alcohol has a sedative effect at first.
sedate「落ち着かせる」。sedentary「座りがちの」と同じ語根 sed-(座る)。 - fragmentedC1形容詞細切れになった、途切れたHer sleep was fragmented after the party.
fragment「破片」から。fragmented information「断片的な情報」。 - toleranceB2名詞耐性(慣れて効きにくくなること)、寛容You can build up a tolerance to many drugs.
tolerate「我慢する」の名詞形。社会系長文では「寛容さ」の意味で頻出。 - recoveryB1名詞回復Sleep is the best time for physical recovery.
recover from ~「~から回復する」。make a full recovery「完全に回復する」。 - illusionB2名詞錯覚、幻想The benefit of a nightcap is largely an illusion.
optical illusion「目の錯覚」。allusion(ほのめかし)とのつづりの違いに注意。 - consumptionB2名詞消費、摂取Alcohol consumption was self-reported.
consume「消費する」の名詞形。energy consumption「エネルギー消費」。
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- 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省)mhlw.go.jp
- Alcohol Facts and Statistics(NIAAA/米国立衛生研究所)niaaa.nih.gov
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寝酒でぐっすり…は錯覚かも。フィンランドの約4000人の心拍データでは、少しのお酒でも寝ている間の「体の回復度」が下がり、量が増えるほど大きく下がっていたらしい。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Ebrahim IO et al. (2013) Alcohol and Sleep I: Effects on Normal Sleep, Alcoholism: Clinical and Experimental Researchdoi.org
- Pietilä J et al. (2018) Acute Effect of Alcohol Intake on Cardiovascular Autonomic Regulation During the First Hours of Sleep in a Large Real-World Sample of Finnish Employees, JMIR Mental Healthdoi.org
- Roehrs T, Roth T (2001) Sleep, sleepiness, sleep disorders and alcohol use and abuse, Sleep Medicine Reviewsdoi.org
- 厚生労働省 (2024) 健康づくりのための睡眠ガイド2023mhlw.go.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











