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「昼寝が長い人は認知症になりやすい」は本当? 14年の追跡でわかった"逆向き"の可能性

「昼寝が長い人は認知症になりやすい」は本当? 14年の追跡でわかった"逆向き"の可能性

読む前に予想してみよう!

長い昼寝をする高齢者に認知症が多いのは、昼寝が脳を傷つけるからだと証明されている

研究カード(どんな研究?)
対象
地域に住む高齢者
規模
1,401人・最長14年
研究の種類
前向きコホート研究(活動量計で測定)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

長く頻繁な昼寝は、のちのアルツハイマー型認知症と関連していた。ただし認知症が進むと昼寝が増えるという逆向きの関係も見られ、昼寝が原因とは言い切れない。

ひとことで言うと長い昼寝は「原因」というより、脳の変化の「サイン」かもしれない!

もくじ
  1. 1401人の昼寝を、腕のセンサーで14年
  2. 「昼寝が原因」とは言えない理由
  3. 遺伝子を使った分析では「脳が大きい」?
  4. まとめ

「昼寝が長い人は認知症になりやすい」——ネットやテレビで、こんな見出しを見たことはありませんか。

昼寝好きの人にとってはドキッとする話です。でも、この見出しには大事な落とし穴があります。

それは、「AとBが一緒に起きている」ことと「AがBの原因」であることは違う、という点です。昼寝と認知症の研究は、この違いを考えるのにぴったりの例なのです。

011401人の昼寝を、腕のセンサーで14年

分析の結果、

  • 昼寝が長く、回数が多い人ほど、のちにアルツハイマー型認知症になるリスクが高い
  • 年をとると昼寝は少しずつ増えるが、認知症が進むと、その増え方が2倍以上に加速する
  • 昼寝が多いと1年後の認知機能が低い傾向があり、逆に認知機能が低いと1年後の昼寝が増える傾向もあった

という関係が見つかりました。研究チームは、昼寝と認知症は「双方向」の関係にあるか、共通の脳の変化が背景にある可能性を指摘しています。

02「昼寝が原因」とは言えない理由

ここが一番のポイントです。

認知症の原因となる脳の変化は、症状が出る何年も前から少しずつ進むと考えられています。もしその変化が、昼間に目を覚ましておく脳の仕組みにも影響していたら? 昼寝が増えるのは「原因」ではなく、脳の変化の「結果」や「サイン」かもしれません。

これを逆の因果と呼びます。

実際、イギリスの女性約83万人を最長17年追った2023年の研究では、追跡期間が長くなるにつれて昼寝と認知症の関連が大きく弱まり、長期的にはほぼ関連が見られませんでした。診断に近い時期ほど関連が強いという結果は、「昼寝は初期のサイン」という見方と合います。

昼寝が先か、脳の変化が先か。観察研究だけでは見分けにくい
昼寝が先か、脳の変化が先か。観察研究だけでは見分けにくい

03遺伝子を使った分析では「脳が大きい」?

遺伝子の違いを「自然の実験」として使い、因果に迫るメンデルランダム化という方法もあります。

2023年に英国のデータ(最大約38万人)で行われた分析では、昼寝をしやすい遺伝的な傾向を持つ人は、脳全体の体積がやや大きいという関連が出ました。一方で、記憶の中枢である海馬の体積や、反応時間などの成績とは関連が見られませんでした。

日本でも2000年、昼寝の習慣を振り返ってもらった研究で、60分以内の昼寝はアルツハイマー病の少なさと関連し、60分を超える昼寝は(APOE ε4という遺伝子のタイプを持つ人で)多さと関連していたと報告されています。

「短い昼寝はOK、長すぎる昼寝は要チェック」というのが、今のところ無難な考え方ですが、どれも観察研究などで、確かなことはまだ言えません。

ちなみに、日本の新潟県で65歳以上の約400人を5年間追った研究では、30分未満の短い昼寝をする人は、昼寝をしない人より認知機能が低下しにくいという結果も出ています。これも観察研究ですが、「短い昼寝」と「長い昼寝」を分けて考えることの大切さを示しています。

04まとめ

「昼寝が長い人は認知症になりやすい」は、半分ホント、半分は言いすぎでした。関連はあるけれど、昼寝が原因とは言えず、むしろ脳の変化のサインである可能性があります。

ニュースの見出しで「〇〇な人は△△になりやすい」を見たら、ぜひ「どっちが先?」と考えてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHeadlines sometimes claim that long naps lead to dementia. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Headlines sometimes claim that long naps lead to dementia. This research shows why we must be careful about cause and effect.

In a 2022 study, 1,401 older adults in the US wore activity trackers on their wrists, so their naps could be measured objectively. They were followed for up to 14 years. Those who napped longer and more often had a higher risk of later developing Alzheimer's dementia.

But as dementia progressed, daily napping increased more than twice as fast. People with lower thinking ability also tended to nap more a year later. The changes in the brain that cause dementia begin years before symptoms appear. These changes may also make people nap more. So long naps may be an early sign of the disease instead of its cause.

129 words ・ CEFR B1

和訳を見る

見出しは時に、長い昼寝が認知症につながると主張します。この研究は、なぜ原因と結果に注意しなければならないかを示しています。

2022年の研究では、アメリカの高齢者1,401人が手首に活動量計をつけたので、昼寝を客観的に測定することができました。彼らは最長14年間追跡されました。長く頻繁に昼寝をする人は、のちにアルツハイマー型認知症になるリスクが高くなっていました。

しかし、認知症が進むにつれて、毎日の昼寝は2倍以上の速さで増えました。考える力が低い人も、1年後により多く昼寝をする傾向がありました。認知症の原因となる脳の変化は、症状が現れる何年も前に始まります。その変化が昼寝を増やしている可能性もあるのです。ですから、長い昼寝は病気の原因ではなく、その初期のサインなのかもしれません。

4択リーディングクイズ

Q1. Why could the naps be measured objectively?

Q2. What happened as dementia progressed?

Q3. What is the writer's main point?

重要単語

  • napA2
    名詞・動詞昼寝(をする)My grandfather takes a short nap after lunch. take a nap がセット。catch someone napping は「不意をつく」という慣用句。
  • associationB2
    名詞関連An association does not prove causation. be associated with ~「~と関連している」は研究紹介の頻出表現。
  • causationC1
    名詞因果関係Scientists are still debating causation. Correlation does not imply causation.「相関は因果を意味しない」は統計の定番フレーズ。
  • reverse causationC1
    名詞(句)逆の因果(結果が原因に見える)Reverse causation may explain the link. reverse は「逆の」。in reverse order「逆の順番で」。
  • early signB1
    名詞(句)初期の兆候Long naps may be an early sign of brain changes. warning sign「警告のサイン」、sign of ~「~の兆し」も一緒に覚える。
  • cognitionC1
    名詞認知(機能)Poor cognition predicted more napping later. 形容詞 cognitive。cognitive decline「認知機能の低下」は高齢化の長文で頻出。
  • subsequentC1
    形容詞その後のLong naps were linked to a higher subsequent risk. 副詞 subsequently「その後」。sub-(下・後)+sequ(続く)。

動画でもっと知る

高齢者1401人の昼寝を腕時計型センサーで最長14年追った研究。長く頻繁な昼寝ほど認知症のリスクが高かったが、認知症が進むと昼寝がどんどん増えるという逆向きの関係も。「昼寝のせいで認知症に」とは言えないらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Li P et al. (2022) Daytime napping and Alzheimer's dementia: A potential bidirectional relationship, Alzheimer's & Dementiadoi.org
  2. Wong ATY et al. (2023) Total sleep duration and daytime napping in relation to dementia detection risk: Results from the Million Women Study, Alzheimer's & Dementiadoi.org
  3. Paz V et al. (2023) Is there an association between daytime napping, cognitive function, and brain volume? A Mendelian randomization study in the UK Biobank, Sleep Healthdoi.org
  4. Kitamura K et al. (2021) Short daytime napping reduces the risk of cognitive decline in community-dwelling older adults: a 5-year longitudinal study, BMC Geriatricsdoi.org
  5. Asada T et al. (2000) Associations between retrospectively recalled napping behavior and later development of Alzheimer's disease, Sleeppubmed.ncbi.nlm.nih.gov