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「この子は伸びる」と先生に期待された子は本当に伸びた? ピグマリオン効果、50年の論争

「この子は伸びる」と先生に期待された子は本当に伸びた? ピグマリオン効果、50年の論争

読む前に予想してみよう!

先生が生徒に期待をかけると、どの学年でも生徒のIQが大きく上がることが確かめられている

研究カード(どんな研究?)
対象
小学生と先生
規模
1校の全校児童+18実験の統合
研究の種類
フィールド実験・メタ分析・レビュー
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

クジで選ばれた子を先生が「伸びる子」と信じるとIQが伸びた、という有名研究。ただ効果は低学年中心で小さく、批判も多い。期待の力は本物だが魔法ではない。

ひとことで言うと期待されると、ちょっと伸びることがある。でも「信じるだけで天才に」はムリ!

もくじ
  1. クジ引きで選ばれた「伸びる子」たち
  2. ネズミでも「期待」は効いた?
  3. どんでん返し:効果は「小さく」「条件つき」
  4. 「マイナスの期待」の方がこわい
  5. まとめ

「あなたはやればできる子だから」

そう言われて、本当に頑張れた経験はありますか? それとも、プレッシャーで逆にしんどくなった?

人から期待されると、その期待どおりに伸びていく。これをピグマリオン効果と呼びます。ギリシャ神話で、自分が彫った女性像に恋をした王ピグマリオンの願いがかない、像が人間になった──という物語が名前の由来です。

01クジ引きで選ばれた「伸びる子」たち

この効果を有名にしたのは、心理学者ロバート・ローゼンタールと、小学校の校長レノア・ジェイコブソンの研究です。

「先生の期待」という目に見えないものが、子どもの知能テストの点数まで変えた──。この結果は1968年に本として出版され、教育界に大きな影響を与えました。

02ネズミでも「期待」は効いた?

実はローゼンタールは、その少し前にネズミでも似た実験をしています。

学生たちに「頭のいい系統のネズミ」か「頭の悪い系統のネズミ」だと伝えて迷路を学ばせたところ、「頭がいい」と言われたネズミの方が成績が良かったのです。実際には、ネズミはランダムに分けられただけでした。

学生がネズミの扱い方を無意識に変えていたのかもしれません。期待は、接し方を通して相手に伝わる可能性があるのです。ただしこれも学生実験レベルの小さな研究で、「観察する側の期待が結果をゆがめうる」という教訓(だから科学では二重盲検が大事)として読むのがよさそうです。

期待そのものではなく、期待から生まれる「接し方」が子どもに届くのかもしれない
期待そのものではなく、期待から生まれる「接し方」が子どもに届くのかもしれない

03どんでん返し:効果は「小さく」「条件つき」

ところが、この研究には発表直後から批判が相次ぎました。

  • 使われた知能テストは低学年向きとは言えず、ありえないほど低い点数の子が混じっていた(著名な心理測定学者ソーンダイクが1968年の書評で指摘)
  • 効果が出たのは低学年だけで、上の学年ではほとんど差がなかった
  • 追試の結果がまちまちだった

1984年、教育学者のラウデンブッシュは、関連研究をまとめて分析し、面白いことを見つけます。先生が子どもと出会って間もない時期(最初の2週間ほど)に「この子は伸びる」と伝えた場合は効果が見られたのに、先生がすでに子どもをよく知っている場合は、効果はほぼゼロだったのです。

さらに2005年のレビュー(Jussim & Harber)は、先生の期待による効果は本物だが全体として小さく、時間とともに薄れることも多いとまとめています。一方で、成績が低めの子や、偏見を持たれやすい立場の子には、期待の影響が大きく出る可能性も指摘されています。

04「マイナスの期待」の方がこわい

期待にはプラスだけでなくマイナスもあります。「この子はどうせできない」という思い込みが、子どもの力を引き下げてしまうことはゴーレム効果と呼ばれます。マイナスの期待をわざと与える実験は倫理的にできないため、証拠は観察研究が中心ですが、上で触れたように、偏見を持たれやすい立場の子ほど先生の期待の影響を受けやすいという指摘は見逃せません。

05まとめ

ピグマリオン効果は「信じれば誰でも天才になる」という魔法ではありませんでした。でも、人は他人の期待を、接し方を通して受け取っている可能性があります。

期待の言葉は、小さくても確かに届く。だからこそ、マイナスの決めつけほど慎重に扱いたいものです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Pygmalion effect is the idea that people improve when others expect them to. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The Pygmalion effect is the idea that people improve when others expect them to. In a famous 1960s study, Robert Rosenthal and a school principal told teachers that certain children would "bloom" academically that year. In fact, these children, about 20% of the students, had been chosen randomly. About eight months later, their IQ scores had risen more than those of other children, but the clear difference appeared mainly in the first and second grades. The study was soon criticized.

For example, the IQ test produced some impossibly low scores for young children. A 1984 analysis found that the effect appeared only when teachers had not yet known the children well. Expectations matter, but they are not magic.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ピグマリオン効果とは、他人から期待されると人は伸びるという考えです。1960年代の有名な研究で、ロバート・ローゼンタールと小学校の校長は、先生たちに、ある子どもたちが今年学力面で「開花する」と伝えました。実は、この子どもたち(全児童の約20%)はランダムに選ばれていました。約8か月後、彼らのIQの点数は他の子どもより大きく上がっていましたが、はっきりした差が出たのは主に1年生と2年生でした。この研究はすぐに批判されました。

たとえば、そのIQテストは低学年の子どもにありえないほど低い点数を出していました。1984年の分析では、効果が現れたのは先生がまだ子どもをよく知らなかった場合だけだとわかりました。期待は大切ですが、魔法ではないのです。

4択リーディングクイズ

Q1. How were the "blooming" children actually chosen?

Q2. What was one criticism of the study?

Q3. What does the 1984 analysis suggest?

重要単語

  • expectationB1
    名詞期待Her parents had high expectations for her. live up to one's expectations(期待に応える)、against all expectations(予想に反して)が頻出。
  • self-fulfilling prophecyC1
    名詞(句)自己成就的予言Believing you will fail can become a self-fulfilling prophecy. fulfill(実現させる)+prophecy(予言)。prophecy は名詞、prophesy は動詞(発音も違う)。
  • randomlyB2
    副詞無作為にThe winners were chosen randomly. at random と同義。random assignment(無作為割り当て)は実験の基本用語。
  • controversyB2
    名詞論争The study caused a long controversy. 形容詞 controversial。アクセントは CON-tro-ver-sy(米英とも一般的)/ con-TRO-ver-sy(主に英)と揺れがある。
  • credibleC1
    形容詞信じられる、もっともらしいThe teacher found the report credible. cred-(信じる)が語根。credit, incredible と同語源。名詞 credibility(信頼性)。
  • bloomB2
    動詞・名詞花開く、開花する/花Some students bloom later than others. 比喩で「才能が開花する」。late bloomer=大器晩成の人。in full bloom=満開で。
  • stigmatizeC1
    動詞汚名を着せる、偏見の目で見るPeople with mental illness are often stigmatized. 名詞 stigma(汚名・烙印)。社会問題を扱う評論文で頻出。
「この子たちは今年伸びる」と先生に伝えた子が、本当にIQを伸ばした──という有名なピグマリオン効果。実はその子たちはクジ引きで選ばれただけ。ただ、その後の分析では効果は小さく、条件つきだったらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Rosenthal & Jacobson (1966) Teachers' expectancies: Determinants of pupils' IQ gains, Psychological Reportsdoi.org
  2. Rosenthal & Fode (1963) The effect of experimenter bias on the performance of the albino rat, Behavioral Sciencedoi.org
  3. Thorndike (1968) Review of "Pygmalion in the Classroom", American Educational Research Journaldoi.org
  4. Raudenbush (1984) Magnitude of teacher expectancy effects on pupil IQ as a function of the credibility of expectancy induction: A synthesis of findings from 18 experiments, Journal of Educational Psychologydoi.org
  5. Jussim & Harber (2005) Teacher expectations and self-fulfilling prophecies: Knowns and unknowns, resolved and unresolved controversies, Personality and Social Psychology Reviewdoi.org