急いでいる時ほど信号が赤ばかりなのはなぜ?「隣の車線は速い」錯覚と記憶のクセ

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渋滞で「隣の車線のほうが速い」と感じるとき、実際に隣が速いことは絶対にない
本当に速い場合もある。ただ、同じ速さや自分が速い場合でも「隣が速い」と感じやすい錯覚がある。
- 対象
- 運転を学ぶ人
- 規模
- 映像実験の参加者+交通シミュレーション
- 研究の種類
- 実験研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
急ぐ日に赤信号が増えるわけではない。イライラした場面ほど記憶に残り、思い出しやすいことを「よくある」と感じる脳のクセが主な理由と考えられる。隣の車線が速く見えるのは、抜かれる時間のほうが長いことから起きる似た錯覚。
ひとことで言うと赤信号がふえたんじゃない。イライラした赤だけ、よく覚えてるんだ!
遅刻しそうな朝に限って、信号が次々と赤になる。のんびりしている日は青ばかりなのに……。
答えを先に言うと、急いでいる日だけ赤信号が増えているわけでは(たいてい)ありません。イライラした出来事ほど記憶に残り、思い出しやすいことを「よく起きる」と感じてしまうという脳のクセが原因です。じつはこれ、「隣の車線のほうが速く見える」錯覚と同じ仲間なのです。
01「隣の車線は速い」をNatureが検証した
実際は自分のほうが速いのに、なぜ隣が速く見えるのでしょう。
02抜かれる時間は長く、抜く時間は一瞬
研究チームはコンピューターで車の流れを再現して、理由を説明しました。
車は、速く流れるときは車間距離が開き、遅いときはぎゅっと詰まります。すると、自分の車線が遅いときは、隣の車がまばらに長い時間をかけて次々と追い抜いていきます。逆に自分が速いときは、詰まった隣の車列を短い時間で一気に抜き去ります。
結果として、たとえ平均速度が同じでも、「抜かれている時間」のほうが長くなりやすいのです。さらに人は、抜かれる側のほうにより注意を向けやすいとも考えられています。

03赤信号の記憶は「濃く」残る
信号も同じ構造です。
急いでいるときの赤信号は、イライラという強い感情と結びついて記憶に残ります。一方、青信号はスムーズすぎて、通り過ぎた瞬間に忘れてしまう。
心理学者のトヴェルスキー(Tversky)さんとカーネマン(Kahneman)さんは1973年、人は思い出しやすいものほど「よく起こる」と判断しがちであることを示し、これを「利用可能性ヒューリスティック」と呼びました。さらに、悪い出来事は良い出来事より強く心に残りやすいことも、多くの研究をまとめた2001年のレビューで指摘されています。
つまり、「急いでいる日は赤ばかり」という感覚は、記憶のサンプルが赤信号のほうにかたよっているだけかもしれないのです。
04どんでん返し:本当に「隣が速い」こともある
ただし、話にはオチがあります。
哲学者のボストロム(Bostrom)さんは、別の見方を紹介しています。遅い車線には車がたくさん詰まっているので、ある瞬間にランダムに選んだ1台の運転者は、遅い車線にいる確率のほうが高い。つまり「隣のほうが速い」と感じている運転者は、統計的には本当に遅い車線にいることが多い、というわけです。
また信号についても、青信号が連続するよう時間を調整している道路では、急いで速く走ると次の信号に早く着きすぎて、かえって赤に当たりやすいこともありえます。
05まとめ
急いでいる時に信号が赤ばかりに感じるのは、イライラした場面ほど記憶に残り、思い出しやすいことを「よくある」と感じる脳のクセのせいでした。隣の車線が速く見えるのも、同じ「見え方・注目のかたより」の仲間です。
赤信号に止まったら、深呼吸。それはあなたを遅らせる敵ではなく、ほんの数十秒の休憩時間です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy do traffic lights seem to be red whenever we are in a hurry?
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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Do traffic lights always turn red when you are in a hurry? Probably not. When you are late, red lights make you angry. Angry moments stay in your memory. Green lights are easy to forget.
So you remember more red lights than green ones. The same kind of thing happens on the road. In one study, about 70 percent of people thought the next lane was faster, but it was actually slower.
72 words ・ CEFR A2
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急いでいるときに限って、信号はいつも赤になるのでしょうか。おそらく違います。遅れそうなとき、赤信号はあなたをイライラさせます。イライラした瞬間は記憶に残ります。青信号は忘れやすいのです。
だから、青信号より赤信号のほうを多く覚えているのです。道路でも同じようなことが起こります。ある研究では、約70%の人が隣の車線のほうが速いと思いましたが、実際には隣のほうが遅かったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
急いでいるときに赤信号ばかりに感じる理由(記憶に残りやすさ)を説明しているので B。
Q2. In one study, about how many people thought the next lane was faster?
about 70 percent of people thought the next lane was faster とあるので D。
Q3. In this passage, "in a hurry" means ...
in a hurry は「急いでいる」。直後の When you are late(遅れそうなとき)とも対応するので C。
Why do traffic lights seem to be red whenever we are in a hurry? Usually, there are not really more red lights. Instead, our memory is biased. Red lights make us frustrated, and frustrating moments are easier to remember than smooth ones.
In 1973, two psychologists showed that people judge things that come to mind easily as more common. A similar illusion happens in traffic. In a 1999 study published in Nature, researchers showed video of rush-hour traffic to people learning to drive.
Although the filming car was moving slightly faster than the next lane, about 70 percent of viewers said the next lane was faster. Being passed by other cars seems to stay in our minds longer than passing them.
121 words ・ CEFR B1
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急いでいるときに限って、なぜ信号は赤に見えるのでしょうか。たいていの場合、実際に赤信号が増えているわけではありません。そうではなく、私たちの記憶がかたよっているのです。赤信号は私たちをイライラさせ、イライラした瞬間はスムーズな瞬間より思い出しやすいのです。
1973年、2人の心理学者は、人は思い浮かびやすいものほど「よくある」と判断することを示しました。似たような錯覚は交通でも起こります。『Nature』に掲載された1999年の研究で、研究者たちはラッシュアワーの交通の映像を、運転を学んでいる人たちに見せました。
撮影した車は隣の車線より少し速く進んでいたのに、見た人の約70%が隣の車線のほうが速いと答えました。他の車に抜かれることは、抜くことよりも長く心に残るようです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
there are not really more red lights. Instead, our memory is biased. が主旨なので A。
Q2. In the 1999 study, which lane was actually faster?
the filming car was moving slightly faster than the next lane とあるので、撮影した車の車線が速かった。C。
Q3. According to the passage, why might people remember red lights better than green lights?
Red lights make us frustrated, and frustrating moments are easier to remember とあるので B。
Traffic lights seem to turn red whenever we are late, but that impression is largely a product of memory. In 1973, Tversky and Kahneman described the availability heuristic, our habit of judging how often something happens by how easily examples come to mind. A frustrating red light is vivid and memorable, while a green light passes unnoticed, and a 2001 review concluded that bad events generally leave stronger impressions than good ones.
A related illusion was examined in a 1999 Nature paper by researchers from Toronto and Stanford. They showed people learning to drive a roughly four-minute video filmed from a car that was actually moving slightly faster than the next lane. About 70 percent still judged the other lane to be faster. A computer simulation explained why.
Fast traffic spreads out while slow traffic bunches up, so a driver spends more time being overtaken than overtaking. The participants were learner drivers, so the result may not apply to all motorists. And the feeling is not always mistaken. Because slow lanes contain more cars, a randomly chosen driver is statistically more likely to be in one, as the philosopher Nick Bostrom has pointed out.
194 words ・ CEFR B2
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急いでいるときに限って信号が赤になるように思えますが、その印象の大部分は記憶が生み出したものです。1973年、トベルスキーとカーネマンは「利用可能性ヒューリスティック」、つまり、例がどれだけ思い浮かびやすいかによって物事の起こる頻度を判断してしまう私たちの癖について説明しました。イライラする赤信号は鮮明で記憶に残りますが、青信号は気づかれずに過ぎていきます。また、2001年のレビューは、悪い出来事は一般に良い出来事よりも強い印象を残すと結論づけました。
関連する錯覚が、トロントとスタンフォードの研究者による1999年の『Nature』の論文で調べられました。彼らは運転を習っている人たちに、約4分の動画を見せました。撮影した車は実際には隣の車線よりわずかに速く走っていました。それでも約70%の人が、隣の車線のほうが速いと判断しました。コンピューターのシミュレーションがその理由を説明しました。
速い車の流れは間隔が広がり、遅い流れは詰まるので、運転者は追い越すよりも追い越される時間のほうが長くなるのです。参加者は運転を習っている人たちだったので、この結果がすべての運転者に当てはまるとは限りません。そして、この感覚がいつもまちがいだとは限りません。遅い車線には車が多いので、無作為に選んだ運転者は統計的に遅い車線にいる可能性が高いのです。哲学者のニック・ボストロムがこの点を指摘しています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
赤信号の記憶のかたよりと「隣の車線が速い」錯覚、その限界と例外を扱っているので D。
Q2. According to the simulation, why do drivers feel overtaken more often?
Fast traffic spreads out while slow traffic bunches up, so a driver spends more time being overtaken than overtaking. とあるので A。
Q3. What is the point of the sentence "And the feeling is not always mistaken"?
直後に「遅い車線には車が多いので、無作為に選んだ運転者は遅い車線にいる可能性が高い」と説明しているので C。
重要単語
- biasB2名詞かたより、偏見Memory bias makes red lights feel more common.
be biased against / toward ~「~に対して偏見がある/~をひいきする」。cognitive bias は「認知バイアス」。 - overtakeB2動詞追い越すA sports car overtook us on the highway.
overtake-overtook-overtaken。アメリカ英語では pass もよく使う。「(感情が)襲う」の意味もある。 - laneB1名詞車線The left lane looks faster than ours.
もとは「小道」。memory lane(思い出の道)は a trip down memory lane「懐かしい思い出にひたること」。 - frustrationB2名詞いらだち、欲求不満Frustration makes events easier to remember.
動詞 frustrate、形容詞 frustrated(いらだった)/frustrating(いらだたせる)の使い分けに注意。 - availabilityC1名詞思い出しやすさ、利用可能性The availability of a memory affects our judgment.
available(利用できる)の名詞形。availability heuristic は行動経済学の重要用語。 - illusionB2名詞錯覚、幻想The faster next lane is often an illusion.
optical illusion「目の錯覚」。be under the illusion that ~「~と思い込んでいる」。
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急いでいる日に限って信号が赤ばかり…は記憶のクセ。Natureの研究では、実は自分の車線が少し速いのに、映像を見た人の7割が「隣の車線が速い」と答えたらしい。抜かれた悔しさは覚えていて、抜いた時は忘れる。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









