【同志社の入試に出た】1歳半の赤ちゃんは、頼まれなくても人を助ける。でもご褒美で逆効果

読む前に予想してみよう!
手伝うたびにおもちゃのご褒美をもらった赤ちゃんは、その後もっと手伝うようになった
ご褒美をもらった子は、その後かえって手伝わなくなった。ほめ言葉だけの子では、この低下は見られなかった。
- 対象
- 18〜20か月の乳幼児(+若いチンパンジー3頭)
- 規模
- 数十人規模
- 研究の種類
- 実験研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
大人が物を落として困っていると、1歳半の子が自分から拾って渡した。ところが、続く研究で手伝うたびにおもちゃのご褒美をあげると、その後かえって手伝わなくなった。
ひとことで言うと1歳半の赤ちゃんも、困っている人を自分から助けるんだって!
人間は生まれつき「いい人」なのか、それとも教えられて「いい人」になるのか――。哲学者たちが何百年も議論してきた問いです。
この大問に、まだ言葉もほとんど話せない赤ちゃんを使って迫った実験があります。結果は、思わずほっこりするものでした。
「ヒトは生まれながらにして人を助ける」は、2026年度の同志社大学(2月7日実施、政策・文化情報・生命医科・スポーツ健康科学の各学部)の英語で長文のテーマになりました(代々木ゼミナールの解答速報・概評で確認)。
01大人が「困ったフリ」をすると……
大事なのは「対照条件」です。大人がわざと物を投げ捨てたときは、子どもはほとんど拾いませんでした。子どもは「物が落ちたから拾う」のではなく、相手の「やりたいこと」を理解して手伝っていたのです。
02チンパンジーも手伝った、でも……
同じ研究では、人に育てられた若いチンパンジー3頭も調べられました。チンパンジーも、手の届かない物を取ってあげるような場面では手伝いました。ただし、人間の子どものようにいろいろな場面で柔軟に助けることは少なかったと報告されています。
人を助ける心の「芽」は、人間に近い仲間にもある。でも、人間の子どもでは、それがとくに早く、幅広く花開くのかもしれません。

03ご褒美をあげたら、手伝わなくなった
さらに驚きの続編があります。
2008年、同じ研究チームは生後20か月の子どもを3グループに分けました。手伝うたびに①おもちゃなどのご褒美をもらう、②ほめ言葉をもらう、③何ももらわない。その後、ご褒美なしで手伝う場面を作ると、①のご褒美グループの子は、②や③の子より手伝わなくなったのです。
心理学ではこれを「アンダーマイニング効果(過正当化効果)」と呼びます。もともと「やりたい」と思ってしていたことに、外からご褒美をつけると、「ご褒美のためにやるもの」に変わってしまうのです。
赤ちゃんの「助けたい気持ち」は、ご褒美に頼らない、心の内側から湧いてくるものだったと考えられます。
04まとめ
人を助けたい気持ちは、言葉より先に、私たちの中にあるのかもしれません。
そして、それを育てるのは「ご褒美」よりも、「ありがとう」と一緒に喜ぶことなのかも。誰かを手伝ったとき、その温かい気持ちこそが、いちばんのご褒美なのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAre humans born to help others?
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Do babies help people without being asked? Scientists in Germany tested 18-month-old children. An adult dropped a clothespin and could not reach it. Many children walked over and picked it up for the adult. Nobody asked them or praised them.
But when the adult threw something away on purpose, the children rarely picked it up. In another study, children who got toys for helping later helped less.
67 words ・ CEFR A2
和訳を見る
赤ちゃんは、頼まれなくても人を助けるのでしょうか。ドイツの科学者たちは、生後18か月の子どもたちを調べました。大人が洗濯ばさみを落とし、手が届かないふりをしました。多くの子どもが歩いてきて、大人のためにそれを拾いました。誰も頼んだり、ほめたりはしませんでした。
しかし、大人がわざと物を投げ捨てたときは、子どもたちはそれをほとんど拾いませんでした。別の研究では、手伝ってご褒美におもちゃをもらった子どもは、その後あまり手伝わなくなりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
第1文の問い「頼まれなくても助けるか」に対し、多くの子が自分から助けたという結果を示しているので B。
Q2. How old were the children in the first study?
Scientists in Germany tested 18-month-old children. とあるので C。
Q3. In this passage, "on purpose" means ...
on purpose は「わざと、故意に」。反対は by accident(うっかり)。A が正解。入試の熟語問題で頻出。
Are humans born to help others? In 2006, Warneken and Tomasello at the Max Planck Institute in Germany tested 18-month-old children. An adult pretended to have small problems, such as dropping a clothespin out of reach or being unable to open a cupboard because both hands were full. The adult did not ask for help or give praise, but many children helped anyway.
When the adult threw an object down on purpose, however, the children rarely picked it up. This shows that they understood what the adult was trying to do. In a 2008 study, 20-month-olds who received toys as rewards for helping later helped less than those who were only praised or got nothing.
115 words ・ CEFR B1
和訳を見る
人間は生まれつき他者を助けるのでしょうか。2006年、ドイツのマックス・プランク研究所のワーネケンとトマセロは、生後18か月の子どもたちを調べました。大人が、洗濯ばさみを手の届かないところに落としたり、両手がふさがっていて戸棚が開けられなかったりといった、ちょっとした困りごとを演じました。大人は助けを求めることもほめることもしませんでしたが、それでも多くの子どもが手伝いました。
しかし、大人がわざと物を投げ落としたときには、子どもたちはそれをほとんど拾いませんでした。これは、子どもたちが大人のしようとしていることを理解していたことを示しています。2008年の研究では、手伝うとご褒美におもちゃをもらった生後20か月の子どもは、ほめられただけの子や何ももらわなかった子より、その後あまり手伝わなくなりました。
4択リーディングクイズ
Q1. Why was the situation where the adult threw an object on purpose important?
わざと落としたときはほとんど拾わなかったので、子どもは「物が落ちたから」ではなく、This shows that they understood what the adult was trying to do. なので D。
Q2. Which children helped less in the 2008 study?
20-month-olds who received toys as rewards for helping later helped less とあるので A。
Q3. What does the passage suggest about children's helping?
頼まれずほめられなくても助け、ご褒美でかえって減ったことから、助けたい気持ちは内側から自然に生まれると推論できるので B。
An adult carrying a stack of books walks up to a closed cabinet and cannot open it. In Warneken and Tomasello's 2006 study, 18-month-old children who watched scenes like this often went over and helped without being asked or praised. In another scene, an adult dropped a clothespin out of reach, and many toddlers handed it back.
The control conditions mattered most. When the adult threw the clothespin down on purpose, the children mostly left it on the floor, so they were responding to the adult's unfinished goal and not simply to a fallen object. Three young chimpanzees raised by humans helped too, mostly by fetching things out of reach, but in fewer kinds of situations than the children.
Three animals make a thin basis for comparing species, and the child samples were small too. This research did not look at other cultures or long-term effects. A 2008 follow-up added rewards. Twenty-month-olds who got a toy every time they helped later helped less than those who had been praised or given nothing. Psychologists call this the overjustification effect, in which an outside reward turns something done for its own sake into something done for pay.
195 words ・ CEFR B2
和訳を見る
本を山ほど抱えた大人が、閉まった戸棚の前まで来て、扉を開けられずにいます。ワーネケンとトマセロの2006年の研究では、こうした場面を見た生後18か月の子どもたちが、頼まれもほめられもしないのに、よく近づいてきて手伝いました。別の場面では、大人が洗濯ばさみを手の届かないところに落とすと、多くの幼児がそれを拾って手渡しました。いちばん大事だったのは対照条件です。
大人がわざと洗濯ばさみを投げ落としたときには、子どもたちはたいていそれを床に置いたままにしました。つまり子どもは、単に落ちた物ではなく、大人のやり遂げられていない目標に反応していたのです。人に育てられた若いチンパンジー3頭も、主に手の届かない物を取ってくる形で手伝いましたが、手伝う場面の種類は子どもより少ないものでした。
3頭だけでは種を比べる根拠としては心もとなく、子どもの標本も小さなものでした。この研究は、ほかの文化や長期的な影響までは調べていません。2008年の続編では、ご褒美が加えられました。手伝うたびにおもちゃをもらった生後20か月の子は、ほめられた子や何ももらわなかった子より、その後あまり手伝わなくなったのです。心理学ではこれを過正当化効果と呼びます。外からのご褒美が、それ自体のためにしていたことを、報酬のためにすることへと変えてしまう現象です。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did the children leave the clothespin on the floor in the control condition?
When the adult threw the clothespin down on purpose, the children mostly left it on the floor とあるので B。子どもは大人の「果たせていない目標」があるときに手伝った。
Q2. How did the chimpanzees' helping differ from the children's?
but in fewer kinds of situations than the children とあるので D。A は helped too と矛盾。
Q3. According to the overjustification effect, what can an outside reward do?
in which an outside reward turns something done for its own sake into something done for pay とあるので A。
重要単語
- altruisticC1形容詞利他的なAltruistic behavior helps others without expecting a reward.
名詞 altruism(利他主義)。反対は selfish / egoistic。心理・進化系の長文で頻出。 - toddlerB2名詞よちよち歩きの幼児The toddler handed the pen back to the adult.
toddle(よちよち歩く)+-er。だいたい1〜3歳の子を指す。infant は乳児。 - intrinsicC1形容詞内発的な、本来備わったIntrinsic motivation comes from inside us.
intrinsic motivation(内発的動機づけ)は教育系長文の最重要語。反対は extrinsic。 - extrinsicC1形容詞外発的な、外からのExtrinsic rewards can reduce interest in a task.
ex-(外)と in-(内)の対で覚える。extrinsic reward(外的報酬)。 - spontaneouslyC1副詞自発的にThe children helped spontaneously.
形容詞 spontaneous(自発的な、自然発生的な)。voluntarily と言い換えられる。 - undermineC1動詞弱める、損なうRewards may undermine natural kindness.
under(下を)+mine(掘る)=土台を掘り崩す。undermining effect(アンダーマイニング効果)として出る。 - deliberatelyB2副詞わざと、意図的にThe adult dropped the pen deliberately.
on purpose / intentionally と同義。形容詞 deliberate には「慎重な」の意味もある。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
公式・一次情報をチェック
- 2026年度 同志社大学(2/7 実施)英語 概評(「ヒトは生まれながらにして人を助ける」がテーマの長文)(代々木ゼミナール 解答速報)sokuho.yozemi.ac.jp
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
大人がうっかり物を落として手が届かないフリをすると、1歳半の子がトコトコ来て拾ってくれたらしい。お礼もご褒美もなしで。ところが手伝うたびにご褒美をあげると、その後はかえって手伝わなくなった。助けたい気持ちは生まれつき?
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(3件)タップで表示
- Warneken & Tomasello (2006) Altruistic helping in human infants and young chimpanzees, Sciencedoi.org
- Warneken & Tomasello (2008) Extrinsic rewards undermine altruistic tendencies in 20-month-olds, Developmental Psychologydoi.org
- Hamlin, Wynn & Bloom (2007) Social evaluation by preverbal infants, Naturedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









