心理学ホント

選んだ写真をこっそりすり替えても、多くの人が気づかず"選んだ理由"まで語った。「選択盲」の実験

選んだ写真をこっそりすり替えても、多くの人が気づかず"選んだ理由"まで語った。「選択盲」の実験

読む前に予想してみよう!

自分が選んだものがすり替えられたら、人はほぼ必ず気づく

研究カード(どんな研究?)
対象
スウェーデンの成人
規模
約120人
研究の種類
実験(手品の手法を使った操作)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

好みの顔写真を選んだ直後、手品の技で選ばなかった方にすり替えても、気づけたのは一部だけ。多くの人は"選んでいない顔"を選んだ理由をすらすら説明した。

ひとことで言うと自分で選んだはずのものが入れ替わっても、人はけっこう気づかない!

もくじ
  1. 手品の技で、選択をすり替える
  2. ジャムでも、政治の意見でも起きた
  3. 最新研究のどんでん返し:「本当は気づいていた?」
  4. まとめ

2枚の顔写真のうち「こっちのほうが魅力的」と選んだら、その写真を渡されて「どうしてこちらを選んだんですか?」と聞かれる。

簡単ですよね。でも、もし渡された写真が、あなたが選ばなかったほうだったら? さすがに気づく——と思いますよね。

スウェーデンのルンド大学の研究チームが試したところ、多くの人が気づきませんでした。それどころか、選んでもいない顔を選んだ理由を、堂々と語り始めたのです。

01手品の技で、選択をすり替える

なかには、自分が選んだ写真にはなかった特徴(たとえばイヤリング)を「決め手」と語る人もいました。理由は「選ぶ前」にあったのではなく、目の前の写真を見ながら、あとから作られていたのです。

02ジャムでも、政治の意見でも起きた

この「選択盲」は、写真だけの話ではありません。

研究チームはスーパーの試食コーナーで、ジャムや紅茶の香りを使った実験もしました。好きな方を選んだあと、中身をこっそり入れ替えた容器で「もう一度どうぞ」。シナモンりんごとグレープフルーツのように味がかなり違う組み合わせでも、すり替えの多くは見過ごされました。

さらに2012年には、道徳的な意見を聞くアンケートで回答をこっそり反対向きに書き換える実験も。すると多くの人が、自分が本当は選んでいない意見を、理由をつけて擁護したのです。

味がまるで違うジャムでも、すり替えは見過ごされがち
味がまるで違うジャムでも、すり替えは見過ごされがち

03最新研究のどんでん返し:「本当は気づいていた?」

ただし、話はここで終わりません。

2025年の研究では、参加者の瞳孔の大きさを測りながら選択盲の実験を行いました。すると、すり替えを「気づいた」と言わなかった試行でも、瞳孔は開いていたのです。

研究者たちは、「人は実はうすうす違和感を覚えているのに、報告しないだけの場合がある」と考えています。「間違えたのは自分かも」「わざわざ言うのは気まずい」——そんな心理がブレーキになっている可能性です。

選択盲は「人は自分の選択を全く分かっていない」という極端な話ではなく、気づいても口にしにくいという社会的な面も含んだ現象なのかもしれません。

04まとめ

「自分のことは自分がいちばん分かっている」。そう思いたいけれど、私たちの「選んだ理由」は、思ったよりあとづけかもしれません。

だからこそ、選んだ後にもう一度見直す習慣を。そして違和感を口に出す勇気を。それが、知らないうちに"すり替えられた選択"から自分を守る方法です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn a 2005 study in Sweden, researchers showed participants two photos of women's faces and asked them to… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In a 2005 study in Sweden, researchers showed participants two photos of women's faces and asked them to choose the more attractive one. Using a card trick borrowed from magicians, the researcher sometimes handed over the photo that had not been chosen. Only about a quarter of these switches were noticed.

Some participants who missed the switch explained their "choice" by pointing to features of the photo they had not chosen, such as a pair of earrings. The same thing happened in other situations. At a supermarket, people often failed to notice when two very different jams were swapped. In a 2012 survey, many people defended moral opinions they had not actually chosen after their answers were secretly reversed.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

スウェーデンでの2005年の研究で、研究者たちは参加者に女性の顔写真を2枚見せ、より魅力的なほうを選ぶよう頼みました。手品師から借りたカードの技を使って、研究者はときどき選ばれなかったほうの写真を手渡しました。こうしたすり替えのうち、気づかれたのは約4分の1だけでした。

すり替えに気づかなかった参加者の中には、イヤリングなど、自分が選ばなかった写真の特徴を挙げて自分の「選択」を説明する人もいました。同じことはほかの場面でも起きました。スーパーでは、まったく違う2種類のジャムが入れ替えられても、人々はしばしば気づきませんでした。2012年のアンケートでは、回答がこっそり反対に書き換えられた後、多くの人が実際には選んでいない道徳的な意見を擁護しました。

4択リーディングクイズ

Q1. How often were the photo switches noticed?

Q2. What happened in the 2012 survey?

Q3. What can we infer from these studies?

重要単語

  • choice blindnessC1
    名詞(句)選択盲Choice blindness shows how little we know about our own choices. blindness は「見えないこと」。inattentional blindness(非注意性盲目)など、心理学の「~盲」はこの形。
  • manipulationC1
    名詞(実験の)操作・巧みな操作The manipulation was hidden by a card trick. manipulate は「巧みに操る」。日常では「人を操る」という悪い意味が多いが、実験では中立的な「操作」。
  • confabulateC1
    動詞作話する(もっともらしい理由を作る)People confabulated reasons for choices they never made. うそをつくつもりはなく、本人も信じて話を作ってしまうこと。名詞 confabulation。
  • introspectionC1
    名詞内省Introspection is not always reliable. intro-(内へ)+spect(見る)。inspect, spectator と同じ spect。
  • preferenceB1
    名詞好みOur preferences can change after a choice. prefer A to B「BよりAを好む」の名詞形。have a preference for ~「~のほうを好む」。
  • justifyB2
    動詞正当化するMany people justified a choice they never made. just(正しい)+-ify(~にする)。名詞 justification。The end justifies the means.「目的は手段を正当化する」。
  • sleight of handC1
    名詞(句)手品の早業The researcher switched the photos by sleight of hand. sleight は「巧妙さ」で、slight(わずかな)と同じ発音 /slaɪt/。比喩で「ごまかし」の意味もある。

動画でもっと知る

4コマでわかる

選んだ写真をこっそりすり替えても、多くの人が気づかず"選んだ理由"まで語った。「選択盲」の実験の4コマ漫画
2枚の顔写真から好きな方を選んでもらい、手品のテクで"選ばなかった方"を渡す実験。気づけたのは一部だけで、多くの人は選んでもいない顔を選んだ理由まで語ったらしい。自分の「好み」、案外あやふや。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Johansson, Hall, Sikström & Olsson (2005) Failure to detect mismatches between intention and outcome in a simple decision task, Sciencedoi.org
  2. Hall et al. (2010) Magic at the marketplace: Choice blindness for the taste of jam and the smell of tea, Cognitiondoi.org
  3. Hall, Johansson & Strandberg (2012) Lifting the veil of morality: Choice blindness and attitude reversals on a self-transforming survey, PLoS ONEdoi.org
  4. Grassi et al. (2025) Restoring sight in choice blindness: pupillometry and behavioral evidence of covert detection, Frontiers in Psychologydoi.org