性格はたった5つの「目盛り」で表せる? 心理学の本命「ビッグファイブ」入門

読む前に予想してみよう!
性格は大人になったら一生ほとんど変わらない
長期研究をまとめると、誠実性や情緒の安定性は20代〜中年にかけて平均的に高まる傾向がある。
- 対象
- 子どもから高齢者まで
- 規模
- 92の長期追跡サンプル+78の関連の大規模追試(中央値約1,500人)
- 研究の種類
- メタ分析+事前登録の追試
- 確かさ
- ★★★★☆
心理学で最も研究されている性格のモデルは「5つの軸の目盛り」。タイプ分けではなく、誰もが5本のメーターのどこかにいるという考え方。
ひとことで言うと性格は「〇〇タイプ」じゃなく、5本のメーターの組み合わせ!
「あなたは〇〇タイプ!」という性格診断、ついやってしまいますよね。
でも、大学の心理学の研究室で性格を測るとき、いちばんよく使われているのは、実はタイプ分けではありません。
それが「ビッグファイブ(Big Five)」。人の性格を、5本のメーター(目盛り)の組み合わせで表す考え方です。
01辞書の言葉を全部集めたら「5つ」に落ち着いた
ビッグファイブの出発点はユニークです。「性格を表す大事な特徴なら、きっと言葉になっているはず」という発想から、研究者たちは辞書から性格を表す単語を片っ端から集めました。
1936年、アメリカの心理学者オールポートらが英語の辞書を調べたところ、性格や行動に関係しそうな単語が約1万8000語も見つかりました。その後の研究者たちがこの単語群を似た意味ごとに整理して統計的に分析していくと、何度やってもだいたい5つのグループに収まったのです。
025本のメーターの中身
5つの軸は、頭文字をとって「OCEAN(オーシャン)」と覚えられます。
- O:開放性…新しいこと・アート・アイデアが好きか
- C:誠実性…計画的にコツコツ進めるか
- E:外向性…人と一緒にいると元気が出るか
- A:協調性…人に優しく、協力的か
- N:神経症傾向…不安やストレスを感じやすいか
ポイントは、これが「〇か×か」ではなく「どのくらい」で表されること。身長と同じで、ほとんどの人は真ん中あたりにいて、両端の人は少数です。
たとえるなら、性格は5本のつまみがついたミキサー(音響機材)。つまみの位置の組み合わせで、その人らしい「音」が決まるイメージです。

03性格は、大人になってからも動く
「性格は変わらない」と思っていませんか?
ロバーツさんらが2006年に『Psychological Bulletin』で発表した研究では、92の長期追跡データをまとめて分析(メタ分析)。すると、平均的には20〜40歳ごろを中心に、誠実性や情緒の安定性(神経症傾向の低さ)が高まっていくことがわかりました。一方、開放性は10代〜若いころに高まり、高齢になると下がる傾向がありました。
いわば、人は年齢とともに少しずつ「大人の性格」に育っていくのです。もちろん個人差は大きく、全員が同じように変わるわけではありません。
なお、双子や家族の研究(10万人以上)をまとめた2015年のメタ分析では、性格の個人差のおおよそ4割が遺伝で説明できると推定されました。逆に言えば、残りの約6割は環境や経験の影響ということです。ただし「遺伝率4割」は集団のばらつきについての数字で、「1人の性格の4割が遺伝で決まっている」という意味ではありません。
045つの目盛りは、人生の行方とも関係していた
ビッグファイブがここまで信頼されている理由は、現実の人生と結びついているからです。
誠実性が高い人ほど、学業成績や仕事の評価、健康に関する行動などで良い結果と関連しやすい、という報告が数多くあります。2007年のロバーツさんらのレビューでは、性格特性が寿命や離婚、仕事上の地位を予測する力は、家庭の経済状況や知能テストの成績と比べても見劣りしないとまとめられました。
心理学では「有名な研究が再現できない」問題(再現性の危機)が話題になりましたが、ビッグファイブはその検証にも耐えています。2019年、ソトさんは過去に報告された78の「性格と人生の関係」を、事前に計画を登録したうえで大人数(1つあたり中央値約1,500人)で再現しようとしました。その結果、87%で同じ向きの関係が再び確認された一方、効果の大きさは元の研究の約8割(77%)に縮む傾向がありました。
ただし、これらは基本的に相関です。「誠実性が高いから成績が上がる」と因果を言い切れるわけではありません。
つまり、「性格がすべてを決める」わけではありませんが、無視できない手がかりではある、というのが今の答えです。
タイプ分けの代表である16タイプ診断との違いはMBTIの記事、外向・内向の誤解は内向型・外向型の記事でも紹介しています。
05まとめ
性格は、5本のメーターの組み合わせ。しかも、そのメーターは大人になってからも少しずつ動きます。
「自分はこういう人間だから」とあきらめる前に、今の目盛りの位置を知って、上手に付き合う。それがビッグファイブのいちばん賢い使い方かもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerInstead of sorting people into types, many psychologists describe personality with five traits.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many personality quizzes put people into types. But psychologists usually use a model called the Big Five. It has five scales: openness, conscientiousness, extraversion, agreeableness, and neuroticism. You can remember them as OCEAN.
Everyone is somewhere on each scale, and most people are in the middle. Our personality can also change slowly as we grow older. For example, many adults become more careful and calm.
65 words ・ CEFR A2
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多くの性格診断は人をタイプに分けます。しかし、心理学者はふつうビッグファイブと呼ばれるモデルを使います。それには5つの尺度があります。開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向です。頭文字でOCEANと覚えられます。
誰もがそれぞれの尺度のどこかにいて、ほとんどの人は真ん中あたりにいます。また、私たちの性格は年をとるにつれてゆっくり変わることもあります。たとえば、多くの大人はより慎重で落ち着いた人になります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the Big Five?
a model called the Big Five. It has five scales とあるので B。タイプではなく尺度である点に注意。
Q2. Where are most people on each scale?
most people are in the middle とあるので C。
Q3. In this passage, "change slowly" means personality ...
slowly は「ゆっくりと」。少しずつ変わるという意味なので B。
Instead of sorting people into types, many psychologists describe personality with five traits. They are openness, conscientiousness, extraversion, agreeableness, and neuroticism, often called the Big Five. The model began with an unusual idea.
Researchers collected thousands of personality words from the dictionary and found that they could be grouped into about five clusters. Each trait is measured on a scale, like height, so most people fall near the middle. Personality is not completely fixed.
A 2006 analysis of 92 long-term studies found that, on average, conscientiousness and emotional stability increase between about age 20 and 40. The traits are also linked to real life, although a link does not prove that one thing causes the other. For example, people high in conscientiousness tend to do better at school and work.
130 words ・ CEFR B1
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人をタイプに分ける代わりに、多くの心理学者は5つの特性で性格を表します。開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向で、ビッグファイブと呼ばれます。このモデルは変わった発想から始まりました。
研究者たちは辞書から何千もの性格を表す言葉を集め、それらがおよそ5つのまとまりに分けられることを見出しました。各特性は身長のように尺度で測られるので、ほとんどの人は真ん中近くに位置します。性格は完全に固定されたものではありません。92の長期研究を分析した2006年の研究では、平均すると、誠実性と情緒の安定性はおよそ20歳から40歳の間に高まることがわかりました。
特性は現実の生活とも結びついています。ただし、結びつきがあるからといって、一方がもう一方を引き起こすと証明されるわけではありません。たとえば、誠実性の高い人は学校や仕事でうまくいく傾向があります。
4択リーディングクイズ
Q1. How did the Big Five model begin?
Researchers collected thousands of personality words from the dictionary とあるので B。
Q2. What did the 2006 analysis find?
conscientiousness and emotional stability increase between about age 20 and 40 とあるので C。
Q3. What does the writer say about the link between traits and real life?
although a link does not prove that one thing causes the other とあり、因果の証明ではないと注意しているので A。
Online quizzes sort people into types. Personality researchers mostly use the Big Five instead. Often remembered as OCEAN, it places each person along five continuous dimensions, namely openness, conscientiousness, extraversion, agreeableness and neuroticism. It grew out of the lexical approach, which assumes that important traits are encoded in everyday language. When researchers such as Lewis Goldberg statistically analyzed large sets of personality adjectives, the words kept clustering into five broad factors.
The pattern held in many languages, though some studies favor a sixth factor, honesty-humility, for certain languages. Because each trait is a dimension and not a category, most people score near the middle. A 2006 meta-analysis of 92 longitudinal samples showed that in adults, conscientiousness and emotional stability tend to rise, mainly between ages 20 and 40.
Twin and family studies put the heritable share of differences between people at roughly 40 percent. That figure describes a population and says nothing about how much of one person's character comes from genes. The traits also correlate with real outcomes. In a 2019 preregistered study that retested 78 links between traits and life outcomes, 87 percent held up, although the effects were about 77 percent as large as first reported.
199 words ・ CEFR B2
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ネットの診断は人をタイプに分けます。一方、性格研究者が主に使うのはビッグファイブです。OCEANとしてよく覚えられるこのモデルは、一人ひとりを5つの連続的な次元の上に位置づけます。開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向です。このモデルは語彙アプローチから生まれました。これは、重要な特性は日常の言葉に組み込まれているはずだと仮定する考え方です。
ルイス・ゴールドバーグらの研究者が性格を表す形容詞の大規模な集まりを統計的に分析すると、言葉は何度も5つの大きな因子にまとまりました。このパターンは多くの言語で成り立ちましたが、ある言語では第6の因子である「正直さ・謙虚さ」を加えたほうが当てはまりがよいとする研究もあります。各特性はカテゴリーではなく次元なので、ほとんどの人は真ん中近くの得点になります。
92の縦断サンプルを対象とした2006年のメタ分析は、大人でも誠実性と情緒の安定性が主に20歳から40歳の間に高まる傾向があることを示しました。双子や家族の研究によると、人と人の違いのうち遺伝によるものはおよそ40パーセントです。この数字は集団について述べたもので、1人の人の性格のどれだけが遺伝子から来ているかについては何も語っていません。特性は現実の結果とも相関しています。特性と人生の結果の78の関連を事前登録のうえで検証し直した2019年の研究では、87パーセントが確認されましたが、効果は最初の報告の約77パーセントの大きさでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What does the "lexical approach" assume?
assumes that important traits are encoded in everyday language とあるので A。
Q2. What does the author mean by saying the 40 percent figure "describes a population"?
says nothing about how much of one person's character comes from genes とあり、40%は集団のばらつきについての数字なので C。
Q3. What did the 2019 study find?
87 percent held up, although the effects were about 77 percent as large as first reported とあるので B。
重要単語
- traitB2名詞特性、特徴Kindness is one of her best traits.
personality trait「性格特性」。最後の t は発音することが多い。 - conscientiousnessC2名詞誠実性(計画的でまじめなこと)Conscientiousness helps students finish their homework on time.
conscience(良心)から。conscious(意識している)とつづりが似ているので注意。 - extraversionC1名詞外向性People high in extraversion enjoy parties.
extra-(外へ)+vert(向く)。反対は introversion(内向性)。 - heritabilityC2名詞遺伝率Heritability does not mean a trait cannot change.
inherit(受け継ぐ)、heritage(遺産)と同語源。 - longitudinalC2形容詞長期追跡の、縦断的なA longitudinal study followed the same people for 20 years.
longitude(経度)と同語源。cross-sectional(横断的な)と対で覚える。 - dimensionB2名詞次元、側面Each trait is a dimension, not a category.
three-dimensional(3次元の=3D)。問題の「側面」の意味でもよく使う。 - correlationC1名詞相関(関係)Correlation does not prove causation.
Correlation does not imply causation.「相関は因果を意味しない」は入試頻出の決まり文句。
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心理学者が性格を測るとき一番使うのは、血液型でも16タイプでもなく「ビッグファイブ」。開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向の5本のメーターで、しかも大人になってからも少しずつ動くらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Goldberg (1990) An alternative "description of personality": The Big-Five factor structure, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Roberts, Walton & Viechtbauer (2006) Patterns of mean-level change in personality traits across the life course: A meta-analysis of longitudinal studies, Psychological Bulletindoi.org
- Roberts et al. (2007) The power of personality: The comparative validity of personality traits, socioeconomic status, and cognitive ability for predicting important life outcomes, Perspectives on Psychological Sciencedoi.org
- Soto (2019) How replicable are links between personality traits and consequential life outcomes? The Life Outcomes of Personality Replication Project, Psychological Sciencedoi.org
- Vukasović & Bratko (2015) Heritability of personality: A meta-analysis of behavior genetic studies, Psychological Bulletindoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











