あなたの年齢や支持政党を知ったAIは、人間より議論に強かった

読む前に予想してみよう!
相手の個人情報を何も知らないGPT-4でも、人間よりはっきり説得力が高かった
情報なしでは人間とほぼ互角。個人情報を与えられたときに差が出た。
- 対象
- オンラインで集めた成人
- 規模
- 900人
- 研究の種類
- 事前登録されたランダム化実験
- 確かさ
- ★★★☆☆
900人のオンライン討論実験で、相手の属性情報を知ったGPT-4は、人間より相手の意見を動かしやすかった。
ひとことで言うとあなたのことを少し知ったAIは、人間より「説得上手」になった!
ネットで誰かと言い合いになったとき、相手が実はAIだったとしたら? しかも、そのAIがあなたの年齢や支持政党を知っていたら?
2025年、スイスなどの研究チームが、まさにこの状況を実験で再現しました。結果は、ちょっと背筋が寒くなるものでした。
01900人を「人間 vs AI」でディベートさせた
実験は全部で12パターン。相手が人間かAIか、相手に「参加者の個人情報」を渡すかどうか、テーマが「意見が分かれやすいか」などを組み合わせました。
渡した個人情報は、性別、年齢、人種、学歴、仕事の状況、支持政党といった、SNSのプロフィールから推測できそうなレベルのものです。
02個人情報を知ったAIは、64%の確率で人間に勝った
討論の前後で、参加者の意見がどれくらい相手側に動いたかを比べました。
その結果、AIと人間で説得力に差が出たペアに注目すると、個人情報を持ったGPT-4は64.4%のケースで人間より説得力が高かったのです。討論後に相手の意見に寄る確率(オッズ)は、約1.8倍に相当しました。
一方、個人情報なしのGPT-4は、人間とほぼ互角。人間に個人情報を渡しても、あまり説得力は上がりませんでした。ただし2026年9月に著者が出した訂正では、「個人情報ありのGPT-4」と「なしのGPT-4」を直接比べた差は、統計的に確かとまでは言えない(P=0.07)とされています。

03なぜAIは「ハマる話し方」ができるのか
人間は、相手のプロフィールを知っても、うまく使いこなせないことが多い。ところがAIは、膨大な文章から「この属性の人にはこういう論点が響きやすい」というパターンを学んでいます。
つまり、一人ひとりに合わせて論点や言い回しを変えるのが、人間より得意なのかもしれません。
先行研究では、AIとの対話で陰謀論への信じこみが弱まったという報告もあり、AIの説得力は「良い方向」にも使えます。だからこそ、悪用への備えが大事になります。
04悪用されたらどうなる?
研究チームが心配しているのは、こうしたAIがSNSの大量のアカウントとして使われることです。一人ひとりのプロフィールに合わせた「刺さる」メッセージを、人間では不可能な規模で自動で送り続けることができてしまいます。
だからこそ研究者たちは、SNSなどのプラットフォームが、AIによる個人向けの説得にどう向き合うかを、今のうちに考えておく必要があると訴えています。
05まとめ
AIが人間をはっきり上回ったのは、「あなたを知っていた」ときでした(ただし情報なしのAIとの差は統計的に未確定です)。
SNSで「やけに刺さる意見」に出会ったら、一度立ち止まって考えてみてください。その言葉は、あなたのためにチューニングされたものかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerResearchers in Switzerland wanted to know whether AI is better than humans at changing people's minds.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Can AI change your opinion better than a person? In 2025, researchers in Switzerland asked 900 people to have short online debates. Some talked with a person, and others talked with GPT-4, an AI. They did not know which one it was.
When the AI knew a little about them, like their age and political party, it changed their opinions more often than humans did. Without this information, the AI and humans were about the same.
76 words ・ CEFR A2
和訳を見る
AIは人間よりもうまく、あなたの意見を変えられるのでしょうか。2025年、スイスの研究者たちは900人に短いオンライン討論をしてもらいました。人間と話した人もいれば、AIのGPT-4と話した人もいました。参加者は相手がどちらなのか知りませんでした。
AIが年齢や支持政党など、参加者について少し知っていると、人間よりも多く相手の意見を変えました。この情報がないと、AIと人間はほぼ同じでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
討論でAIが人の意見を変えたという実験が中心なので B。
Q2. How many people took part in the debates?
asked 900 people to have short online debates とあるので D。
Q3. In this passage, "opinion" means ...
opinion は「意見・考え」。あることについて自分がどう思うかなので C。
Researchers in Switzerland wanted to know whether AI is better than humans at changing people's minds. In a study published in 2025, 900 participants took part in short online debates about social and political issues in the United States. Their opponent was either a human or GPT-4, and they were not told which.
In some debates, the opponent was given basic personal information about the participant, such as age, gender, education, and political party. When GPT-4 had this information, it was more persuasive than a human in 64.4 percent of the cases where there was a difference. Without the information, GPT-4 and humans were about equally persuasive. The researchers worry that such AI could be misused on social media.
119 words ・ CEFR B1
和訳を見る
スイスの研究者たちは、人の考えを変えることにかけて、AIが人間より優れているかどうかを知りたいと考えました。2025年に発表された研究で、900人の参加者が、アメリカの社会・政治問題についての短いオンライン討論に参加しました。討論の相手は人間かGPT-4のどちらかで、参加者にはどちらなのか知らされませんでした。
一部の討論では、相手に参加者の年齢、性別、学歴、支持政党といった基本的な個人情報が渡されました。GPT-4がこの情報を持っていたとき、差が出たケースのうち64.4%で人間より説得力がありました。情報がないと、GPT-4と人間の説得力はほぼ同じでした。研究者たちは、こうしたAIがSNSで悪用されるおそれがあると心配しています。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the researchers want to know?
第1文 wanted to know whether AI is better than humans at changing people's minds とあるので A。
Q2. What kind of information was given to the opponent in some debates?
such as age, gender, education, and political party とあるので C。
Q3. What can we infer from the passage?
情報があると64.4%で上回り、情報がないと互角だったことから、GPT-4が人間を明確に上回ったのは個人情報があるときだけだったと読み取れるので D。
How persuasive can a chatbot be when it knows something about you? In a 2025 study, researchers at EPFL in Switzerland put this question to 900 online participants. Each person took part in a short, structured debate on a divisive social or political issue in the United States, facing either a human or GPT-4 without being told which. In some conditions, the opponent received basic demographic information about the participant, including gender, age, ethnicity, education, employment status, and political affiliation.
When GPT-4 had access to this information, it was more persuasive than human opponents in 64.4 percent of the pairs where a difference emerged, corresponding to roughly 1.8 times higher odds of shifting participants' views. Without personal data, GPT-4 performed about as well as humans, and humans gained little from the same information. The authors warn that such personalized persuasion could be misused at scale on social media. However, the debates lasted only about ten minutes, were conducted in English on American topics, and used an older AI model, so the results may not directly apply to real online environments.
180 words ・ CEFR B2
和訳を見る
チャットボットがあなたについて何かを知っているとき、どれほど説得力を持ちうるのでしょうか。2025年の研究で、スイスのEPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)の研究者たちは、900人のオンライン参加者を対象にこの問いを検証しました。各参加者は、アメリカで意見が分かれる社会・政治問題について短い構造化された討論を行い、相手は人間かGPT-4のどちらかで、どちらなのかは知らされませんでした。一部の条件では、相手に参加者の性別、年齢、人種、学歴、就労状況、支持政党といった基本的な属性情報が渡されました。
GPT-4がこの情報を利用できたとき、差が出たペアの64.4%で人間の相手より説得力が高く、これは参加者の意見を動かすオッズが約1.8倍高いことに相当しました。個人情報がない場合、GPT-4は人間とほぼ同程度で、人間は同じ情報を得てもほとんど説得力が上がりませんでした。著者らは、このような個人に合わせた説得がSNS上で大規模に悪用されるおそれがあると警告しています。しかし、討論は約10分しか続かず、英語でアメリカの話題について行われ、使われたのは古いAIモデルだったため、結果が実際のオンライン環境にそのまま当てはまるとは限りません。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, what did GPT-4 have when it outperformed humans?
情報があるときだけ人間を上回り、Without personal data, GPT-4 performed about as well as humans とあるので A。
Q2. What happened when human opponents received the same personal information?
humans gained little from the same information とあるので B。人間は情報をうまく活用できなかった。
Q3. Why does the author say the results "may not directly apply to real online environments"?
最終文で約10分の短い討論・英語でアメリカの話題・古いモデル、という3つの限界を理由に挙げているので C。
重要単語
- persuasiveB2形容詞説得力のあるHer speech was clear and persuasive.
persuade(説得する)の形容詞形。persuade O to do「O を説得して~させる」は入試の語法問題の定番。 - personalizeB2動詞個人に合わせるApps personalize ads based on your data.
personal(個人の)+-ize。personalized learning「個別最適化された学び」も教育の話題で頻出。 - opponentB2名詞(試合・討論の)相手My opponent in the debate was well prepared.
oppose(反対する)と同語源。opposite(反対の)、opposition(反対)もまとめて。 - demographicC1形容詞・名詞人口統計的な(年齢・性別などの)属性The survey asked for basic demographic information.
demo-(人々)+graph(記述)。democracy の demo- と同じ。demographics で「人口構成」。 - misuseB2名詞・動詞悪用(する)、誤用(する)We must prevent the misuse of AI.
mis-(誤って)+use。名詞は /mɪsˈjuːs/、動詞は /mɪsˈjuːz/ と語末の発音が変わる。 - divisiveC1形容詞意見を分裂させる、賛否が分かれるImmigration is a divisive issue in many countries.
divide(分ける)の形容詞形。a divisive issue「賛否の分かれる問題」で覚える。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
公式・一次情報をチェック
- 論文全文 On the conversational persuasiveness of GPT-4(PubMed Central, 米国国立医学図書館)pmc.ncbi.nlm.nih.gov
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
900人とオンラインで討論させる実験で、相手の年齢・性別・支持政党などを教えられたGPT-4は、人間よりも相手の意見を変えやすかったらしい。情報なしだと人間と互角。ただ、情報あり・なしのAI同士の差は統計的にはまだ確かでない(2026年の著者訂正)。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(3件)タップで表示
- Salvi et al. (2025) On the conversational persuasiveness of GPT-4, Nature Human Behaviourdoi.org
- Hackenburg & Margetts (2024) Evaluating the persuasive influence of political microtargeting with large language models, PNASdoi.org
- Costello et al. (2024) Durably reducing conspiracy beliefs through dialogues with AI, Sciencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












