心理学ホント

「AIの方が思いやりがある」――プロの相談員より共感的だと評価された理由

「AIの方が思いやりがある」――プロの相談員より共感的だと評価された理由

読む前に予想してみよう!

「これはAIが書いた返事です」と明かされると、AIの評価は人間より下がった

研究カード(どんな研究?)
対象
カナダなどの成人参加者
規模
556人(4実験の合計)
研究の種類
事前登録されたオンライン実験
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

4つの実験で、第三者はAIの返答を人間の返答より「思いやりがある」と評価。危機相談のプロと比べても、AIだと明かしても(差は縮んだが)AIのほうが上だった。

ひとことで言うとAIの返事は、人間のプロより「やさしい」と感じられた!

もくじ
  1. 悩みへの返事を読み比べる4つの実験
  2. 「AIが書いた」とバラしても結果は同じ
  3. なぜAIは「やさしく」見えるのか
  4. まとめ

つらいことがあったとき、誰かに話を聞いてほしい。でも、その返事を書いたのが人間ではなくAIだったら、あなたはどう感じますか?

2025年、カナダの心理学者たちが「AIの返事と人間の返事、どっちが思いやりを感じるか」を何度も確かめました。

結果は、何度やってもAIの勝ちでした。

01悩みへの返事を読み比べる4つの実験

返事を書いたのは、ChatGPT(GPT-4)と、一般の人、そして電話相談で危機対応の訓練を受けた相談員。どの比較でも、AIの返事のほうが好まれ、より思いやりがあると評価されました。返事の応答性(理解・承認・気づかい)も測った4つ目の実験では、その点でもAIが上回りました。

02「AIが書いた」とバラしても結果は同じ

「人間が書いたと思ったから高評価だったのでは?」という疑問もわきます。そこで研究チームは、誰が書いたかを明かした実験も行いました。

それでもAIの評価は高いまま。AIの返事は、相手の気持ちを理解し、受け止め、気づかっていると感じさせる力が強く、それが「思いやり」の評価を押し上げる一因になっていたことも分析から分かりました。

細かいところまで拾ってくれる返事は「わかってもらえた」と感じやすい
細かいところまで拾ってくれる返事は「わかってもらえた」と感じやすい

03なぜAIは「やさしく」見えるのか

研究チームは理由として、AIは疲れないこと、そして相手の文章の細かい部分を拾って返事に生かせることを挙げています。

人間の相談員は、何件も相談を受けると疲れてしまうし、重い相談に気持ちを揺さぶられることもあります。AIは毎回、相手の言葉を丁寧に受け止めるところから始められるのです。

2023年の研究では、ネット掲示板に寄せられた195件の医療相談に対する医師の回答とAIチャットボットの回答を、医療の専門家が読み比べました。その結果、延べ585回の評価のうち約8割(78.6%)でAIの回答の方が好まれ、「共感的」と評価される割合も高かったのです。AIの「やさしい書きぶり」は、医療の世界でも注目されています。

04まとめ

「思いやり」は、気持ちだけでなく伝え方の技術でもあるのかもしれません。

AIから学べるのは、相手の言葉をちゃんと拾い、否定せずに受け止めること。それって、人間同士でも今日から真似できる「やさしさのコツ」ですよね。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCan a computer show more compassion than a person? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Can a computer show more compassion than a person? Psychologists at the University of Toronto tested this in four experiments with 556 participants, published in 2025. Participants read short stories about happy or painful experiences, along with replies written by ChatGPT, by ordinary people, and by volunteers trained to handle crisis calls. They then rated how compassionate each reply was.

In every comparison, the AI replies were rated as more compassionate, and one experiment also found them more responsive. Even when participants were told which replies were written by AI, the result did not change. The researchers suggest that AI does not get tired and is good at picking up small details in what people write. However, the people who rated the replies were not the ones sharing their problems.

130 words ・ CEFR B1

和訳を見る

コンピューターは人間よりも思いやりを示せるのでしょうか。トロント大学の心理学者たちは、556人が参加した4つの実験でこの問いを確かめ、2025年に発表しました。参加者は、うれしい経験やつらい経験についての短い文章と、それに対してChatGPT、一般の人、危機相談の電話に応じる訓練を受けたボランティアが書いた返事を読みました。そして、それぞれの返事がどれくらい思いやりがあるかを評価しました。

どの比較でも、AIの返事のほうが思いやりがあると評価され、1つの実験では、AIの返事のほうが相手にしっかり応えているとも評価されました。どの返事がAIによって書かれたかを参加者に伝えても、この結果は変わりませんでした。研究者たちは、AIは疲れず、人が書いた内容の細かい部分を拾うのが得意だからではないかと考えています。しかし、返事を評価した人たちは、悩みを打ち明けた本人ではありませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. Who wrote the replies in the experiments?

Q2. What happened when participants were told which replies came from AI?

Q3. What does the last sentence suggest?

重要単語

  • compassionB2
    名詞思いやり、慈悲She showed great compassion for the victims. com-(共に)+passion(苦しみ)=「共に苦しむ」。形容詞は compassionate。
  • empathyB2
    名詞共感Empathy means understanding how others feel. sympathy(同情)との違いが頻出。empathy は相手の立場に立って感じること。動詞は empathize with ~。
  • third partyB2
    名詞(句)第三者A third party judged the two answers. 当事者(the parties concerned)以外の人。形容詞的に third-party evaluators「第三者の評価者」とも使う。
  • responderC1
    名詞対応者、応答する人Crisis responders answer calls all night. respond(応答する)+-er。first responder は「(事故現場に)最初に駆けつける救急隊員など」。
  • preregisteredC1
    形容詞事前登録されたThe study was preregistered to prevent bias. pre-(前もって)+registered(登録された)。結果を見てから仮説を変えるのを防ぐ、信頼性を高める工夫。
  • validationC1
    名詞(気持ちの)承認、妥当性の確認Validation tells people that their feelings make sense. validate(正しいと認める)の名詞形。心理学では「相手の気持ちをもっともだと受け止めること」。

動画でもっと知る

悩み相談への返事を読み比べたら、AIの方が「思いやりがある」と評価されたらしい。相手が危機相談のプロでも、AIが書いたと明かしても結果は同じ。理由は「疲れない」「細部を拾う」から?

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Ovsyannikova, de Mello & Inzlicht (2025) Third-party evaluators perceive AI as more compassionate than expert humans, Communications Psychologydoi.org
  2. Rubin et al. (2025) Comparing the value of perceived human versus AI-generated empathy, Nature Human Behaviourdoi.org
  3. Ayers et al. (2023) Comparing Physician and Artificial Intelligence Chatbot Responses to Patient Questions, JAMA Internal Medicinedoi.org