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冬に気分が沈むのはなぜ?「冬季うつ」の発見と、3万人調査が突きつけた意外な反論

冬に気分が沈むのはなぜ?「冬季うつ」の発見と、3万人調査が突きつけた意外な反論

読む前に予想してみよう!

冬季うつ(季節性感情障害)には、強い光を浴びる「光療法」が使われることがある

研究カード(どんな研究?)
対象
うつ病患者・一般成人
規模
29人(初報告)〜約3万4千人(調査)
研究の種類
症例報告・RCT・メタ分析・横断調査
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

日が短い季節に毎年うつになる「季節性感情障害」は1984年に報告され、光療法が効くとされる。一方、約3万人の調査では季節との関係が見えず論争に。

ひとことで言うと冬に元気が出ないのは、朝の光が少なくて体内時計がずれるからかも。

もくじ
  1. 1984年、アメリカで「冬だけのうつ」が報告された
  2. 光療法は、薬と同じくらい効いた
  3. どんでん返し:3万人調査では「季節の影響が見えない」
  4. まとめ

秋が深まり、夕方5時にはもう真っ暗。なんとなくやる気が出ない、朝起きられない、甘いものばかり食べたくなる――。

答えを先に言うと、日が短くなる季節に毎年くり返すうつ状態は「季節性感情障害(冬季うつ)」として1984年に報告され、朝などに強い光を浴びる光療法が効くことも確かめられてきました。ただし最近は、「季節でうつが増える」こと自体を疑う大規模調査も出ていて、話は思ったより複雑です。

011984年、アメリカで「冬だけのうつ」が報告された

冬になると「眠い・食べたい」が強くなるのは、まるで動物の冬ごもりのよう。研究者たちは、日照の減少が体内時計(概日リズム)のズレや、眠りを促すホルモンメラトニンの分泌パターン、気分に関わるセロトニンの働きに影響しているのではないかと考えてきました(どれが主犯かはまだ決着していません)。

02光療法は、薬と同じくらい効いた

光療法では、ふつうの部屋の明かりよりずっと明るい専用のライトを、主に朝に一定時間浴びます。

冬季うつの治療では、朝に強い光を浴びる「光療法」が使われる
冬季うつの治療では、朝に強い光を浴びる「光療法」が使われる

03どんでん返し:3万人調査では「季節の影響が見えない」

ところが2016年、この常識に真っ向から反論する研究が出ました。

アメリカのトラファンステット(Traffanstedt)さんらは、全米の成人約3万4千人の健康調査データを使い、うつの症状と、住んでいる場所の緯度・季節・日照量の関係を調べました。北の地域ほど、冬ほど、うつが増えるはずです。ところが結果は、どれとも関係が見られなかったのです。研究チームは「季節性のうつは、民間の思い込みに根ざしているのでは」とまで書きました。

これには反論も出ました。冬季うつ研究者のヤング(Young)さんは、この調査は「直近2週間」の症状しか聞いておらず、毎年くり返すかどうかという季節性感情障害の本質を測れていない、と指摘しています。

つまり、「冬は誰でも少し落ち込む」は言いすぎかもしれない。でも、一部の人に毎年くり返す冬のうつがあることまでは否定されていない、というのが現在の落ち着きどころです。

04まとめ

冬に気分が沈むことについて、科学は「一部の人には、毎年くり返す冬のうつがあり、光療法が効く」と言います。一方で、「冬は誰でもうつになる」とまでは言えないことも、大規模調査が示しました。

冬の朝、カーテンを開けて光を浴びる。それは体内時計のためにも、気分のためにも、損のない習慣です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSome people become depressed at the same time every year, usually when the days get shorter. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Some people become depressed at the same time every year, usually when the days get shorter. In 1984, researchers at a US government institute described 29 such patients and named the condition seasonal affective disorder, or SAD. Unlike typical depression, it often involved sleeping too much, eating too much and craving carbohydrates.

Bright light therapy, in which patients sit near a special lamp, usually in the morning, has been shown to reduce symptoms. A 2006 Canadian trial even found that it worked about as well as an antidepressant. However, in 2016 a survey of about 34,000 American adults found no link between depression and latitude, season or sunlight. Critics replied that the survey asked only about the previous two weeks.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

毎年同じ時期、たいていは日が短くなるころにうつ状態になる人がいます。1984年、アメリカの政府機関の研究者たちはそのような患者29人を報告し、この状態を「季節性感情障害(SAD)」と名づけました。一般的なうつ病と違って、寝すぎ、食べすぎ、炭水化物を強く欲することが多く見られました。

患者が専用のランプのそばに、主に朝座る「強い光の療法」は、症状を軽くすることが示されてきました。2006年のカナダの試験では、光療法が抗うつ薬とほぼ同じくらい効くことさえわかりました。しかし2016年、約3万4千人のアメリカの成人を対象にした調査では、うつと緯度・季節・日照の間に関連は見つかりませんでした。これに対して批判者たちは、その調査は直近2週間のことしか尋ねていないと反論しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What did the 2006 Canadian trial find?

Q3. Why did critics point out that the survey asked only about the previous two weeks?

重要単語

  • seasonalB1
    形容詞季節の、季節的なSome people have seasonal changes in mood. season+-al。seasonal workers「季節労働者」、seasonal flu「季節性インフルエンザ」。
  • daylightA2
    名詞日光、日中の明るさDaylight is short in December. daylight saving time は「夏時間(サマータイム)」。in broad daylight「白昼堂々と」。
  • depressionB2
    名詞うつ病、気分の落ち込みDepression is a common illness that can be treated. 「不況(the Great Depression=世界恐慌)」「くぼみ」の意味もある。形容詞 depressed / depressing の使い分けに注意。
  • circadian rhythmC1
    名詞(句)概日リズム(体内時計)Morning light helps set your circadian rhythm. circa(約)+dies(日)=「約1日」の周期。body clock とも言う。
  • light therapyB2
    名詞(句)光療法Light therapy uses a very bright lamp. therapy は「治療・療法」。therapist は「療法士」。
  • recurrenceC1
    名詞再発、くり返し起こることSAD is defined by its yearly recurrence. 動詞 recur(再発する)、形容詞 recurrent。occur(起こる)に re-(再び)がついた形。
冬になると毎年気分が沈む「冬季うつ」は1984年にアメリカで報告され、朝に強い光を浴びる光療法が効くとされてきた。ところが約3万4千人の調査では、うつと日照・季節の関係が見えなかったらしい。冬の憂うつはどこまで本物?

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Rosenthal et al. (1984) Seasonal affective disorder: A description of the syndrome and preliminary findings with light therapy, Archives of General Psychiatrydoi.org
  2. Golden et al. (2005) The Efficacy of Light Therapy in the Treatment of Mood Disorders: A Review and Meta-Analysis of the Evidence, American Journal of Psychiatrydoi.org
  3. Lam et al. (2006) The Can-SAD Study: A Randomized Controlled Trial of the Effectiveness of Light Therapy and Fluoxetine in Patients With Winter Seasonal Affective Disorder, American Journal of Psychiatrydoi.org
  4. Traffanstedt, Mehta & LoBello (2016) Major Depression With Seasonal Variation: Is It a Valid Construct?, Clinical Psychological Sciencedoi.org
  5. Young (2017) Does Seasonal Affective Disorder Exist? A Commentary on Traffanstedt, Mehta, and LoBello (2016), Clinical Psychological Sciencedoi.org