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「キツツキの頭は衝撃吸収材」は誤解だった? 頭は“硬いハンマー”で、脳が小さいから平気なだけかも

「キツツキの頭は衝撃吸収材」は誤解だった? 頭は“硬いハンマー”で、脳が小さいから平気なだけかも

読む前に予想してみよう!

キツツキの頭の骨は、木をつつくときの衝撃をクッションのように吸収している

研究カード(どんな研究?)
対象
クマゲラ・エボシクマゲラ・アカゲラ(高速撮影)、キツツキの脳標本10体
規模
数羽の撮影・博物館標本
研究の種類
高速度撮影による減速度の測定・生体力学モデル・脳組織の染色
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

キツツキの頭はクッションで衝撃を吸収している、と長く信じられてきた。高速撮影で測ると、頭はむしろ硬いハンマーで、脳が小さいので衝撃に耐えられるらしい。

ひとことで言うとキツツキの頭はクッションじゃなく、かたいハンマー。脳が小さいから大丈夫らしい!

もくじ
  1. 「衝撃吸収」は、むしろ損?
  2. 脳は「小さいから」平気?
  3. どんでん返し:本当に「無傷」なの?
  4. まとめ

コンコンコン! 森に響く、キツツキのドラミング。木の幹をくちばしで激しくつつき、穴をあけて虫を食べたり、巣を作ったりします。

頭を木に打ちつけ続けて、脳は大丈夫なのでしょうか。

この疑問には、長いあいだ「定番の答え」がありました。キツツキの頭はクッションのように衝撃を吸収する特別な作りになっている、というものです。その考えは、ヘルメットや衝撃吸収材の開発のお手本にもなってきました。ところが2022年、その常識に待ったがかかります。

01「衝撃吸収」は、むしろ損?

ベルギー・アントワープ大学のサム・ヴァン・ワッセンベルフさんたちは、そもそもの理屈に疑問を持ちました。

もしキツツキの頭が衝撃を吸収してしまったら、どうなるでしょう。ハンマーの頭にゴムを巻いたら、釘を打つ力が弱くなりますよね。それと同じで、頭が衝撃を吸収すると、木に穴をあける力まで弱まってしまうはずです。それでは、つつくための進化として筋が通りません。

くちばしも頭も、ほぼ同時に急停止。クッションでやわらいでいる様子はなかった。
くちばしも頭も、ほぼ同時に急停止。クッションでやわらいでいる様子はなかった。

02脳は「小さいから」平気?

では、なぜ脳しんとうにならないのでしょう。

研究チームは、キツツキの脳の大きさと形をもとに、頭の中の圧力を計算しました。その結果、キツツキの脳にかかる負担は、サルや人間の脳で脳しんとうが起きるとされる基準を下回っていたのです。

カギは脳の小ささです。2006年、アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)のローナ・ギブソンさんは、キツツキがつつくときの減速は重力の約1000倍にも達すると見積もったうえで、それでも脳が無事な理由として、①脳が小さいこと、②衝撃の時間がとても短いこと、③脳が頭の骨に広い面で接している向きであること、の3つを挙げました。

同じ速さでぶつかっても、小さく軽い脳ほど、脳にかかるストレスは小さくなります。人間の大きな脳では危険な衝撃でも、キツツキの小さな脳には耐えられる範囲だったのです。

03どんでん返し:本当に「無傷」なの?

ただし、キツツキの脳がまったくダメージを受けていないとは言い切れません。

2018年、アメリカ・ボストン大学のチーム(Farah ら)は、博物館に保存されていたキツツキ10羽の脳を調べました。その結果、8羽の脳に、特殊な染色で見える沈着物が見つかり、一部では、人間の脳しんとうのくり返しや認知症でたまることで知られるタウたんぱく質のたまりも見られました。比較のための別の鳥(ハゴロモガラス)5羽では見られませんでした。

これがキツツキにとって「害」なのか、それとも脳を守るための何らかの適応なのかは、まだわかっていません。サンプルも少なく、さらなる研究が必要です。

04まとめ

キツツキの頭は、衝撃を吸収するクッションではなく、つつく力を最大限に伝える硬いハンマーでした。脳が無事なのは、主に脳が小さいおかげらしいのです。

「生き物をお手本に」は大切な発想ですが、そのお手本が本当に正しいかを確かめることも同じくらい大切。キツツキは、そんなことを教えてくれます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWoodpeckers hammer trees with their beaks, and it was long believed that their skulls absorbed the shock… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Woodpeckers hammer trees with their beaks, and it was long believed that their skulls absorbed the shock like a cushion. This idea even inspired designs for helmets. In 2022, Sam Van Wassenbergh and his team in Belgium filmed three species of woodpecker with high-speed cameras. If the head absorbed shock, the area around the eyes should stop more slowly than the beak.

Instead, both stopped almost at the same moment. The researchers explained that a shock-absorbing head would actually weaken pecking, just as a hammer wrapped in rubber cannot drive a nail well. According to their calculations, the birds avoid concussions mainly because their brains are small, which reduces the stress on the brain.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

キツツキはくちばしで木をたたきますが、長いあいだ、その頭の骨はクッションのように衝撃を吸収していると信じられてきました。この考えは、ヘルメットの設計にまでヒントを与えました。2022年、ベルギーのサム・ヴァン・ワッセンベルフさんのチームは、3種のキツツキを高速カメラで撮影しました。もし頭が衝撃を吸収しているなら、目のあたりはくちばしよりゆっくり止まるはずです。ところが実際には、どちらもほぼ同時に止まりました。

研究者たちは、衝撃を吸収する頭はつつく力を弱めてしまうと説明しました。ゴムを巻いたハンマーでは釘をうまく打てないのと同じです。彼らの計算によると、鳥が脳しんとうを避けられるのは主に脳が小さいからで、それが脳にかかるストレスを減らしているのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What would we expect if the woodpecker's head absorbed shock?

Q2. According to the calculations, why do woodpeckers avoid concussions?

Q3. Why does the writer mention a hammer wrapped in rubber?

重要単語

  • concussionC1
    名詞脳しんとうWoodpeckers do not seem to get concussions. スポーツ医学の話題で頻出。suffer a concussion「脳しんとうを起こす」。
  • shock absorberC1
    名詞(句)衝撃吸収材The skull is not a shock absorber. 車の「ショックアブソーバー(緩衝装置)」と同じ。absorb「吸収する」+-er。
  • decelerationC1
    名詞減速、減速度The head stops with enormous deceleration. 反対は acceleration(加速)。de-(下げる)+celer(速さ)。
  • peckB2
    動詞(くちばしで)つつくThe bird pecks the tree many times a day. woodpecker は wood+peck+-er で「木をつつくもの」。peck on the cheek は「頬への軽いキス」。
  • stiffB2
    形容詞硬い、曲がりにくいThe skull works like a stiff hammer. stiff competition「激しい競争」、stiff shoulders「肩こり」のようにも使う。
  • orientationB2
    名詞向き、方向The orientation of the brain helps protect it. 「(新入生の)オリエンテーション」も同じ語で「方向づけ」の意味。動詞 orient。

4コマでわかる

「キツツキの頭は衝撃吸収材」は誤解だった? 頭は“硬いハンマー”で、脳が小さいから平気なだけかもの4コマ漫画
キツツキの頭は「天然の衝撃吸収材」でヘルメットのお手本…と言われてきたけど、2022年の研究で否定されたらしい。高速カメラで測ると、頭は衝撃を吸収しない硬いハンマー。脳が小さいから脳しんとうにならずに済んでいるのかも。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Gibson (2006) Woodpecker pecking: how woodpeckers avoid brain injury, Journal of Zoologydoi.org
  2. Farah et al. (2018) Tau accumulations in the brains of woodpeckers, PLOS ONEdoi.org
  3. Van Wassenbergh et al. (2022) Woodpeckers minimize cranial absorption of shocks, Current Biologydoi.org