「シャコは人間より色が見える」は誤解だった。色センサー12種類なのに、色の見分けは人間以下

読む前に予想してみよう!
色センサーが12種類あるシャコは、人間よりも細かく色を見分けられる
実験では、波長が少し違うだけの色は見分けられず、色の識別は人間よりずっと粗かった。
- 対象
- 口脚類(シャコの仲間)数種
- 規模
- 数個体〜十数個体(各研究)
- 研究の種類
- 網膜の生理計測・行動実験(色の識別テスト)
- 確かさ
- ★★★☆☆
シャコの目には色センサーが12種類もある。でも実験すると、似た色の見分けは人間よりずっと苦手。「別のやり方」で色を使っているらしい。
ひとことで言うとシャコはセンサーが多いのに、似た色を見分けるのはヘタだった!
人間の目には、色を感じるセンサー(錐体細胞)が3種類あります。赤・緑・青に強いセンサーの組み合わせで、私たちは何百万もの色を見分けています。
ところが、サンゴ礁にすむシャコの仲間には、色のセンサーが12種類もある種がいます。
「じゃあシャコには、人間には想像もできない色の世界が見えているはず!」。ネットでよく見かけるこの話、実は研究でひっくり返されています。
01動物界でも屈指のややこしい目
シャコの目は、動物の中でもとびきり複雑です。
1989年、トーマス・クローニンさんとジャスティン・マーシャルさんは『Nature』で、シャコの網膜に少なくとも10種類の色の受容細胞があることを報告しました。その後の研究で、紫外線から赤までをカバーする12種類の色センサーを持つ種がいることがわかっています。1999年の『Nature』の論文では、紫外線を感じる細胞にも何種類もあることが示されました。
それだけではありません。2008年の『Current Biology』(Chiou ら)では、シャコが光の振動の向き、つまり偏光を見分け、しかも円偏光というらせん状に回る光まで見分けていることが報告されました。円偏光を見分ける動物は、とても珍しい存在です。

02センサーが多いのに、見分けはヘタだった
ふつうに考えると、センサーが多いほど細かく色を見分けられそうです。そこで、オーストラリア・クイーンズランド大学のハンネ・トーエンさんたちは、シャコに直接「テスト」をしました。
12種類もセンサーがあるのに、見分けの細かさでは人間の方が上。予想とは正反対の結果でした。
03では、12種類のセンサーは何のため?
研究チームは、シャコが人間とまったく違うやり方で色を使っているのではないかと考えました。
人間の脳は、複数のセンサーの反応を比べ合わせて色を計算します。これは細かい見分けに強い方式です。
一方シャコは、目を動かして景色を「スキャン」し、どのセンサーが反応したかというパターンで、色をすばやく認識しているのかもしれません。たとえるなら、絵の具を混ぜて微妙な色を比べるのではなく、「12色の色えんぴつのどれに近いか」で即答するようなイメージです。
サンゴ礁は、獲物も敵も仲間も、目まぐるしく動き回る場所。「細かく比べる」より「すばやく判断する」ほうが役に立つのかもしれません。
04まとめ
シャコの目は「人間の上位互換」ではなく、まったく別の設計思想の目でした。
道具が多ければ強いとは限らない。どう使うかで、見える世界はがらりと変わります。「センサーが多いからすごい」という単純な話より、ずっと奥が深いと思いませんか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHumans see color with three types of cone cells, but some mantis shrimp have as many as twelve types of…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Humans have three types of color sensors in their eyes. Some mantis shrimp have twelve types.
Many people thought these animals could see more colors than we can. In 2014, scientists tested this idea. They taught mantis shrimp to choose one color for food.
Then they showed them similar colors. The shrimp could not tell similar colors apart well. Humans are much better at this. Having more sensors does not always mean better color vision.
75 words ・ CEFR A2
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人間の目には3種類の色センサーがあります。シャコの中には12種類を持つものがいます。
多くの人は、この動物は私たちよりも多くの色が見えると考えていました。2014年、科学者たちはこの考えを確かめました。彼らはシャコに、エサをもらうために1つの色を選ぶよう教えました。
そして、よく似た色を見せました。シャコは似た色をうまく見分けられませんでした。人間のほうがずっと得意なのです。センサーが多いことが、いつも色がよく見えることを意味するわけではありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
2014年の実験でシャコの色の見分けを確かめた話が中心なので B。
Q2. How many types of color sensors do some mantis shrimp have?
Some mantis shrimp have twelve types. とあるので C。3種類は人間の数。
Q3. In this passage, "tell similar colors apart" means ...
tell A apart は「Aを見分ける」。似た色の違いがわかる、という意味なので A。
Humans see color with three types of cone cells, but some mantis shrimp have as many as twelve types of color receptors, covering light from ultraviolet to red. For years, many people believed that these animals must see a world of colors we cannot imagine.
In 2014, Hanne Thoen and her team at the University of Queensland tested this belief. They trained mantis shrimp to choose a certain color to get food, and then showed them colors that were slightly different. The shrimp could only tell colors apart when their wavelengths differed by about 12 to 25 nanometers, while humans can usually notice differences of 1 to 4 nanometers. The researchers suggest that mantis shrimp may recognize colors quickly by pattern instead of comparing them carefully.
126 words ・ CEFR B1
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人間は3種類の錐体細胞で色を見ますが、シャコの中には紫外線から赤までの光をカバーする、12種類もの色の受容細胞を持つものがいます。長年、多くの人はこの動物が私たちには想像もできない色の世界を見ているに違いないと信じてきました。
2014年、クイーンズランド大学のハンネ・トーエンさんのチームがこの通説を検証しました。彼らはシャコがエサをもらうために特定の色を選ぶよう訓練し、その後、少しだけ違う色を見せました。シャコが色を見分けられたのは波長が約12〜25ナノメートル違うときだけでしたが、人間はふつう1〜4ナノメートルの違いに気づけます。研究者たちは、シャコは色を注意深く比べるのではなく、パターンですばやく認識しているのかもしれないと考えています。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Thoen's team want to find out?
訓練した色と少し違う色を見せて見分けられるかを調べたので D。紫外線が見えるかを試したわけではない。
Q2. Which statement is true according to the passage?
シャコは12〜25nm、人間は1〜4nmの差に気づけるとあるので、より小さな差に気づけるのは人間。正解は A。
Q3. What can we infer from the study?
最終文で「比べる」のではなく「パターンで認識する」別のやり方が示唆されているので C。色が見えないわけではない。
The eyes of mantis shrimp are among the most complex in the animal kingdom. In 1989, Thomas Cronin and Justin Marshall reported at least ten spectral types of photoreceptors in their retina, and later work showed that some species possess twelve, spanning ultraviolet to red. In 2008, researchers also found that these animals can detect circularly polarized light, an ability that is extremely rare. It seemed natural to assume that such equipment would produce extraordinary color discrimination.
However, a 2014 study published in Science challenged this assumption. After training the animals to associate a color with food, Thoen and colleagues found that they could reliably distinguish only wavelengths roughly 12 to 25 nanometers apart, whereas humans typically detect differences of 1 to 4 nanometers. The team proposed that mantis shrimp scan scenes and identify colors from the pattern of activated receptors, a fast but coarse system rather than the comparison-based processing used by humans. This model remains a hypothesis, though: direct neural evidence is limited, only a few species and individuals were tested, and the design of the learning task, such as control of brightness cues, may have influenced the results.
191 words ・ CEFR B2
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シャコの目は、動物界で最も複雑なものの一つです。1989年、トーマス・クローニンさんとジャスティン・マーシャルさんは、その網膜に少なくとも10種類の分光タイプの光受容細胞があると報告し、その後の研究で、紫外線から赤までにわたる12種類を持つ種がいることが示されました。2008年には、この動物が円偏光を感知できることもわかりました。これは極めて珍しい能力です。これほどの装備があれば、並外れた色の識別力が生まれると考えるのは自然に思えました。しかし、2014年に『Science』に掲載された研究がこの思い込みに異を唱えました。
動物に色とエサを結びつけるよう訓練した後、トーエンさんらは、シャコが確実に見分けられるのは約12〜25ナノメートル離れた波長だけであり、一方で人間はふつう1〜4ナノメートルの違いを感知できることを発見しました。チームは、シャコが景色を走査し、反応した受容細胞のパターンから色を特定していると提案しました。これは人間が使う比較に基づく処理ではなく、速いが粗いシステムです。ただし、このモデルはまだ仮説にとどまります。神経に関する直接的な証拠は限られており、調べられた種と個体はわずかで、明るさの手がかりの統制など学習課題の設計が結果に影響した可能性もあるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What assumption did the 2014 study challenge?
such equipment would produce extraordinary color discrimination という思い込みに However 以下で異を唱えているので B。
Q2. Which is NOT mentioned as a limitation of the research?
最終文に挙がる限界は、神経の証拠不足・種と個体の少なさ・課題設計の3つ。水温の話はないので D。
Q3. What does the passage suggest about the mantis shrimp's way of using color?
a fast but coarse system(速いが粗い)とあり、細かさより速さを優先していると読めるので A。証明済みではなく仮説である点にも注意。
重要単語
- photoreceptorC1名詞光受容細胞Humans have three types of color photoreceptors.
photo(光)+receptor(受け取るもの)。receive の名詞形 receptor とセットで覚える。 - wavelengthB2名詞波長Red light has a longer wavelength than blue light.
wave(波)+length(長さ)。比喩で be on the same wavelength「気が合う」とも言う。 - discriminateC1動詞見分ける、識別するThe shrimp could not discriminate between similar colors.
discriminate between A and B で「AとBを見分ける」。discriminate against ~ は「~を差別する」なので前置詞に注意。 - polarizedC1形容詞偏光したSome animals can see polarized light.
pole(極)が語源。polarized sunglasses は「偏光サングラス」。社会が「二極化した」の意味でも入試に出る。 - misconceptionB2名詞誤解It is a common misconception that more receptors mean better vision.
mis-(誤って)+conception(考え)。a common misconception「よくある誤解」が定番の形。 - hypothesisB2名詞仮説The scanning model is still a hypothesis.
複数形は hypotheses。test a hypothesis「仮説を検証する」は研究紹介の頻出表現。
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シャコは色センサーが12種類(人間は3種類)だから「人間には想像できない色が見えている」…と思われてきたけど、実験したら似た色の見分けは人間よりずっとヘタだったらしい。数が多い=よく見える、ではなかった。
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- Cronin & Marshall (1989) A retina with at least ten spectral types of photoreceptors in a mantis shrimp, Naturedoi.org
- Marshall & Oberwinkler (1999) The colourful world of the mantis shrimp, Naturedoi.org
- Chiou et al. (2008) Circular Polarization Vision in a Stomatopod Crustacean, Current Biologydoi.org
- Thoen et al. (2014) A Different Form of Color Vision in Mantis Shrimp, Sciencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












