シャコのパンチは「1発で2回」当たっていた。2発目の正体は水の中で潰れる泡

読む前に予想してみよう!
シャコのパンチは、こぶしが当たった1回分の衝撃しか生まない
殴った直後に、こぶしのまわりにできた泡がつぶれて2回目の衝撃が生まれる。
- 対象
- モンハナシャコ(Odontodactylus scyllarus)
- 規模
- 数個体(実験室での計測)
- 研究の種類
- 高速度撮影・力センサー・音響解析・材料分析
- 確かさ
- ★★★☆☆
モンハナシャコのパンチは、殴った直後に「泡がつぶれる衝撃」がもう1回来る二段構え。体重の数千倍の力で貝殻を割る。
ひとことで言うとシャコのパンチは、こぶしと「泡のはじける力」のダブルパンチ!
「シャコのパンチは弾丸並み」。動物の雑学でよく聞くフレーズです。
でも、論文を読むと、本当にすごいのは「速さ」そのものより別のところにありました。シャコのパンチは、1回振るだけで、獲物を2回たたいているのです。
主役は、サンゴ礁にすむ色あざやかなモンハナシャコ。エビに似ていますが、エビとは別の「口脚類(こうきゃくるい)」というグループの生き物です。
01腕の中に「ばね」と「ストッパー」がある
モンハナシャコは、前脚の先にあるハンマーのようなこぶしで巻き貝やカニの殻をたたき割って食べます。
2004年、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校のシーラ・パテックさんたちは、このパンチを超高速カメラで撮影しました。その結果、パンチは筋肉の力だけで振っているのではないことがわかりました。
腕には鞍(くら)の形をした殻のばねがあり、筋肉がゆっくりとばねを縮めてエネルギーをためます。そのあいだ腕はストッパーで固定され、ストッパーが外れた瞬間、ためたエネルギーが一気に解放されるのです。
パチンコやクロスボウと同じ「ためて、一気に放つ」しくみ。これで、水の中なのに秒速20mを超える速さが出ます。

022発目の正体は「つぶれる泡」
水の中で何かをものすごい速さで動かすと、その後ろや前で水の圧力が急に下がり、水が泡(気泡)になります。これをキャビテーションといいます。船のスクリューを傷める原因としても知られる現象です。
1500ニュートンは、だいたい150kgのものを持ち上げるくらいの力。体長10cmほどの生き物が、自分の体重の数千倍の力を一瞬だけ出していることになります。
しかも泡の衝撃は平均してこぶしの衝撃の半分ほどで、場合によってはこぶしの衝撃を上回ることもありました。殻にとっては「殴られた直後に、もう一度殴られる」ようなものです。
03殴っても壊れない「こぶし」の秘密
これだけ強く殴れば、こぶしの方が壊れそうです。2012年に『Science』に載った研究(Weaver ら)は、こぶしの材料を詳しく調べました。
こぶしの表面は、骨や歯と同じ成分のハイドロキシアパタイトという硬い結晶でできています。その内側では、キチンという繊維が少しずつ角度をずらしたらせん状に積み重なっていました。
ひびが入っても、繊維の向きが層ごとに違うので、ひびがまっすぐ進めずに曲がりくねって止まってしまいます。「硬い外側」と「割れにくい内側」の組み合わせが、何度ものパンチに耐える秘密でした。
04まとめ
シャコのパンチのすごさは「速い」だけではありませんでした。ばねでためて一気に放ち、泡までも武器にして、壊れにくいこぶしで何度でも殴る。
水族館でモンハナシャコを見かけたら、あの小さな前脚に「ばね・泡・らせん」の3つの技術が詰まっていることを思い出してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe peacock mantis shrimp breaks the shells of snails and crabs with a hammer-like club.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
The peacock mantis shrimp lives in coral reefs. It has strong arms like hammers. It hits snails and crabs to break their shells. Its arm works like a spring. It slowly stores energy and then lets it go all at once.
The punch is so fast that bubbles form in the water. When the bubbles break, they hit the shell again. So one punch hits two times.
67 words ・ CEFR A2
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モンハナシャコはサンゴ礁にすんでいます。ハンマーのような強い腕を持っています。巻き貝やカニをたたいて、その殻を割ります。腕はばねのように働きます。ゆっくりとエネルギーをため、それを一気に放つのです。
パンチがとても速いので、水の中に泡ができます。泡がつぶれると、もう一度殻をたたきます。だから、1回のパンチで2回当たるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
モンハナシャコのパンチが1回で2回当たる仕組みの話なので C。
Q2. What does the mantis shrimp hit?
It hits snails and crabs to break their shells. とあるので D。
Q3. In the passage, "stores" means ...
store は動詞で「ためておく・蓄える」。エネルギーをためてから一気に放つので A。
The peacock mantis shrimp breaks the shells of snails and crabs with a hammer-like club. In 2004, scientists filmed its strikes with very fast cameras. They found that the arm contains a saddle-shaped spring. Muscles slowly compress the spring while a latch holds the arm in place.
When the latch is released, the club moves at over 20 meters per second. In 2005, researchers measured two force peaks in a single strike, about 0.0004 seconds apart. The first came from the club hitting the target, and the second came from bubbles collapsing in front of the club. This effect is called cavitation.
102 words ・ CEFR B1
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モンハナシャコは、ハンマーのようなこぶしで巻き貝やカニの殻を割ります。2004年、科学者たちはそのパンチを超高速カメラで撮影しました。すると、腕の中に鞍の形をしたばねがあることがわかりました。留め金が腕を固定している間に、筋肉がゆっくりとばねを縮めます。
留め金が外れると、こぶしは秒速20メートルを超える速さで動きます。2005年、研究者たちは1回のパンチの中に、約0.0004秒の間をあけて2つの力のピークがあることを測定しました。1つ目はこぶしが標的に当たったことによるもので、2つ目はこぶしの前で泡がつぶれたことによるものでした。この現象はキャビテーションと呼ばれます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
ばねと留め金の仕組み、そして泡がつぶれる2回目の衝撃がパンチの強さの秘密、という内容なので D。
Q2. What holds the arm in place before the strike?
a latch holds the arm in place とあるので B。
Q3. Why can one strike damage a shell twice?
1つ目はこぶしの衝撃、2つ目はこぶしの前で泡がつぶれる衝撃なので C。
The peacock mantis shrimp, a coral reef crustacean that is not actually a true shrimp, smashes snail and crab shells with a hammer-like club. In 2004, high-speed filming revealed how it achieves such power. Muscles slowly compress a saddle-shaped spring in the arm while a latch holds it in place; when the latch releases, the stored elastic energy drives the club to over 20 meters per second underwater.
A 2005 study using force sensors, high-speed video and underwater microphones then detected two force peaks in each strike, separated by about 0.0004 seconds. The first, up to about 1,500 newtons, was the club's impact; the second, up to about 500 newtons, came from cavitation bubbles collapsing in front of the club. Although the bubble force averaged about half the impact force, it sometimes exceeded it.
A 2012 study explained why the club survives: a hard mineral surface covers layers of chitin fibers stacked in a gradually rotating spiral, which forces cracks to twist and stop. Contrary to the popular claim, the strike is far slower than a bullet; its real achievement is extreme acceleration. Since the measurements involved only a few animals, the reported forces vary considerably.
196 words ・ CEFR B2
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モンハナシャコは、実は本当のエビではないサンゴ礁の甲殻類で、ハンマーのようなこぶしで巻き貝やカニの殻を打ち砕きます。2004年、高速度撮影によって、どのようにしてその力を生み出しているのかが明らかになりました。留め金が腕を固定している間に、筋肉がゆっくりと腕の中の鞍形のばねを縮めます。留め金が外れると、ためられた弾性エネルギーが、水中でこぶしを秒速20メートル以上に加速させるのです。
その後、力センサー、高速度ビデオ、水中マイクを使った2005年の研究は、1回のパンチの中に約0.0004秒離れた2つの力のピークを検出しました。最大約1,500ニュートンの1つ目はこぶしの衝撃で、最大約500ニュートンの2つ目は、こぶしの前でキャビテーションの泡がつぶれることによるものでした。泡の力は平均するとこぶしの衝撃の約半分でしたが、それを上回ることもありました。
2012年の研究は、こぶしが壊れない理由を説明しました。硬い鉱物の表面が、少しずつ角度を変えながららせん状に積み重なったキチン繊維の層を覆っており、そのためにひびが曲がりくねって止まってしまうのです。よく言われる話とは違い、このパンチは弾丸よりずっと遅く、本当にすごいのは極端な加速です。測定はごく少数の個体で行われたため、報告されている力の値にはかなりのばらつきがあります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ばねと留め金による加速、キャビテーションの2回目の衝撃、壊れにくいこぶしの構造を説明しているので B。
Q2. What was the source of the second force peak?
the second ... came from cavitation bubbles collapsing in front of the club とあるので D。
Q3. According to the passage, why don't cracks spread through the club easily?
layers of chitin fibers stacked in a gradually rotating spiral, which forces cracks to twist and stop とあるので C。
重要単語
- strikeB2名詞一撃、打撃The mantis shrimp's strike is one of the fastest in the animal kingdom.
動詞では「打つ・(考えが)浮かぶ」。It strikes me that ~「~だと思いつく」。労働の「ストライキ」も strike。 - cavitationC1名詞キャビテーション(液体中に泡ができ、つぶれる現象)Cavitation can damage ship propellers.
cavity(空洞・虫歯の穴)から。cave(洞窟)も同じ語源で「空っぽの穴」のイメージ。 - springB1名詞ばねThe shrimp stores energy in a spring-like part of its arm.
「春・泉・跳ねる」と意味が多い多義語。どれも「ぴょんと湧き出る」イメージでつながっている。 - impactB2名詞衝撃The impact cracked the snail's shell.
物理的な衝撃のほか「影響」の意味で超頻出。have an impact on ~「~に影響を与える」。 - fractureC1動詞割る、破砕するStrong hits can fracture hard shells.
名詞で「骨折」。fraction(分数・断片)、fragile(壊れやすい)と同じ「割れる」の語源。 - damage-tolerantC1形容詞損傷に強いEngineers want damage-tolerant materials for helmets.
tolerant は「耐えられる・寛容な」。heat-tolerant(熱に強い)、drought-tolerant(乾燥に強い)など「名詞-tolerant」の形で使う。
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動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
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モンハナシャコのパンチ、当たった0.0004秒後に「泡がつぶれる2発目」が来るらしい。1回殴るだけで2回ダメージ。しかも力は体重の数千倍。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Patek, Korff & Caldwell (2004) Deadly strike mechanism of a mantis shrimp, Naturedoi.org
- Patek & Caldwell (2005) Extreme impact and cavitation forces of a biological hammer: strike forces of the peacock mantis shrimp, Journal of Experimental Biologydoi.org
- Weaver et al. (2012) The Stomatopod Dactyl Club: A Formidable Damage-Tolerant Biological Hammer, Sciencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












