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シャコのパンチは「1発で2回」当たっていた。2発目の正体は水の中で潰れる泡

シャコのパンチは「1発で2回」当たっていた。2発目の正体は水の中で潰れる泡

読む前に予想してみよう!

シャコのパンチは、こぶしが当たった1回分の衝撃しか生まない

研究カード(どんな研究?)
対象
モンハナシャコ(Odontodactylus scyllarus)
規模
数個体(実験室での計測)
研究の種類
高速度撮影・力センサー・音響解析・材料分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

モンハナシャコのパンチは、殴った直後に「泡がつぶれる衝撃」がもう1回来る二段構え。体重の数千倍の力で貝殻を割る。

ひとことで言うとシャコのパンチは、こぶしと「泡のはじける力」のダブルパンチ!

もくじ
  1. 腕の中に「ばね」と「ストッパー」がある
  2. 2発目の正体は「つぶれる泡」
  3. 殴っても壊れない「こぶし」の秘密
  4. まとめ

「シャコのパンチは弾丸並み」。動物の雑学でよく聞くフレーズです。

でも、論文を読むと、本当にすごいのは「速さ」そのものより別のところにありました。シャコのパンチは、1回振るだけで、獲物を2回たたいているのです。

主役は、サンゴ礁にすむ色あざやかなモンハナシャコ。エビに似ていますが、エビとは別の「口脚類(こうきゃくるい)」というグループの生き物です。

01腕の中に「ばね」と「ストッパー」がある

モンハナシャコは、前脚の先にあるハンマーのようなこぶしで巻き貝やカニの殻をたたき割って食べます。

2004年、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校のシーラ・パテックさんたちは、このパンチを超高速カメラで撮影しました。その結果、パンチは筋肉の力だけで振っているのではないことがわかりました。

腕には鞍(くら)の形をした殻のばねがあり、筋肉がゆっくりとばねを縮めてエネルギーをためます。そのあいだ腕はストッパーで固定され、ストッパーが外れた瞬間、ためたエネルギーが一気に解放されるのです。

パチンコやクロスボウと同じ「ためて、一気に放つ」しくみ。これで、水の中なのに秒速20mを超える速さが出ます。

筋肉でゆっくりためて、ばねで一気に放つ。弓矢と同じ発想です。
筋肉でゆっくりためて、ばねで一気に放つ。弓矢と同じ発想です。

022発目の正体は「つぶれる泡」

水の中で何かをものすごい速さで動かすと、その後ろや前で水の圧力が急に下がり、水が泡(気泡)になります。これをキャビテーションといいます。船のスクリューを傷める原因としても知られる現象です。

1500ニュートンは、だいたい150kgのものを持ち上げるくらいの力。体長10cmほどの生き物が、自分の体重の数千倍の力を一瞬だけ出していることになります。

しかも泡の衝撃は平均してこぶしの衝撃の半分ほどで、場合によってはこぶしの衝撃を上回ることもありました。殻にとっては「殴られた直後に、もう一度殴られる」ようなものです。

03殴っても壊れない「こぶし」の秘密

これだけ強く殴れば、こぶしの方が壊れそうです。2012年に『Science』に載った研究(Weaver ら)は、こぶしの材料を詳しく調べました。

こぶしの表面は、骨や歯と同じ成分のハイドロキシアパタイトという硬い結晶でできています。その内側では、キチンという繊維が少しずつ角度をずらしたらせん状に積み重なっていました。

ひびが入っても、繊維の向きが層ごとに違うので、ひびがまっすぐ進めずに曲がりくねって止まってしまいます。「硬い外側」と「割れにくい内側」の組み合わせが、何度ものパンチに耐える秘密でした。

04まとめ

シャコのパンチのすごさは「速い」だけではありませんでした。ばねでためて一気に放ち、泡までも武器にして、壊れにくいこぶしで何度でも殴る。

水族館でモンハナシャコを見かけたら、あの小さな前脚に「ばね・泡・らせん」の3つの技術が詰まっていることを思い出してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe peacock mantis shrimp breaks the shells of snails and crabs with a hammer-like club. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The peacock mantis shrimp breaks the shells of snails and crabs with a hammer-like club. In 2004, scientists filmed its strikes with very fast cameras. They found that the arm contains a saddle-shaped spring. Muscles slowly compress the spring while a latch holds the arm in place.

When the latch is released, the club moves at over 20 meters per second. In 2005, researchers measured two force peaks in a single strike, about 0.0004 seconds apart. The first came from the club hitting the target, and the second came from bubbles collapsing in front of the club. This effect is called cavitation.

102 words ・ CEFR B1

和訳を見る

モンハナシャコは、ハンマーのようなこぶしで巻き貝やカニの殻を割ります。2004年、科学者たちはそのパンチを超高速カメラで撮影しました。すると、腕の中に鞍の形をしたばねがあることがわかりました。留め金が腕を固定している間に、筋肉がゆっくりとばねを縮めます。

留め金が外れると、こぶしは秒速20メートルを超える速さで動きます。2005年、研究者たちは1回のパンチの中に、約0.0004秒の間をあけて2つの力のピークがあることを測定しました。1つ目はこぶしが標的に当たったことによるもので、2つ目はこぶしの前で泡がつぶれたことによるものでした。この現象はキャビテーションと呼ばれます。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What holds the arm in place before the strike?

Q3. Why can one strike damage a shell twice?

重要単語

  • strikeB2
    名詞一撃、打撃The mantis shrimp's strike is one of the fastest in the animal kingdom. 動詞では「打つ・(考えが)浮かぶ」。It strikes me that ~「~だと思いつく」。労働の「ストライキ」も strike。
  • cavitationC1
    名詞キャビテーション(液体中に泡ができ、つぶれる現象)Cavitation can damage ship propellers. cavity(空洞・虫歯の穴)から。cave(洞窟)も同じ語源で「空っぽの穴」のイメージ。
  • springB1
    名詞ばねThe shrimp stores energy in a spring-like part of its arm. 「春・泉・跳ねる」と意味が多い多義語。どれも「ぴょんと湧き出る」イメージでつながっている。
  • impactB2
    名詞衝撃The impact cracked the snail's shell. 物理的な衝撃のほか「影響」の意味で超頻出。have an impact on ~「~に影響を与える」。
  • fractureC1
    動詞割る、破砕するStrong hits can fracture hard shells. 名詞で「骨折」。fraction(分数・断片)、fragile(壊れやすい)と同じ「割れる」の語源。
  • damage-tolerantC1
    形容詞損傷に強いEngineers want damage-tolerant materials for helmets. tolerant は「耐えられる・寛容な」。heat-tolerant(熱に強い)、drought-tolerant(乾燥に強い)など「名詞-tolerant」の形で使う。

動画でもっと知る

4コマでわかる

シャコのパンチは「1発で2回」当たっていた。2発目の正体は水の中で潰れる泡の4コマ漫画
モンハナシャコのパンチ、当たった0.0004秒後に「泡がつぶれる2発目」が来るらしい。1回殴るだけで2回ダメージ。しかも力は体重の数千倍。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Patek, Korff & Caldwell (2004) Deadly strike mechanism of a mantis shrimp, Naturedoi.org
  2. Patek & Caldwell (2005) Extreme impact and cavitation forces of a biological hammer: strike forces of the peacock mantis shrimp, Journal of Experimental Biologydoi.org
  3. Weaver et al. (2012) The Stomatopod Dactyl Club: A Formidable Damage-Tolerant Biological Hammer, Sciencedoi.org