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チョウチンアンコウの仲間には、メスにかみついて「体の一部」になるオスがいる。拒絶反応が起きない謎

チョウチンアンコウの仲間には、メスにかみついて「体の一部」になるオスがいる。拒絶反応が起きない謎

読む前に予想してみよう!

深海のアンコウの仲間は、すべての種でオスがメスに一生くっついて暮らす

研究カード(どんな研究?)
対象
深海性のチョウチンアンコウ類(チョウチンアンコウ亜目)
規模
博物館標本・数十種の比較
研究の種類
形態学的レビュー・比較ゲノム解析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

深海のチョウチンアンコウの仲間には、小さなオスがメスにかみついたまま血管までつながる種がいる。免疫の大事な遺伝子を失っていて、拒絶反応が起きないことと関係しているとみられる。

ひとことで言うと深海アンコウの一部は、オスがメスにくっついて体がつながる。免疫がケンカしない!

もくじ
  1. 広すぎる深海で、相手を逃さないために
  2. 本来なら、免疫が「よそ者」を攻撃するはず
  3. 免疫を捨てても大丈夫なの?
  4. まとめ

真っ暗な深海に、頭の先から光るエサをぶら下げた魚がいます。チョウチンアンコウの仲間です。

この仲間の中には、とんでもない結婚のしかたをする種がいます。小さな小さなオスが、大きなメスの体にかみついて離れず、やがて皮ふも血管もつながって、メスの体の一部のようになってしまうのです。

それだけでも驚きですが、科学者が首をかしげたのは別の点でした。「なぜ拒絶反応が起きないのか?」

01広すぎる深海で、相手を逃さないために

深海は、とてつもなく広く、暗く、生き物の数もまばらです。せっかく出会えた相手を見失えば、次にいつ会えるかわかりません。

アメリカ・ワシントン大学の魚類学者セオドア・ピーチさんは、長年にわたって世界中の博物館の標本を調べ、深海のアンコウ類(チョウチンアンコウ亜目)の繁殖のしかたを整理してきました。

1匹のメスに複数のオスがくっついている標本も見つかっています。オスは、いわば「いつでも使える精子の供給係」になるわけです。

くっついたオスとメスは、血管までつながってしまう。
くっついたオスとメスは、血管までつながってしまう。

02本来なら、免疫が「よそ者」を攻撃するはず

ここで問題になるのが免疫です。

私たちの体は、自分以外の細胞を「よそ者」として見分け、攻撃するしくみを持っています。人間の臓器移植で拒絶反応が起きるのはこのためです。だから移植を受けた人は、免疫をおさえる薬を飲み続ける必要があります。

ところがアンコウのオスとメスは、別の個体なのに、血がまざり合ったまま平気で生きています。

つまり深海アンコウでは、免疫の一部を手放したことが、オスとメスの「合体」を可能にしたのかもしれません。

03免疫を捨てても大丈夫なの?

免疫は、細菌やウイルスと戦うための大切なしくみです。そのかなりの部分を失って、病気にならないのでしょうか。

研究チームは、これらの魚が、生まれつき備わった別の免疫(自然免疫)を強めて補っている可能性を挙げています。ただし、具体的にどう身を守っているのかは、まだわかっていません。

脊椎動物にとって「なくてはならない」と考えられてきた免疫のしくみを、手放しても生きていける動物がいる。この発見は、免疫の進化についての考え方を揺さぶるものでした。

04まとめ

チョウチンアンコウの仲間には、メスにかみつき、血管までつながって「体の一部」になるオスがいる。それを可能にしたとみられるのは、免疫の大事な部分を捨てるという、思い切った進化でした。

暗く広い深海で相手を手放さないための、究極の作戦。深海には、私たちの「当たり前」を覆す生き物がまだまだいます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn the deep sea, it is dark and animals are few, so finding a mate is difficult. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In the deep sea, it is dark and animals are few, so finding a mate is difficult. In some deep-sea anglerfish, the male is much smaller than the female. When he finds her, he bites onto her body, and over time their skin and blood vessels join. The male then gets food from the female's blood and keeps producing sperm.

Normally, an immune system attacks tissue from another individual, which is why organ transplants can be rejected. In 2020, Jeremy Swann, Thomas Boehm and Theodore Pietsch studied the genomes of several anglerfish species. In species where males fuse, important immune genes were missing or no longer worked, which may explain the absence of rejection.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

深海は暗く、動物も少ないため、相手を見つけるのは難しいことです。深海のチョウチンアンコウの一部では、オスがメスよりずっと小さいです。オスはメスを見つけると体にかみつき、時間がたつと皮ふと血管がつながります。するとオスはメスの血液から栄養をもらい、精子を作り続けます。ふつう、免疫系はほかの個体の組織を攻撃します。

臓器移植で拒絶反応が起こりうるのはそのためです。2020年、ジェレミー・スワンさん、トーマス・ベームさん、セオドア・ピーチさんは、複数のアンコウの種のゲノムを調べました。オスが融合する種では、重要な免疫の遺伝子がなくなっていたり、もう働かなくなっていたりしました。これが拒絶反応が起きない理由かもしれません。

4択リーディングクイズ

Q1. What does the male get from the female after fusing?

Q2. Why can organ transplants be rejected?

Q3. What can we infer from the 2020 study?

重要単語

  • parasitismC1
    名詞寄生Sexual parasitism is found in some anglerfish. parasite(寄生生物)の名詞形。para-(そばに)+sitos(食べ物)で「そばで食べる者」。
  • fuseC1
    動詞融合するThe male's tissues fuse with the female's. 名詞 fusion は「融合」。nuclear fusion「核融合」、料理の「フュージョン」も同じ語。
  • rejectionB2
    名詞拒絶(反応)Organ transplants can cause rejection. 動詞 reject「拒絶する」。re-(戻して)+ject(投げる)。inject, project と同じ語根。
  • immune systemB2
    名詞(句)免疫系The immune system attacks foreign cells. be immune to ~「~に免疫がある、~の影響を受けない」も入試頻出。
  • dwarfC1
    形容詞・名詞非常に小さい、矮小なDwarf males are much smaller than females. dwarf planet「準惑星」(冥王星など)でもおなじみ。複数形は dwarfs。
  • correlationalC1
    形容詞相関的なCorrelational studies cannot show cause and effect. correlation(相関)の形容詞。correlation does not imply causation「相関は因果を意味しない」は定番フレーズ。

4コマでわかる

チョウチンアンコウの仲間には、メスにかみついて「体の一部」になるオスがいる。拒絶反応が起きない謎の4コマ漫画
深海のチョウチンアンコウの仲間には、小さなオスがメスにかみついて、そのまま皮ふも血管もつながって「体の一部」になる種がいるらしい。臓器移植なら拒絶反応が起きるはずなのに。調べたら、免疫の大事な遺伝子がなくなっていた。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Pietsch (2005) Dimorphism, parasitism, and sex revisited: modes of reproduction among deep-sea ceratioid anglerfishes (Teleostei: Lophiiformes), Ichthyological Researchdoi.org
  2. Pietsch (2009) Oceanic Anglerfishes: Extraordinary Diversity in the Deep Sea, University of California Pressdoi.org
  3. Swann et al. (2020) The immunogenetics of sexual parasitism, Sciencedoi.org