ゾウは一生「4本の足が同時に浮く」ことがない。それでも“走っている”と言える理由

読む前に予想してみよう!
ゾウは速く移動するとき、一瞬だけ4本の足が全部地面から離れる
どんなに速くても、少なくとも1本の足は地面についている。4本同時に浮く瞬間は記録されていない。
- 対象
- アジアゾウ・アフリカゾウ
- 規模
- 数十頭・2400歩以上(各研究)
- 研究の種類
- 高速度撮影・フォースプレートによる歩行解析
- 確かさ
- ★★★☆☆
ゾウは時速約25kmで移動できるのに、4本の足が全部地面から離れる瞬間がない。でも体の上下の動き方を調べると、それは「走り」に近かった。
ひとことで言うとゾウは足が全部うく瞬間がない。でも体のゆれ方は「走る」と同じだった!
「ゾウはジャンプできない」。動物雑学の定番です。
これは本当です。ゾウは、4本の足が同時に地面から離れる瞬間が一度もないのです。ゆっくり歩くときも、全力で急ぐときも、必ずどれかの足が地面についています。
では、ゾウは「走れない」のでしょうか? 実はここに、研究者たちを悩ませた面白い問題がありました。
01「走る」ってそもそも何?
人間の場合、歩きと走りの違いはわかりやすいですよね。走るときは、両足が地面から離れる空中の瞬間があります。
ウマやイヌなど多くの動物も、速く走ると4本の足が全部浮く瞬間があります。これを空中期といいます。
ところがゾウには、この空中期がありません。だから昔から「ゾウは速歩きしているだけで、走ってはいない」とも言われてきました。

02測ってみたら、体は「弾んで」いた
そこで研究者たちは、「足が浮くかどうか」ではなく、体の重心がどう動くかに注目しました。
歩くときは、振り子のように体が足の上を乗り越えていきます。足が地面についている間に、重心は持ち上がる。一方、走るときはバネのように、足が地面についている間に重心が沈んで、また跳ね返る。物理的には、ここが歩きと走りの本当の違いです。
2006年の続報では、アジアゾウとアフリカゾウ62頭、2400歩以上を分析しました。速くなるほど、前脚より後ろ脚の方が先に「走り」に近い動きになり、前脚はまだ歩いているような、ちょっと不思議なチグハグ状態になることも報告されています。
2010年にはベルギーの研究チーム(Genin ら)が、地面にかかる力を測る板(フォースプレート)の上をアジアゾウ34頭に歩いてもらい、重心の動きを詳しく調べました。速くなるとゾウは、空中期のない「弾む」動きに切りかえていることが確かめられました。しかも速くなるほど重心の上下動は小さくなり、約3cmから約1cmへ減っていました。
03なぜジャンプしないのか
ゾウがジャンプしない理由としてよく挙げられるのは、体の大きさです。
体の重さは体の大きさの3乗で増えますが、骨や筋肉の強さ(断面積)は2乗でしか増えません。体が大きくなるほど、自分の重さを支えるだけで精いっぱいになっていくのです。数トンの体が空中に浮いて着地すれば、脚にとても大きな力がかかります。
ゾウは、柱のようにまっすぐな脚で体重を支え、足を常に地面につけたまま速く動くという、大きな体に合った移動のしかたを選んでいるのだと考えられます。
04まとめ
ゾウは一生、4本の足が同時に浮くことはありません。でも、体の重心を弾ませる「走り」の動きは、ちゃんと使いこなしていました。
「走る」とは何か。ゾウを見ていると、当たり前だと思っていた言葉の意味まで考え直したくなります。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerElephants are famous for being unable to jump, and it is true that they never have all four feet off the…
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原田英語の English Corner
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Elephants cannot jump. Even when they move fast, at least one foot is always on the ground. Horses and dogs have all four feet in the air for a moment when they run. Elephants never do.
So, can elephants run? Scientists filmed elephants and studied how their bodies moved up and down. At high speed, their bodies bounced like a running animal. So we can say elephants run in their own way.
72 words ・ CEFR A2
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ゾウはジャンプできません。速く動くときでさえ、少なくとも1本の足はいつも地面についています。ウマやイヌは、走るときに一瞬4本の足が全部空中に浮きます。ゾウは決してそうなりません。
では、ゾウは走れるのでしょうか。科学者たちはゾウを撮影し、体がどのように上下に動くかを調べました。速いとき、ゾウの体は走る動物のように弾んでいました。ですから、ゾウは自分なりのやり方で走っていると言えるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
足が全部浮かないゾウが「走っている」と言えるのか、がテーマなので B。
Q2. Which is true about elephants?
at least one foot is always on the ground とあるので D。
Q3. In this passage, "bounced" means the bodies ...
bounce は「弾む」。バネのように上下に動くという意味なので C。
Elephants are famous for being unable to jump, and it is true that they never have all four feet off the ground. For this reason, some people said that elephants only walk quickly and do not really run. In 2003, John Hutchinson and his team filmed Asian elephants in Thailand. The fastest elephants moved at about 6.8 meters per second, or about 25 kilometers per hour, yet at least one foot always stayed on the ground.
However, the researchers found that some features of their movement matched definitions of running. Later work showed that, at high speed, the center of mass bounced like a spring, as in running. So elephants seem to run without leaving the ground.
117 words ・ CEFR B1
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ゾウはジャンプできないことで有名で、4本の足が全部地面から離れることがないのは本当です。このため、ゾウは速く歩いているだけで本当は走っていない、と言う人もいました。2003年、ジョン・ハッチンソンさんのチームは、タイでアジアゾウを撮影しました。最も速いゾウは秒速約6.8メートル、つまり時速約25キロメートルで移動しましたが、それでも少なくとも1本の足は常に地面についていました。
しかし研究者たちは、動きのいくつかの特徴が走りの定義に当てはまることを見つけました。のちの研究では、速いとき、重心がバネのように弾み、走るときと同じ動きになることが示されました。つまり、ゾウは地面から離れずに走っているように見えます。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Hutchinson's team find about elephants at high speed?
some features of their movement matched definitions of running とあるので A。
Q2. How fast could the fastest elephants move?
about 6.8 meters per second, or about 25 kilometers per hour とあるので C。単位の取り違えに注意。
Q3. What does the study suggest about the meaning of "running"?
足が浮かなくても、体の動きが走りの定義に当てはまれば走りと言える、という結論なので B。
That elephants cannot jump is one of the most familiar animal facts, and it is accurate: at no speed do all four feet leave the ground. Because most running animals have such an aerial phase, elephants were often described as merely walking fast. In 2003, John Hutchinson and colleagues challenged this view. Filming Asian elephants in Thailand, they recorded speeds of up to about 6.8 meters per second and found that, although the gait looked like walking, some features of it met definitions of running.
A 2006 follow-up analyzing more than 2,400 strides from 62 Asian and African elephants revealed that the hind legs shift toward running before the front legs do. In 2010, a Belgian team using force plates with 34 elephants showed that fast elephants use a bouncing gait without an aerial phase. Why elephants avoid jumping is usually explained by scaling, since body weight increases faster than the strength of bones and muscles. However, this explanation is a general theoretical argument and has not been directly tested in elephants.
172 words ・ CEFR B2
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ゾウがジャンプできないというのは最もよく知られた動物の事実の一つで、それは正確です。どんな速さでも、4本の足すべてが地面から離れることはありません。走る動物のほとんどにはこうした空中期があるため、ゾウは単に速く歩いているだけだとよく言われてきました。2003年、ジョン・ハッチンソンさんらは、この見方に異を唱えました。タイでアジアゾウを撮影し、秒速約6.8メートルまでの速さを記録して、歩きのように見える動きにも、走りの定義に当てはまる特徴がいくつかあることを発見しました。
62頭のアジアゾウとアフリカゾウの2400歩以上を分析した2006年の続報では、後ろ脚が前脚より先に走りの動きに移ることが明らかになりました。2010年には、34頭のゾウでフォースプレートを使ったベルギーのチームが、速いときのゾウは空中期のない弾む歩様を使うことを示しました。ゾウがジャンプを避ける理由は、ふつう体の大きさの法則で説明されます。体重は骨や筋肉の強さよりも速く増えるのです。しかし、この説明は一般的な理論上の議論であり、ゾウで直接検証されたわけではありません。
4択リーディングクイズ
Q1. How did Hutchinson's team challenge the idea that elephants only walk fast?
some features of it met definitions of running とあるので D。
Q2. What did the 2006 follow-up study reveal?
the hind legs shift toward running before the front legs do とあるので A。
Q3. What limitation does the writer point out?
最終文で、スケーリングの説明は理論上の議論で has not been directly tested とあるので C。
重要単語
- gaitC1名詞歩き方、歩様Scientists study the gait of elephants.
gate(門)と同じ発音。walk, trot, gallop などをまとめて gait と呼ぶ。 - aerial phaseC1名詞(句)空中期(足が全部地面から離れる時間)Running usually has an aerial phase.
aerial は「空中の」。aerial photograph「航空写真」もよく出る。 - center of massC1名詞(句)重心The elephant's center of mass moves up and down.
center of gravity とも言う。物理の英文で頻出。イギリス英語では centre。 - strideB2名詞一歩(同じ足が再び着くまでの動き)Researchers analyzed over 2,400 strides.
make great strides「大きく進歩する」という比喩表現が入試で頻出。 - compliantC1形容詞しなやかに曲がる、柔軟なTheir legs become more compliant at high speed.
ふつうは「(規則に)従う」の意味。comply with ~「~に従う」、compliance「法令順守」。 - scalingC1名詞(大きさに応じた)変化の法則、拡大縮小Scaling explains why large animals cannot jump easily.
scale は「規模・目盛り」。on a large scale「大規模に」も頻出。
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ゾウは最速で時速25km近く出せるのに、4本の足が同時に地面を離れる瞬間が一度もないらしい。つまりジャンプもできない。でも体の重心の動きを測ると、それはもう「走り」と呼べる動き方だった。
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- Hutchinson et al. (2003) Are fast-moving elephants really running?, Naturedoi.org
- Hutchinson et al. (2006) The locomotor kinematics of Asian and African elephants: changes with speed and size, Journal of Experimental Biologydoi.org
- Genin et al. (2010) Biomechanics of locomotion in Asian elephants, Journal of Experimental Biologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。








