薬が効かない菌「MRSA」の一部は、ハリネズミの体で生まれていた。しかも抗生物質が使われる前に

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薬剤耐性菌は、人間が抗生物質を使いはじめてから初めて生まれた
MRSAの一部の系統は、ハリネズミの皮ふのカビが出す天然の抗生物質への適応として、抗生物質が臨床で使われる前の時代に現れていた。
- 対象
- ヨーロッパとニュージーランドのハリネズミ・ヒト・家畜の黄色ブドウ球菌
- 規模
- ハリネズミ数百匹・多数の菌株のゲノム(各研究)
- 研究の種類
- 野外サンプリング・全ゲノム解析・進化系統の年代推定・培養実験
- 確かさ
- ★★★★☆
ハリネズミの皮ふのカビが出す天然の抗生物質の中で、薬が効かないMRSAの一部の系統が、人が抗生物質を使う前から生まれていたらしい。
ひとことで言うと薬がきかない菌の一部は、ハリネズミの皮ふのカビとの戦いの中で生まれていた!
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)。病院での感染症の原因として知られる、「薬が効きにくい細菌」です。
こうした薬剤耐性菌は、「人間が抗生物質を使いすぎたせいで生まれた」と説明されることが多いですよね。それはおおむね正しいのですが、2022年、意外な事実が明らかになりました。
MRSAの一部の系統は、人間が抗生物質を使い始めるよりずっと前に、ハリネズミの体で生まれていたらしいのです。
01謎の耐性遺伝子「mecC」
MRSAが薬に強いのは、抗生物質から身を守る耐性遺伝子を持っているからです。よく知られているのは「mecA」という遺伝子ですが、2011年、イギリスとデンマークで、それとよく似た別の耐性遺伝子が見つかりました。今では「mecC」と呼ばれています(García-Álvarez ら)。
mecCを持つMRSAは、人だけでなく、牛などの家畜や野生動物からも見つかりました。そして調べていくうちに、ある動物が浮かび上がります。ヨーロッパのハリネズミです。

02犯人はハリネズミの皮ふのカビ
なぜハリネズミなのでしょうか。
つまり、ハリネズミの皮ふの上では、カビ(菌類)が出す天然の抗生物質と、それに負けまいとする細菌との「軍拡競争」が、昔から続いていたのです。
考えてみれば、最初に広く使われた抗生物質ペニシリンも、アオカビから見つかったものでした。抗生物質はもともと、微生物どうしの戦いの道具なのです。
03「ワンヘルス」という考え方
この研究が伝える大事なメッセージは、人・動物・環境の健康はつながっているということです。これをワンヘルスといいます。
野生動物の体の上で生まれた耐性菌が、家畜を通じて人間にたどり着くこともある。逆に、人間が使う薬が、自然界の微生物にも影響を与えます。薬剤耐性の問題は、病院の中だけでは解決できないのです。
04まとめ
薬が効かない細菌の一部は、ハリネズミの体の上で、カビとの戦いの中から生まれたと考えられています。抗生物質は、もともと自然界の「武器」だったのです。
だからこそ、人間が使う薬も大切に、必要なときに正しく使うことが大事。小さなハリネズミが、そんな大きな教訓を教えてくれています。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMRSA is a type of bacteria that resists many antibiotics, and it is usually blamed on the overuse of these…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
MRSA is a type of bacteria that many medicines cannot kill. People often think these bacteria appeared because humans used too many medicines.
But scientists found that some kinds of MRSA first appeared on hedgehogs in Europe. This happened before doctors began to use these medicines. A fungus on hedgehog skin makes natural medicines. The bacteria learned to survive them, so they became strong.
64 words ・ CEFR A2
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MRSAは、多くの薬で殺すことができない細菌の一種です。人々はよく、これらの細菌は人間が薬を使いすぎたせいで現れたと考えます。
しかし科学者たちは、MRSAのいくつかの種類が、ヨーロッパのハリネズミの体で最初に現れたことを発見しました。これは、医者がこうした薬を使い始める前に起きていました。ハリネズミの皮ふにいるカビが、天然の薬を作ります。細菌はそれに負けずに生き延びるようになり、そのため強くなったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
薬が効かないMRSAの一部がハリネズミの体で生まれた、という話なので B。
Q2. What makes natural medicines on hedgehog skin?
A fungus on hedgehog skin makes natural medicines. とあるので D。
Q3. In this passage, "survive" means ...
survive は「生き延びる」。stay alive(生きたままでいる)なので A。
MRSA is a type of bacteria that resists many antibiotics, and it is usually blamed on the overuse of these drugs by humans. However, in 2011, scientists in the UK and Denmark found a new resistance gene, now called mecC.
Later, a Danish study of 188 dead hedgehogs found that 114 of them, or 61 percent, carried MRSA with this gene. In 2022, an international team analyzed the genes of many MRSA samples and concluded that some lineages appeared in hedgehogs before antibiotics were used in medicine. A likely reason was a fungus on hedgehog skin that produces two natural antibiotics similar to penicillin. In this environment, resistant bacteria had an advantage over ordinary ones.
115 words ・ CEFR B1
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MRSAは多くの抗生物質に耐える細菌の一種で、ふつうは人間がこうした薬を使いすぎたせいだとされます。しかし2011年、イギリスとデンマークの科学者たちが、現在mecCと呼ばれる新しい耐性遺伝子を発見しました。
その後、死んだハリネズミ188匹を調べたデンマークの研究で、そのうち114匹、つまり61パーセントが、この遺伝子を持つMRSAを保有していることがわかりました。2022年、国際チームは多数のMRSAの遺伝子を分析し、いくつかの系統は、抗生物質が医療で使われる前にハリネズミの中で現れたと結論づけました。考えられる理由は、ペニシリンに似た2種類の天然の抗生物質を作る、ハリネズミの皮ふのカビでした。この環境では、耐性のある細菌がふつうの細菌より有利だったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What percentage of the hedgehogs in the Danish study carried MRSA with mecC?
114 of them, or 61 percent とあるので A。
Q2. What did the 2022 team conclude?
some lineages appeared in hedgehogs before antibiotics were used in medicine とあるので B。
Q3. Why did resistant bacteria have an advantage on hedgehog skin?
a fungus on hedgehog skin that produces two natural antibiotics があり、その環境で耐性菌が有利になったので D。
A Danish survey published in 2019 examined 188 dead hedgehogs and found MRSA carrying the mecC gene in 114 of them, or 61 percent. Researchers in the UK and Denmark had first identified the gene in 2011, in MRSA from people and cattle. It resembles mecA, a better-known resistance gene. A rate that high hinted that hedgehogs might be a natural reservoir.
In a 2022 study in Nature, Jesper Larsen, Mark Holmes and colleagues analyzed the genomes of many samples. They estimated that several mecC lineages emerged in hedgehog populations before antibiotics entered clinical use, and only later spread to livestock and humans. That fits the One Health principle that the health of people, animals and environments is linked. This does not overturn the usual story.
For most clinically important bacteria, resistance is still largely a result of human overuse of drugs. Strains with mecC cause only a small share of human MRSA infections, and most other MRSA infections are still tied to antibiotic use in medicine and agriculture. Dates based on molecular clocks also carry uncertainty. What drove resistance in hedgehogs appears to be a skin fungus, Trichophyton erinacei, which produces two penicillin-like antibiotics that favor resistant bacteria.
199 words ・ CEFR B2
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2019年に発表されたデンマークの調査では、死んだハリネズミ188匹を調べ、そのうち114匹、つまり61パーセントから、mecC遺伝子を持つMRSAを見つけました。この遺伝子は2011年、イギリスとデンマークの研究者たちが人や牛から得たMRSAの中で初めて特定したもので、よく知られた耐性遺伝子mecAに似ています。これほど高い割合は、ハリネズミが自然の保有宿主である可能性をうかがわせました。2022年に『Nature』に掲載された研究で、イェスパー・ラーセンさん、マーク・ホルムズさんらは、多数のサンプルのゲノムを分析しました。
そして、いくつかのmecC系統が、抗生物質が臨床で使われる前にハリネズミの集団の中で生まれ、後になって家畜や人間に広がったと推定しました。これは、人・動物・環境の健康はつながっているというワンヘルスの原則に合っています。とはいえ、これで従来の説明がくつがえるわけではありません。臨床上重要な細菌のほとんどでは、耐性は今もおおむね人間による薬の使いすぎの結果です。
mecCを持つ株は人のMRSA感染のごく一部にすぎず、それ以外のMRSA感染のほとんどは、今も医療や農業での抗生物質の使用と結びついています。また、分子時計にもとづく年代には不確かさがともないます。ハリネズミで耐性を生み出した原動力は、皮ふのカビであるトリコフィトン・エリナケイのようです。このカビはペニシリンに似た2種類の抗生物質を作り、それが耐性菌を有利にするのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2022 study estimate about several mecC lineages?
several mecC lineages emerged in hedgehog populations before antibiotics entered clinical use とあるので C。人間の使いすぎという通常の説明に対する例外にあたる。
Q2. What role does Trichophyton erinacei play?
which produces two penicillin-like antibiotics that favor resistant bacteria とあるので A。
Q3. Which limit of the finding does the writer mention?
Strains with mecC cause only a small share of human MRSA infections とあるので B。人間による使用の影響は否定されていないので D は誤り。
重要単語
- antibioticB2名詞抗生物質Penicillin was the first widely used antibiotic.
anti-(反対)+bio(生命)。take antibiotics「抗生物質を飲む」。ウイルスには効かない点も入試で問われる。 - resistanceB2名詞耐性、抵抗力Antibiotic resistance is a global health threat.
動詞 resist、形容詞 resistant。drug-resistant「薬剤耐性の」。 - fungusC1名詞カビ、菌類A fungus on hedgehog skin makes natural antibiotics.
複数形は fungi。キノコ・カビ・酵母をまとめた呼び名。 - lineageC1名詞系統、血統Some MRSA lineages are older than we thought.
line(線)と同語源で「つながり」。発音は /ˈlɪniɪdʒ/(リニイッジ)。 - reservoirC1名詞保有宿主、たまり場、貯水池Hedgehogs may be a natural reservoir of MRSA.
本来は「貯水池」。感染症では病原体をため込んでいる生物を指す。 - caveatC1名詞注意書き、但し書きThere are two caveats to this finding.
ラテン語で「用心せよ」。研究の限界を述べるときの硬い表現。
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薬が効かない細菌「MRSA」の一部の系統は、なんとヨーロッパのハリネズミの体で、抗生物質が病院で使われる前から生まれていたらしい。犯人はハリネズミの皮ふにすむカビ。このカビが天然の抗生物質を出していた。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- García-Álvarez et al. (2011) Meticillin-resistant Staphylococcus aureus with a novel mecA homologue in human and bovine populations in the UK and Denmark: a descriptive study, The Lancet Infectious Diseasesdoi.org
- Rasmussen et al. (2019) European hedgehogs (Erinaceus europaeus) as a natural reservoir of methicillin-resistant Staphylococcus aureus carrying mecC in Denmark, PLOS ONEdoi.org
- Larsen et al. (2022) Emergence of methicillin resistance predates the clinical use of antibiotics, Naturedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












