脳がないのに1か月も「覚えていた」? オジギソウを何十回も落とした実験

読む前に予想してみよう!
何度も落とされたオジギソウが葉を閉じなくなったのは、単に疲れて動けなくなったからだ
別の刺激(ゆさぶり)を与えるとちゃんと葉を閉じたので、研究チームは、疲れではなく「落下に慣れた」と考えた(ただし疲労で説明できるという反論もある)。
- 対象
- オジギソウの鉢植え
- 規模
- 数十株・明暗2条件
- 研究の種類
- 実験室実験
- 確かさ
- ★★☆☆☆
鉢ごと何度も落とされたオジギソウは、やがて葉を閉じなくなり、その状態を約1か月保った。ただ「学習」と呼べるかは議論が続く。
ひとことで言うとオジギソウは「これは危なくない」と覚えて、葉をとじなくなった!
指でちょんと触ると、細かい葉がパタパタと閉じていくオジギソウ。小学校で触って遊んだ人も多いでしょう。
この植物を鉢ごと何十回も落とし続けたらどうなるか。そんな実験をした研究者がいます。
結果は驚くべきものでした。オジギソウは、やがて落とされても葉を閉じなくなり、その状態を約1か月も保ったのです。脳も神経もない植物が、「覚えていた」としか思えない結果でした。
01葉を閉じるのは「コスト」がかかる
オジギソウが葉を閉じるのは、虫や動物から身を守るためと考えられています。
でも、葉を閉じている間は光合成ができません。光合成は、光から栄養を作る、植物にとっての「食事」。つまり葉を閉じるたびに、ごはんを食べる時間が削られるのです。
だから、危なくない刺激にまでいちいち反応するのは、植物にとって損。「これは大丈夫」とわかれば、葉を開いたままのほうが得なのです。
02何度も落とされると、葉を閉じなくなった
ポイントは「ゆさぶると、ちゃんと閉じた」ことです。もしただ疲れて葉を動かせなくなっただけなら、ゆさぶっても閉じないはず。研究チームは、オジギソウが「落下」という刺激だけに慣れていたと考えました。
この現象を慣れ(馴化・じゅんか)と呼びます。たとえば、新しい部屋の時計のカチカチ音が最初は気になっても、数日すると気にならなくなる。あれも「慣れ」です。動物の世界では、いちばんシンプルな学習の一つとされています。

03暗い場所の株ほど「早く覚えた」
この研究にはもう一つおもしろい結果があります。
光の弱い環境で育てたオジギソウは、明るい環境の株より早く葉を閉じなくなり、その状態を長く保ったのです。
光が少ない環境では、葉を閉じて光合成の時間を失うのは、より大きな痛手です。だから「ムダな反応」をやめるのが早かった——研究チームはそう考えました。論文タイトルにある通り、それが本当に大事な環境ほど、植物は早く覚え、ゆっくり忘れる、というわけです。
04でも、それは「記憶」と呼べるの?
実は、オジギソウの「慣れ」自体は、1960年代から報告がありました。ガリアーノさんたちの研究は、それが1か月という長い期間続くことを示した点で注目を集めたのです。
ただし、ガリアーノさんたちが2016年に発表した「エンドウ豆が、風と光を結びつけて覚える(条件づけ)」という研究は、2020年に別の研究者(Markel)が同じ条件で試したところ、再現できなかったと報告されています。植物の学習研究は、ワクワクする一方で、慎重に確かめていく必要がある分野なのです。
05まとめ
何度も落とされたオジギソウは、「これは危なくない」とでも言うように葉を閉じなくなり、その状態を約1か月保ちました。ただ、それを人間のような「記憶」と呼ぶかは、まだ議論の途中です。
次にオジギソウを見かけたら、何度も触ってみるのではなく、そっと観察してみてください。あの小さな葉の中にも、まだまだ知らない仕組みが眠っています。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMimosa pudica folds its leaves when touched, probably to protect itself.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Mimosa is a plant that closes its leaves when you touch it. Scientists in Australia dropped pots of mimosa again and again. At first, the leaves closed.
But after many drops, the plants stopped closing their leaves. When the pots were shaken, the leaves still closed. So the plants were probably not just tired. About a month later, many plants still did not close their leaves when dropped.
68 words ・ CEFR A2
和訳を見る
オジギソウは、触ると葉を閉じる植物です。オーストラリアの科学者たちは、オジギソウの鉢を何度もくり返し落としました。最初は葉が閉じました。
でも何度も落とされるうちに、植物は葉を閉じなくなりました。鉢をゆさぶると、葉はちゃんと閉じました。つまり植物はただ疲れていたわけではなさそうです。約1か月後も、多くの株は落とされても葉を閉じませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
何度も落とされたオジギソウが葉を閉じなくなり、1か月後もその状態だった、という話なので C。
Q2. What happened when the pots were shaken?
When the pots were shaken, the leaves still closed. とあるので D。
Q3. In this passage, "tired" means ...
tired は「疲れた」=休みが必要な状態なので A。疲れて動けないのではなく、落下に慣れたのだとわかる。
Mimosa pudica folds its leaves when touched, probably to protect itself. However, closing leaves has a cost, because the plant cannot carry out photosynthesis while they are closed. In 2014, Monica Gagliano and her team dropped potted mimosa plants 15 centimeters, 60 times in a session. The plants gradually stopped closing their leaves.
When the pots were shaken instead, the leaves closed again, which suggested the plants were not simply tired. They had become used to dropping, a process called habituation. About a month later, many plants still ignored the drop. Plants grown in low light stopped responding sooner and kept the change longer, perhaps because closing their leaves was more costly when light was scarce.
116 words ・ CEFR B1
和訳を見る
オジギソウは、おそらく身を守るために、触られると葉を閉じます。しかし葉を閉じるのにはコストがかかります。閉じているあいだは光合成ができないからです。2014年、モニカ・ガリアーノさんのチームは、鉢植えのオジギソウを15センチの高さから、1回のセッションで60回落としました。植物はしだいに葉を閉じなくなりました。代わりに鉢をゆさぶると葉は再び閉じたので、植物は単に疲れていたのではないと考えられました。
落下に慣れたのです。これは「慣れ(馴化)」と呼ばれます。約1か月後でも、多くの株は落下を無視しました。光の弱い場所で育った株は、より早く反応しなくなり、その変化を長く保ちました。光が少ないときには、葉を閉じることの損失がより大きいからかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
落とされることに慣れて葉を閉じなくなった実験(habituation)の話なので B。
Q2. Why did the researchers shake the pots?
ゆさぶると葉が閉じたことから which suggested the plants were not simply tired と述べているので、疲れかどうかの確認だった。正解は A。
Q3. Why might stopping a useless response help the plant?
葉を閉じている間は光合成ができないので、無害な刺激に反応しなければ栄養を作り続けられると推測できる。正解は D。
Touch a Mimosa pudica and its leaves fold shut. The move protects the plant, but it has a cost, because closed leaves cannot photosynthesize. In 2014, Monica Gagliano and colleagues at the University of Western Australia dropped potted mimosas 15 centimeters, 60 times per session. The plants gradually stopped folding their leaves when dropped, but they still folded them when shaken.
The researchers took this as habituation, not motor fatigue. About a month later, many plants still ignored the drop. Those grown in low light habituated faster and retained the change longer, which fits the idea that plants learn faster and forget more slowly where it matters.
Habituation in mimosa had been reported since the 1960s, so the new part was how long it lasted. Critics were not convinced. In 2018, Biegler argued in the same journal that the study had not ruled out motor fatigue, which could explain most of the data.
A related claim from Gagliano's team, that pea plants could learn to associate wind with light, failed to replicate in 2020. Part of the argument is simply about words. Whether a plant's response counts as learning or memory depends on how those terms are defined.
198 words ・ CEFR B2
和訳を見る
オジギソウに触れると、葉がぴたりと閉じます。この動きは植物を守りますが、コストもあります。閉じた葉は光合成ができないからです。2014年、西オーストラリア大学のモニカ・ガリアーノらは、鉢植えのオジギソウを15センチの高さから、1セッションで60回落としました。株はしだいに、落とされても葉を閉じなくなりましたが、ゆさぶるとやはり閉じました。
研究者たちはこれを、運動の疲労ではなく「慣れ」だと解釈しました。約1か月後も、多くの株は落下に反応しませんでした。光の弱い環境で育った株はより早く慣れ、その変化を長く保ちました。
これは「それが重要な環境ほど、植物は早く学び、ゆっくり忘れる」という考えと一致します。オジギソウの慣れ自体は1960年代から報告されていたので、新しかったのはその持続期間でした。批判的な研究者は納得しませんでした。2018年、ビーグラーは同じ学術誌で、研究は運動の疲労の可能性を排除できておらず、データの多くはそれで説明できると論じました。
エンドウ豆が風と光を結びつけて覚えられるというガリアーノのチームの関連研究は、2020年に再現できませんでした。議論の一部は、言葉の問題にすぎません。植物の反応を学習や記憶と呼べるかどうかは、これらの言葉をどう定義するかにかかっているのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
2014年の実験結果と、それに対する批判・再現性の問題を述べているので A。
Q2. What did plants grown in low light do?
Those grown in low light habituated faster and retained the change longer とあるので D。
Q3. Why does the author mention the pea plant study?
エンドウの研究が failed to replicate だったことを挙げ、植物の学習研究には慎重な検証が必要だと示しているので C。
重要単語
- habituationC1名詞慣れ(馴化)Habituation is one of the simplest forms of learning.
habit(習慣)と同語源。be habituated to ~「~に慣れている」。get used to ~ の学術的な言い方。 - stimulusC1名詞刺激(複数形 stimuli)The plant stopped responding to the same stimulus.
複数形 stimuli に注意。動詞 stimulate(刺激する)。economic stimulus「景気刺激策」も頻出。 - photosynthesisB2名詞光合成Closed leaves cannot carry out photosynthesis.
photo(光)+synthesis(合成)。carry out photosynthesis「光合成を行う」がセット。 - replicateC1動詞再現するAnother team failed to replicate the pea experiment.
fail to replicate「再現できない」は科学の信頼性を論じる長文の定番。名詞 replication。 - fatigueB2名詞疲労Shaking was used to test whether fatigue kept the leaves open.
metal fatigue「金属疲労」のように物にも使う。発音 /fəˈtiːɡ/。 - retainB2動詞保つ、保持するPlants in low light retained the change longer.
re-(後ろに)+tain(保つ)。contain, maintain と同じ -tain の仲間。名詞 retention。 - rule outB2動詞(句)(可能性を)排除するThe study did not rule out sensory adaptation.
rule out the possibility「可能性を排除する」は研究の限界を述べる定番表現。
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
触ると葉を閉じるオジギソウを、鉢ごと何度も落としてみたら、やがて「どうせ大丈夫」と葉を閉じなくなったらしい。しかもその状態を約1か月も保った。脳がないのに「覚えている」って、どういうこと?
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(5件)タップで表示
- Gagliano et al. (2014) Experience teaches plants to learn faster and forget slower in environments where it matters, Oecologiadoi.org
- Biegler (2018) Insufficient evidence for habituation in Mimosa pudica. Response to Gagliano et al. (2014), Oecologiadoi.org
- Abramson & Chicas-Mosier (2016) Learning in Plants: Lessons from Mimosa pudica, Frontiers in Psychologydoi.org
- Gagliano et al. (2016) Learning by Association in Plants, Scientific Reportsdoi.org
- Markel (2020) Lack of evidence for associative learning in pea plants, eLifedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












