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脳がないのに1か月も「覚えていた」? オジギソウを何十回も落とした実験

脳がないのに1か月も「覚えていた」? オジギソウを何十回も落とした実験

読む前に予想してみよう!

何度も落とされたオジギソウが葉を閉じなくなったのは、単に疲れて動けなくなったからだ

研究カード(どんな研究?)
対象
オジギソウの鉢植え
規模
数十株・明暗2条件
研究の種類
実験室実験
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

鉢ごと何度も落とされたオジギソウは、やがて葉を閉じなくなり、その状態を約1か月保った。ただ「学習」と呼べるかは議論が続く。

ひとことで言うとオジギソウは「これは危なくない」と覚えて、葉をとじなくなった!

もくじ
  1. 葉を閉じるのは「コスト」がかかる
  2. 何度も落とされると、葉を閉じなくなった
  3. 暗い場所の株ほど「早く覚えた」
  4. でも、それは「記憶」と呼べるの?
  5. まとめ

指でちょんと触ると、細かい葉がパタパタと閉じていくオジギソウ。小学校で触って遊んだ人も多いでしょう。

この植物を鉢ごと何十回も落とし続けたらどうなるか。そんな実験をした研究者がいます。

結果は驚くべきものでした。オジギソウは、やがて落とされても葉を閉じなくなり、その状態を約1か月も保ったのです。脳も神経もない植物が、「覚えていた」としか思えない結果でした。

01葉を閉じるのは「コスト」がかかる

オジギソウが葉を閉じるのは、虫や動物から身を守るためと考えられています。

でも、葉を閉じている間は光合成ができません。光合成は、光から栄養を作る、植物にとっての「食事」。つまり葉を閉じるたびに、ごはんを食べる時間が削られるのです。

だから、危なくない刺激にまでいちいち反応するのは、植物にとって損。「これは大丈夫」とわかれば、葉を開いたままのほうが得なのです。

02何度も落とされると、葉を閉じなくなった

ポイントは「ゆさぶると、ちゃんと閉じた」ことです。もしただ疲れて葉を動かせなくなっただけなら、ゆさぶっても閉じないはず。研究チームは、オジギソウが「落下」という刺激だけに慣れていたと考えました。

この現象を慣れ(馴化・じゅんか)と呼びます。たとえば、新しい部屋の時計のカチカチ音が最初は気になっても、数日すると気にならなくなる。あれも「慣れ」です。動物の世界では、いちばんシンプルな学習の一つとされています。

落とされるたびに、だんだん「慌てなく」なっていった。
落とされるたびに、だんだん「慌てなく」なっていった。

03暗い場所の株ほど「早く覚えた」

この研究にはもう一つおもしろい結果があります。

光の弱い環境で育てたオジギソウは、明るい環境の株より早く葉を閉じなくなり、その状態を長く保ったのです。

光が少ない環境では、葉を閉じて光合成の時間を失うのは、より大きな痛手です。だから「ムダな反応」をやめるのが早かった——研究チームはそう考えました。論文タイトルにある通り、それが本当に大事な環境ほど、植物は早く覚え、ゆっくり忘れる、というわけです。

04でも、それは「記憶」と呼べるの?

実は、オジギソウの「慣れ」自体は、1960年代から報告がありました。ガリアーノさんたちの研究は、それが1か月という長い期間続くことを示した点で注目を集めたのです。

ただし、ガリアーノさんたちが2016年に発表した「エンドウ豆が、風と光を結びつけて覚える(条件づけ)」という研究は、2020年に別の研究者(Markel)が同じ条件で試したところ、再現できなかったと報告されています。植物の学習研究は、ワクワクする一方で、慎重に確かめていく必要がある分野なのです。

05まとめ

何度も落とされたオジギソウは、「これは危なくない」とでも言うように葉を閉じなくなり、その状態を約1か月保ちました。ただ、それを人間のような「記憶」と呼ぶかは、まだ議論の途中です。

次にオジギソウを見かけたら、何度も触ってみるのではなく、そっと観察してみてください。あの小さな葉の中にも、まだまだ知らない仕組みが眠っています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMimosa pudica folds its leaves when touched, probably to protect itself. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Mimosa pudica folds its leaves when touched, probably to protect itself. However, closing leaves has a cost, because the plant cannot carry out photosynthesis while they are closed. In 2014, Monica Gagliano and her team dropped potted mimosa plants 15 centimeters, 60 times in a session. The plants gradually stopped closing their leaves.

When the pots were shaken instead, the leaves closed again, which suggested the plants were not simply tired. They had become used to dropping, a process called habituation. About a month later, many plants still ignored the drop. Plants grown in low light stopped responding sooner and kept the change longer, perhaps because closing their leaves was more costly when light was scarce.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

オジギソウは、おそらく身を守るために、触られると葉を閉じます。しかし葉を閉じるのにはコストがかかります。閉じているあいだは光合成ができないからです。2014年、モニカ・ガリアーノさんのチームは、鉢植えのオジギソウを15センチの高さから、1回のセッションで60回落としました。植物はしだいに葉を閉じなくなりました。代わりに鉢をゆさぶると葉は再び閉じたので、植物は単に疲れていたのではないと考えられました。

落下に慣れたのです。これは「慣れ(馴化)」と呼ばれます。約1か月後でも、多くの株は落下を無視しました。光の弱い場所で育った株は、より早く反応しなくなり、その変化を長く保ちました。光が少ないときには、葉を閉じることの損失がより大きいからかもしれません。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Why did the researchers shake the pots?

Q3. Why might stopping a useless response help the plant?

重要単語

  • habituationC1
    名詞慣れ(馴化)Habituation is one of the simplest forms of learning. habit(習慣)と同語源。be habituated to ~「~に慣れている」。get used to ~ の学術的な言い方。
  • stimulusC1
    名詞刺激(複数形 stimuli)The plant stopped responding to the same stimulus. 複数形 stimuli に注意。動詞 stimulate(刺激する)。economic stimulus「景気刺激策」も頻出。
  • photosynthesisB2
    名詞光合成Closed leaves cannot carry out photosynthesis. photo(光)+synthesis(合成)。carry out photosynthesis「光合成を行う」がセット。
  • replicateC1
    動詞再現するAnother team failed to replicate the pea experiment. fail to replicate「再現できない」は科学の信頼性を論じる長文の定番。名詞 replication。
  • fatigueB2
    名詞疲労Shaking was used to test whether fatigue kept the leaves open. metal fatigue「金属疲労」のように物にも使う。発音 /fəˈtiːɡ/。
  • retainB2
    動詞保つ、保持するPlants in low light retained the change longer. re-(後ろに)+tain(保つ)。contain, maintain と同じ -tain の仲間。名詞 retention。
  • rule outB2
    動詞(句)(可能性を)排除するThe study did not rule out sensory adaptation. rule out the possibility「可能性を排除する」は研究の限界を述べる定番表現。

4コマでわかる

脳がないのに1か月も「覚えていた」? オジギソウを何十回も落とした実験の4コマ漫画
触ると葉を閉じるオジギソウを、鉢ごと何度も落としてみたら、やがて「どうせ大丈夫」と葉を閉じなくなったらしい。しかもその状態を約1か月も保った。脳がないのに「覚えている」って、どういうこと?

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Gagliano et al. (2014) Experience teaches plants to learn faster and forget slower in environments where it matters, Oecologiadoi.org
  2. Biegler (2018) Insufficient evidence for habituation in Mimosa pudica. Response to Gagliano et al. (2014), Oecologiadoi.org
  3. Abramson & Chicas-Mosier (2016) Learning in Plants: Lessons from Mimosa pudica, Frontiers in Psychologydoi.org
  4. Gagliano et al. (2016) Learning by Association in Plants, Scientific Reportsdoi.org
  5. Markel (2020) Lack of evidence for associative learning in pea plants, eLifedoi.org