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ヌタウナギは一瞬で大量の「ネバネバ」を作る。サメの口をふさぐ粘液は、ほぼ海水だった

ヌタウナギは一瞬で大量の「ネバネバ」を作る。サメの口をふさぐ粘液は、ほぼ海水だった

読む前に予想してみよう!

ヌタウナギの粘液は、体の中ででき上がった状態で、どろっと出てくる

研究カード(どんな研究?)
対象
太平洋のヌタウナギ類
規模
数匹の採取個体・野外のビデオ記録
研究の種類
材料の力学試験・人工エラと魚のエラを使った実験・深海の撮影
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ヌタウナギはおそわれると、体から出した液を海水と混ぜて一瞬で大量の粘液を作る。粘液は細い糸と海水のあみで、サメなどのエラをつまらせて撃退する。

ひとことで言うとヌタウナギはおそわれると、すぐに大量のネバネバを出して、敵のエラをつまらせる!

もくじ
  1. ほんの少しの液が、一瞬で大量の粘液に
  2. サメのエラをつまらせる「防御ネット」
  3. 自分の粘液で困らないの?
  4. まとめ

深い海の底に、ウナギのような細長い体の魚がいます。ヌタウナギです。名前に「ウナギ」とついていますが、ウナギの仲間ではありません。あごのない、とても古いタイプの魚です。

この魚には、ほかの動物にはない「必殺技」があります。おそわれた瞬間、体から大量のネバネバ(粘液)を出すのです。その量は、体の大きさからは想像しにくいほど大量です。

しかも、そのネバネバの正体を調べると、ほとんどが海水でした。

01ほんの少しの液が、一瞬で大量の粘液に

ヌタウナギの体の両側には、粘液腺の小さな出口(穴)がずらりと並んでいます。ここから出るのは、実はごく少量の液です。

その液が海水と混ざった瞬間、一気にふくらんで大量の粘液になります。ヌタウナギは、体の中で粘液を作ってためておくのではなく、材料だけを出して、海の中で完成させるのです。

粘液の中の糸は、もともと細胞の中で毛糸玉のように巻かれてしまわれています。海水に触れると、この糸玉がほどけて広がり、海水をからめとるあみを作るのです。

毛糸玉のように巻かれた糸が海水中でほどけ、一瞬で大きなあみになる。
毛糸玉のように巻かれた糸が海水中でほどけ、一瞬で大きなあみになる。

02サメのエラをつまらせる「防御ネット」

では、このネバネバは何のためにあるのでしょう。

有力なのは、魚の捕食者のエラをつまらせるという説です。魚は、口から入れた水をエラに通して呼吸しています。そこに粘液が入りこむと、水がうまく流れず、息ができなくなってしまいます。

2011年には、ニュージーランドの研究チーム(Zintzen ら)が、深海に設置したエサ付きのビデオカメラで、決定的な場面を撮影しました。ヌタウナギに噛みついたサメなどの捕食者が、口やエラを粘液でふさがれ、あわてて吐き出して離れていったのです。ほんの一瞬で効く、強力な防御でした。

同じ映像には、もう一つの驚きも映っていました。ヌタウナギが、生きた魚を襲って食べる場面です。ヌタウナギは死んだ魚を食べる「そうじ屋」だと思われてきましたが、自分で狩りもすることがわかったのです。

03自分の粘液で困らないの?

自分の出した粘液が、自分の体にまとわりついたら大変です。ヌタウナギは、体を結び目のように結んで、その結び目を頭の方からしっぽの方へ移動させることで、体についた粘液をしごき落とすことができます。骨がやわらかい、ヌタウナギならではの技です。

04まとめ

ヌタウナギのネバネバは、ほんの少しの材料を海水と混ぜて一瞬で作る、ほぼ海水でできた防御ネットでした。

3億年以上も生き残ってきた、とても古いタイプの魚。その秘密の一つは、この不思議なネバネバにあるのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHagfish are ancient, jawless fish that live on the deep sea floor. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Hagfish are ancient, jawless fish that live on the deep sea floor. When attacked, they release a small amount of fluid from glands along their bodies. As soon as this fluid touches seawater, it expands into a huge amount of slime.

In 2005, Douglas Fudge and his team found that the slime is made of mucus and extremely thin protein threads, and that it is almost 1,000 times more dilute than ordinary mucus. That makes it mostly seawater held in a net of threads. In 2011, a team in New Zealand filmed sharks biting hagfish. The slime clogged the sharks' mouths and gills, and they quickly spat the hagfish out.

110 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ヌタウナギは、深海の海底にすむ、あごのない古いタイプの魚です。おそわれると、体に沿って並んだ腺から少量の液を出します。この液は海水に触れるとすぐに、大量のネバネバにふくらみます。

2005年、ダグラス・ファッジさんのチームは、このネバネバが粘液成分と非常に細いたんぱく質の糸でできていて、ふつうの粘液よりも1000倍近く薄いことを発見しました。言いかえれば、それはほとんどが糸のあみにとらえられた海水なのです。2011年、ニュージーランドのチームは、サメがヌタウナギにかみつく様子を撮影しました。ネバネバがサメの口とエラをつまらせ、サメはすぐにヌタウナギを吐き出しました。

4択リーディングクイズ

Q1. When does the fluid turn into a large amount of slime?

Q2. How dilute is hagfish slime compared with ordinary mucus?

Q3. What does the 2011 video suggest?

重要単語

  • slimeB2
    名詞ぬるぬるした粘液The hagfish released a cloud of slime. 形容詞 slimy「ぬるぬるした」。おもちゃの「スライム」もこの語。
  • mucusC1
    名詞粘液(鼻水など)Hagfish slime is much more dilute than mucus. 形容詞 mucous。mucous membrane は「粘膜」。
  • threadB1
    名詞糸Long protein threads make the slime elastic. SNS の「スレッド(話題の流れ)」も同じ語。th の発音 /θ/ に注意。
  • gillB2
    名詞えらThe slime can clog a predator's gills. ふつう複数形 gills で使う。to the gills は「(えらまで)いっぱいに」という口語表現。
  • diluteC1
    形容詞・動詞薄い、希薄な/薄めるThe slime is extremely dilute. dilute A with water「Aを水で薄める」。反対は concentrated(濃い)。
  • clogC1
    動詞つまらせるThe slime clogged the shark's gills. be clogged with ~「~でつまっている」。clogged drain「つまった排水口」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

ヌタウナギは一瞬で大量の「ネバネバ」を作る。サメの口をふさぐ粘液は、ほぼ海水だったの4コマ漫画
ヌタウナギは襲われると、ほんの少しの液を海水と混ぜて、一瞬で大量のネバネバ粘液を作るらしい。粘液はほとんど海水で、ふつうの鼻水より1000倍近く薄い。それでもサメのエラをつまらせて、口から吐き出させてしまう。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Fudge et al. (2005) Composition, morphology and mechanics of hagfish slime, Journal of Experimental Biologydoi.org
  2. Lim et al. (2006) Hagfish slime ecomechanics: testing the gill-clogging hypothesis, Journal of Experimental Biologydoi.org
  3. Zintzen et al. (2011) Hagfish predatory behaviour and slime defence mechanism, Scientific Reportsdoi.org