ヌタウナギは一瞬で大量の「ネバネバ」を作る。サメの口をふさぐ粘液は、ほぼ海水だった

読む前に予想してみよう!
ヌタウナギの粘液は、体の中ででき上がった状態で、どろっと出てくる
体から出るのはごく少量の液で、それが海水と混ざった瞬間に大量の粘液に変わる。
- 対象
- 太平洋のヌタウナギ類
- 規模
- 数匹の採取個体・野外のビデオ記録
- 研究の種類
- 材料の力学試験・人工エラと魚のエラを使った実験・深海の撮影
- 確かさ
- ★★★☆☆
ヌタウナギはおそわれると、体から出した液を海水と混ぜて一瞬で大量の粘液を作る。粘液は細い糸と海水のあみで、サメなどのエラをつまらせて撃退する。
ひとことで言うとヌタウナギはおそわれると、すぐに大量のネバネバを出して、敵のエラをつまらせる!
深い海の底に、ウナギのような細長い体の魚がいます。ヌタウナギです。名前に「ウナギ」とついていますが、ウナギの仲間ではありません。あごのない、とても古いタイプの魚です。
この魚には、ほかの動物にはない「必殺技」があります。おそわれた瞬間、体から大量のネバネバ(粘液)を出すのです。その量は、体の大きさからは想像しにくいほど大量です。
しかも、そのネバネバの正体を調べると、ほとんどが海水でした。
01ほんの少しの液が、一瞬で大量の粘液に
ヌタウナギの体の両側には、粘液腺の小さな出口(穴)がずらりと並んでいます。ここから出るのは、実はごく少量の液です。
その液が海水と混ざった瞬間、一気にふくらんで大量の粘液になります。ヌタウナギは、体の中で粘液を作ってためておくのではなく、材料だけを出して、海の中で完成させるのです。
粘液の中の糸は、もともと細胞の中で毛糸玉のように巻かれてしまわれています。海水に触れると、この糸玉がほどけて広がり、海水をからめとるあみを作るのです。

02サメのエラをつまらせる「防御ネット」
では、このネバネバは何のためにあるのでしょう。
有力なのは、魚の捕食者のエラをつまらせるという説です。魚は、口から入れた水をエラに通して呼吸しています。そこに粘液が入りこむと、水がうまく流れず、息ができなくなってしまいます。
2011年には、ニュージーランドの研究チーム(Zintzen ら)が、深海に設置したエサ付きのビデオカメラで、決定的な場面を撮影しました。ヌタウナギに噛みついたサメなどの捕食者が、口やエラを粘液でふさがれ、あわてて吐き出して離れていったのです。ほんの一瞬で効く、強力な防御でした。
同じ映像には、もう一つの驚きも映っていました。ヌタウナギが、生きた魚を襲って食べる場面です。ヌタウナギは死んだ魚を食べる「そうじ屋」だと思われてきましたが、自分で狩りもすることがわかったのです。
03自分の粘液で困らないの?
自分の出した粘液が、自分の体にまとわりついたら大変です。ヌタウナギは、体を結び目のように結んで、その結び目を頭の方からしっぽの方へ移動させることで、体についた粘液をしごき落とすことができます。骨がやわらかい、ヌタウナギならではの技です。
04まとめ
ヌタウナギのネバネバは、ほんの少しの材料を海水と混ぜて一瞬で作る、ほぼ海水でできた防御ネットでした。
3億年以上も生き残ってきた、とても古いタイプの魚。その秘密の一つは、この不思議なネバネバにあるのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHagfish are ancient, jawless fish that live on the deep sea floor.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Hagfish are long fish that live at the bottom of the deep sea. When a shark bites a hagfish, the hagfish makes a lot of slime very quickly.
It lets out only a little liquid, but the liquid mixes with seawater and becomes a big cloud of slime. The slime is almost all seawater. It blocks the shark's mouth and gills, so the shark spits the hagfish out.
68 words ・ CEFR A2
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ヌタウナギは深い海の底にすむ細長い魚です。サメがヌタウナギにかみつくと、ヌタウナギはとても速く大量のネバネバを作ります。
出すのはほんの少しの液ですが、その液が海水と混ざって、大きな雲のようなネバネバになります。ネバネバはほとんどが海水です。それがサメの口とエラをふさぐので、サメはヌタウナギを吐き出してしまうのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ヌタウナギがネバネバでサメから身を守る話なので B。
Q2. What is the slime mostly made of?
The slime is almost all seawater. とあるので A。
Q3. In this passage, "blocks" means ...
block は「ふさぐ」。何も通れないようにつまらせることなので D。
Hagfish are ancient, jawless fish that live on the deep sea floor. When attacked, they release a small amount of fluid from glands along their bodies. As soon as this fluid touches seawater, it expands into a huge amount of slime.
In 2005, Douglas Fudge and his team found that the slime is made of mucus and extremely thin protein threads, and that it is almost 1,000 times more dilute than ordinary mucus. That makes it mostly seawater held in a net of threads. In 2011, a team in New Zealand filmed sharks biting hagfish. The slime clogged the sharks' mouths and gills, and they quickly spat the hagfish out.
110 words ・ CEFR B1
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ヌタウナギは、深海の海底にすむ、あごのない古いタイプの魚です。おそわれると、体に沿って並んだ腺から少量の液を出します。この液は海水に触れるとすぐに、大量のネバネバにふくらみます。
2005年、ダグラス・ファッジさんのチームは、このネバネバが粘液成分と非常に細いたんぱく質の糸でできていて、ふつうの粘液よりも1000倍近く薄いことを発見しました。言いかえれば、それはほとんどが糸のあみにとらえられた海水なのです。2011年、ニュージーランドのチームは、サメがヌタウナギにかみつく様子を撮影しました。ネバネバがサメの口とエラをつまらせ、サメはすぐにヌタウナギを吐き出しました。
4択リーディングクイズ
Q1. When does the fluid turn into a large amount of slime?
As soon as this fluid touches seawater, it expands into a huge amount of slime. とあるので C。
Q2. How dilute is hagfish slime compared with ordinary mucus?
almost 1,000 times more dilute than ordinary mucus とあるので D。
Q3. What does the 2011 video suggest?
ネバネバがサメの口とエラをつまらせ、すぐ吐き出させたので、捕食者への素早い防御だと言える。正解は B。
Hagfish are jawless, eel-shaped fish that have survived for hundreds of millions of years, and they possess one of the most unusual defenses in the ocean. When attacked, a hagfish ejects a small quantity of fluid from slime glands along its body, and on contact with seawater this fluid swells within moments into a large mass of slime. In 2005, Douglas Fudge and colleagues showed that the slime consists of mucins and unusually long, thin protein threads, which are stored coiled like balls of yarn and unravel in water.
The result is almost 1,000 times more dilute than typical mucus; rather than gelling water, the network of threads acts like a fine sieve that slows its flow. Experiments with artificial and real gills in 2006 supported the idea that the slime defends hagfish by clogging the gills of fish predators, and in 2011 baited deep-sea cameras captured sharks and other predators releasing hagfish after their mouths and gills filled with slime. The same footage revealed that hagfish also hunt live fish. Although these observations are convincing, how often the defense succeeds in the wild has yet to be measured.
189 words ・ CEFR B2
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ヌタウナギは、何億年も生き延びてきた、あごのないウナギ形の魚で、海の中で最も変わった防御手段の一つを持っています。おそわれると、ヌタウナギは体に沿って並んだ粘液腺から少量の液を噴き出し、海水に触れたこの液は、あっという間にふくらんで大きなネバネバのかたまりになります。2005年、ダグラス・ファッジさんらは、このネバネバがムチンと、非常に長く細いたんぱく質の糸からできていることを示しました。
糸は毛糸玉のように巻かれてしまわれており、水の中でほどけます。その結果できるものは、一般的な粘液の1000倍近く薄く、水をゼリー状に固めるのではなく、糸のあみが細かいふるいのように働いて水の流れを遅くするのです。2006年の人工のエラと本物のエラを使った実験は、ネバネバが魚の捕食者のエラをつまらせることでヌタウナギを守っているという考えを支持し、2011年には、エサをつけた深海カメラが、口やエラがネバネバでいっぱいになった後にヌタウナギを放すサメなどの捕食者をとらえました。同じ映像から、ヌタウナギが生きた魚を狩ることも明らかになりました。これらの観察は説得力がありますが、野生でこの防御がどれくらいの頻度で成功しているのかは、まだ測定されていません。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, how does the slime hold water?
rather than gelling water, the network of threads acts like a fine sieve that slows its flow とあるので A。
Q2. What else did the 2011 footage reveal?
The same footage revealed that hagfish also hunt live fish. とあるので C。
Q3. What remains unknown, according to the writer?
最終文に how often the defense succeeds in the wild has yet to be measured とあるので D。
重要単語
- slimeB2名詞ぬるぬるした粘液The hagfish released a cloud of slime.
形容詞 slimy「ぬるぬるした」。おもちゃの「スライム」もこの語。 - mucusC1名詞粘液(鼻水など)Hagfish slime is much more dilute than mucus.
形容詞 mucous。mucous membrane は「粘膜」。 - threadB1名詞糸Long protein threads make the slime elastic.
SNS の「スレッド(話題の流れ)」も同じ語。th の発音 /θ/ に注意。 - gillB2名詞えらThe slime can clog a predator's gills.
ふつう複数形 gills で使う。to the gills は「(えらまで)いっぱいに」という口語表現。 - diluteC1形容詞・動詞薄い、希薄な/薄めるThe slime is extremely dilute.
dilute A with water「Aを水で薄める」。反対は concentrated(濃い)。 - clogC1動詞つまらせるThe slime clogged the shark's gills.
be clogged with ~「~でつまっている」。clogged drain「つまった排水口」。
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ヌタウナギは襲われると、ほんの少しの液を海水と混ぜて、一瞬で大量のネバネバ粘液を作るらしい。粘液はほとんど海水で、ふつうの鼻水より1000倍近く薄い。それでもサメのエラをつまらせて、口から吐き出させてしまう。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Fudge et al. (2005) Composition, morphology and mechanics of hagfish slime, Journal of Experimental Biologydoi.org
- Lim et al. (2006) Hagfish slime ecomechanics: testing the gill-clogging hypothesis, Journal of Experimental Biologydoi.org
- Zintzen et al. (2011) Hagfish predatory behaviour and slime defence mechanism, Scientific Reportsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。














