フンコロガシは「天の川」を見てまっすぐ進む。プラネタリウムで確かめた、動物界で初めての発見

読む前に予想してみよう!
フンコロガシが夜にまっすぐ進めるのは、においをたどっているからである
プラネタリウムの実験で、星空や天の川の光を手がかりにしていることがわかった。目をふさぐとまっすぐ進めなくなった。
- 対象
- 南アフリカのフンコロガシ(Scarabaeus satyrus など)
- 規模
- 数十匹の行動実験
- 研究の種類
- 野外実験・プラネタリウムでの行動実験
- 確かさ
- ★★★☆☆
南アフリカのフンコロガシは、月のない夜でも天の川の光を目印に、ふんの玉をまっすぐ転がす。天の川を道しるべにする動物の初めての証拠だった。
ひとことで言うとフンコロガシは、夜空の天の川を見て、まっすぐにふんの玉を運んでいる!
動物のふんを丸めて玉にし、後ろ足で押してコロコロ運ぶ。フンコロガシ(ふんを転がすコガネムシの仲間)は、その姿でおなじみです。
彼らには、ある「こだわり」があります。ふんの山から玉を作ったら、できるだけまっすぐ転がして、その場を離れるのです。
昼間なら太陽を目印にできます。でも、夜に活動するフンコロガシもいます。真っ暗な夜、彼らはどうやって方向を決めているのでしょうか。
01なぜ「まっすぐ」が大事なのか
ふんの山は、フンコロガシにとってごちそうの山。でも同時に、横取りをねらうライバルだらけの戦場でもあります。
せっかく作った玉を奪われないためには、一刻も早くその場から離れること。そのためには、ぐるぐる回り道をせず、一直線に遠ざかるのが一番の近道です。
2003年、スウェーデン・ルンド大学のマリー・ダッケさんたちは、夜行性のフンコロガシが月の光の偏光(光の振動の向き)を手がかりにまっすぐ進んでいることを、『Nature』で報告していました。でも不思議なことに、月が出ていない夜でも、まっすぐ進めるフンコロガシがいたのです。
02プラネタリウムで「天の川だけ」を見せる
そこでダッケさんたちは、ある大胆な実験を考えました。舞台は、南アフリカ・ヨハネスブルグのプラネタリウムです。
フンコロガシの目では、一つ一つの星を見分けるのは難しいと考えられています。でも、夜空を横切る天の川の、帯のような明るさの違いなら感じとれる。それを「方向の目印」にしていたのです。
渡り鳥やアザラシ、そして人間が星を道しるべにすることは知られていましたが、天の川を道しるべにする動物が確かめられたのは、これが初めてでした。この研究は、2013年のイグノーベル賞(生物学・天文学合同賞)を受賞しています。

03「玉の上でダンス」して空を確かめる
フンコロガシは、玉を転がし始める前に、玉の上によじ登って、くるくると回ることがあります。まるでダンスのようなこの動きは、空を見渡して、太陽や月、天の川などの「目印」の位置を確かめる行動だと考えられています。
方向を決めたら、あとはその目印との角度を保ったまま、後ろ向きに玉を押して進むだけ。小さな虫が、空全体を「コンパス」にしているのです。
04まとめ
フンコロガシは、月のない夜でも、天の川を道しるべにふんの玉をまっすぐ運んでいました。
私たちが都会の明かりで見失いがちな天の川を、小さな虫は今も毎晩見上げている。たまには夜空を見上げて、フンコロガシと同じ星の帯を探してみませんか。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAfter making a ball of dung, a dung beetle rolls it away from the dung pile in a straight line.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Dung beetles make balls of animal waste and roll them away. They roll the balls in a straight line so other beetles cannot take them. Some dung beetles work at night. How do they know the way in the dark?
Scientists tested them in a planetarium. The beetles could go straight when they saw only the Milky Way. They were the first animals found to use the Milky Way.
69 words ・ CEFR A2
和訳を見る
フンコロガシは動物のふんで玉を作り、転がして運びます。ほかの虫に取られないよう、玉をまっすぐに転がします。夜に活動するフンコロガシもいます。暗い中でどうやって道がわかるのでしょうか。
科学者たちはプラネタリウムでフンコロガシを試しました。フンコロガシは、天の川だけを見たときでもまっすぐ進むことができました。天の川を使う動物が見つかったのは、これが初めてでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
夜に天の川を使ってまっすぐ進むフンコロガシの話なので C。
Q2. Why do dung beetles roll their balls in a straight line?
so other beetles cannot take them とあるので D。
Q3. In this passage, "roll" means ...
roll は「転がす」。くるくる回して動かすことなので B。
After making a ball of dung, a dung beetle rolls it away from the dung pile in a straight line. This is the fastest way to escape from other beetles that might steal the ball. During the day, the beetles can use the sun as a guide, and in 2003 Marie Dacke's team showed that some use polarized moonlight at night.
But how do they manage on moonless nights? In 2013, the team tested beetles in a planetarium in Johannesburg. The beetles moved just as straight under a sky showing only the Milky Way as under a full starry sky. When the beetles wore tiny caps that blocked their view, they could no longer go straight.
116 words ・ CEFR B1
和訳を見る
フンコロガシは、ふんの玉を作った後、それをふんの山からまっすぐ転がして離れていきます。これは、玉を盗むかもしれないほかの虫から逃れる最も速い方法です。昼間、フンコロガシは太陽を目印にでき、2003年にマリー・ダッケさんのチームは、夜には月の光の偏光を使うものがいることを示しました。
しかし、月のない夜にはどうしているのでしょうか。2013年、チームはヨハネスブルグのプラネタリウムでフンコロガシを試しました。フンコロガシは、天の川だけを映した空の下でも、満天の星空の下と同じくらいまっすぐ進みました。視界をさえぎる小さな帽子をかぶせると、もうまっすぐ進めなくなりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Dacke's team show in 2003?
in 2003 Marie Dacke's team showed that some use polarized moonlight at night とあるので A。
Q2. What happened when the beetles wore tiny caps?
they could no longer go straight とあるので C。
Q3. What can we infer from the planetarium experiment?
天の川だけでも満天の星空と同じくらいまっすぐ進めたので、天の川だけで十分と推論できる。正解は D。
At a dung pile, a beetle that has just made a ball must guard it from rivals that steal fresh balls. Its best escape is to roll the ball away in a straight line, which requires some kind of compass. By day the sun serves. In 2003, Marie Dacke and colleagues showed that nocturnal beetles can use the pattern of polarized moonlight instead.
But some beetles kept to straight paths even on moonless nights. So the team ran experiments in the field and in a planetarium in Johannesburg. Outdoors, they rolled straight under clear, starry skies but wandered when it was overcast. In the planetarium, they oriented just as well when only the Milky Way was projected as when the full sky was shown.
Small caps that blocked their view upward destroyed their sense of direction. Insect eyes probably cannot pick out individual stars, so the beetles seem to steer by the band of light across the sky. They use it only to hold a steady course, with no destination in mind. Even so, this was the first evidence of an animal orienting by the Milky Way, and the work won an Ig Nobel Prize in 2013.
197 words ・ CEFR B2
和訳を見る
ふんの山でふん玉を作ったばかりのフンコロガシは、作りたての玉を盗むライバルから玉を守らなければなりません。いちばんの逃げ方は玉をまっすぐ転がして離れることで、そのためには何らかのコンパスが必要です。昼間は太陽がその役目を果たします。2003年、マリー・ダッケらは、夜行性のフンコロガシが代わりに月の光の偏光パターンを使えることを示しました。
ところが、月のない夜でもまっすぐ進むフンコロガシがいました。そこで研究チームは野外と、ヨハネスブルグのプラネタリウムで実験を行いました。屋外では、晴れた星空の下ではまっすぐ転がしましたが、曇った夜にはふらふらとさまよいました。プラネタリウムでは、天の川だけを映したときも、星空全体を映したときと同じくらいうまく方向を定めました。
上の視界をさえぎる小さな帽子をかぶせると、方向感覚は失われました。昆虫の目はおそらく一つひとつの星を見分けられないので、フンコロガシは空を横切る光の帯をたよりに進んでいるようです。彼らがそれを使うのは進路をまっすぐ保つためだけで、目的地は特にありません。それでも、これは動物が天の川で方向を知ることを示した初めての証拠であり、この研究は2013年にイグ・ノーベル賞を受賞しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What happened outdoors on cloudy nights?
rolled straight under clear, starry skies but wandered when it was overcast とあるので B。overcast は「曇った」、wander は「さまよう」。
Q2. Why do the beetles probably use the band of the Milky Way rather than single stars?
Insect eyes probably cannot pick out individual stars とあるので C。
Q3. According to the passage, what do the beetles use the Milky Way for?
They use it only to hold a steady course, with no destination in mind. とあるので A。
重要単語
- orientationB2名詞方向を定めること、定位Dung beetles use the sky for orientation.
orient はもともと「東(日が昇る方)」。そこから「方向を合わせる」の意味になった。 - navigateB2動詞進む方向を決める、航行するThe beetles navigate by the stars.
名詞 navigation、カーナビの navi もこれ。navigate a website「サイト内を移動する」とも使う。 - planetariumB1名詞プラネタリウムThe experiment was done in a planetarium.
planet(惑星)+-arium(場所)。aquarium(水族館)と同じ語尾。 - polarized lightC1名詞(句)偏光Insects can see polarized light in the sky.
光の振動の向きがそろった光。ハチやアリも空の偏光で方向を知る。 - competitionB1名詞競争Beetles roll away to avoid competition at the dung pile.
動詞 compete、形容詞 competitive。competition for food「エサをめぐる競争」。 - overcastC1形容詞曇ったThe beetles lost their way when the sky was overcast.
cloudy より硬い語で「全体が雲に覆われた」。天気予報でよく使われる。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
フンコロガシは月のない夜でも、天の川の光を目印にふんの玉をまっすぐ転がしているらしい。プラネタリウムで「天の川だけ」を映してもちゃんとまっすぐ進めた。天の川を道しるべにする動物が見つかったのは、これが初めて。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(3件)タップで表示
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













