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深海の生き物の4分の3は「光る」。35万回の観察でわかった、暗闇の海のイルミネーション

深海の生き物の4分の3は「光る」。35万回の観察でわかった、暗闇の海のイルミネーション

読む前に予想してみよう!

生き物の発光は、ある1種類の祖先から一度だけ進化した能力である

研究カード(どんな研究?)
対象
カリフォルニア沖の海の生き物(表層〜水深3900m)
規模
35万件以上の観察・553分類群
研究の種類
遠隔操作の無人探査機(ROV)による17年分の映像の分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

カリフォルニア沖で17年間、35万回以上の観察を分析したら、見つかった生き物の76%が光る能力を持っていた。発光は生命の歴史で何十回も別々に進化している。

ひとことで言うと深い海の生き物の多くは自分で光る。光は、エサ集め・敵よけ・仲間さがしに使われる!

もくじ
  1. 出会った生き物の76%が「光れる」
  2. 光は何に使われている?
  3. 発光は何十回も「発明」された
  4. まとめ

太陽の光は、海の中では深くなるほど弱まり、水深1000mあたりから下はほぼ真っ暗になります。

そんな暗闇の世界は、静かで真っ黒…と思うかもしれません。でも実際の深海は、あちこちで生き物が光る、イルミネーションのような世界でした。

「どれくらいの生き物が光るのか」。この素朴な問いに、17年分の映像で答えた研究があります。

01出会った生き物の76%が「光れる」

アメリカ・モントレー湾水族館研究所(MBARI)のセヴリーヌ・マルティーニさんとスティーヴン・ハドックさんは、無人の探査機で撮りためた膨大な映像を分析しました。

「光るのは一部の珍しい深海魚だけ」というイメージとは正反対。海の中では、光ることのほうが多数派だったのです。

ただし、この数字は「海の中を漂う・泳ぐ生き物」についてのもので、海底の生き物や、カリフォルニア沖以外の海では割合が変わる可能性があります。

浅い所から深い所まで、光る生き物の割合はほぼ同じだった。
浅い所から深い所まで、光る生き物の割合はほぼ同じだった。

02光は何に使われている?

深海の光の使い道は、大きく分けて3つあります。2010年に『Science』で総説を書いた深海生物学者のエディス・ウィダーさんは、次のように整理しています。

  • エサを見つける・おびき寄せる:チョウチンアンコウの「ちょうちん」のように、光でエサを呼び寄せる
  • 相手を見つける:種ごとに違う光り方で、仲間や結婚相手に合図する
  • 敵から逃れる:光をパッと出して相手をおどろかせる、光る液を吐いて目くらましをする、など

面白いのがカウンターイルミネーションという作戦です。深海の少し浅い所では、上からかすかに光が届きます。下から見上げると、生き物の体は黒い影になってしまう。そこで、お腹側をちょうど同じ明るさで光らせて、影を消すのです。光ることで「見えなくなる」という、逆転の発想です。

03発光は何十回も「発明」された

生き物が光るしくみは、多くの場合、ルシフェリンという物質が酵素の働きで光を出す化学反応です。でも、そのしくみは生き物によってかなり違います。

2010年の総説(Haddock ら)は、発光が生き物の歴史の中で何十回も別々に進化したことを示しました。さらに2021年の総説(Lau & Oakley)では、これまでの推定をまとめ直し、少なくとも94回、独立に進化したと見積もっています。

光ることは、それだけ「役に立つ発明」だったのでしょう。暗い海では、光は見る・見られる・隠れるのすべてを左右する、最強の道具なのです。

04まとめ

深い海は、暗闇の中で生き物たちが光で語り合い、だまし合い、隠れ合う世界でした。しかも、その光は何十回も別々に「発明」されてきたのです。

夜空の星のように光る深海。海の中を漂ったり泳いだりしている生き物の多くは、実は光を使って暮らしているのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerBelow about 1,000 meters, the ocean is almost completely dark, yet it is full of living lights. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Below about 1,000 meters, the ocean is almost completely dark, yet it is full of living lights. In 2017, Séverine Martini and Steven Haddock analyzed videos recorded by a remotely operated vehicle off California over 17 years. Out of more than 350,000 observations, 76 percent of the animals swimming or drifting in the water belonged to types that can produce light.

Among jellyfish and their relatives, the figure was over 97 percent. Animals use this light to attract prey, to signal to mates, and to confuse predators. Some even make their bellies glow to hide their shadow from animals below. Scientists also believe that the ability to glow has evolved separately at least 94 times.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

水深約1000メートルより下では、海はほとんど真っ暗ですが、生き物の光であふれています。2017年、セヴリーヌ・マルティーニさんとスティーヴン・ハドックさんは、カリフォルニア沖で17年間にわたり遠隔操作の無人探査機が記録した映像を分析しました。35万件以上の観察のうち、水中を泳いだり漂ったりしていた動物の76パーセントが、光を出せる種類に属していました。

クラゲとその仲間では、その数字は97パーセントを超えていました。動物たちはこの光を、獲物をおびき寄せたり、相手に合図したり、捕食者を混乱させたりするのに使います。お腹を光らせて、下にいる動物から自分の影を隠すものまでいます。科学者たちはまた、光る能力が少なくとも94回、別々に進化したと考えています。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Martini and Haddock analyze?

Q2. Among jellyfish and their relatives, what percent were types that can produce light?

Q3. Why do some animals make their bellies glow?

重要単語

  • bioluminescenceC1
    名詞生物発光Bioluminescence is common in the deep sea. bio(生命)+lumin(光)+-escence(~の状態)。形容詞 bioluminescent「生物発光する」。
  • predatorB2
    名詞捕食者The flash may scare away a predator. 反対は prey(獲物)。predator and prey「捕食者と被食者」はセットで頻出。
  • counterilluminationC1
    名詞カウンターイルミネーション(腹側を光らせて影を消す)Some squid hide their shadow by counterillumination. counter(反対の)+illumination(照明)。counterattack「反撃」と同じ counter-。
  • evolve independentlyC1
    動詞句独立に進化するLight production evolved independently many times. 別々の系統で似た特徴が生まれることを convergent evolution(収斂進化)と言う。
  • remotely operated vehicleC1
    名詞(句)遠隔操作の無人探査機(ROV)Scientists used a remotely operated vehicle to film deep-sea animals. remotely「遠くから」。remote control「リモコン」の remote と同じ。
  • lureC1
    動詞・名詞おびき寄せる、誘いのエサAnglerfish use light to lure prey. 釣りの「ルアー」と同じ語。lure A into ~「Aを~へ誘い込む」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

深海の生き物の4分の3は「光る」。35万回の観察でわかった、暗闇の海のイルミネーションの4コマ漫画
深海は真っ暗…と思いきや、カリフォルニア沖で17年分・35万回以上の観察を分析したら、出会った生き物の76%が「光れる」種類だったらしい。しかも発光は、生き物の歴史で少なくとも94回、別々に進化してきた。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Haddock, Moline & Case (2010) Bioluminescence in the Sea, Annual Review of Marine Sciencedoi.org
  2. Widder (2010) Bioluminescence in the Ocean: Origins of Biological, Chemical, and Ecological Diversity, Sciencedoi.org
  3. Martini & Haddock (2017) Quantification of bioluminescence from the surface to the deep sea demonstrates its predominance as an ecological trait, Scientific Reportsdoi.org
  4. Lau & Oakley (2021) Multi-level convergence of complex traits and the evolution of bioluminescence, Biological Reviewsdoi.org