ヒクイドリは世界一危険な鳥? 221件の襲撃記録を調べたら、犯人は「エサをあげる人間」だった

読む前に予想してみよう!
ヒクイドリは、ジョギングしている人を見ると追いかけて襲う習性がある
襲撃記録の分析では、ジョギングが襲撃のきっかけになるという俗説は支持されなかった。多くはエサを期待した行動だった。
- 対象
- オーストラリアのミナミヒクイドリ
- 規模
- 221件の襲撃記録
- 研究の種類
- 記録の調査研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
ヒクイドリは鋭い爪のキックで人を死なせた記録もある大型の鳥。ただ221件の襲撃記録では、人への襲撃の75%が、人がエサをあげていた個体によるものだった。
ひとことで言うとヒクイドリはこわい鳥。でも人への襲撃の4分の3は、人にエサをもらっていた鳥だった!
ヒクイドリは、たしかに人に大けがをさせることがある危険な鳥です。オーストラリアやニューギニアの熱帯雨林にすむ大型の飛べない鳥で、足の内側の指には長く鋭いかぎ爪があり、強力なキックをくり出します。人が亡くなった記録もあります。
でも、「世界一危険な鳥」というイメージは、少し誇張されているかもしれません。オーストラリアで実際の襲撃記録を調べた研究からは、意外な「真犯人」が浮かび上がってきました。
01ヒクイドリってどんな鳥?
ヒクイドリは、オーストラリアでは最も大きな鳥です。青い首、赤い肉垂れ、そして頭には「カスク」と呼ばれるかぶとのような突起があります。森の中では落ちた果実をたくさん食べ、種を遠くまで運ぶ「森の種まき係」として大切な役割を果たしています。
カスクの役割は長いあいだナゾでしたが、2019年の研究で、赤外線カメラでカスクの表面温度を調べたところ、暑いときは熱を逃がし、寒いときは熱を逃がしにくくする「放熱板」のような働きをしていることがわかりました。

02221件の襲撃記録を調べてみた
つまり、多くの襲撃は「エサをくれるはずの人間が、くれない!」というエサねだりの延長だったのです。エサをもらううちに人をこわがらなくなり、大胆で攻撃的になってしまう。研究は、エサをあげることがヒクイドリ本来の行動を変えているようだと指摘しています。
03本当に「危険」にさらされているのは誰?
立場を逆にしてみると、別の景色が見えてきます。クイーンズランド州のミナミヒクイドリは絶滅の危機にある鳥です。
2006年の研究で、死因がわかった110羽を調べると、交通事故が55%、犬に襲われたのが18%。人間の暮らしが、ヒクイドリの命をおびやかしているのです。
さらに、ニューギニアの遺跡の研究では、約1万8000年前の人々がヒクイドリの卵を集めていたことがわかりました。卵の多くは、中のヒナがだいぶ育った後期のもので、研究チームは、人々がヒナを育てていた可能性もあると考えています。ヒクイドリと人間の関わりは、思っているよりずっと古いのです。
04まとめ
ヒクイドリは、たしかに強力なキックを持つ危険な鳥です。でも、人への襲撃の4分の3は、以前に人からエサをもらっていた個体によるものでした。
「世界一危険な鳥」というより、「人間との付き合い方をまちがえると危険な鳥」。そして本当に命の危険にさらされているのは、ヒクイドリのほうなのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCassowaries are large flightless birds that live in the rainforests of Australia and New Guinea.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Cassowaries are big birds that cannot fly. They live in rainforests in Australia and New Guinea. They have long, sharp claws and can kick very hard. Some people call them the most dangerous bird in the world.
But a study of 221 attacks in Australia found something surprising. Most of the birds that attacked people had been fed by people before. So, never give food to a wild cassowary!
69 words ・ CEFR A2
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ヒクイドリは飛べない大きな鳥です。オーストラリアとニューギニアの熱帯雨林に住んでいます。長く鋭いかぎ爪をもち、とても強くキックできます。世界でいちばん危険な鳥だと呼ぶ人もいます。
でも、オーストラリアでの221件の襲撃を調べた研究で、意外なことがわかりました。人を襲った鳥のほとんどは、以前に人からエサをもらっていたのです。だから、野生のヒクイドリには絶対にエサをあげないでください!
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ヒクイドリが人を襲う理由(人からエサをもらっていたこと)を中心に述べているので D。
Q2. What did most of the birds that attacked people have in common?
Most of the birds that attacked people had been fed by people before. とあるので A。
Q3. In this passage, "claws" are ...
claw は動物の足の「かぎ爪」なので C。直前の sharp(鋭い)もヒント。
Cassowaries are large flightless birds that live in the rainforests of Australia and New Guinea. Each foot has a long, sharp claw, and their kicks can seriously injure people.
However, they may not deserve the title "the world's most dangerous bird." In 1999, a researcher studied records of 221 cassowary attacks in Queensland, Australia. Of the 150 attacks on humans, 75% were by birds that people had fed before.
Most of the birds seemed to be expecting food. Only one person died, and that person had been trying to kill the bird. Today, it is the cassowaries that are in danger. They are endangered, and many are killed by cars and dogs.
112 words ・ CEFR B1
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ヒクイドリは、オーストラリアとニューギニアの熱帯雨林に住む、飛べない大型の鳥です。それぞれの足に長く鋭いかぎ爪があり、そのキックは人に大けがをさせることがあります。
しかし、「世界一危険な鳥」という呼び名はふさわしくないかもしれません。1999年、ある研究者がオーストラリアのクイーンズランド州で起きた221件のヒクイドリの襲撃記録を調べました。人への襲撃150件のうち、75%は以前に人からエサをもらっていた鳥によるものでした。
ほとんどの鳥は、エサを期待していたようでした。亡くなったのは1人だけで、その人は鳥を殺そうとしていました。今日、危険にさらされているのはヒクイドリのほうです。絶滅の危機にあり、多くが車や犬によって命を落としているのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
危険な面はあるが、襲撃の多くは人がエサをあげたことと関係している、という内容なので C。
Q2. Of the 150 attacks on humans, what percentage were by birds that people had fed?
Of the 150 attacks on humans, 75% were by birds that people had fed before. とあるので B。
Q3. What does the writer suggest by saying "it is the cassowaries that are in danger"?
ヒクイドリは絶滅の危機にあり、車や犬(人間の暮らし)によって多く死んでいることから、人間のほうが大きな脅威だと示唆しているので D。
Cassowaries, the largest birds in Australia, have a long, dagger-like claw on each foot and can deliver powerful kicks. It is easy to see why they are called the world's most dangerous bird. The attack records tell a different story. In 1999, a Queensland wildlife specialist analyzed reports of 221 attacks.
Of the 150 aimed at humans, 75 percent involved birds that had been fed by people before. In 73 percent of cases, the bird seemed to be looking for food rather than defending itself or its chicks. Most incidents involved chasing or charging, and kicks were less common.
Serious injuries were rare, and the one death happened when a person was trying to kill the bird. The data gave no support to the popular claim that cassowaries target joggers. Feeding seems to make the birds bold and aggressive, which puts people at the root of many conflicts.
The records come from official reports and interviews, so minor incidents may be missing. For the birds, the danger mostly runs the other way. The southern cassowary is endangered in Queensland, and among 110 deaths with known causes, 55 percent were due to vehicle collisions and 18 percent to dog attacks.
199 words ・ CEFR B2
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オーストラリア最大の鳥であるヒクイドリは、それぞれの足に短剣のような長いかぎ爪をもち、強力なキックをくり出すことができます。世界一危険な鳥と呼ばれるのもうなずけます。ところが、襲撃の記録からは別の姿が見えてきます。1999年、クイーンズランド州の野生生物の専門家が221件の襲撃の報告を分析しました。
人間に向けられた150件のうち、75パーセントは以前に人からエサをもらっていた鳥によるものでした。73パーセントのケースでは、鳥は自分やヒナを守るためではなく、エサを求めていたようでした。ほとんどの出来事は追いかけたり突進したりするもので、キックはそれほど多くありませんでした。
大けがはまれで、唯一の死亡例は、人が鳥を殺そうとしていたときに起きたものでした。ヒクイドリはジョギングをする人をねらうという通説は、データからは支持されませんでした。エサを与えることで鳥は大胆で攻撃的になるようで、多くの衝突の大もとには人間がいるのです。
記録は公的な報告と聞き取りにもとづくものなので、軽い出来事は抜け落ちているかもしれません。鳥の側から見れば、危険はむしろ逆向きです。クイーンズランド州のミナミヒクイドリは絶滅の危機にあり、死因がわかっている110件の死のうち、55パーセントは車との衝突、18パーセントは犬による襲撃でした。
4択リーディングクイズ
Q1. Which title best fits the passage?
危険な鳥という評判に対し、襲撃記録から人間がエサを与える習慣が大きく関わっていると示しているので B。A はジョギングの通説が支持されなかったという本文に反する。
Q2. In what percentage of cases did the bird appear to be seeking food?
In 73 percent of cases, the bird seemed to be looking for food とあるので D。55% は交通事故、18% は犬による死亡の割合。
Q3. Why does the writer mention that minor incidents "may be missing"?
記録が公的な報告と聞き取りにもとづくため軽い出来事が抜け落ちている可能性がある、という研究データの限界を示しているので A。
重要単語
- cassowaryC1名詞ヒクイドリThe cassowary lives in tropical rainforests.
マレー語由来の名前。ダチョウ(ostrich)やエミュー(emu)と同じ飛べない鳥の仲間。 - clawB2名詞かぎ爪Each foot has a long, sharp claw.
人の爪は nail、動物や鳥の鋭い爪は claw。カニのはさみも claw と言う。 - endangeredB2形容詞絶滅の危機にあるThe southern cassowary is endangered in Queensland.
endangered species「絶滅危惧種」は環境問題の長文で頻出。extinct(絶滅した)との違いに注意。 - aggressiveB2形容詞攻撃的なFeeding can make wild birds aggressive.
名詞 aggression。ビジネスでは「積極的な」というよい意味でも使う。 - casqueC1名詞(ヒクイドリの頭の)かぶと状の突起The casque helps the bird release heat.
フランス語で「かぶと」。2019年の研究で放熱の働きがあるとわかった。 - flightlessC1形容詞飛べないCassowaries are large flightless birds.
flight(飛行)+-less(~のない)。-less の語:homeless, careless, useless などと同じ作り。
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「世界一危険な鳥」と呼ばれるヒクイドリ。オーストラリアで221件の襲撃記録を調べた研究では、人への襲撃の75%は人間にエサをもらっていた個体だったらしい。死亡例は1件だけで、その人は鳥を殺そうとしていた。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Kofron (1999) Attacks to humans and domestic animals by the southern cassowary (Casuarius casuarius johnsonii) in Queensland, Australia, Journal of Zoologydoi.org
- Kofron & Chapman (2006) Causes of mortality to the endangered Southern Cassowary Casuarius casuarius johnsonii in Queensland, Australia, Pacific Conservation Biologydoi.org
- Eastick et al. (2019) Cassowary casques act as thermal windows, Scientific Reportsdoi.org
- Douglass et al. (2021) Late Pleistocene/Early Holocene sites in the montane forests of New Guinea yield early record of cassowary hunting and egg harvesting, PNASdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











