「女性は男性より寒がり」はホント。オフィスの空調は"昔の男性"の基準で決められていた

読む前に予想してみよう!
オフィスの空調の基準は、男女の体の違いをバランスよく考えて決められている
基準のもとになった代謝量の値は、昔の成人男性のデータにもとづくと指摘されている。
- 対象
- 室内の温熱快適性の研究など
- 規模
- 多数の研究のメタ分析+543人の実験ほか
- 研究の種類
- メタ分析・実験研究
- 確かさ
- ★★★★☆
研究をまとめると、同じ室温で「寒い・暑い」と不満を言う割合は女性が男性の約1.7倍。オフィスの空調の基準は、昔の成人男性の代謝量をもとに作られていた。
ひとことで言うと女性が寒がりなのは本当。空調の基準が"男性向け"だった!
夏のオフィスや教室で、冷房の温度をめぐる小さな"戦争"が起きていませんか。男性は「暑い」と温度を下げ、女性はカーディガンやひざかけで震えている――よくある光景です。
「女性のほうが寒がり」というのは、ただの気のせいや性格の問題なのでしょうか。研究を調べてみると、答えはホント。しかも、その裏には意外な"基準"の問題がありました。
01同じ部屋で、女性は約1.7倍「不満」だった
おもしろいのは、多くの研究で「ちょうどいいと感じる温度」そのものには、男女であまり大きな差がなかったことです。違うのは、ちょうどいい温度からずれたときの敏感さ。女性は、少し寒いだけで不満を感じやすいのです。
02空調の基準は"昔の男性"仕様だった
では、なぜオフィスでは女性が寒い思いをしやすいのでしょう。
2015年、オランダ・マーストリヒト大学のキングマとファン・マルケン・リヒテンベルトは、科学誌『Nature Climate Change』で、オフィスの温度設定に使われる基準に問題があると指摘しました。
快適な温度を計算する式には、人の体がどれだけ熱を作るか(代謝量)を入れます。ところがその標準値は、1960年代ごろの成人男性のデータをもとにしていたのです。研究チームが軽い事務作業をする若い女性の代謝量を測ると、標準値よりかなり低いことがわかりました。

体が作る熱が少なければ、同じ部屋でも寒く感じます。つまり、男性の代謝量にもとづいて「快適」とされた温度は、女性にとっては寒すぎることがある、というわけです。研究チームは、基準を見直せば、冷やしすぎを防いでエネルギーの節約にもなると提案しています。
03寒いと、仕事や勉強のでき方も変わる?
さらに2019年、ドイツ・ベルリンで行われた543人の実験(チャンとカヤツカイテ)では、室温を変えて計算や言葉のテストを解いてもらいました。すると、室温が高めのとき、女性は計算と言葉のテストの成績が上がり、男性はやや下がる傾向がありました。そして、女性の成績の上がり方のほうが、男性の下がり方より大きかったのです。
研究チームは、男女が一緒に働く職場では、今の基準より少し高めの温度設定のほうが、全体の生産性が上がるかもしれないと述べています。
04なぜ女性は寒さを感じやすいの?
理由はひとつではなく、いくつかの要因が重なっていると考えられています。
- 体が作る熱(代謝量)が、平均すると男性より少ない
- 熱を作る筋肉の量が、平均すると男性より少ない
- 寒いとき、手足の血管を縮めて体の中心の熱を守るため、手足が冷えやすい
もちろん、これは平均の話です。男性にも寒がりの人はいるし、女性にも暑がりの人はいます。
05まとめ
- 同じ室温で、女性は男性の約1.7倍「暑い・寒い」と不満を感じやすい
- オフィスの空調の基準は、昔の成人男性の代謝量をもとにしていた
- 室温が高めだと、女性のテスト成績が上がった実験もある
判定は「ホント」。冷房の温度戦争は、わがままではなく体の違いと基準のズレが生んだものでした。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn many offices, women wear sweaters while men complain that it is too hot.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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Many women feel cold in offices when men feel fine. Is this true? Yes. A review of many studies found that women were about 1.7 times more likely than men to be unhappy with the room temperature.
One reason is that office temperature rules were made using data from men in the 1960s. Women usually make less body heat, so they feel colder.
63 words ・ CEFR A2
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男性は平気なのに、オフィスで寒いと感じる女性はたくさんいます。これは本当でしょうか。はい、本当です。多くの研究をまとめたレビューでは、女性は男性の約1.7倍、室温に不満を感じやすいことがわかりました。
理由の一つは、オフィスの温度のルールが1960年代の男性のデータを使って作られたことです。女性はふつう体が作る熱が少ないので、より寒く感じるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
女性がオフィスで寒く感じやすい理由を説明しているので B。
Q2. Whose data were used to make office temperature rules?
rules were made using data from men in the 1960s とあるので C。
Q3. In this passage, "unhappy with" means ...
be unhappy with ~ は「~に不満だ」という意味なので A。
In many offices, women wear sweaters while men complain that it is too hot. Research shows this is not just a matter of personality. A 2012 review found that, in the same indoor conditions, women were about 1.74 times more likely than men to be dissatisfied with the temperature, especially when the room was cool.
In 2015, Dutch scientists pointed out that office temperature standards were based on the metabolic rate of adult men from around the 1960s. When they measured young women doing light office work, their metabolic rate was much lower than the standard. Because women produce less body heat on average, a temperature that feels comfortable for men may be too cold for them.
117 words ・ CEFR B1
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多くのオフィスで、男性が暑すぎると文句を言う一方、女性はセーターを着ています。研究によると、これは単なる性格の問題ではありません。2012年のレビューでは、同じ室内条件で、女性は男性の約1.74倍、温度に不満を感じやすく、特に部屋が涼しいときにその傾向が強いことがわかりました。
2015年、オランダの科学者たちは、オフィスの温度の基準が1960年代ごろの成人男性の代謝率にもとづいていると指摘しました。軽い事務作業をする若い女性の代謝率を測ったところ、基準よりかなり低かったのです。女性は平均して体が作る熱が少ないため、男性にとって快適な温度でも、女性には寒すぎることがあるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
性格の問題ではなく、男性の代謝率にもとづく基準と体の熱の違いが理由だと説明しているので D。
Q2. When was the difference between women and men clearest?
especially when the room was cool とあるので B。
Q3. What would probably happen if office standards were based on women's metabolic rate?
女性は代謝率が低く寒く感じやすいので、女性に合わせれば設定温度は高めになると推測できる。A。
In a 2012 literature review, a Finnish researcher looked at studies of thermal comfort carried out both in laboratories and in real buildings. In well over half of them, women were more dissatisfied than men under the same conditions. A meta-analysis estimated that women were about 1.74 times as likely as men to express dissatisfaction, and the gap was widest in cool environments.
So the office stereotype of the shivering woman has solid support. The temperature that each sex considered neutral did not differ much. Women were simply more sensitive when the temperature moved away from it. Building standards may be part of the reason. In 2015, two Dutch researchers argued in Nature Climate Change that the metabolic rate used in thermal comfort calculations was based on adult men around the 1960s and may overestimate how much heat women produce.
Their own measurements, however, came from only a small number of young women. A 2019 experiment in Berlin used short laboratory tasks, so it says little directly about a full day at work. Its 543 participants did math and verbal tests at different room temperatures. In warmer rooms, women performed better, while men performed slightly worse.
196 words ・ CEFR B2
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2012年の文献レビューで、フィンランドの研究者は、実験室と実際の建物の両方で行われた温熱快適性の研究を調べました。その半分を大きく超える研究で、同じ条件の下で女性のほうが男性より不満を感じていました。メタ分析では、女性が不満を示す割合は男性の約1.74倍と推定され、その差は涼しい環境で最も大きくなっていました。
つまり、オフィスで震えている女性という固定観念には、しっかりした裏づけがあるのです。男女それぞれが「ちょうどいい」と感じる温度には大きな差はありませんでした。女性は、温度がそこからずれたときに、単により敏感だったのです。建物の基準が理由の一部かもしれません。2015年、2人のオランダの研究者は『Nature Climate Change』誌で、温熱快適性の計算に使われる代謝率は1960年代ごろの成人男性をもとにしたもので、女性が生み出す熱の量を過大評価している可能性があると主張しました。
ただし、彼ら自身の測定は、ごく少数の若い女性だけから得たものでした。ベルリンでの2019年の実験は短時間の実験室の課題を使ったため、丸一日の仕事について直接わかることはあまりありません。543人の参加者が、さまざまな室温で計算と言葉のテストを受けました。暖かい部屋では女性の成績が上がり、男性の成績はやや下がりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
女性が寒がりなのは裏づけがあり、男性基準の問題も指摘されるが、オランダやベルリンの研究の限界にも触れているので C。
Q2. What did the 2019 experiment in Berlin find?
In warmer rooms, women performed better, while men performed slightly worse. とあるので D。
Q3. According to the passage, how do women and men differ in thermal comfort?
中立温度に大差はなく Women were simply more sensitive when the temperature moved away from it. とあるので C。
重要単語
- thermal comfortC1名詞(句)温熱快適性Thermal comfort differs between men and women.
thermal は「熱の」。thermometer(温度計)、thermos(魔法びん)も同じ語根。 - metabolic rateC1名詞(句)代謝率Women often have a lower metabolic rate.
metabolic は metabolism(代謝)の形容詞。basal metabolic rate は「基礎代謝率」。 - thermostatB2名詞温度調節器Who controls the thermostat in your office?
thermo-(熱)+stat(一定に保つもの)。battle for the thermostat は「空調の温度争い」。 - dissatisfactionB2名詞不満Women expressed more dissatisfaction in cool rooms.
dis-(否定)+satisfaction。be dissatisfied with ~「~に不満だ」。 - standardB1名詞基準The standard was based on data from men.
living standards(生活水準)、safety standards(安全基準)など複数形でもよく使う。 - deviationC1名詞ずれ、逸脱Women were more sensitive to small deviations in temperature.
動詞 deviate(それる)。standard deviation は統計の「標準偏差」。
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「女性は男性より寒がり」はホント。研究をまとめると、同じ室温で不満を言う割合は女性が約1.7倍だったらしい。しかもオフィスの空調の基準は、昔の成人男性の代謝量をもとに決められていた。冷房の温度戦争には理由があった。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Karjalainen (2012) Thermal comfort and gender: a literature review, Indoor Airdoi.org
- Kingma & van Marken Lichtenbelt (2015) Energy consumption in buildings and female thermal demand, Nature Climate Changedoi.org
- Chang & Kajackaite (2019) Battle for the thermostat: Gender and the effect of temperature on cognitive performance, PLoS ONEdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












